町立松前病院
ここ数年、医療崩壊という言葉を目にする機会はめっきりなくなり、「大野病院事件」や「大淀病院事件」についてほとんど知らない初期研修医も出てきました。
そんな中、町立松前病院で医師の大量離職が起きそうな雰囲気です。井関先生の記事を読むと、これまでの経緯がよくわかります。
町立松前病院の3年間の経緯について
勤務している医師のブログがあり、心情が伝わってきます。
週末はプライマリケア学会学術集会
そして、2016年6月17日の記事、とても切ないです。
次へのステップ
ここ数年、医療崩壊という言葉を目にする機会はめっきりなくなり、「大野病院事件」や「大淀病院事件」についてほとんど知らない初期研修医も出てきました。
そんな中、町立松前病院で医師の大量離職が起きそうな雰囲気です。井関先生の記事を読むと、これまでの経緯がよくわかります。
町立松前病院の3年間の経緯について
勤務している医師のブログがあり、心情が伝わってきます。
週末はプライマリケア学会学術集会
そして、2016年6月17日の記事、とても切ないです。
次へのステップ
現在、ガイドライン作成で国際的に主流となりつつあるのが GRADEシステムです。
私が現在関わっているガイドラインも、一部 GRADEシステムを導入しています。そんな GRADEシステムですが、参加費無料のワークショップが東京で開催されます。
2016.10.20 開催 『GRADEガイドラインワークショップ』のお知らせ
講師の Holger Schünemann氏の紹介には、「GRADEワーキンググループの共同責任者。コクラン共同計画の適用可能性・推奨方法論グループの共同招集者。WHOの診療ガイドライン作成方法改訂の中心的な貢献者。診療ガイドラインの作成、適用、活用を促進させることを目的とした国際団体のG-I-N(Guidelines International Network)の運営委員会メンバー」と書いてあります。早速申し込みを済ませました。興味ある方は貴重な機会ですので是非申し込んでみてください。先着 60名です。
あと宣伝ですが、2016年9月24日に尼崎でおこなわれる診断精度研究のワークショップのお手伝いをします。お申し込みは、下記からできます。御参加お待ちしております。
診断精度の系統的レビュー1日ワークショップ@尼崎総合医療センター
2015年5月22日のブログ記事で、脳卒中後の患者にビタミンB12と葉酸を投与すると大腿骨頚部骨折が減少するという論文に関する疑念について書きました。この論文が本当に正しいのか、JAMA誌が疑念を寄せていた問題です。
JAMAから寄せられた疑念
その論文が、2016年6月14日に撤回されたそうです。
Notice of Retraction: Sato Y, et al. Effect of Folate and Mecobalamin on Hip Fractures in Patients With Stroke: A Randomized Controlled Trial. JAMA. 2005;293(9):1082-1088.
撤回となった理由は “acknowledgment of scientific misconduct resulting in concerns regarding data integrity and inappropriate assignment of authorship” と書いてありますが、それ以上は不明です。
日本の臨床研究の信頼性を損なったという意味で、残念な結果です。
いつも楽しく勉強させていただいている「ここが知りたい!高齢者診療のエビデンス」シリーズの第三話は認知機能低下と運転についてでした。
[第3回]認知機能低下,運転は大丈夫?
認知機能と運転能力は必ずしも相関しないんですね。警察からの指示で、高齢者の認知機能を評価しなければならないことがあるので、色々と考えさせられます。2016年6月2日に発表された論文にも、同じようなことが書いてありました。
Cognitive Tests and Determining Fitness to Drive in Dementia: A Systematic Review
The findings from this review support the use of composite batteries comprising multiple individual tests from different cognitive domains in predicting driving performance for individuals with dementia. Scores on individual tests or tests of a single cognitive domain did not predict driver safety. The composite batteries that researchers have examined are not clinically usable because they lack the ability to discriminate sufficiently between safe and unsafe drivers. Researchers need to develop a reliable, valid composite battery that can correctly determine driver safety in individuals with dementia.
