Category: 医療問題/その他

薬事法違反の疑いがあるインターネットサイト

By , 2014年6月26日 6:15 PM

ネットを巡回していると、医師の処方が必要な薬剤を販売している業者を多く見かけます。

医学的な適応や危険性を認識しないまま素人が購入するのは危険性があるし、そもそも成分が正しい用量入っている保証もありません。

これまでは野放し状態でしたが、厚生労働省が重い腰を上げたようです。メール等で簡単に情報を寄せられるようになっています。

薬事法違反の疑いがあるインターネットサイトの情報をお寄せください(動物用医薬品を除く)

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専門医機構

By , 2014年5月16日 5:22 AM

「日本専門医機構」というのが発足し、日本の専門医制度が大きく変わろうとしています。ところが、この「日本専門医機構」なるもの、理事長が製薬会社の社外取締役のようです。

日本専門医機構理事長が出した「利益相反」に関する「見解」

ただでさえ、ディオバン事件タシグナ騒動CASE-J騒動など、医療業界と製薬業界の癒着が取り沙汰されて襟を正すべき時に、どんな事情があったのか、理解に苦しみます。

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続 アメリカ医療の光と影

By , 2014年5月10日 9:26 PM

いつも楽しみにしていた連載「続 アメリカ医療の光と影」が終了しました。何の前触れもなかったので、どういう事情で終了になったのか気になります。

これまでの連載のいくつかを改めて読みなおしてみて、特に面白かった記事へのリンクを貼っておきます。

米スポーツ界を震撼させる変性脳疾患(1)

医師が患者になるとき

「医療債務」という名の陥穽(1)

Harvard Medical Practice Study  (医療過誤と医療過誤訴訟)

緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(1)

延命治療の中止を巡って(1)

米国医療保険制度改革に向けた「呉越同舟」

先端医療の保険給付(メディケアに学ぶ)(2)  新規抗癌剤の値段

医学的無益(medical futility)をめぐって(1) 評 決

Conflict of Interest(利害の抵触)(2)  裏切られた信頼

Defensive Medicine(防衛医療)

新ミレニアムの医師憲章-連載再開にあたって

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教授解雇

By , 2014年5月6日 10:57 AM

2012年11月に、IgG4関連疾患についての講演を聴いたことを紹介しました。その際、演者の梅原教授から、コメントも頂きました。

その梅原教授が、科研費の不正使用などを理由に金沢医科大学を解雇されました。

金沢医科大 「不正行為」と教授を解雇

(2014年3月25日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】

教授は大学を提訴

金沢医科大(石川県内灘町)は24日、同大の梅原久範教授=血液免疫内科学=を31日付で解雇処分にすると発表した。

大学によると、内部通報を受け、梅原教授や関係者に対し約1年間調査。国の科学研究費(科研費)の使用に関する不正をはじめ、学内諸規則に反する多くの不正行為などが判明したという。

大学側は「処分は綿密な調査で認定された不正事実に基づき行われたもので、公正な判断だと考える」とするが、詳細について「担当者が不在なのでコメントできない」と話した。

梅原教授は本紙の取材に「二十数回にわたる調査の実態は、ほとんどが大学の顧問弁護士による聞き取りだった」と明かし、大学側から裏金の作成や電子カルテ使用に関するIDの不正利用などの疑いがあるとされ、調査を受けたと説明。「1年間説明したのに、最初の嫌疑と調査の結論が何一つ変わっていない」と反論し「不当な解雇。断固として戦う」と述べた。

一方、梅原教授は、国などへの科研費申請を妨害され研究ができなくなったとして、大学と学長を相手取り慰謝料など1100万円の損害賠償を求め金沢地裁に提訴。大学は教授に科研費の不正使用があったため、申請を承認していないと主張している。

