Category: 臨床現場

入れる、締める、叩く!

By , 2016年4月10日 11:17 AM

以前、敗血症の定義が変わる話を書きました。簡単に触れただけでしたが。

敗血症の再定義

今回、週刊医学界新聞に、詳しい解説記事が出ました。書いたのは、知人の 2人です。

敗血症の新定義・診断基準を読み解く
2001年以来の改定で臨床・研究はどう変わるか

非常に勉強になる記事ですので、是非読んでください。敗血症研究の歴史、旧基準や新基準の問題点などを絡め、わかりやすく書かれています。

私は 2015年末に秋田県 (※お世話になった先生が勤める医師不足の病院に、毎月お手伝いに行っているのです。一人で全科当直してます。) で行った 4回の当直のうち、3回でショック患者の対応をしました。一人は旧基準での敗血症性ショック、二人目は消化管出血によるショック、三人目は慢性腎不全に鎮痛薬 (NSAIDs) を内服していたら腎不全が悪化し、カリウム保持性利尿薬の効果が強く出て、血清カリウム 7台というショックでした。

私のような神経内科医でも特にパニックになることなくショック患者の治療に当たれるのは、初期研修医の頃の指導医の言葉があるからです。

私は初めてショック患者を診た時、頭が真っ白になってオタオタしてしまい、他科の医師に助けられました。そのことを救命センターの指導医に告げたら、次の言葉を教わりました。

ショック患者を見たら、女を思い出せ!

「入れる (十分量の輸液を入れる)」

「締める/絞める (血管収縮薬を使う)」

「叩く (強心薬を使って心臓を働かせる)」

だ!

ショック治療の原則を押さえた、シンプルで非常に覚えやすい言葉です。女を思い浮かべて「入れる!締める!叩く!」。頭が真っ白になっても忘れませんね。とても有用なので、自分が指導医になって女性研修医を指導するときに、ニタニタしながらこの言葉を教えています。

順番も大事で、最初に「入れる」です。入れるだけで o.k. のことも多々あります。先に血管収縮薬や強心薬を入れると、心臓を空打ちさせて負担をかけてしまいます。女性も後 2つが先だと、入れさせてもらえな (自粛

もうワンランク上の診療のために、下記のブログ記事も読んでおきましょう。

Surviving Sepsis Campaign 2012 :日本語訳

敗血症のABCs② (循環、ショック治療)

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Posterior Cortical Atrophy

By , 2015年2月14日 1:30 PM

Posterior Cortical Atrophy (PCA) は、私にとってある思い出の疾患です。というのも、初めて英語の紹介状を書いたのが、この疾患の患者さんだったからです。

英語の紹介状

最近の JAMA neurologyに、PCAの新規遺伝子変異が報告されました。 (2014.12.29 online published)。

Posterior Cortical Atrophy as an Extreme Phenotype of GRN Mutations

背景:PCAは、後頭葉視覚野、側頭後頭葉、両側頭頂葉が障害される、稀な神経変性症候群である。進行性の視覚や視覚運動の高度障害を呈する。背側路障害と腹側路障害のサブタイプがある。原因となる疾患はアルツハイマー病の亜型が多いが、レヴィー小体型認知症、皮質基底核変性症、プリオン病、皮質下グリオーシスも知られている。これまで、PSEN1, PRNP, IT15遺伝子の変異が報告されているが、遺伝学的な背景はよくわかっていない。

方法:症例は 58歳時に視力障害を発症した男性 (individual 004)。形態認知障害はあったが、色覚認知は正常であった。4年後、視覚認知障害優位であるものの、記憶障害も出現した。その後、アパシーや固執行動がみられるようになった。MRIでは、当初は後頭葉を中心とした萎縮が目立ったが、後には著明なびまん性脳萎縮がみられた。男性の兄弟の一人 (indivisual 005) は大脳皮質基底核症候群 (corticobasal syndrome) であり、片親はレヴィー小体型認知症だった (individual 001) (個人情報保護のため性別は伏せてある)。もう一人の親は非特異的な認知症だった。男性は、諸検査を経て、PCAと診断された。

結果:血清プログラニューリンは、患者男性 (individual 004) 29 μg/l, 兄弟の一人 (individual 005) 39 μg/l, 親 (individual 001) 47 μg/lだった (正常値 100~300 μg/l)。3名 (individual 001, 004, 005) ともheterozygous c.328C>T GRN変異があった。APOEは ε3/ε3であった。

