Category: 感染症
季節性?
当直をしていて、興味深い症例に遭遇しました。
今年 10月に発熱しインフルエンザ A型陽性であった (と本人が言っていた) 10歳代の患者が、発熱のため私が当直する病院を受診しました。インフルエンザ迅速キットで検査すると、インフルエンザA型陽性。
ひょっとすると、どちらかが季節性で、どちらかが新型だったのかもしれません。
ということは、都内でも新型に隠れて季節性が流行り始めているのかもしれませんね。まぁ、治療は一緒なので、それほど困ってはいませんが・・・。
話は変わりますが、昨日の当直では未だに治癒証明書を求める方が何人もいらっしゃって辟易としました。この証明書、医療機関に負担をかける反面、意味を持たないものです。厚生労働省も文部科学省も意味がないというお達しを出しているのに、学校にはきちんと届いているんでしょうか?
コウモリ
【NBA】スパーズ戦でコウモリ乱入のハプニング
11月1日19時21分配信 ISM
現地31日、サンアントニオ・スパーズ対サクラメント・キングス戦の第1Q終盤に、コウモリが乱入するハプニングが起こった。試合が一時中断したものの、そこでスパーズのマヌ・ジノビリが、AT&Tセンターを飛び交うコウモリを捕まえるなど冷静な対応を見せ、追い払うことに成功した。
このジノビリの対応に、チームメイトのトニー・パーカーは、「信じられない、彼はクレイジーなことをしたね」と驚いていた様子だった。また、このとき会場には米国の人気ヒーロー“バットマン”のテーマが流れ、キングスの選手も、ジノビリに拍手を送ったという。
なお、試合はパーカー、リチャード・ジェファーソンといった主力が20得点以上と活躍したスパーズが、113対94で快勝している。
最終更新:11月1日19時25分
ちょっとした美談のようになっていますが、実は非常に危険な行為だったように思います。なぜなら、アメリカではコウモリが狂犬病の大きな原因になっているからです。狂犬病の場合、発症すれば致死率はほぼ 100%です。
この選手が傷を受けたとは記事に書いてありませんが、細かい傷を受けていないとも言い切れませんので、念のためワクチンやグロブリンなどの治療を受けた方が良いように思いました。
不謹慎
笑ってはいけないのですが、思わず笑ってしまった話です。
新型インフル院内感染対策でサーモグラフィー設置 飯田病院
(2009年10月1日)
飯田市大通の栗山会飯田病院(千葉恭院長)は1日、新型インフルエンザ対策の一環として正面玄関にサーモグラフィーを設置し、発熱している来院者を見分けて個別対応することで院内感染を防ぐ取り組みを始める。県健康づくり支援課は「県内の病院で同様の事例は聞いたことはない」としている。
同病院によると、サーモグラフィーは体の表面の温度が37度を超えるとアラームが鳴るように設定。発熱者はほかの来院者から分かれて待機してもらい、問診や検診によって必要があればインフルエンザの簡易検査を実施する。
同病院は、10月に流行がピークになるとの予測を受けて、熱があることに気付かないで来院する人をチェックするためにサーモグラフィーの導入を決めた。費用は約200万円。院内の感染対策委員会チームリーダーの秋城京子さん(55)は「いち早くキャッチして院内感染を防いでいきたい」と話している。
(提供:信濃毎日新聞)
「感染症診療の原則-37度以上の人をサーモグラフィで識別(長野県)-」というブログのコメント欄にかかれていた一言が、私のツボを刺激しました。以下、コメントを引用します。
>説明書を読むと、『温風や冷風の当たる場所では±3℃変わります』、『暑いまたは冷たい場所から来た場合は20~30分室温に均してから測定下さい』…。
これを玄関に置くんですってね (^^;
肺炎球菌ワクチン
昔、ちらりと「肺炎球菌ワクチンを海外では複数回打てる」という話を紹介しました。
日本でも、ついに打てるようになったそうです。下記の岩田健太郎先生のブログで知りました。ワクチン行政も、一歩前進ですね。
岩田先生のブログでも紹介されている記事を、引用しておきます。
肺炎球菌ワクチンの再接種認める…厚労省
厚生労働省は18日、肺炎の重症化を予防する肺炎球菌ワクチンについて、1回目の接種から5年程度経ていれば再接種を認めることを決めた。
新型インフルエンザに感染した65歳以上の高齢者が重篤な肺炎を併発することを防ぐ効果も期待される。
同ワクチンは従来、再接種すると強い副作用が出るとして、接種は一生に1度とされていた。だが、同ワクチンの効果は5年以上たつと低下する。海外などで4年以上の間隔を置けば、再接種は問題ないとの報告が出され、現在では欧米の多くの国で再接種が認められている。
