Category: 臨床現場

漢方薬

By , 2012年4月16日 11:43 PM

先日、救急当直中にてんかん発作の患者さんが搬送されてきました。検査をすると、代謝性アルカローシス+低カリウム血症が見つかりました (てんかん発作との因果関係は不明です)。内服薬を確認すると、「甘麦大棗湯エキス顆粒」を飲んでいました。甘麦大棗湯は甘草を 5 g含有しており、漢方薬による偽性アルドステロン症が疑われました。90歳代の患者さんにこの処方は、少し強すぎたのではないかと思います。

個人的には、このほかに他院で処方されていた抑肝散で偽性アルドステロン症の経験があります。抑肝散は認知症の周辺症状に効果があるとされ、治療によく使われています。甘草は 1.5g含有で、比較的偽性アルドステロン症を起こしにくい薬剤ですが、2011年の論文をみると、ここ 10年に 8例くらい論文で報告されているようです。

このように、漢方薬も重篤な副作用を起こすことがあり、正しい知識を持って使わないといけません。そんなことを話していたら、漢方薬に詳しい医師から役立つサイトを教えて頂いたので紹介しておきます。

e-Kampo.com

Post to Twitter


安心させるな?

By , 2009年12月13日 11:19 AM

読んで ムカつく噛みつき評論に、視聴者を安心させないでというエントリーがありました。

 視聴者を安心させないで

「(医師は)健康番組の打ち合わせで、テレビ局側に最初に念を押されたという。
『視聴者を安心させないでください』
不安を覚えた視聴者はチャンネルを切り替えずに番組を注視し、続編を出せば飛びついて見てくれる」

健康番組の翌日は、不安を感じた一般人の受診が多く、外来担当医に負担となることがあります。いつもに比べて「○○が不安」という受診が多いのです。不安症の方の受診ばかりで、実際にその病気の方が受診するのを見たことがありません。症状がないのに、「新型インフルエンザが不安だから検査してくれ」なんてのも似てますね。

もし、上記に書かれた打ち合わせの風景が本当だとすれば、ただ不安をあおるのではなく、きちんと事実を伝えて欲しいものだなと思います。

Post to Twitter


妊娠出産のタイミング

By , 2009年4月18日 7:37 PM

将棋の女流タイトル戦が対局者の出産のため延期となりました。女流棋士ならではですね。

第2期マイナビ女子オープン五番勝負第1局の延期および倉敷対局中止のご報告

更新: 2009年4月14日 19:25

株式会社 毎日コミュニケーションズ、社団法人日本将棋連盟、一般社団法人日本女子プロ将棋協会(LPSA)の三者で共催する女流公式棋戦「第2 期 マイナビ女子オープン」の五番勝負倉敷対局(第1局)として4月17日(金)、岡山県・倉敷市芸文館にて開催を予定しておりましたが、挑戦者 岩根忍女流二段(28歳)の出産予定日が当初より2週間ほど早まり4月21日となりましたことから、岩根女流二段の体調を考慮し、第1局の延期および倉敷での対局を中止することになりましたのでご報告いたします。

本日、岩根女流二段から、「主治医との相談の上、出産日を4月21日に変更することになった」という報告を受け、主催者3 者で倉敷対局での中止を協議、アルスくらしき(倉敷市文化振興財団)の理解と両対局者の同意を得て、正式に倉敷対局を中止することを決定いたしました。第1局は岩根女流二段の出産後、8週間以上の期間をあけての対局となります。

主催者コメントは以下になります。
「出産予定日が当初より早まったことを受け、岩根女流二段には安心して出産できる環境を整えることが最も重要だと判断し、中止の決定をいたしました。今般の変更に伴い、矢内女王には、第1局の対局延期の申し入れに際して、ご快諾いただけましたことを心より感謝いたしております。また、ファンの皆様、関係者の皆様にも直前の延期でご迷惑をお掛けいたしますが、ご理解をいただけますようお願い申し上げます。」