考察:GRN変異は、前頭側頭葉変性症の広い範囲の表現型に関連がある。多くの変異キャリアは、行動型前頭側頭葉変性症 (visual variant)、進行性非流暢性失語症、大脳皮質基底核症候群、レヴィー小体型認知症類似の表現型を呈する。本症例はアルツハイマー病合併の可能性が除外できないが、ε4 alleを欠いたことから、GRN spectrumの表現型と考えられる。

結語:特に障害が脳の前方領域まで進行し認知症の家族歴があるような PCA症例では、GRN遺伝子を調べるべきである。

PCAの診療経験はそれほど多くないのですが、この論文のように進行が比較的早く、前方領域まで及ぶような症例を経験したときには、GRN遺伝子を調べてみようと思いました (もっと進行が早い時はプリオン病の鑑別も必要になってくると思います)。

こういう遺伝子関係の論文というのが直接臨床に役立つことは少ないのですが、知っておくと良いことが稀にあります。

数年前のことですが、末梢神経障害の患者さんが私の外来を受診し、病歴や身体所見から Charcot-Marie-Tooth病が強く疑われました。詳細不明ではあるものの腎臓病の既往があったので、初診のカルテに “Charcot-Marie-Tooth病 (INF2変異疑い)” と記載して精査としました。その後、腎臓病が実際には巣状分節性糸球体硬化症 (focal segmental glomerulosclerosis; FSGS) であったことが判明し、調べれば調べるほど INF2変異の Charcot-Marie-Tooth病のようであることがわかりました。この変異を初診で疑えたのは、下記の New England Journal of Medicine論文を読んで覚えていたからです。この時は、勉強していて良かったなと思いました。

INF2 Mutations in Charcot–Marie–Tooth Disease with Glomerulopathy (日本語版)

ちなみに、INF2変異を伴った Charcot-Marie-Tooth病に関しては既に日本国内から報告が出ているようです。

INF2 mutations in Charcot-Marie-Tooth disease complicated with focal segmental glomerulosclerosis.

その他に、INF2変異が同定された FSGSの国内報告があります。この症例で Charcot-Marie-Tooth病の合併がなかったか、興味があります。

フォルミンINF2変異が同定された腎移植希望の家族性巣状糸球体硬化症(FSGS)の1例

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髄膜炎と髄液細胞数増多

By , 2015年2月7日 10:50 AM

髄膜炎の診断の gold standardは、髄液検査で細胞数増多を証明することです。

少し前のことですが、発熱、意識障害の患者が搬送されてきました。血小板が 40000 /μlまで低下し、D-dimerも 3桁。敗血症→DICがありそうでした。身体診察では、項部硬直陽性、Kernig徴候陽性でした。敗血症に細菌性髄膜炎を合併したものでしょう。髄液検査をしてみると、何と細胞数 5 /μlと、ほぼ正常なのです (ただし多核球優位、髄液蛋白上昇あり、糖は髄液/血液=0.5程度)。「あれっ?」と思いましたが、臨床的には髄膜炎であることは明らかでした。迅速診断キット「PASTOREXメニンジャイティス」は全て陰性でした。前医で抗菌薬を中途半端に数日使っていたこともあって、髄液も血液も培養は陰性。

「髄膜炎でも細胞数増多がないことがある」というのは、過去に知り合いの感染症科医と話した時に知っていましたが、論文を読んだことはありませんでした。そこで探してみると、2014年9月に亀田総合病院から論文が出ていました。

Bacterial meningitis in the absence of cerebrospinal fluid pleocytosis: A case report and review of the literature.

上記論文は症例報告ですが、過去の論文と併せて 26例を考察しています。論文は無料公開されていますので、興味のある方は読んでみてください。著者らは、髄液細胞数増多がないというだけでいつも髄膜炎を否定できるわけではなくて、敗血症や髄膜炎の徴候があるときは、すぐに抗菌薬を開始しなければならないと結んでいます。

亀田総合病院の症例は、検査したタイミングが早いと髄液細胞数増多がみられないことがあるとしていて、確かにそういう一面はあると思います。実際に、再検査で髄液細胞数増多が確認できることはあるようです。一方で、髄液細胞数が低いほうが予後が悪いという論文が、2006年の New England Journal of Medicineに掲載されています。細菌性髄膜炎では重要論文の一つです。重症細菌感染症では血液検査で白血球が低下することがあるので、それと似た現象が髄液で起きているのかなぁ・・・と私は勝手に推測しています。

Clinical features and prognostic factors in adults with bacterial meningitis.