納得出来ない梅原教授は逆に大学を訴えることになりました。教授を支援する会もできているようです。

梅原教授を支援する会

この問題の経緯がわからないのでどちらが正しいということはコメントできませんが、こういうゴタゴタで学問に専念すべき人たちが専念できなくなるのは悲しいことです。科研費の不正使用がリークされる時は裏に権力争いが存在する場合があり、単なる不正使用の問題なのか、それとも梅原先生を失脚させようとする人たちが仕組んだことなのか、気になります。不正使用以外に、「多くの不正行為」も同じタイミングで明らかにされているので、後者の可能性の方は無視出来ない気がします。今後の展開を見守りたいです。

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迷走

By , 2014年3月10日 5:58 AM

不適切な CM」というタイトルで、抗インフルエンザ薬について以前書きました。医学的な知識の少ない一般人相手に薬の宣伝をして、必要性に乏しい治療を促しかねないことが問題になりました。

同じ会社が、今度はマスコミ向けに、行ったセミナーが話題になっています。

最も強い薬剤を短期投与‐抗菌薬適正使用でセミナー

竹安氏は、日本では少ないカルバペネム耐性菌が米国や世界で問題になっている原因について、「日本は、最も抗菌力の強いカルバペネム抗菌薬を最初に短期間用いてきたが、米国や中国等では他の薬剤を先に使って同剤を最後に取っておく投与法を採用してきたことにある」と分析。抗菌薬療法のグローバルスタンダードは、「各病院ごとに出現する分離菌の状況、抗菌薬の感受性に従い、最も抗菌力の強い薬剤の短期間使用を地道に行うことにある」と提言した。

医学的知識が乏しいマスコミ相手に、「グローバルスタンダード」という言葉を使ってコンセンサスの得られていない知識を吹き込み、医療従事者がそれに従わないといけない風潮を創り出したいとするのは、医学的知識が乏しい一般人相手に抗インフルエンザ薬の使用を促す CMを流したのと同じ戦略だと思います。本当に科学的根拠があるのなら、素人相手じゃなくて、専門家相手に議論をして欲しいものです。

感染症診療のオピニオン・リーダーである青木先生は、今回のマスコミ向けセミナーを受けて同社主催のセミナーを中止しました。

[事務連絡] 「市中病院でみる世界の感染症セミナー」中止のご挨拶

企業というのは利益を出すために存在すると言っても良いですが、薬剤を売るために非専門家を騙すような広告戦略をとるのはやめて、患者さんにとって最大の利益は何かというのを共に議論できる間柄であってほしいと思います。

(参考)

【雑感】製薬メーカーによるマスコミ向けセミナー

塩野義製薬のマスコミセミナーに対する反応

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HPVワクチン

By , 2014年1月23日 7:57 AM

HPVワクチンの後に見られた副反応に対する評価、妥当な判断だと思います。

子宮頸がんワクチン、心身の反応が慢性化-安全性判断は次回へ、副反応検討部会

医療介護CBニュース 1月20日(月)22時11分配信

子宮頸がんワクチン、心身の反応が慢性化-安全性判断は次回へ、副反応検討部会

接種後の重い副反応が相次ぎ報告されている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)に関し、厚生科学審議会の検討部会は20日、慢性的な痛みといった副反応症例について、接種に伴う痛みや緊張などが身体の不調として現われた「心身の反応」の慢性化したものとする評価をまとめた。ワクチンの安全性については、次回会合で最終的に議論することとし、昨年6月以来中止している接種勧奨を再開するかどうかの判断も持ち越された。【烏美紀子】

この日の部会では、これまでの論点を整理した。副反応として報告されている症例が、▽接種から発症までの期間や症状の持続期間が一定していない▽リハビリや心のケアにより改善している症例もある-などの特徴から、接種後の局所の疼痛などが「心身の反応」を引き起こし、慢性の疼痛や運動障害として現われたと考えられると評価した。その場合、接種後1か月以上経過してからの発症は、接種との因果関係に乏しいなどとし、「身体的アプローチと心理的アプローチの双方を用いた治療」が重要だとした。