話は変わりますが、認知症といえば、最近下記の論文を知って驚きました。この研究によると、脳出血後なんと 5人に1人が半年以内に認知症を発症するんですね。平均 74.3歳ですが、明らかに高頻度だと思います。なお、脳出血後の半年間に認知症を発症しなかった場合の認知症発症リスクは年間 5.8%だったそうです。(JAMA Neurology, 2016.6.13 published online)
Risk Factors Associated With Early vs Delayed Dementia After Intracerebral Hemorrhage
Among 738 patients who had experienced ICH (mean [SD] age, 74.3 [12.1] years; 384 men [52.0%]), 140 (19.0%) developed dementia within 6 months. A total of 435 patients without dementia at 6 months were followed up longitudinally (median follow-up, 47.4 months; interquartile range, 43.4-52.1 months), with an estimated yearly incidence of dementia of 5.8% (95% CI, 5.1%-7.0%). Larger hematoma size (hazard ratio [HR], 1.47 per 10-mL increase; 95% CI, 1.09-1.97; P < .001 for heterogeneity) and lobar location of ICH (HR, 2.04; 95% CI, 1.06-3.91; P = .02 for heterogeneity) were associated with EPID but not with DPID. Educational level (HR, 0.60; 95% CI, 0.40-0.89; P < .001 for heterogeneity), incident mood symptoms (HR, 1.29; 95% CI, 1.02-1.63; P = .01 for heterogeneity), and white matter disease as defined via computed tomography (HR, 1.70; 95% CI, 1.07-2.71; P = .04 for heterogeneity) were associated with DPID but not EPID.
2016年6月9日の New England Journal of Medicine誌に、胸が締め付けられるような論文が載っていました。
The Hell of Syria’s Field Hospitals
“Where’s my mom?” a boy asked as he woke from surgery. Both his legs had been amputated when a missile hit his home in Aleppo, Syria. His mother had died in the blast. It didn’t take him long to realize the answer.
「お母さんはどこ?」と手術後目覚めた少年は尋ねた。シリアのアレッポにある彼の自宅にミサイルが直撃し、彼の両下肢は切断されていた。彼の母親は爆発で死亡した。彼がそれに気づくのに時間はかからなかった。
If we have two critically wounded patients and only enough blood to save one, we decide which one to save and which to watch die. What do we say to the family whose child we let die, knowing that we could have saved that life?
もし、重症の外傷患者が二人いて、輸血が一人分しかなかったら、われわれはどちらを助け、どちらを見殺しにするかを決める。助けられたことを知っていて、死なせた子供の家族になんと言えば良いのか?
このように切ない逸話がたくさん出てきます。シリアで何が起きているのか、是非読んでみてください。
ACP(米国内科学会)日本支部年次総会2016に参加してきました。