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脳卒中と偽痛風

By , 2014年8月10日 10:25 AM

少し前の経験から。

症例は心原性脳塞栓症の 80歳代男性です。突然発症の右上肢の運動・感覚障害で来院しました。MRIがとれない理由があり、頭部CTは来院時正常、翌日左中大脳動脈領域に脳梗塞巣が確認されました。

入院 2日後から夕方の発熱が続くようになり、入院 5日後から頸部痛を訴えました。入院 1週間後の採血では白血球 8000 /μl, CRP 19 mg/dl, 赤沈 (60分) 123 mmでした。症状から crowned dens syndromeを疑い、頸椎CTを施行したところ、軸椎歯突起周囲にはっきりと石灰化が見られ、すぐに診断となりました。NSAIDsを開始し、速やかに症状は改善しました。

Crowned dens syndromeは、軸椎歯突起周囲にピロリン酸カルシウムが沈着する偽痛風の一種です。そういえば、脳卒中患者は偽痛風が多い気がするなと思って、少し調べてみたら、2008年の臨床神経学に報告が出ていました。

脳卒中急性期に合併する偽痛風の検討

これを見ると、脳卒中 181例中 10例で偽痛風を発症し、2例が crowned dens syndromeだったそうです。自分が市中病院にいた頃は、病棟で担当していた脳卒中患者は年間 70人くらいだったので、そう考えると結構な数字ですね。NSAIDsが効くので、診断がつかないまま発熱や疼痛に処方されて、気付かれずに良くなってしまう症例も結構あるのではないかと思いました。ちなみに、この症例では、研修医が診断をつけられなくて困っていて、私がひと目で診断つけたので、「ひょっとして惚れるかな」と思って鼻の下を伸ばしていたら、何事もなかったかのように流されました orz

話は逸れますが、赤沈が 100 mmを超える疾患は結構限られていて、確か Cunha BAの論文だったと思いますが、10疾患ほど挙げられています。列挙すると、成人スティル病、リウマチ性多発筋痛章/側頭動脈炎、腎細胞癌、亜急性感染性心内膜炎 (SBE)、薬剤熱、リンパ腫、Carcinoma、骨髄増殖性疾患 (MPD), 膿瘍、骨髄炎です。Crowned dens syndromeでも赤沈 100 mmを超えるのにはびっくりしました。

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脳卒中の自分撮り動画

By , 2014年6月23日 6:21 AM

病院を受診して「脳卒中じゃない」と言われた患者さんが、自分の症状を動画撮影して見せたら脳卒中だと診断された事例がニュースになっています。

自分の脳卒中動画を晒す女性が現れる

動画を見ると一目瞭然ですね。

そういえば、私が昔秋田県で当直をしているとき、「頭に虫がいる」という主訴で救急外来を受診した患者さんがいました。受診時には頭に虫はいなくて刺し口だけありましたが、スマホで虫が刺している写真が撮られており、すぐにツツガムシとわかりました。ツツガムシ病に対する抗菌薬予防投与が妥当か判断は分かれるところですが、念のためミノサイクリンを飲んで頂きました。

患者さんが自分で撮ってくる画像って、結構役に立つものですね。不随意運動や意識消失などの診療をするときにも、症状があるときの動画があると助かります。

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SCIWORA

By , 2013年7月25日 8:02 AM

最近、外傷後の頸髄損傷の方を診療する機会がありました。珍しいことに、その患者さんは明らかに両上肢の筋力低下があるにも関わらず、頚髄 MRIでは脊柱管狭窄も髄内異常信号もありませんでした。念のため針筋電図を検査すると、軽度の神経原性変化がみられ、神経再支配が始まったばかりと解釈すると損傷からの時期 (2~3週間) と一致する所見でした。神経伝導検査では障害部位に一致して CMAP amplitudeの低下がありました。病歴や電気生理検査の所見を踏まえると、脊髄損傷が神経症状の原因であることは明らかです。MRIで異常がないことが矛盾しないのか少し調べてみると、2ヶ月くらい前に面白い論文が出ていました (というか、知り合いの整形外科の先生から教えて頂きました)。

Early magnetic resonance imaging in spinal cord injury without radiological abnormality in adults: a retrospective study.