神経システムの異常による疾患や薬剤による中毒症状、免疫反応による可能性は、「これまでの知見からは考えにくい」とした。また、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの診断が付いている症例とワクチンとの因果関係は否定した。

この日の議論を基に報告書案をまとめ、次回会合で最終的な議論を行う予定。

私はこのワクチンの副反応を起こした方を実際に診たことはありません。しかし随分前に、ニュースである被害者の映像を見たことが印象に残っています。両下肢の不随意運動という訴えだったのですが、映像を見ると「不随意運動としては一般に見られないタイプの運動である」「肢位によって運動の周波数が変化する」「随意運動の最中には不随意運動が消失する」など、心因性 (いわゆるヒステリー) を疑わせる証拠がいくつかありました。その方の場合は、母親に疾病利得もありそうでした。こういう患者さんは神経内科医の診察を受けるべきだとブログに書こうかと思ったのですが、どのニュースかわかると個人が特定出来る状況だったので、当時は触れませんでした。

このように被害を訴える方の中には、心因性の要素の強そうな方が混ざっているのは事実だと思います。今回の副反応部会の結論は、「心身の反応」という表現でそこに言及しており、心因性としての治療のチャンスを逃さないためにも、評価出来るものだと思います。 (今回は心因性の症状についてのみ書きましたが、もし器質的な障害を伴う副反応が存在するならば、そこはそこで議論が必要です)

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不適切な CM

By , 2014年1月16日 5:46 PM

最近、テレビ CMを見て不愉快な思いをしました。シオノギ製薬が行っているインフルエンザの CMです。

シオノギ製薬 CM

薬局で売っている薬ならともかく、病院で使用される薬剤についてテレビCMを行うのは変です。なぜなら、このような薬剤を使用するかどうかは、医師が医学的根拠に基づいて決定すべきことだからです。感染症の知識に乏しい一般人が誤解するような CMを行うことは、有害と言えます (医学的に必要ない薬剤を、患者さんが必要あると思い込んでいる時、しばしば不信感を持たれます。また、説得にも長い時間を要します)。この CMは医療関係者の間で批判が高まっており、いくつかのサイトでわかりやすく解説されているので紹介しておきます。

不誠実な製薬会社の宣伝キャンペーン

塩野義製薬のインフルエンザの啓蒙CM・サイトについて

年末から医療従事者の間でひどいと話題になっていた塩野義製薬の抗インフルエンザ薬のCMについて

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まだ1万人

By , 2013年6月21日 10:06 AM

感染症診療の原則 -歴史に残る暴言 もしくは 救いの言葉か-」で知ったのですが、厚生労働大臣から「風疹はまだ 1万人」との言葉が発せられたそうです。

ことしの風疹患者数、1万102人に 厚労相は財政支援に否定的

国立感染症研究所は18日午前、2013年に入ってからの風疹の患者数が、あわせて1万102人に達したと発表した。
ワクチン接種に、国の財政支援を求める声が上がる中、田村厚生労働相が18日朝、財政支援に否定的な考えを示した。
国立感染症研究所によると、風疹患者数は、2013年に入り、あわせて1万102人に達した。
患者数のおよそ8割は男性で、その多くを20~40代が占める状況は変わらない。
こうした中、17日夕方、妊娠中に風疹にかかり、子どもに障害が出た母親らが厚生労働省に要望書を提出した。
「先天性風疹症候群」の子どもを持つ西村 麻依子さんは「風疹の流行を食い止め赤ちゃんを守るために、国の積極的な対応を求めます」と話した。
要望では、風疹を予防接種法に基づき、国などが費用を負担する「臨時接種」の対象とすることや、必要なワクチンの量の確保などを求めている。
理化学研究所の加藤茂孝氏は「1万人も患者を出したということを世界から危惧されていて、(拡大防止には)集団接種、つまり臨時接種以外にはあり得ない」と話した。
要望に対し、18日朝、田村厚生労働相は「(臨時接種とは)緊急時のパンデミック(世界的大流行)のおそれがあるものに対してという話で、なかなか風疹がそのような状況ではない。なかなか財政的措置をして、ほかの予防接種疾病と(比べ)、特別な対応ということころまでは来ていない。風疹は、まだ1万人ということでございますので」と述べた。
また、このままいけば、ワクチンが不足する可能性があるが、その場合、厚生労働省は、妊娠を予定している女性や、その同居人などを優先的な予防接種の対象にする方針。