6月3日(金) は前日入りして、昨年同様祇園の「なか原」で methyl先生と食事をしました。ここは、妹と methyl先生の馴れ初めの店なのです。
6月4日(土) は次の講義を聴きました。
10:00~11:30 第1会場 Shockのトリセツ (林寛之)
・心タンポナーデは、心嚢液の量は関係ない。ゆっくり溜まれば量が多くても心タンポナーデにならない。心臓超音波検査で右房の虚脱は感度が高く、右室の虚脱は特異度が高い。
・血性心嚢液は大動脈解離、左室自由壁破裂、癌の心膜転移を考える。
・肺エコーについて。基本的にアーチファクトを見たいので、THIボタンを押して、アーチファクトを減弱させるための設定を外す。肺水腫では B line (縦方向にはいるアーチファクト) がたくさんみえる。ポータブルエコーを持参しての往診で consolidationを探すことで、肺炎を見つけられることもある。
・英語でエコーとは心臓超音波検査のことを指す。それ以外の超音波検査はすべて ultrasoundという。
・元気な心臓は、僧帽弁が良く動くので中隔に近づく。正常での EPSS <7 mm
・IVCを測定するとき、プローベを腹部の軟らかいところから上に向けても当たりにくい。心窩部右側の骨に当てて、斜めに見る。IVCは肝静脈 1 cm尾側で測定。
・E line, EF<40%, IVC虚脱率<20%の組み合わせで心不全の診断精度が極めて高くなる。
・心不全の原因、A (ACS), B (BP/HTN), C (cardiomypathy), D (damaged valve) で、ショックならほとんど AMIである。
・敗血症性ショックでは、IVCで volumeを評価し、呼吸性変動 ≧50%なら 5~6 Lを 5~6時間で輸液。平均血圧 65~90 mmHgになるようにノルアドレナリン、バゾプレッシンなど使用。酸素利用は Lactateで評価。Lactate > 4 mmol/lが目安。適宜ドブタミンや輸血を検討。
・肺エコーで、sliding sign (肋間の肋骨レベルより少し下にはいる横方向のアーチファクト) があれば正常、なければ気胸。Lung point (気胸と肺との境目) があれば気胸。
・意識清明の緊張性気胸で致死的なのは 0.3%なので、それほど焦らなくても良い。呼吸音左右差はかなりわかりにくい。脇の下で比較するとよい。穿刺は第 5肋間腋窩前線がお勧め。4.5 cm以上必要。
・腹部大動脈の径≧ 5 cmで破れやすい。径だけで破れているかどうかはわからないが、血腫の検出でわかることがある。
・自分が読めない心電図を見たら、高K血症を考える。
・治療は、カルチコール/CaCl2の効果出現は 1-3分で効果出現 (Kは下げないが心臓を保護してくれる)、グルコース・インスリン (レギュラーインスリン 10単位+ 50%ブドウ糖 50 mlを静注) は 30分で出現し効果最強、β刺激薬吸入は 1-3分で効果出現 (喘息だと 0.3 mlくらいだが、β刺激薬 2~4 ml+生食 4 mlを吸入する)、アシドーシスあるときのみメイロンを使用するが効果出現は 5-10分、ケイキサレートの効果出現は遅い。その他透析など。治療は CABG (カルシウム、β刺激薬、グルコース ) と覚える。
肺エコーなど、最近のトピックスを押さえることができました。エコーについては、経験を積んで覚えていかないといけませんね。神経エコーや頸動脈エコーというのはありますが、多くの神経内科医にとって苦手な分野です。
11:45~12:30 第1会場 急性気道感染症診療の原則を再考する (山本舜悟)
最近、扁桃炎の起炎菌として A群溶連菌だけではなく、B群あるいは G群溶連菌、Fusobacteriumなどがかなりあるのではないかと言われている。これらは、迅速キットでは検出できない。Centor criteriaで点数が高ければこれらの起炎菌も想定して治療を開始すべきなのかどうか?
とても興味深い講演でした。「かぜ診療マニュアル」の改訂版 (今後発売予定) で扱うようなので、ネタバレにならないよう、これ以上は書かずにおきます。皆さん買ってください。
12:45~14:15 第1会場 Snap Diagnosis ver.4 日常診療でどのように身体所見を学びつづけるか (須藤博)