昔、一緒にカルテットを組んでいたチェロの方が、連絡取れないと思ったら妊娠してました (私の子供じゃないです)。身重のまま医師国家試験を受診し、直後に出産したと聞きました。妊娠のタイミングというのは難しいですね。ただ、今回の第 2期マイナビ女子オープンのように、主催者側の理解が得られたのは良かったことだと思います。でも、8週間以上経って対局があった場合、子供はどうするんでしょう?預けるのか対局に連れてくるのか気になるところです。今後の経緯を注目したいです。

現在、後輩医師が 2人同時に妊娠し、その分の人手が手薄になっています。そのせいか、もう 1人の女医が気を遣って妊娠のタイミングを待っているなんて噂を聞きました。デリケートな問題です。

Post to Twitter


マンションの勧誘

By , 2009年4月13日 7:39 AM

勤務中に不動産屋から電話がかかってくることがあります。私が研修医の頃は、勤務先の病院のみならず当直先にもかかってきていました。

大学病院のときには交換台から「○○病院の△△さんから電話です」とかかってきて、電話に出ると「先生、税金対策にマンションはどうでしょうか?」

他院で当直のときには、夜間受付から「当直の先生に」と電話が回されて、電話に出ると「先生、税金対策にマンションはどうですか?」

更に自宅でも、どこで知ったのか携帯電話に「先生、お住まい近くの環七の××というラーメン屋おいしいですよね。ところで税金対策に・・・」

これが診療中か否かにかかわらず週に何回かあり、マンションを買う意思がないこと、迷惑だからかけてこないで欲しいことを何度も伝えたのですが、全然改善されないので邪険に扱ったら、「ぶっ殺すぞ。今からテメーのところ行くからな。」なんて本性を現してきました。

最近は病院側がガードを堅くして取り次がないようにしたので電話はめっきり減り、携帯電話については相手の電話番号を登録して着信拒否にすることでかかってこなくなりました。

私だけかと思ったら、他の複数の医師に聞いても、同じような状態だったようです。脅し方まで(笑)。Bermuda先生もブログで取り上げています(コメント欄も面白いです)。

毒舌ドクターBermudaの三角形な気持ち-マンション-

どうやら関西の不動産屋数社がやっていることのようで、一部上場の会社まであるのですから、世の中わからないものです。こういうのって、ネット検索するとひっかかりますから、不動産会社を選ぶ前には調べた方が良いかも知れません。

Post to Twitter


サクシン

By , 2008年11月20日 6:43 AM

純粋な医療ミスのようです。

解熱剤と間違え筋弛緩剤を投与、70歳男性患者が死亡…徳島

11月19日22時57分配信 読売新聞

徳島県鳴門市の健康保険鳴門病院で、肺気腫の疑いで入院していた男性患者(70)に、抗炎症剤ではなく、誤って名前の似ている筋弛緩(しかん)剤を点滴し、急性薬物中毒で死亡させていたことが19日、わかった。

病院側はミスを認めており、県警は業務上過失致死容疑で調べている。

病院や遺族によると、男性は今月17日夜に容体が急変し、体温が40度近くになった。当直の30歳代の女性医師は、抗炎症剤「サクシゾン」を出そうとしたが、データベースでヒットした筋弛緩剤「サクシン」をサクシゾンと思いこんだ。サクシンを受け取った看護師から「本当にサクシンでいいのですか?」との問い合わせがあったが、医師には「サクシゾン」と聞こえたため、「いいよ」と答えたという。

サクシンは、麻酔時や気管に管を挿入する際などに使用。使用を誤ると、呼吸停止を起こす場合がある。

 
30歳代の医師ですから、サクシンとサクシゾンが違うことを知らないことはあり得ず、コンピューターへの入力ミスだと思います。

電子カルテやオーダーリングシステムでは薬剤の最初の3文字を入れると薬剤の選択肢が表示されるので、「サクシ」と入れたときに誤ってサクシンを選んでしまったのだと思います。サクシンは筋弛緩薬でサクシゾンはステロイドです。

問題はいくつもあります。

①似た名前の薬剤が多い
例えば、抗癌剤のタキソールとタキソテールは電子カルテでは誤って入力される可能性があります。また、βブロッカーのアルマールと血糖降下薬のアマリールは名前が似ています。ややこしい薬名はジェネリック薬品の普及などで薬剤名の急激な増加と相まって、非常に増えています。今回のサクシンとサクシゾンも似てますね。