J Trauma Acute Care Surg. 2013 Mar;74(3):845-8. doi: 10.1097/TA.0b013e31828272e9.
Boese CK, Nerlich M, Klein SM, Wirries A, Ruchholtz S, Lechler P.Source
Department of Trauma, University Hospital Giessen and Marburg, Marburg, Germany.

Abstract
BACKGROUND:
The purpose of this study was to describe the clinical and imaging characteristics of patients experiencing blunt spinal trauma without radiological abnormalities but transient or persistent neurological deficits.
METHODS:
This retrospective study analyzed plain radiographs, computed tomographic scans, and magnetic resonance images of patients with spinal cord injury without radiological abnormality (SCIWORA) who were admitted to a Level I trauma center. Neurologic status, Frankel grade, and short-term patient outcome were assessed.
RESULTS:
Of 1,604 patients experiencing blunt spinal trauma, 21 (12 men and 9 women) with a mean age of 35.5 years (range, 16.2-70.9 years) presented with a clinicoradiographic mismatch. Magnetic resonance imaging (MRI) was available in 15 patients. In seven patients (46.6%), MRI revealed either neural (n = 2, 13.3%) or extraneural (n = 5, 33.3%) spinal abnormalities. Importantly, in eight patients (53.3%), no spinal abnormalities were visible on MRI. Furthermore, subgroup analysis revealed no prognostic value regarding the presence or absence of detectable spinal injuries.
CONCLUSION:
Spinal abnormalities were not detected on MRI in a substantial proportion of patients presenting with SCIWORA. The prognostic value of MRI findings in SCIWORA needs to be validated by future studies.
LEVEL OF EVIDENCE:
Epidemiological study, level V.

2005~2011年にレベル1外傷センターで鈍的脊髄外傷と診断された1604例を対象としました。神経学的所見を有するものの、X線及び単純 CTで脊髄損傷を示唆する所見がない患者 (SCIWORA) は 21例 (男性 12例、女性 9例, 16.2~20.9歳 (平均 35.5歳)) で、交通外傷が 10例、スポーツ外傷が 7例、転倒が 4例でした。21例のうち 15例で、24時間以内に全脊髄 MRI (1.5T) を施行したところ、8例では異常がなく (real SCIWORA)、2例では脊髄に異常所見があり、5例では脊髄以外に異常所見がありました。退院時、MRIで異常がなかった 8例のうち 5例は完全に改善しましたが、3例で神経学的後遺症が残りました。脊髄に浮腫性変化が検出された 2例では、1例が完全に回復し、残りの 1例では一時的な感覚障害のみが見られました。頸椎椎間板に変性があるものの脊柱管狭窄や神経圧迫の所見がなかった 5例では、3例で完全に改善しましたが、残りの 2例では回復が不完全でした。MRIを施行しなかった 6例では、24時間以内に完全に神経学的な改善がありました。

 神経内科では外傷を診療する経験は少ないですが、「MRIで異常がないから外傷による神経障害は考えにくくて、他の神経疾患がないか診て欲しい」という依頼を受けることはあり、MRI正常の脊髄損傷は存在しうるという論文を知っておく価値は高いのかなと思いました。

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床上手

By , 2013年4月4日 7:50 AM

2013年4月から半年間、医局のベッド係になりました。病棟を持たず、外来と、ベッドコントロール専従です。大きな組織ならではの仕事です。

週一回、医局員全員に患者氏名の入ったベッド表を配布しているのですが、個人情報保護の観点から、持ち主がわかるように医局員の名前が入った判子をそれぞれ押していました。なんと数十人分の判子を押すのがベッド係の仕事の一つ。前任者が「医師の仕事に非ず」として、医局秘書の仕事にしました。しかし、その話を聞いた時、仕事を押し付けた感があって、何とかしたいと思っていました。

そこで、ベッド表をプリントするときに、自動で各医局員の名前が印刷されるようにプログラムを書くことにしました。医局員の名前を変数にして、セルに埋め込めれば良いわけです。知り合いに相談したら、エクセルでマクロ+ Visual Basicが良いのではないかとのことでした。さっそく Visual Basicをダウンロードし、インストール。

まず、エクセルでベッド表を立ち上げ、「マクロの記録」をクリックし、そのままプリント動作を行い、マクロの記録を終了します。そして “Macro1” という名前でマクロを登録します。マクロの編集を行うようにすると、Visual Basicのプログラミング画面が立ち上がります。

