ウクライナのヴァイオリニストたち
2022年2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻しました。一方的な侵略行為で、国際世論からは厳しい批判の声が上がっています。病院付近にクラスター爆弾が打ち込まれたり、砲弾にさらされる子供たちのインタビューが流れたり、報道を見るたびに気が滅入ります。あまりできることはないのですが、ささやかながらウクライナ大使館に募金をしました。このブログは政治的主張をする場ではないので、これ以上のことは書きません。代わりに、いかにウクライナの地が素晴らしいヴァイオリニストを生んできたかを書きたいと思います。特に、オデッサは巨匠を多く輩出しています。
ここでは、10名紹介します。全て、私がCDを持っている演奏家たちです。特に最初の6人は、巨匠として歴史的に名を残した有名なヴァイオリニストたちです。
私が最も好きなヴァイオリニストの一人です。ウクライナのオデッサ出身で、アウアーの弟子となりました。曲の輪郭がくっきりと浮かびあがってくるような演奏に特徴を感じます。1953年のライブ録音には、学生時代何度涙を流したことか数え切れません。
同じくウクライナ出身のピアニストのホロヴィッツ、チェリストのピアティゴルスキーと共に三銃士と呼ばれました。この三人でアメリカに亡命した話は「ロシアから西欧へ―ミルスタイン回想録」という本に詳しく描かれています。今では手に入りくくなってしまいましたが、どこかで見かけたら、音楽ファンの方は是非読んでみるとよいと思います。
ミルシテインはパガニーニの24のカプリスを編曲して、「Paganiniana」という形で発表もしており、自作自演の録音が残されています。
・Nathan Milstein ‘Paganiniana’
バッハのシャコンヌも、彼の得意とした曲でした。
・Bach BWV 1004 Chaconne Nathan Milstein Violin – Complete
ウクライナのドニプロペトロウスク出身。ソ連ではオイストラフと並ぶ二大巨匠の一人として有名です。彼の演奏からは、一切の甘えを排除して音楽に向き合う厳しい姿勢を感じます。クリアな演奏が持ち味です。妻はエミール・ギレリスの妹で、ヴァイオリニストでした。夫婦共演の録音も残されています。
私はコーガンにはまっていた時期があり、サイン入りポスターのコピーを引き伸ばして部屋に飾っていました。Tritonというレーベルから30枚のCDが出ていますが、Yahoo!オークションでは、現在1枚あたり2万円以上の高値で取引されています。全30枚手元にもっているのがちょっとした自慢です。
パガニーニの難曲を演奏するコーガンはまるで鬼神のようです。
・Leonid Kogan – Paganini – Nel cor più non mi sento (HD)
ウクライナのオデッサ出身。モスクワ音楽院で教鞭を取ると共に、数々の名演を残しました。ソ連を代表するヴァイオリニストでした。明るく温かみのある演奏で、私はオイストラフが太陽、コーガンが月、というような印象を持っていました。
息子のイーゴリもヴァイオリニストで、親子でバッハのドッペルコンチェルトを共演した録音が残されています。
・David Oistrakh & Igor Oistrakh – Bach Concerto for Two Violins in D minor (complete)
ウクライナのキエフ近郊の出身で、アウアー門下でした。エルマンといえば美音派として有名でしたが、残念ながら残された録音は技術的に衰えた晩年のものばかりで、全盛期の美音を聴くことはできません。
・Mischa Elman plays Massenet Meditation from Thais 1962
ウクライナのオデッサ生まれで、アウアー門下。演奏としてはあまり印象に残るものはありませんが、ヴァイオリニストの江藤俊哉氏の名前が、トーシャに由来するというのが、有名な話です。
・Toscha Seidel (violin) – Zigeunerweisen (Sarasate) (1918)
ウクライナ西部のクレメネツ出身です。映画「屋根の上のヴァイオリン弾き」で演奏を務めたことでも有名です。日本の音楽界への影響力も強く、宮崎国際音楽祭の初代音楽監督も務めました。2000年に80歳記念音楽会がサントリーホールで開かれ、私も聴きに行きました (舞台上で共演者たちが Happy birthdayを演奏していたくらいしか覚えていませんが・・・)。演奏は割とオーソドックスだったように思います。
・Isaac Stern playing Bach’s Chaconne in D minor for solo violin Single File
ウクライナのキエフ生まれ。私は The art of Sitkovetskyという数枚組のCDを持っていました。
バッハのゴルトベルク変奏曲を弦楽器用に編曲して演奏するなどした有名なヴァイオリニスト、ドミトリー・シトコヴェツキーは彼の息子です。
・Yulian Sitkovetsky plays La Campanella by Paganini
ウクライナのウハネ生まれ、リヴィウ育ち。何枚かCD持っていましたが、あまり印象に残っていない・・・ (すみません)。
・JOHANNES BRAHMS. Sonata for Violin and Piano No. 3, in D minor, op. 108
ウクライナのキエフ生まれ。CDは持っていましたが、あまり印象に残っていない・・・(すみません)。
・Violin Concerto in D major
ウクライナのオデッサ生まれ。チャイコフスキーコンクールで最高位を収め、岡山県の作陽音楽大学でも教鞭を取りました。アイスクリームのCMで、お馴染みかもしれません。
・アナスタシア・チェボタリョーワ AYA 明治乳業 彩
彼女はロシア音楽を得意としていて、 ロシア民謡を何曲か録音しています。
・Anastasia Chebotareva – Two Guitars / Две Гитары
名著「二十世紀の名ヴァイオリニスト」が手元にあれば、もう少しましな文章が書けたのですが、2021年の大地震で家族が本の下敷きになって死にかけてから、めぼしい本は全て貸倉庫に送ってしまいました。もし、他にもウクライナ出身で有名なヴァイオリニストがいましたら、コメント欄で教えてください。
#NoWarInUkraine #StandWithUkraine