そして、この発言を受け、 複数の医師達が大臣に抗議メールを送ったそうです (一例はこちら)。風疹はただ罹患して終わりなのではなくて、先天性風疹症候群のリスクになることを考えると、この流行は看過できませんよね。厚生労働大臣がこんな認識では・・・と思います。

先天性風疹症候群とは

免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風疹症候群 (CRS)と総称される障がいを引き起こすことがある。(略)

母親が顕性感染した妊娠月別のCRS の発生頻度は、妊娠1 カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度である。成人でも15%程度不顕性感染があるので、母親が無症状であってもCRS は発生し得る。(略)
臨床症状 
CRS の3 大症状は先天性心疾患、難聴、白内障(図3)である。このうち、先天性心疾患と白内障は妊娠初期3 カ月以内の母親の感染で発生するが、難聴は初期3 カ月のみならず、次の3 カ月の感染でも出現する。しかも、高度難聴であることが多い。3 大症状以外には、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球など多岐にわたる。
(補足)
風疹予防接種啓発動画の記事で、2013年6月21日に追記しました。

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TPPと医療

By , 2013年3月22日 8:55 AM

安倍首相が TPPへの参加を正式に表明しました。

安倍首相、TPP交渉参加を表明=「経済全体にプラス」―農業の競争力強化に全力

時事通信 3月15日(金)18時3分配信

安倍晋三首相は15日夕、首相官邸で記者会見し、米国やオーストラリアなど11カ国が参加している環太平洋連携協定(TPP)について「交渉に参加する決断をした」と正式に表明した。首相は「今がラストチャンスだ。このチャンスを逃すと世界のルール作りから取り残される」と述べるとともに、「全ての関税をゼロとした場合でも、わが国経済全体としてプラスの効果がある」と強調。また「あらゆる努力で日本の農を守り、食を守ることを誓う」と訴え、参加への理解を求めた。
日本の参加は、米議会の承認手続きに90日程度かかることに加え、先行参加国が7月の交渉会合開催を検討していることから、早くても7月以降になる見通し。先行国は10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた会合での合意を目指しており、コメなど関税撤廃の例外品目確保に向けた調整や、自動車や保険などをめぐる米国との協議が焦点となる。
首相は会見で、交渉参加を決断した理由について「世界経済の約3分の1を占める大きな経済圏が生まれつつある。韓国やアジアの新興国が次々と開放経済へと転換していて、日本だけが内向きになってしまっては成長の可能性もない」と説明した。
また、「経済的な相互依存関係を深めていくことは、わが国の安全保障にとっても、またアジア太平洋地域の安定にも大きく寄与する」と指摘。経済・軍事双方で台頭する中国を念頭に、同盟国の米国はじめ、民主主義や基本的人権などの価値観を共有する参加国との連携が日本の安全保障環境に資すると語り、「交渉参加はまさに国家百年の計だ」と断じた。
TPPに加盟した場合、影響が予想される農業分野に関しては「攻めの政策により、競争力を高め、輸出を拡大し、成長産業にする」と表明した。