これまでの米国内科学会日本支部総会で須藤先生が話されてきたことの纏め。この記事の末尾にリンクを張っておくので、それを参照。新しく知ったのは、「眼瞼結膜での貧血 (conjuctival rim pallon) は、眼瞼結膜のコントラストの消失で判断する。感度 10%, 特異度 90%, LR + 16.7」「座位だと鎖骨は右房より 10 cm以上高いところにあるので、鎖骨より上で外頸静脈の拍動が見られれば CVP>10 cmである。座位ではっきり見えたら異常。心不全による中心静脈圧上昇の他、心タンポナーデ、SVC syndrome, 緊張性気胸など考える。仰臥位でまったく見えないのも異常である」「肝濁音界は検者によって個人差があるので、正常人で 300人打診して自分なりの正常の高さを覚えておく」「心音の S4は聴診よりも触診の方がわかりやすく、心尖部で触れることがある (palpable S4)」「前胸部に手を当てれば右室圧>50 mmHgの時はわかる。傍胸骨拍動でググッとくる」「pelvic appendictisでは唯一の圧痛が直腸にあることがある」「先端巨大症ではグーをして爪が隠れない」「エビデンスは他人の経験である。自分の経験も大事」など。
講演が終わってから、この学会の講師達数名とまんざら亭で飲み会をしました。名前は明かしませんが、全国の有名病院の指導医たちで、毎年刺激を受けます。
6月5日 (日) は次の講義を聴きました。
9:30~11:00 第2会場 臨床研究はじめの 2歩目、統計の基本シリーズ ~あなたの研究に必要な対象者は何人?~ (福原俊一)
予め配られた資料を元にパワー計算を行い、パラメーターを動かすとどのくらい必要な対象者が増えるかを学習しました。
前回このシリーズに参加していた人としていなかった人をターゲットにしていたので、レベルの設定が難しい講演だったと思います。事前学習は、福原先生の本を読んでいたり昨年のシリーズに参加していた人間にとっては時間の無駄と思えるくらい初歩的な内容でしたが、動画がスキップできなくてイライラしました。私は「医学研究のデザイン」という本でパワー計算の例題をいくつか解いており、そのレベルでの学習をしたいと思っていたのですが、初学者向けだったので、やや物足りなさが残りました。
12:15~13:00 第5会場 ホスピタリストのための人工呼吸器セミナー in ACP Japan (則末泰博)
・人工呼吸器を使用する上で体格の把握は大事
・気管挿管の適応は MOVESである。すなわち、M (mental status, maintain airway; 気道閉塞、意識障害 (GCS 8点以下)), O (oxygenation; 低酸素), V (ventilation; 低換気), E (expectoration, expected course; 排痰負荷, 想定される臨床経過 (この後悪くなる)), S (shock; ショック) である。
・人工呼吸器管理はあくまで対症療法である。人工呼吸器管理で患者を悪くしないのが大事。絶対に優れているモードがあるわけではない。
・AC: Assist (補助)=患者の自発呼吸があれば患者の呼吸をアシストする、Control (調節換気)=患者の自発呼吸がなければ設定呼吸回数の強制換気で患者の呼吸をコントロールする。
・従量式 (VC) では、サギング (Sagging) に気をつける。これは患者の望んでいる吸気速度に流速が追いつかないもの。Volume controlのみでおこる。設定流速が低すぎるのが原因。モニターでは圧曲線が垂れ下がる。
・従量式で圧が上がりすぎた場合、プラトー圧を 30 cmH2O以下にする。気道抵抗パターン (挿管チューブが痰で詰まる、回路の問題など) では peakと plateauの差が大きくなる。コンプライアンス低下パターンでは、plateau圧が大きくなる。
・AC-VCの初期設定のまとめ:FiO2=SpO2を見ながら, 1回換気量=6-8 ml/kg (理想体重を用いる, 理想体重は、男性だと 50 + 0.9 x (身長 (cm) – 152), 女性だと 45 + 0.9 x (身長 (cm) – 152)), 呼吸回数=10-14回 (PaCO2をみながら), PEEP=SpO2みながら, 流速=40-60 L/min (流速↑だと吸気時間短い, 流速↓だと吸気時間長い, 吸気時間を設定する機種もある), 波形=漸減波 (患者の呼吸パターンに近い), 患者次第で変動するパラメーター=ピーク圧, プラトー圧
・AC-PCの初期設定のまとめ:FiO2=SpO2を見ながら, 吸気圧 5-15 cmH2Oで開始 (1回換気量が 6-8 ml/kg (理想体重) となるように調整, 吸気圧+PEEP≦ 30 cmH2Oになるように設定), 吸気時間=0.8-1.5秒で開始 (吸気のフロー波形が基線に戻ってきたら送気終了するよう調整), 呼吸回数=10-14回 (PaCO2みながら), PEEP=SpO2+ Ppeakみながら, 患者次第で変動するパラメーター=1回換気量, 吸気流速