②危険な薬が簡単に出せる
その場で生命に直結する薬には、薬剤の冒頭に特殊な記号などを入力してからではないと出せないようにするべきです。抗癌剤、血糖降下薬、筋弛緩薬、静脈麻酔薬などが該当すると思います。

③気付いていたのに看護師が投与した
肺気腫の発熱に筋弛緩薬を投与することはありえません。死ぬとわかっていた筈です。医師に確認したそうですが、しつこく食いつくべきです。「どうして筋弛緩をかけるのですか?」とか。

緊張感がないとの指摘がありますが、この問題を精神論で片づけようとする人は、システムについての認識が足りないと思います。ミスというのは、思考のエアポケットやボタンの掛け違いで起こります。緊張感があればミスをしないのであれば、世の中からミスはほぼ駆逐できますが、それができないのが人間です。ミスをしようとしても出来ないシステムの構築こそが重要です。

Post to Twitter


処方日数

By , 2008年5月21日 6:30 AM

外来患者さんから教えて頂いて、その後確認したのですが、4月から睡眠薬は 30日処方出来るようになったのですね。従来は 14日しか処方できなかったのですが、睡眠薬の為だけに来院する方にとっては朗報です。

こうしたルール変更って、変えた側から医師に全然連絡が来ないのですが、何とかならないものでしょうか?知らないままであることが多々あります。要点だけでも、まとめて知る機会があるとありがたいのですが。

 プシコ・メモメモ-睡眠薬の処方日数-

4月以降、診療報酬改定に伴い、処方の日数制限が変わるものが出てくるとのこと。これまで14日までしか処方できなかった薬の殆どが30日分まで処方できるようになります。そこに挙げられていたのが以下の薬。

・トリアゾラム(ハルシオン)
・ゾルピデム(マイスリー)
・ロルメタゼパム(ロラメット)
・ブロチゾラム(レンドルミン)
・フルニトラゼパム(ロヒプノール、サイレース)
・エスタゾラム(ユーロジン)
・ニメタゼパム(エミリン)
・クアゼパム(ドラール)
・フルラゼパム(インスミン、ダルメート、ベノジール)
・ハロキサゾラム(ソメリン)

Post to Twitter


どこまでやるか

By , 2007年11月2日 9:05 PM

ある主訴を抱えた患者が来院したとき・・・。

外来でどこまでの検査をするか、ひとまず悩みます。学会報告レベルの稀な病気まで見逃さないように?そんなことは多分出来ません。でも、万に一つの病気を見抜けなかったことが訴訟になったりします。

そこは、患者と相談して「こういう可能性を考えていて、今日の時点で出来ることはここまで。」と丁寧に話をします。昨日の外来では、看護師に「先生A型でしょ?」と聞かれました。O型ですし、非常にずさんな生活を送っています。部屋なんて廃墟と化していて、他人に見せられないくらい。

でも、丁寧に説明しても、みんながみんな理解出来るとは限りません。

そんな悩みは私だけかと思っていたら、いつもお世話になっているブログで、その問題が議論されていました。

日々是よろずER診療-ただの腸炎のはずが?(2)-
患者が、腹痛を訴えて、時間外診療を受診します。 時間外診療の日常のありふれた光景です。 私たち医療者は、そのありふれた症状の中から、重篤な経過をとりそうな患者かそうでない患者を的確に選別することが期待されています。それがいかに難しいことか! この難しさを、私たち医療者は、もっと社会に伝える必要があると私は常々思っています。 そこで今回のエントリーは、そのことを主テーマに症例を提示します。

この難しさを、理解していない人たちは、 人間がもともと認知の歪として持ち合わせている「後知恵バイアス」という歪に基づいて、ある医療の結果が出たことから、時間を遡って、