TPPは、別の見方をすれば「中国包囲網」です。露骨に領土拡大を主張する中国の脅威に対抗するには、参加する以外の選択肢はなかったと思います。

ほとんど報道はされませんが、われわれ医療従事者が懸念するのは、”金持ちしかまともな医療を受けられない” アメリカの医療政策が輸入されるとどうなるかという点です。最近、李啓充先生が興味深い連載をしていました。マサチューセッツ州では、皆保険制度導入後に医療費抑制政策が始まり、状況が変わりつつあるようです。

 最終回 (連載第 11回) にまとめがあります。

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第241回

「最先端」医療費抑制策 マサチューセッツ州の試み(11)

「医療費抑制法」のポイント

ここまで10回にわたって,2006年の「皆保険制」実施後,マサチューセッツ州で医療費抑制の気運が高まった経緯を紹介した。2012年8月に同州が成立させた「医療費抑制法」はその「集大成」ともいうべきものであったが,以下に同法の内容を概観する(ポイントとなる語句を下線で示した)。

1)医療費の伸びを州総生産額(gross state product:GSP)に連動させ,2013-17年はGSPの伸び以下,2018-2022年はGSPの伸びより0.5%低く,2023年以降は再びGSPの伸び以下に抑える。
2)低所得者用公的保険(メディケイド)・州職員用保険等,州が管轄する医療保険について「出来高払い」に代わる支払い制度を導入する。
3)ケアの統合と,予防,プライマリ・ケアへのアクセスを改善するためにACO(註1)設立を推進し,州が運営する医療保険においてはACOとの契約を優先する
4)医療費動向の監視:「医療政策委員会」を設立,医療費動向および新たに導入される医療サービス供給体制・支払い制度について統監させる。
5)供給者間の価格差について報告する特別委員会を設立する。
6)医療費抑制目標値が達成できなかった医療施設に対する罰則:改善計画の提出・実施を義務付けるとともに,50万ドル以下の罰金を科すことを可能とする。
7)通常のケアについて医療施設ごとのデータをオンラインで公開,価格・質についての透明性を高める
8)医療過誤訴訟コスト軽減:乱訴を防止するために182日間の「冷却期間」を設けるとともに,医療側の謝罪は法廷で証拠扱いしない。
9)経営難病院救済用に1億3500万ドルの基金を設立する。
10)3000万ドルの予算で「eHealth Institute」を創設し,電子カルテ普及を促進する。
11)6000万ドルの予算で健康増進活動を推進するとともに,職場における健康増進活動を実施した企業に対する減税措置を講じる。
12)新法実施費用の「当事者」負担:保険会社から1億6500万ドル,大病院から6000万ドルを徴収,新法実施の費用とする。

(略)

そもそもの問題は市場原理主義にあり

以上,11回にわたって,マサチューセッツ州で医療費抑制法が成立するまでの「ドタバタ」を概観したが,同州で診療報酬が高騰したり,病院間の診療報酬格差が拡大したりした根本の原因は,1992年に,「公的機関が診療報酬を決めることを止め,診療報酬は保険会社と医療機関が個別交渉で自由に決める」とする「規制緩和」を実施したことにあった。「市場原理を導入すれば価格は下がるはずだ」とする前提の下での規制緩和であったが,もくろみとは反対にマサチューセッツ州で医療費が高騰し続けたことはここまで何度も述べた通りである。換言すると,マサチューセッツ州がこの間一所懸命取り組んできた「無保険者の問題」も「診療報酬高騰の問題」も,医療を「民(=市場原理)」に委ねたことが根本の原因だったのであり,社会にしっかりした「公」の保険が存在しさえすれば起こるはずのなかった問題だったのである。

(略)

いったい,いつになったら,「医療ほど市場原理に不向きなものはない」ことがわかってもらえるのだろうか

私は現在の日本の医療制度はアメリカとくらべて優れたものであると思っています。TPP参加によりアメリカ型の医療制度が持ち込まれることで、日本の医療制度が破綻する可能性を危惧していましたが、どうやら最近のアメリカの医療政策は日本のそれに近づいてきているようです。かつてアメリカのような酷い医療制度が持ち込まれる可能性は低いのかもしれません。

