午前5時くらいに起床し、荷造りを完成させ、家を出た。今回は、国際学会で発表するという大切な使命がある。最も大事なのは国際学会で発表するためのポスターを忘れないこと。これがないと何をしに行くかわからなくなる。
ルフトハンザ航空を予約していたのだが、ANAとの共同便とのことで、成田空港ではANA窓口でeチケットを提示して、実際のチケットを受け取ることとなった。最終目的地はベルリンなのだが、経由地のフランクフルトまでのチケットしか受け取れず、係員何人かに聞いたが、「フランクフルトで続きのチケットを受け取ってください」とのことだった。このことが後々問題を引き起こすこととなった。大事なポスターは、「大切なんです」と係員に伝えると、「fragile」というステッカーを貼ってくれた。「フラジャイル」と発音する。「フラジール」は、トリコモナス膣炎の治療薬だ。
午前11時35分発の飛行機に対して、かなり時間が余っていたため、空港の寿司屋に入り、日本酒を煽り始めた。色々な人に酔っぱらいメールを送る。「はり屋こいしかわ」先生とのメールでの爆笑オゲレツバトルが盛り上がった。かなり酔っていて、フランケンシュタインならぬドランケンシュタイン状態だ。
まだ少し時間があったので、空港の本屋を除くと、「英語で話す「医療ハンドブック」(東京海上記念診療所監修、黒田基子著、講談社バイリンガルブックス)」という本が目に入り、購入した。その中に、アメリカの医療費の話が載っていた。
---引用高いことで有名なアメリカの医療費ですが、その具体例をご紹介しましょう。
風邪(cold)など特別な治療を必要としない軽い病気で医者にかかった場合、治療費(medical fee)は50ドルから100ドル。その上に血液検査(blood test)などの検査(test)が加わると、検査費が30ドルから60ドル。抗生物質(antibiotic)などの薬が処方(prescribe)されると、薬代が10ドルから50ドル程度。健康診断(physical checkup)は、簡単なもの、たとえば子宮ガン検診(Pap smear)などで150ドル程度、子供の定期健診(annual checkup)で70ドルから100ドル。入院となれば、入院費(hospitalization fee)だけで1泊千ドルが相場。たとえば出産(childbirth)の場合は普通分娩(natural birth)で5千ドルから8千ドル、帝王切開(cesarean section)では1万5千ドル以上はかかります。これらはごく一般的な医者や病院のケースで、有名な医者や豪華な病院となれば、もちろんそれ以上になるわけです。
これだけの高額な医療費をカバーするためには、当然保険の掛け金(premium)も高くなります。保険の種類や地域によって掛け金には大きな開きがありますが、たとえばニューヨーク州の場合だと個人(indivisual)で健康保険に加入すると、安いものでも独身(single)で月額200ドル以上、家族(family)では500ドル以上と思ってまちがいないでしょう。条件の良いものでは家族で月額千ドルを超えることも珍しくありません。勤務先を通じて保険に加入している場合には、個人の保険料の負担額は企業の規模や企業負担額によってまちまちですが、個人で加入するよりはずっと安くなります。アメリカで仕事を選ぶ際に健康保険の有無が重視されるのはこのためです。
また、保険料が安い健康保険では当然のことながら自己負担(co-payment)率も増え、歯科治療(dental care)はまったくカバーしないなど、適応範囲もせまくなります。ですから自分の健康と生活摂生にどれだけの自信があるかによっても保険選びはかわってくるわけです。
---引用おわり話には聞いていたけれど、日本で風邪で病院にかかると、診察料70点(700円)。自己負担は3割として210円。内服薬も、たかだか数百円。恵まれている。アメリカでは、タイなどへの医療費が安い国への、「検査ツアー」や「心臓カテーテルツアー(ただし、重病者は参加資格なし)」などが流行っているらしい。同じ旅行でも、そのような旅行は、悲しいものかもしれない。