・ARDSにおける呼吸器管理では、過伸展防止→low tidal stratetgy (院内死亡率減少 NNT 11 (NEJM 2000;342:1301-8)), 虚脱の防止→PEEPが大事。初期モードは AC-VCか AC-PC, 1回換気量を 6 ml/kg以下にする, プラトー圧を 30 cmH2O以下にする (PCの場合は Pi+PEEPが 30 cmH2O以下になるように), これらに伴う高二酸化炭素血症は許容する (pH 7.15以下になるまで), 肺を虚脱させないように適切な PEEPをかける
・二段トリガー (Double trigger) は、呼気が始まる前に次の吸気がトリガーされるもの。原因は一回換気量や吸気時間のミスマッチ。具体的には、設定換気量<<<患者の望む換気量, 設定吸気時間<<患者の望む吸気時間。
・1回換気量を制限したいが患者の自発呼吸がある場合、AC-VCでの非同調, AC-PCでの換気量の増量が問題となりやすい。まず鎮静、無理なら筋弛緩薬。
・COPDでは呼気に時間がかかり、吐ききる前に次の呼吸が始まってしまう。肺の中に空気が残っているのに呼吸が始まることで auto PEEPがかかる。Auto PEEPを測定するには、吸気ポーズボタンを押す。
・Auto PEEPの解決方法としては、気管支拡張薬による治療、吸気時間を短くすることで相対的に呼気時間を長くするなど。ミストリガーを改善するのであれば、人工呼吸器の感度をあげる、Counter PEEPなど。
・喘息発作の場合は、AC-VCが betterである。気道抵抗↑↑のため、AC-PCは圧設定が難しく換気量が入りにくい、AC-VCでプラトー圧をモニターしつつ換気量を確保。
・Take Home Message:患者が最も楽でかつ安全な設定にしよう。一回換気量は 6~8 ml/kg (理想体重) に。プラトー圧を 30 cmH2O以下に。COPD/喘息では呼気時間を長く保ち、auto PEEPを防ぐ。
私はこれまで従圧式ばかり使用してきたので、従量式についてとても勉強になりました。この講演の後、講堂を出たら、某伊豆地域の病院の先生から、講演依頼をされたのでした。「神経内科医も歩けば仕事が増える」という感じですが、光栄なことなので、精一杯準備させて頂きます。
13:15~14:45 第2会場 診断戦略カンファレンス (志水太郎)
アルコール多飲歴のある中年男性が 1週間前に一時的に左胸痛を自覚した。呼吸苦あり来院。何を考えるか?病歴と身体所見を元にグループで診断推論をする。肺塞栓症、気胸などオーソドックスなものから、特発性食道破裂など鑑別が上がった。解答は、慢性膵炎→仮性膵嚢胞 (圧が高まり左胸痛出現)→左胸腔内に瘻孔形成 (圧が逃げて胸痛消失)→左胸水貯留。だった。胸水穿刺では black pleural effusionが得られた。胸水 AMYが高値だった。Clinical pearlとしては、”左胸水をみたら膵性胸水も考える”。
須藤先生が、「酒飲みが酒を飲まなくなったら、重大な疾患が隠れている」とおっしゃっていて、私はるろうに剣心の「春は夜桜 夏には星 秋には満月 冬には雪 それで十分酒は美味い それでも不味いんなら それは自分自身の何かが 病んでる証拠だ」という台詞を思い出したのでした。
新幹線待ちの間、葵茶屋で一杯飲んでから帰りました。十分酒は美味かったので、健康であることを確認しました。
—
(参考)
・ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【1日目】
・ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【2日目】
Neuron誌に驚きの論文が掲載されました (2016.6.1 published online)。家族性多発性硬化症の exome sequenceで NR1H3変異が証明されたというのです。表現型は急速進行型多発性硬化症でした。単一遺伝子変異でも多発性硬化症を発症することがあるのですね。ビックリしました。興味のある方は論文をどうぞ (締め切り直前の仕事が立て込んでおり、詳しく解説している余裕がなくてすみません)。
Nuclear Receptor NR1H3 in Familial Multiple Sclerosis
以前、ルフトハンザの「Doctors on board」プログラムについて紹介しました。
医療関係者の方はいませんか?
これに追随する流れが広がっているようです。まず、JALが「JAL DOCTOR登録制度」を開始。しかし、登録には日本医師会発行の医師資格証が必要で、日本医師会の会員以外が資格証を用いるには、発行手数料 5000円、年間使用料 6000円が必要。日本医師会の会員以外で登録しようという物好きな医師はいないでしょう。アホな制度を作ったものです。私は青組 (ANAメンバー) で良かった・・・。
JAL DOCTOR登録制度とは?