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Kyoto Heart Study

By , 2013年3月6日 7:49 AM

2012年末~2013年初旬にかけて、バルサルタン (商品名ディオバン) に関する臨床研究 “Kyoto Heart Study” についての論文が立て続けに撤回されました。

Journal retracts two papers by Japanese cardiologist under investigation

Study of blood pressure drug valsartan retracted

日本循環器学会は京都府立医大に調査を依頼したようですが、大学側は 3教授による内部調査のみで済ませたようです。3教授にしてみても、他科の教授のクビを切ることになる報告書を作れるわけないですよね・・・。玉虫色の調査結果となりました。

しかし、このスキャンダルは一般紙でも取り上げられることになりました。

降圧剤論文撤回:学会が再調査要請 京都府立医大に不信

毎日新聞 2013年02月20日 15時00分

京都府立医大のチームによる降圧剤「バルサルタン」に関する臨床試験の論文3本が、「重大な問題がある」との指摘を受け撤回された問題で、日本循環器学会が吉川敏一・同大学長に対し再調査を求めていたことが20日分かった。大学側は今年1月、捏造(ねつぞう)などの不正を否定する調査結果を学会に出していたが、学会は納得せず不信感を抱いている。

問題になっているのは松原弘明教授(55)が責任著者を務め、09〜12年に日欧の2学会誌に掲載された3論文。患者約3000人で血圧を下げる効果などが確かめられたとする内容だ。昨年末、3本中2本を掲載した日本循環器学会が「深刻な誤りが多数ある」として撤回を決めるとともに、学長に事実関係を調査するよう依頼した。

しかし大学は調査委員会を作らず、学内の3教授に調査を指示。「心拍数など計12件にデータの間違いがあったが、論文の結論に影響を及ぼさない」との見解を学会に報告し、松原研究室のホームページにも同じ内容の声明文を掲載した。

学会はこれに対し、永井良三代表理事と下川宏明・編集委員長の連名で2月15日付の書面を吉川学長に郵送した。(1)調査委員会を設け、詳細で公正な調査をする(2)結論が出るまで、松原教授の声明文をホームページから削除する−−ことを要請している。

毎日新聞の取材に、学会側は「あまりにもデータ解析のミスが多く、医学論文として成立していないうえ、調査期間も短い。大学の社会的責任が問われる」と説明。大学は「対応を今後検討したい」とコメントを出した。

バルサルタンの薬の売り上げは薬価ベースで年1000億円以上。多くの高血圧患者が服用している。【河内敏康、八田浩輔】

騒ぎが大きくなったためか、最終的には、責任者の教授は辞任に追い込まれました。

京都府立医大:責任著者の教授、辞職へ 降圧剤論文撤回で

毎日新聞 2013年02月28日 02時30分

京都府立医大のチームによる降圧剤「バルサルタン」に関する臨床試験の論文3本が、「重大な問題がある」との指摘を受けて撤回された問題で27日、論文の責任著者の松原弘明教授(55)が大学側に月末での辞職を申し出、受理されたことが大学への取材で分かった。松原教授は大学に対し、「大学や関係者に迷惑をかけた」と説明したという。

大学によると、辞職申し出は2月下旬。大学を所管する府公立大学法人が受理した。

問題になっているのは、09〜12年に日欧2学会誌に掲載された3論文。血圧を下げる効果に加え、脳卒中のリスクを下げる効果もあるかなどを約3000人の患者で検証した。

3論文のうちの2本を掲載した日本循環器学会は昨年末、「深刻な誤りが多数ある」として撤回を決め、吉川敏一学長に調査を依頼。これに対し、大学は学内3教授による「予備調査」で、捏造(ねつぞう)などの不正を否定する結果を学会に報告した。その後、学会は再調査を求めており、大学は「対応を検討中」としている。【八田浩輔】

