米国てんかん学会によるてんかん重積の治療ガイドラインが Epilepsy Currents誌の 2016年1/2月号に出たようです。が、これまで我々が行っていたプラクティスと大きく変わる点はなさそうです。
“Evidence level U (Data inadequate or insufficient. Given current knowledge, treatment is unproven. Recommendation: None)” という表記が目立ちます。
Proposed treatment algorithm for status epilepticus
東日本大震災から 5年ということで、学術出版社 Wileyが関連する学術論文の無料公開を期間限定で開始しました。
東日本大震災3.11から5年 学術論文集
今年も3月11日が近付いてきました。5年前のあの日に発生し、日本各地に甚大な被害をもたらした東日本大震災の記憶は、多くの人々の心に強く刻まれています。
今なお不自由な生活を強いられている被災者の方々が少なくありませんが、被災地は復興への道を着実に歩んでいます。復興へ向けての取り組みと並行して、この5年間でさまざまな分野の科学者や医療従事者たちが、震災とその後の事象を基にした研究を進めてきたことも見逃せません。来る節目の日を前に、科学・医学・社会科学分野において世界的な学術出版社である私どもWileyは、東日本大震災に関する論文123報を選びました。これらの論文は、Wileyが出版する約1600の論文誌に掲載されたもので、それら論文誌の多くは900の学協会との提携により出版されています。
各論文が扱う主題は、地震・津波に関する地球科学的研究、防災・減災のための科学と技術、震災と原発事故が被災地の医療や人々の心理・社会に与えた影響、原発事故が環境やエネルギー政策にもたらした影響など多岐にわたります。Wileyは、これらの論文が、痛ましい被害を生んだ震災から得られた教訓を将来に伝え、また新たな研究の発展を促すのに役立つことを願っています。これらの論文コレクションはWiley Online Library にて2016年4月30日まで無料公開いたします。
一口馬主になっているレッドヴェルサスが、ダートに転向し、やっと未勝利戦を勝ってくれました。
・レッドヴェルサス 3歳未勝利 2016/02/06 京都03R 【競馬】
ずっと惜しい競馬が続いていたので、やっとという感じです。まだ 3歳なので、今後に期待しています。なんとか、オープンまで行って欲しいです。
2016.02.06
2月6日レース後コメント(1着)
M.デムーロ騎手「上に伸び上がる感じで出たので良いスタートではなかったものの、促せば進んでくれましたしね。芝コースの部分で上手くスピードを乗せられて、前目でレースを進めることができました。積極的に出して行った割には折り合いも問題なくつけられましたし、道中は逃げていた馬をピタリとマークしながら直線まで持っていけました。仕掛け処での反応はしっかりあったのですが、直線に向いてから前の馬に少し離されてしまった際に、走りが若干フワフワしてしまった面はありました。それでも気が完全に抜けてしまった訳でもなく、追って立て直すとハミをもう一度しっかり取ってグイッと脚を使ってくれました。相手も最後まで渋太くて、外から見ていた皆さんを冷や冷やさせてしまったかもしれませんが、結果的には2着馬が目標になってくれた形。いい目標があったことでヴェルサスも最後まで気を抜かずに集中して走りきってくれました。前走は悔しいレースになりましたので、今日は勝つことができてホッとしています。ありがとうございました」
須貝調教師「惜しい競馬が何度もありましたからね。今日も最後までハラハラしながら見ていましたが、勝利を挙げることができて本当に良かったです。初勝利がここまで延びてしまったのは申し訳なく思っていますが、今日は本当によく頑張ってくれたヴェルサスを誉めてあげたいですね。嬉しい勝利です。ここまで使い詰めできていたこともありますので、レース後は放牧に出して心身をリフレッシュさせてあげたいと思います」
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(参考)
レッドヴェルサス
2015年11月22日、死体由来のヒト成長ホルモンを介したアミロイドβ (アルツハイマー病で脳に沈着する蛋白質) の伝播について書きました。
2016年1月26日の Nature Newsに続報が出ていました。スイス、オーストリアからの報告を紹介したものです。
硬膜移植を受け、それが原因で数十年後にクロイツフェルト・ヤコブ病で死亡した患者の剖検脳において、プリオン蛋白に加えて灰白質や血管壁にアミロイドβのプラークが見つかりました。患者らは 28~63歳の患者であり、若者では通常このようなプラークはみられません。硬膜移植を受けず孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病で死亡した患者たちではこのアミロイドβの沈着はみられませんでした。