当登録制度は、医師資格証をお持ちの医師の方に任意でのお願いになります。
JALグループ便機内で急病人や怪我人が発生し、医療援助が必要となった場合、登録いただいた医師の方へ客室乗務員が直接お声掛けをさせていただく、国内航空会社では初めての取り組みとなります。
ご登録時に医師情報が登録されますので、JALグループ便ご予約の際にお得意様番号を登録いただくことで、緊急医療が必要な事態が発生した場合、客室乗務員が医師の方に速やかに援助をお願いさせていただくことが可能となります。
※飲酒や体調不良など、対応が困難な場合は、その旨を客室乗務員へお伝えくだされば、ご辞退いただくことも可能です。
続いて、ANAも同様のサービスを開始することが発表されました。
医師登録制度「ANA Doctor on board」を開始します
~安心してご利用頂けるよう医療サポート体制を強化します~
ANAは2016年6月より、昨今の高齢社会や訪日需要をふまえ、より安心してご利用いただけるよう、医師登録制度「ANA Doctor on board」を開始し、国際線を中心に医療サポート体制を強化致します。ANAはこれまでも機内で医療対応が必要となった場合の対応策として、医療物品の搭載や国際線において「MedLink(※)」と提携し、24時間地上と連携しサポートできる体制を提供してまいりました。「ANA Doctor on board」の実施により、機内にて傷病者などが発生した際、客室乗務員が「ドクターコール」(アナウンスによる医療関係者の呼び出し)をせず、登録いただいた医師に協力依頼ができ、迅速な救急医療処置につながります。7月より募集を開始し、9月より国際線にて運用開始する予定です。
機内搭載の医療物品についてもこれまでより詳細に開示し、傷病をお持ちのお客様、医療対応に協力頂く医師の方々にも事前に確認いただけるように致します。
また、「ANA Communication Board」を活用することで、音声を含む各国の言語(定例用語)にて、医療行為発生時の初期対応に活用が可能となります。(ANA NEWS第16-022号 「ANAコミュニケーション支援ボード)の導入)
ANAはこれからもより安心してご利用いただけるよう各種サービスを拡充してまいります。
以上
※MedLink:航空の乗務員と乗客に医療サービスを提供しているMedAir社と契約し、24時間365日、緊急時の電話による医療ケアやセキュリティ専門家によるアドバイスを世界中どこにいても受ける事ができます。
【ANA Doctor on boardについて】
※ANAマイレージクラブ会員を対象に、医師免許と顔写真付きの身分証明書を申込書とともに事務局に送付頂き、所定の審査・確認を実施の上、登録となります。
※登録された医師ご本人の体調等の都合もあるため、協力は任意と致します。登録された医師がいない場合には、これまで通りドクターコールを実施致します。
※機内で実施頂いた医療行為に起因して、医療行為を受けられたお客様に対する損害賠償責任が発生した場合、故意または重過失の場合を除き、弊社が主体となって対応させて頂きます。
コンセプトは良いのですが、登録するメリットが見えないし、「損害賠償責任が発生した場合、故意または重過失の場合を除き」の「重過失」の定義がはっきりしないので、しばらくは見合わせようと思います。飛行機の中という経験のないシチュエーションで、専門外の疾患に対して、100%過失を犯さない自信はないです。今登録するなら、ルフトハンザです。ヨーロッパに行くときは、共同運航便を使えば良いし。
—
(参考)
・善きサマリア人の法とは?ここに来て甚だしいJALと日本医師会の浅はかさ
2016年5月18~21日に行われた神経学会総会に行ってきました。というか、あまりアカデミックなことには触れることなく・・・。とりあえず、どんなことがあったか振り返っておきます。
まず、5月20日の学会のコングレスディナーと 5月21日のポスターセッションでの演奏依頼があったことを記しておく必要があります。演奏するのは、神経内科医、言語聴覚療法士、他科の医師数名の団体。
20日はレスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア第3曲 (レスピーギ)」「日本の四季~夏 (早川正昭)」「アイネ・クライネ・ナハトムジーク第 3楽章 (モーツァルト)」、21日は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク第1楽章 (モーツァルト)」「カノン (パッヘルベル)」「花は咲く」を演奏する予定でした。私は第1ヴァイオリンを演奏することになっていましたが、tuttiでしたので、後ろの方で小さな音で弾いていればよいかと思い、ほとんど練習していませんでした。ところが・・・。以下、日記風に。