「あのとき、前医が

○○○を疑い、△△△をしていれば、 ・・・・・・予見可能性

×××という悪しき結果は、回避できたはずだ。 ・・・・・・・結果回避義務

ところが、前医はそれを行わなかった。

だから、前医には過失がある。」

という批判を、無神経に行ってしまいます。

この言い分は、法律上の過失認定で使われてるロジックで、医療過誤も法律に基づいて行われる以上、裁判官は、たとえ無理やりにでも、この型に、我々の診療を当てはめて、賠償を命じます。異論もあるでしょうが、「前医」の立場に立つことが多い現場の人間の一人として、私は少なくともそう感じています。

一般に、私たち医療者が真摯に考えれば考えるほど、とほうもない数の予見可能性が生じしてしまいます。

例えば、腹痛の女性を、アトランダムに予見可能性を考えてみると・・・・・
ウイルス性腸炎、回腸末端炎、急性虫垂炎、虫垂癌、腸結核、帯状疱疹、大腿ヘルニア、消化管穿孔、悪性リンパ腫、大腸癌、小腸潰瘍、クローン病、O-157による細菌性腸炎、カンピロバクター腸炎、エルシニア腸炎、膀胱炎、腎盂腎炎、アレルギー性腸炎、卵巣出血、月経痛、子宮外妊娠、正常妊娠、卵巣頚捻転、OHSS、腎動脈瘤、腸骨動脈瘤、大動脈解離、腹部大動脈瘤、腹部アンギーナ、上腸間膜動脈閉塞、上腸間膜動脈症候群、スキルス胃がん、膵炎、脾動脈瘤、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸癌、過敏性腸症候群、便秘、尿管結石、急性冠症候群、うつ病、一過性直腸痛、糖尿病性ケトアシドーシス、転換性障害、鉛中毒、砒素中毒、家族性地中海熱、ポルフィリア、サラセミア、FHCS、PID、胆石発作、胆のう炎、肝癌破裂、腹部外傷(DV)、遊離胆嚢の捻転、総胆管結石、尿膜管遺残、大網捻転、腹直筋血腫、内ヘルニアの絞扼性イレウス、腸管異物、膣異物、痔核、胃アニサキス・・・・・・

いかがでしょうか? 事前確率を考慮せずにランダム挙げるとこんな感じです。きりがありません。
はたして、そのすべての予見可能性に、対応することが可能でしょうか?

まったくその通りだと思います。いつも悩んでいる問題です。結局のところ、どうやったってリスクを回避出来ないのだから、臨床をすることは、リスクを背負うことなのだと思います。

このブログの面白い記事に下記のものもあるので、読んでみてください。

日々是よろずER診療-合併症を算数する(続編)-
合併症を発症する確率がpである検査を、1/p回行った場合、

63%の確率で、少なくとも一回は合併症に遭遇する。

(中略)

合併症を発症する確率がpである検査を、5/p回行った場合、

99%の確率で、少なくとも一回は合併症に遭遇する。

Post to Twitter


ビリーズブートキャンプ

By , 2007年8月23日 7:31 AM

はり屋こいしかわ先生から、ビリーズブートキャンプのやりすぎで肋骨骨折した人の話を聞きました。

何事もほどほどに。

Post to Twitter


選挙

By , 2007年7月20日 9:34 PM

昨日の外来。診察中に、患者が「先生は、どこの選挙区ですか?誰に入れるのですか?」と勧誘。

政策の至らぬ点を議論してやろうかとも思いましたが、後ろに大量の患者がまだ待っていたため、

「あはは、私選挙権持ってないんですよ~」

と、丸川アナの真似をして軽く流しました。

普通、診療中に選挙活動するかなぁ?まぁ、一生このような政党にいれることはないけれど。

Post to Twitter


静脈注射

By , 2007年7月16日 7:53 AM

大学病院の特殊性。

看護師が注射をしないというのがあります。民間の病院は大部分看護師が点滴ライン確保、静脈注射しているのですけどね。医師達はどこの大学も同じようなテクニックで、乗り切っているのだなと思いました。

いつか書こうと思っていたネタですけど、ブログで見かけたので紹介します。思っていたこと全部書いてくださっています。コメント欄も読まれることをお薦めします。

NATROMの日記-大学病院の看護師が静脈注射をしない理由-

Post to Twitter


Panorama Theme by Themocracy