プログラムは下記 (先ほどの “マクロの記録” で出来たプログラムに上書きすれば大丈夫)。

Sub Macro1()

Dim LastRow As Long
Dim i As Long
Dim myNo As String

With Worksheets(“printmember”)

LastRow = .Cells(Application.Rows.Count, “A”).End(xlUp).Row

For i = 2 To LastRow

myNo = .Range(“A” & i).Value


With Worksheets(“print”)

.Range(“O3”).Value = myNo
.PrintOut Copies:=1, Collate:=True

End With

Next i

End With

End Sub

 

エクセル側でやることは次のとおりです。

①「名前をつけて保存」を選択、必要なデータを「マクロ有効ブック (*.xlsm)」形式で保存。

②基本設定で「開発タブ」をリボンに追加。「挿入」→「ボタン」で、必要な位置にボタンを設置。ボタンを押すと「Macro1」が実行されるように設定。ボタンには「医局員配布用プリント」と記しておく。

③医局員の名前を「printmember」というシートのセルA列に列挙 (A1にはタイトルを入れて、データは A2以下)。もし B列にしたいときは、上記プログラムの “A” を “B” に変更。

④配布用資料を「print」というシートに保存。医局員名簿がセル “O3” に印刷されるようにレイアウトを調整する。プログラムの “O3” を書き換えれば、別のセルに表示させることも可能。

⑤実行のため、必要に応じてセキュリティレベルを変更。

勉強したサイトでは、変数が数字になっていたのでプログラム 4行目「As String」が「As Long」になっていました。それを真似したためプログラムが動かず 1時間近く試行錯誤しました。しかし、デバックしたときに ”実行時エラー13” と表示されて,セルからデータがきちんと読み込めていないことがわかり,「セルの内容が文字列だから As Longでは読み込めないのだ」と判明してからは一瞬で解決でした.今回は医局員の名前が変数なので “As String” ですが、数字にしたいときはそれを “As Long” に書き換えればよいということです。

プログラムは、大学 2年生のときに HTMLを覚えて以来でしたが、数行の簡単なプログラムでも、動いた時の感動はたまらないですね。やみつきになりそうです。

それとともに、普段から、こんな難解な言語を書いているプログラマの皆様を尊敬します。

(参考)

定型の用紙に名簿から番号などを読み込み印刷するマクロ

 

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在宅医療と凝固異常症

By , 2012年9月2日 7:54 PM

少し古い話ですが、2011年12月28日の通知で、ヘパリンの自己注射が保険診療で行えることになりました。

この保険適応拡大は、不育症に関してはかなり話題になったようです。神経内科領域だとあまり使う機会はないかなぁと思っていたら、2012年早々、私が往診の手伝いをしている神経内科クリニックで、その恩恵を受けることになった患者さんを経験しました。

患者さんは、Trousseau (トルーソー) 症候群という病気でした。総合病院で働く神経内科医であれば、年に数例見かけることのある病気です。悪性腫瘍にともなって凝固異常を来たし、脳梗塞のような血栓症を繰り返します。余談ですが、1865年にこの病気を発見した Trousseau自身、奇しくもその 2年後に胃がんでこの病気になりました。

Trousseau症候群については、2007年の blood誌の総説によくまとまっています。

Trousseau’s syndrome: multiple definitions and multiple mechanisms

さて、この疾患にかかると、血栓症を繰り返し、予後は非常に不良です。マニアックな話をすると、腫瘍マーカー CA125高値の方が脳梗塞を繰り返しやすいと推測されていますが、循環するムチン物質と関係があるようです。

根本的な治療として、癌を取り除くことができれば良いのですが、それが困難なことがしばしばです。結局、多くの場合「血液をサラサラする薬を使って、血栓症を予防する」ことが治療の中心になります。しかし残念なことに、そのための薬剤はヘパリン注射薬が望ましいとされているため、他の問題をクリアして帰宅出来るようになっても、患者さんはヘパリン注射のためだけに入院継続が必要とされるケースがありました。

ところが、今回ヘパリン製剤を自己注射出来るようになったことで、このような患者さんで自宅での治療が可能になりました。癌患者さんの、「できるだけ自宅で過ごしたい」という希望を叶えるのは非常に大事なことです (厳密には、病院で点滴で用いる未分画ヘパリン製剤と、在宅診療で用いる低分子ヘパリンが全く同等に有効かは議論があります)。