5月15日(日):「20日の演奏で、ソリスト兼コンサートマスターが外来を閉め忘れて来られなくなった。代役を御願いします」との電話。俺氏青ざめる。カラオケボックスに篭もり 2時間ほど音取り。
5月16日 (月):当直で練習出来ず
5月17日 (火):19~21時まで雑誌の編集会議があり、その後 2時間ほどカラオケボックスで練習。
5月18日 (水):仕事を終えて、新幹線で神戸へ。23時30分頃ホテルサンルートソプラ神戸に到着。ホテルのルームキーが壊れており、最上階のツイン・ルーム (応接セット付き) を 3日間使って良いことになる。ちょっとラッキー。
5月19日 (木):Cochrane systematic reviewの締め切りが 5月20日だったので、午前中は学会場の喫茶店に篭もり作業。午後は岩田誠先生の「小脳症候学の確立」の講演のみ聴講。素晴らしい講演だった。ポスターを眺めてから三宮に戻り、飲み会を断ってカラオケボックスで 2時間楽器の練習。その後、ステーキランド神戸店で神戸牛+ワインを堪能してホテルへ。
5月20日 (金):午前中、学会の喫茶店で Cochrane systematic reviewの担当者に「間に合いません。締め切り延期してください」の泣きメール (爆)。午後、合奏のメンバーの一人 Kentaru先生と合流して、ポスターを眺めてから二人でグリル金プラにて私的ランチョンセミナーへ。食事をしてから一緒にカラオケボックスで練習。現実逃避をして、バッハの「二台のヴァイオリンのための協奏曲」などを合わせて遊ぶ。その後、ラ・スイート神戸オーシャンズガーデンのコングレスディナーで演奏。奇跡的に上手くいって、多くの拍手をいただく。ディナーの後、三宮で二件ハシゴ酒。
5月21日(土):二日酔いで学会場へ。本来のコンサートマスターが到着したため、tuttiの一員として気楽に演奏。ポスターを眺めてから、三宮駅前へ。Kentaru先生とBeer Cafe De Bruggeに入り、何気なくルースというビールを頼んでからふとメニューを見て、5980円という表記を見つけビックリする。店を出て、新神戸駅で大量の酒を買い込み、新幹線で飲み会開始。二人で音楽談義をして盛り上がる。学会で勉強したことの情報交換など。東京で解散。
ということで、学会ではあまり勉強はしませんでしたが、久々に音楽漬けの数日間を送ることができました。
そして後日、この演奏を聴いた方から、別の学会での演奏依頼が舞い込んできたのでした(^^)
2016年5月13日、郡山ビューホテルで行われた第9回福島末梢神経研究会に参加しました。西野一三先生の「これだけは知っておいて欲しい筋疾患」という講演が面白かったので備忘録としてメモしておきます。
①Sporadic late-onset nemaline myopathy (SLOMN):ネマリンミオパチー
・成人発症で、亜急性・進行性である。運動ニューロン疾患に似た経過をたどる。治療できる場合があるので、見逃してはならない。
・SLOMN with MGUSは予後不良で、5/7例が呼吸不全で死亡 (予後 1-5年)。
・SLOMN without MGUSは 5/5例生存
→治療として、高用量メルファラン+自家幹細胞移植 7/8例で生存、改善している。・SLOMN with MGUSは治療として、高用量メルファラン+自家幹細胞移植 7/8例で生存、改善している。(記事末尾の追記およびコメント欄参照)
・狭高口蓋は先天性ミオパチーを示唆する。Nemaline myopathyが鑑別となる。ミオパチーを疑ったら、口腔内の上側をきちんと評価すること。
・四肢筋力が保たれるにも関わらず、呼吸筋麻痺が目立つミオパチーとして、nemaline myopathy, Pompe病がある。歩けているのに呼吸不全をきたし、患者自身が自分でアンビューを押す事例もあるらしい。
②Inclusion body myositis (IBM): 封入体筋炎
・深指屈筋が侵されやすい (前腕の筋萎縮が目立つ) +大腿四頭筋萎縮が目立つ
・深指屈筋が侵されると、ペットボトルの蓋が開けにくい。深指屈筋の筋力低下のみだと、握力計は役に立たないことがある。
・疫学としては、米国、オーストラリアに多い。タイ、インド、イスラエルにはほとんど存在せず、報告があったとしても全部外国人。食生活が影響?