そんなことを考えているうちに、搭乗時間になった。
飛行機(LH9791)は、ルフトハンザ航空ではなく、共同便であるANAの飛行機。映画やゲームなどが充実していた。ただ、シートの質はルフトハンザ航空の方が好きだ。飛行機の中はかなり蒸し暑かった。
相当酔っていたためか、少し遅れた離陸もそれほど恐怖心無く迎えられた。スチュワーデスが機内サービスを始めてから、更に赤ワイン1本、白ワイン2本、スパークリングワイン1本と、それぞれ小さな瓶を空け、ご機嫌状態となった。ワインも質が良かった。
機内の映画は、10種類くらいから選んで見られたのだが、懐かしくて「南極物語」を選んだ。小学生の頃見て泣いた思い出がある。今回も涙ぐみながら見た。機内で涙ぐむ酔っぱらい。シュールなシチュエーションだ。
遅れて離陸した分、遅れて到着し、次の乗り継ぎまで1時間を切っていたため気が気ではなかった。飛行機を降りてすぐ、「ベルリン行きの人はこちらに来てください」と看板を持った人が立っていた。「e-チケットしかなくて、チケットを受け取らないといけないのですが、こちらで良いのですか?」と聞いたところ、係員は「Lufthanzaに話が通っているので大丈夫」と。そのため皆について行き、通ったことのない裏道を案内され、がらがらの入国審査窓口を通り、すぐに手荷物検査所まで着いた。しかし、そこでトラブル発生。「このeチケットじゃ駄目だよ。チケット持ってきて」と言われてしまったのだ。幸い近くのルフトハンザの窓口が空いていたため、Transfer窓口でベルリンまでのチケットを入手。先ほどの手荷物検査所を再度訪れた。係員が、「混んでいるし、お前は時間がないからFirst class/Business class用のゲートを通るように」と言い、そこを訪れたところ、「お前はEconomy classだろう?」と。結局、Economy class用ゲートの係員が、First class/Business class用のゲートの係員に遠くからジェスチャーで伝えてくれて、そのまま通ることが出来た。駆け足で搭乗口に行くと、長蛇の列。まぁ、搭乗口まで来れば安心だ。飛行機が飛ぶまで、10分余っている。列に並ぶとすぐにドイツ人の初老の女性が、「アナタのチケットは、隣の空いているゲートから入れるわよ」的なドイツ語を喋り、併設されたゲートを指さした。お礼の言葉を言って、そちらからスムーズに乗ることが出来た。
飛行機は、ルフトハンザ航空のLH190便。先ほどのANAの飛行機と比べて格段に座席が広い。機内で本を広げながら、窓の外の景色を見ていた。トラブル無く、無事着陸。
空港を降りて、InformationでHotelのある駅までの道を聞くと、バスと電車を乗り継がないといけないとのこと。空港を出てバス停で待っていたのだが、とにかく寒い。東京が非常に暑かったので、こちらは薄いシャツ一枚。周りの人を見ると、みんなコートを着て、マフラーまでしている。実は、スーツケースの中も薄いシャツ(半分は半袖)しかなく、上に羽織る服は、オペラやガラ・ディナー用の黒いスーツしかない。明日からどうしろというのだ?何だかバラエティー番組の罰ゲームをしている気になってきた。とはいえ、数日後はイタリア。コートを買ったとしても荷物になってしまう恐れがある。
ホテルは、「Holiday in mitte」というホテル。受付の女性が、「レストランは○時まで、朝食は○時まで、ルームサービスは○時まで。」と早口でまくし立ててくれたが、何を言っているか聞き取れない。「部屋に行けば、案内を書いた冊子があるだろう」とタカをくくり、部屋に向かった。
部屋はかなり広いのだけど、「質素」の一言。壁は薄いし、道路が近いため騒音もかなりある。見たところエアコンもない。とはいえ、テレビの画面に「Welcome ○○様」みたいな内容が表示されていたり、ベッドの枕元に飴が置いてあったりと、細かい気配りがされていた。残念ながら、ホテルの案内を書いた冊子は置いてなかった。レストランは何時までだろう?読まないから関係ないけれど、聖書もなし。酔っていたし、満腹だったから、そのまま爆睡。