気がかりなニュースではありますが、普通の接触で伝播するということはなさそうですし、現在ではヒト死体由来の成長ホルモンや人工硬膜は使用していません。しかし、もしこの仮説が本当なら、手術器具を介した感染をどう予防するかなどの問題が生じるようです。
今後の研究を見守りたいと思います。
米国糖尿病学会の糖尿病診療指針 2016年版が公開されています。日本語でまとめている先生がいらっしゃるので、サイトを紹介しておきます。
最近、アンチエイジングなどで抗酸化治療が一部の人達にもてはやされています。ところが、こんなニュースが出ました。
とはいっても、数年前から話題になっていることです。例えば、2014年には nature newsで触れられています (リンクは日本語の紹介ブログ)。
2013年の日経サイエンスでも、フリーラジカルは悪玉とは限らないということが紹介されています。
昔、Charcot-Marie-Tooth病 1A型の臨床研究でビタミンCを投与したとき、女性の患者さんから「化粧ののりが良くなりました」と言われたことがあるので、ひょっとすると美容には良いのかもしれません。しかし、未知の部分が多いことも事実で、抗酸化治療を無批判にもてはやすことは危険なのかもしれません。
2015年12月9日の高畠英昭先生の講演は興味深いものでした。脳卒中急性期から食事させることの重要性。
・特別養護老人ホーム利用者で職員がブラッシング指導し、歯科医師が週1回介入すると、2年間で肺炎が 19→11%になる (YoneyamaT et al, Lancet 1999.)。
・反復嚥下テストも水飲みテストも意味がない。「自発開眼、簡単な指示に従う、全身状態安定」となったら、必要に応じて嚥下内視鏡(VE)、嚥下造影(VF)を行いゼリー摂取開始。
・発症直後からの口腔ケアが大事。仰臥位~半側臥位 30°頭部横向きブラッシング・リンシング(100 ml程度の水道水で洗い流し、吸引)
・栄養管理について。FOOD trial:発症1週間以内の経腸栄養は勧められる。(Lancet2005; 365: 764 -72.)、EPaNICtrial:発症早期の静脈栄養は勧められない。(NEJM 2011; 365:506-517. )
・早期から食事摂取を開始し、胃ろうを避けられれば予後も改善するし、大幅に医療費を減らせるのではないか?
・経管栄養を減らせば、無駄な身体抑制をしなくてすむ。
口腔ケアや嚥下内視鏡や嚥下造影などの嚥下評価のことを考えると、神経内科医単独で行うことは難しく、実際には歯科医師、リハビリ科医師、看護師、STなどとのチームを作って行う必要があるのでしょう。
作曲家の酒井健治さんのツイートで、「ファミリマートの主題による変奏曲」という曲を知りました。聴いてみると面白いですね。
上記の動画とは異なりますが、下記の試みも楽しくて、出来栄えが素晴らしいです。併せて紹介しておきます。
MRIでガドリニウム造影剤を繰り返し使っていると脳へ沈着することがあるという安全性情報が 2015年の夏に FDAから出されました。
このブログのコメント欄に、神田先生がコメントをくださったことがあります。
はじめまして。講演のネタ探ししていて偶然みかけ勉強になりました。
僕自身「正常腎機能でもMRI造影剤が徐々に脳に残っていて画像でも見えるようになってくるよ」という論文を報告していたのですが、この報告もひょっとしたら残留している造影剤と関連するかもしれないですね。大変興味惹かれました。ありがとうございます。
2016年1月号の JAMA Neurology誌にこの問題が取り上げられ、なんと神田先生の論文が引用されていました。
論文中の表がまとまっています。
Gadolinium
これまで膨大な数の検査が行われつつ大きな問題になったことがないので、おそらくそんなに心配しなくてよいとは思っています。造影検査を行わないと診断がつかなかったり、重大な見逃しに繋がるケースはあるので、必要な際は躊躇なく行うべきでしょう。とはいえ、未知数な要素もありますので、「造影検査は必要なときのみ行う」という原則は従来通り貫かれるべきだと思います。
若者に原因のはっきりしない筋炎が流行したのを経験したことがあります。数年前にさいたまで外来をしていた頃で、その時は電気生理検査をしてくれた先生から「何らかのウイルスによる流行性の筋炎だと思う。たまに見かけるよ」と教わりましたが、何のウイルスが原因なのか気にかかっていました。
2015年10月頃、Idatenという感染症のメーリングリストに似たような筋炎の話題が流れ、パレコウイルスではないかと議論されていました。
先日、旧職場の先輩にその話をしたところ、「流行った年に山形の先生が学会で発表していたので、自験例についてアプローチしたことがあるよ。確か、山形の先生達は立派な論文を書いていたよ」と教えてくれました。論文は下記になります。勉強になりました。