・IBM患者では HCV感染症が多く、28.8%というデータがある。非IBM患者だと 3.4%とされている。米国の IBM患者は HIVの合併が多いと言われている。
・筋病理は、autophagyを反映して rimmed vacuoleがみられる。Endomysiumにリンパ球がみられ、炎症を示している。壊死・再生がないのにリンパ球がみられるというのが特徴。
・高齢者にしか起こらない筋疾患として、眼咽頭筋型筋ジストロフィー (OPMD), IBMがある。
③Immune mediated necrotizing myopathy (iNM): 免疫介在性壊死性ミオパチー
・筋病理としては、筋の壊死・再生がみられるが、リンパ球浸潤はほとんどない。
・様々な自己抗体が見られる。SRP>HMGCR>ARS>M2>others (抗SS-A抗体など)。SRP, HMGCR, ARS, M2については routineにチェックすべき。
・SRPは signal recognition particleで、ERに入る分泌型の蛋白質についているシグナルを認識している。ELISA法だと抗原認識部位により抗体を検出できないことがあるので注意。
・抗HMGCR抗体は最初スタチン内服患者での myopathyで検出された。しかし、その後スタチンを内服していない患者でも報告されている。
④Limb-girdle muscular dystrophy (LGMD) 2B:肢帯型筋ジストロフィー2B
・筋病理は、壊死・再生線維がみられ、血管周囲にリンパ球がみられる。perimysiumにもリンパ球がみられるが、これは反応性であり、診断的意義はない。
⑤Polymiositis (PM):多発筋炎
・皮膚科やリウマチ膠原病科では多発性筋炎と呼ぶが、神経内科では多発筋炎が正しい。
・筋病理では、endomysiumにリンパ球 (cytotoxic T cell) 浸潤 (=筋を攻撃している) がないと、多発筋炎とは診断できない。
・2012年に国立精神神経センターに送られてきた 732例の検体の臨床診断は、多発筋炎 35%, 皮膚筋炎 18%, 封入体筋炎 17%, その他 30%だった。ところが病理診断を行うと、実際には壊死性ミオパチー 44%, 多発筋炎 6%, 皮膚筋炎14%, 封入体筋炎 22%, その他 14%だった。いかに壊死性ミオパチーが多いか、いかに多発筋炎が稀かということ。実は多発筋炎はとてもめずらしいのだ。
・1975年の Bohan-Peter基準 (Polymyositis and dermatomyositis (part 1, part 2)) は非常に緩い基準だったので、これを用いて多発筋炎と診断される患者は多かった。しかし、2015年の ENMC分類 (筋炎患者を皮膚筋炎、多発筋炎、封入体筋炎、壊死性ミオパチー、抗synthetase症候群、非特異的筋炎に分類) を厳格に適用すると、多発筋炎患者は極めて少なくなる。
⑥Anti-Aminoacyl-tRNA Synthetase (ARS) antibodies: 抗ARS症候群
・myositis (筋炎), interstitial pneumonia (間質性肺炎), Mechanic’s hand (機械工の手: カサカサ) が重要
・筋病理では perifascicular necrotizing myopathyである。
・Jo-1, PL-7, PL12, EJ, OJ, KS, YRS, Zoなどたくさんの抗体が見つかってきている。Jo-1, PL-7, PL-12, EJ, OJは抗ARS抗体としてスクリーニングすべきである。抗ARS抗体の一つ Jo-1のみでスクリーニングをかけると、7割を見逃すことになる (抗Jo-1抗体は、抗ARS症候群の中で 30%くらいにしか検出されない)。
⑦皮膚筋炎
・MDA5, TIF-1γ, Mi-2, NXP2, SAEなどさまざまな抗体が見つかってきている。
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(2016.7.16追記)
なんと、演者の先生から修正を頂きました。コメント欄から転載します。
神経センターの西野です。ウェブを検索していて偶然ブログを見つけ拝見させて頂きました。講演をまとめて頂き大変光栄です。
一点だけ、先生の記録を修正させて下さい。メルファランで治療可能なのは、SLOMN with MGUSです。この疾患は生命予後不良なのに、見つけてちゃんと治療すれば救命でき、筋力も改善するという点がミソです。without MGUSの方は、治療法はないものの生命予後良好はです。
どうぞよろしくお願いいたします。
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(参考)
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