私が勤務するクリニックで治療されていた方は、残念ながら最終的に癌のため亡くなられてしまいましたが、最期は自己注射をしながら自宅で過ごすことが出来ました。保険適応拡大になった直後に患者さんに活かせて、非常に記憶に残る症例でした。

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南相馬にて

By , 2012年8月12日 12:15 PM

大学病院の職を辞して南相馬市立総合病院での勤務を始めた神経内科医小鷹先生の近況が、医療ガバナンス学会に寄稿されていました。考えさせられた言葉、心を動かされる言葉が多くありました。一部引用しますが、是非リンク先を読んでいただきたいと思います。

Vol.507 福島の医療現場から見えてきたもの

離職する看護師の夫は末期癌であった。そして、多発性硬化症の患者の母親は、震災後に自ら命を絶っていた。現状を目の当たりして、私は考えを是正せざるを得なかった。「何かを始めたい」と意気込んでは来たものの、”医療復興”というのは、システムを創造したり、パラダイムを変換したりすることではなかった。

むしろ丁寧に修繕するとか、再度緻密化するとか、改めて体系化するとか、有機的に規模を拡大するとか、人を集めてそれらを繋ぐとか、そういうことが医療の復興であった。

 

Vol.517 福島での意味

そういうことを考えると、世の中というものも「偶然その場に遭遇し、意外にも手を差し伸べることになり、行きがかり上そうなった」という行為の集まりで成 り立って欲しいと願う。「たまたまそこに出くわしてしまったが故に、巻き込まれて、なんだか知らないけどいろいろやってしまった」という、言ってみれば、 そういう合理的でないものに人は動かされるし、意味付けは後からなされるものである。

“意味”とは、ある価値に則った合理性のことだが、意味があることの方が正しくて、そうした価値観でしか物事が動かない世の中よりも、偶然居合わせてしまった状況で、意味を度外視して行動できる世の中の方が、ずっと暮らしやすいような気がする。(略)

医師の私が言うのも気が引けるが、人助けや人命救助なんてものに、さしたる意味など考えない方がいいのかもしれない。意味を超えた行為だから、人はどんな現場でも、それを実行することができるし、理由など考えずに仕事に没頭できるのである。

 

Vol.541 福島で足りないもの

離職する看護師の夫は末期癌であった。そして、多発性硬化症の患者の母親は、震災後に自ら命を絶っていた。
私の想像を遙かに凌駕する凄まじい、あまりにも壮絶な現実があった。苦悩を表に出さない態度の一方で、自暴自棄や抑うつ状態を理解して余りある圧倒的惨劇が、この地には横たわっていた。
私は想いを修正せざるを得なかった。不運に直面する人たちを前に、他人任せで悠長なことを言っていられるのか。この地で起こり得る心身の衰弱に対して、どう反応していけばいいのか。

 

Vol.556 福島での暮らし

勝手な言い方をすれば、福島に限らず社会というものは、そもそも劣悪である。しかし、どれほど劣悪であれ、私たちはその中で生き延びていかなくてはなら ず、その中で社会を再生・構築していくしかない。できることなら誠実に、前向きに、着実に。重要な真実や意義は、むしろそこにある。

 

Vol.565 福島の病院が、初めての研修医を迎えて

私たちの医療には解答がない。だから、正解を学ぶことはできないし、規範を教える術もない。
ここで学ぶことは、もちろん、医療技術を向上させるとか、医学的知識を増幅させるとか、そういうことを目指すことに異論はないが、それよりも”自分は何が できないか”を理解し、自分にできないことは、誰にどのように支援されればそれが達成できるのか。「そういう人に支持されなければ、有効に自分の学びが活 かされることはない」ということを体感することなのである。
一手先、二手先を見据えて「自分にできないこと」と、「自分にできること」とを、きちんとリンケージすることなのである。

 

(関連記事)

被災地の病院へ

 

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自動車保険

By , 2012年6月4日 7:53 AM

神経内科ではてんかんの患者さんを診療する機会が多くあります。今話題の自動車免許の件も避けては通れない問題で、患者さんと話し合うことがしばしばあるのですが、先日の外来で自動車保険について聞かれて、自分の中で盲点になっていたことに気付き、簡単に調べてみました。

てんかんと自動車保険

サイトをご覧頂くと、加入する際の参考になるのではないかと思います。一方で、個々の保険会社名は書いていないですので、加入の際に確認が必要でしょうね。

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