この日開かれた同省の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会は、5年を目安に一定の間隔があれば、医師の判断で再接種を認めることで合意。同省はインフルエンザワクチンとの同時接種も認めた。
(2009年10月18日21時13分 読売新聞)
ガイドライン(亀田総合病院)
亀田総合病院感染症科のブログに、同院での抗インフルエンザウイルス薬の使用法が載っています(記事の最後に、改訂された使用法へのリンクがあります)。
今にも落ちて来そうな空の下で-当院の抗インフルエンザウィルス薬の使用方法 ポジションステートメントを改訂しました-
その他、亀田メディカルセンターのサイトには、各1ページで読める、同院の感染症診療ガイドラインも掲載されているようです。さすがに量が足りない印象がありますが、研修医が簡単に各論を把握するには丁度良いように思います。
HPVワクチン
昔、知り合いの方が子宮頚癌になり、子宮摘出をしました。女性にとって、子宮を摘出しなければならない悲しみは、筆舌に尽くしがたいと思います。ところが、この癌はある程度まで防げる癌になりつつあります。子宮頚癌は、HPV (ヒトパピローマウイルス) が関与しているとされており、このウイルスに対するワクチンが国内でも、承認されたのです。
HPVワクチンに関する情報は、岩田先生のブログに良く纏まっています。
青木先生のブログでも、過去に度々取り上げられています。
一般の方には、Bermuda先生のブログと、彼が書いた産経新聞の記事が良いかも知れません。
毒舌ドクターBermudaの三角形な気持ち-子宮頚癌ワクチン-
新型インフルエンザ重症例
青木先生のブログの「感染症診療の原則-【IASR速報】 新型H1N1重症肺炎症例の詳細-」というエントリーで知ったのですが、聖路加病院から新型インフルエンザ重症肺炎例の臨床情報が症例報告されています。肺炎の画像も閲覧可能です。臨床医の方は一度覗いてみて下さい。
<速報>急速に呼吸障害が進行した小児のパンデミック(H1N1)2009による重症肺炎症例
押谷教授の講演
methyl先生が、東北大学の押谷教授の講演を聞いてきたらしいです。
先日、東北大学の押谷教授の講演を聴く機会がありました。
汚い字でメモをとったのでふびがあるかもしれませんが、以下に記載します現在、公衆衛生学的には新型インフルエンザによると思われる超過死亡は認められず、死亡率はあまり上昇していない。
罹患率は季節性インフルエンザと同等かやや高い (10~20%)
流行パターンは季節性インフルエンザと異なる部分があり、予測困難
Pandemicと呼ばれる状態は人口の 25-35%が罹患する事態 (日本では 3200万人程度)
大阪・神戸での流行は Pandemicの第一波としては規模が小さい
(ただし、沖縄での流行は第一波としても良い状態。)成田で足止めされた高校生たちの一部で Oseltamivir (タミフル) 投与 5日後もウイルス排出が続いていたため、帰宅できなかった人達が居る。(oseltamivir耐性の可能性)
実は osetamivir,zanamivirを早期に投与しても viral loadは下げないらしい。
(早期投与でも重症化する症例がでそう)
ごく早期ならば重症化を防げるかもしれない。
→これが感染症学会の疑わしきはタミフルの根拠かと・・・。日本では重症症例がすくないようだが・・・・
→積極的な隔離・学校閉鎖等を行い、地域への広がりが防がれたため
(と、いうことは・・・夏休み明けは・・・・)死亡者では重症のウイルス性肺炎+ARDSが生じている。
(季節性インフルエンザよりも下気道で増える性質があるらしい。)
ウイルスの virlenceを高めるような変異は今のところ認められない。日本の症例では発症 1-2日は迅速診断陰性がおおい ( 1日目では 40-60%が陽性)
インフルエンザ脳症の年齢層は季節性インフルエンザよりやや高い。(年は忘れました。)
心筋炎のような症状がでることがある。
発症 2日での死亡例もありEuropean CDC による被害想定
罹患:30% 入院:2% 死亡:0.1~0.2%死亡者・重症患者のリスクとなる疾患は
喘息・高度の肥満・妊娠
20%程度の重症患者では特にリスク無し
中国からの報告では若年患者の2%でレントゲン異常国立国際医療センター 工藤先生
H5N1, swine-flu (S-O IV H1N1; Swine-Original Influenza Virus)H5N1にしても swine fluにしても早期には激しいDAD (ARDS) を生じている。
晩期には耐性菌による肺炎で死亡
→スペイン風邪での記録 (JAMA) と同じ!!
今後、また新しい知見が積み重ねられていくことでしょうが、現時点では、こんな知見があるようです。参考までに。