ここにきてやっと、京都府立医大は 3月 1日付けで調査本部を設置しました。

「Kyoto Heart Study」に係る研究発表論文に関する対応について

 本学大学院医学研究科の研究グループが実施した臨床研究「Kyoto Heart Study」の発表論文に係る学会誌からの撤回案件につきましては、次のとおり対応することとしましたので、お知らせします。
  なお、本学の研究活動につきましては、今後とも、なお一層、研究者の行動規範等の徹底を図っていくこととします。
 1  本学研究者が行う研究活動の「知の品質管理」を常に行うことにより、本学の研究活動の質を確保するために、学長を本部長とする「京都府立医科大学研究活動に関する品質管理推進本部」を平成25年3月1日付けで設置したこと。
  具体的な取組内容
   (1)研究活動の質を確保するための支援
   (2)研究活動上の不正を防止するための指導、啓発
   (3)研究論文内容の精査力向上のための研修、支援 など
 2 「京都府立医科大学研究活動に関する品質管理推進本部」の中に「Kyoto Heart Study精度検証チーム」(外部の有識者を含む6~7名程度のチーム員で構成)を早急に設置し、「Kyoto Heart Study」の臨床研究の精度の検証を行うこととしたこと。

多くの患者さんたちが研究に協力してくれていたのに、この医師たちはどういう気持でずさんなデータ処理をしていたのでしょうか?そればかりでなく、医師は臨床研究の結果が記された論文を治療の根拠にするため、誤った論文はそのまま患者さんの不利益になります。

こうなった以上は、(場合によっては生データを開示して) 何が問題だったか徹底的に膿を出してほしいものです。もしここで中途半端な報告が出ると、「京都府立医大の臨床研究は、こんな杜撰にやっても咎められない環境で行われているのか」と周囲から見られることになります。

責任者の教授は、論文不正ではなくデータの解析ミスを主張していますが、彼は過去に研究不正の疑惑が取りざたされており、信憑性に欠けます (最近さらに別の論文が撤回されています)。本当に不正がなかったか追求する必要があります。

もっとも、今回の研究に関しては、研究結果が医師の実感や欧米での研究と解離 (ARBにそこまでの脳卒中予防効果はない) していたため、勘の良い医師たちは信じていなかったのも事実です。この問題が話題になる前に、既に論文に問題があることを指摘していた人もいます。

余談ですが、バルサルタンには他にも怪しげな研究があり、かなり手厳しい批判がされています。では悪い薬かというとそういう訳ではありません。脳卒中予防において、一番大事なのは、血圧を下げることです。副作用なく血圧を下げられれば、とりあえずの目標達成といえます (ただし、どこまで下げれば良いかには諸説あり、最近ではあまりにも下げすぎるのは逆に良くないともされています)。バルサルタンは、そういう意味では優れた薬剤です。しかし、その上で同系統の薬剤に対する優位性を出すには、血圧を下げるプラスアルファの効果 (pleiotropic effect) が大事になります。”Kyoto Heart Study” はこういう状況下で、背伸びをした結果を出そうとして、おそらくデータを都合よく解釈してしまったのでしょう。普通は、あまりに常識から離れたデータが出たら、データを疑って解析し直してみるものだとは思いますけれど、そのまま発表されたのには、恣意的な何かがあったのかもしれません。

今回の件が研究の不正だったかどうかは今後の調査結果を待つ必要がありますが、研究不正についてノーベル賞学者の野依良治先生の論文を元に、安西祐一郎氏が素晴らしい文章を書いていますので、是非御覧ください。

科学研究の目的はトップジャーナルに論文を載せることなのか?

その他、研究不正について書かれたいくつかのリンクを貼っておきます。

医学論文の捏造

Vol.128 論文捏造疑惑

研究不正が起きる根本原因について

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