Category: 医療問題/その他

小児科

By , 2009年10月25日 6:18 PM

先日、東京近郊の医療崩壊地域で当直をしていました。私が当直に行っている病院は、小児科医を守るため、12歳以上は小児も内科医が診ています。

そこへ、小児救急の患者が直接来院しました。神経疾患の疑いが強かったので、幸いなことにすぐに診断がつきました (おそらくMELASの初発 (ないしは2回目) 発作)。

入院が必要なので、近隣に電話をかけ始めたのですが、小児専門病院は 15分かけ続けても「ただいま回線が混み合っております。もうしばらくお待ちください」のメッセージが延々と流れるのみ。おそらくインフルエンザの問い合わせの対応でパンクしているのだと思います。小児科を有する基幹病院 2件も、「インフルエンザ以外の入院は受けられない」とのこと。病棟にインフルエンザ患者がたくさんいて、院内感染の可能性が高いからでしょうかね。そのほか、大学病院 1件断られ、大学病院 2件目で受け入れ可能でした。ただでさえ小児科はリソース不足なのに、インフルエンザが追い打ちをかけています。

医療に関して「無駄を省く」という大号令の元、予備能が全くなくなってしまうと、今回のようにインフルエンザなどで過度の負荷がかかった事態に搬送先を探すのが困難となるのは、目に見えています。不幸な事件が起きないと良いのですけれど。

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小さな政府、大きな政府

By , 2009年10月17日 8:10 AM

小さな政府、大きな政府という議論があります。

財政赤字が拡大している中、政府をスリム化しようというのが小泉構造改革とされています。ところが、李啓充先生の分析を見ると、国際的にも小さな政府の方が国民負担が大きいことがわかります。そして、必ずしも上手くいっているわけではなさそうです。

 緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(5)

「国民負担率」がどれだけ misleadingな言葉であるかを4回にわたって論じてきたが,ここまでの議論を以下にまとめる。

1)国民負担率は個々の国民の実際の負担を反映しない:国民負担率が日本よりも小さい国(たとえばアメリカ)の国民負担は日本よりも極端に重いし,逆に,国民負担率が日本よりもはるかに大きい国(たとえばフランス・スウェーデンなど)の国民負担は,日本とそれほど変わらない。
2)国民負担率が大きい国で国民負担が重くならない最大の理由は,事業主が手厚く社会保障費を負担していることにあり,先進諸国の実情を見る限り,「小さな政府」は,実際的には「国民の負担が重く,事業主負担は軽い国」と同義と言ってよい。

小さな政府と大きな政府のどちらが良いかという議論は別にして、急にどちらか一方に舵を切れば、その反動は大きいように思います。民主党がどんな党で、今後どんな失政を起こす可能性があるかは別として、今回民主党が政権をとり、福祉などの充実に大きな予算を当てているのは、小泉改革の反動であると言えます (民主党が急激に大きな政府を目指せば、またその反動は来るかも知れません)。

小さな政府、大きな政府の議論には、医療費の話が大きく関わってきますが、下記の李啓充先生のコラム (計 8回) を読むと、増大する医療費をどう捉えていけば良いか、とても参考になります。

緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(1)

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格差社会の不健康

By , 2009年10月8日 7:31 AM

 <貧困率>政府として調査する方針固める 長妻厚生労働相

10月5日0時54分配信 毎日新聞

長妻昭厚生労働相は4日、山井和則厚労政務官と協議し、格差問題の解決に本格的に取り組むため、国民の「貧困率」を政府として調査する方針を固めた。5日にも担当部局に対し、全国的なデータ収集と貧困率の削減目標設定を指示する。山井政務官が4日夜、NHKのテレビ番組で明らかにした。

貧困率とは、全国民の平均的な年収の半分に満たない人の割合とされるが、政府は正式な指標として算出していない。06年に経済協力開発機構(OECD)の発表したリポートで日本の貧困率が先進国中、米国に次ぐ2位という悪い結果となり、貧困問題に取り組むNPO(非営利組織)などが政府に調査を求めていた。民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)に「貧困の実態調査を行い、対策を講じる」と明記している。【佐藤丈一】

格差社会というのが問題となって久しくなりますが、李啓充先生が 6話連続で書いているコラムが面白かったので、紹介しておきます。

続 アメリカ医療の光と影  第128回 格差社会の不健康(1)

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百い巨塔

By , 2009年9月24日 7:00 AM

Bermuda先生のブログ「毒舌ドクターBermudaの三角形な気持ち-最近最も感動した出来事-」で知ったサイトの話です。

百い巨塔

このサイトの「ライブラリ 2006-07」のフラッシュ・ムービーはなかなか面白いです。

産科医療の悲惨な状況こうした替え歌で表現するセンスには脱帽です。

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当直制度

By , 2009年4月17日 7:42 AM

医師の当直 (宿直)は、ほとんどの施設で違法のまま運営されています。すなわち、夜間数回の巡回程度の勤務で睡眠が確保されていることでのみ労働基準監督署から宿直許可が下りているものの、実際には時間を問わない救急対応が主な仕事です。一方で、救急を受け入れられなくて叩かれるところを見ると、世間からは上記に定義される当直ではなく、一般勤務として見られているようです。法的には、当直で救急患者に対応することにはなっていないのですが、救急患者に対応するため交代勤務性が組める病院はほとんどありません。大学病院でもそうです。

このような実態に光が当てられようとしています。とはいっても、本当に正しく運営することになると、夜間に救急医療を行える病院は都内でもかなり減ることになるでしょうし、数人の医師で医療を支えている地域では不可能です。どこかで落としどころを見つけるにしても、患者からの医療機関へのアクセスは、さらに悪化する可能性があります。

難しい議論なのですが、舛添厚生労働大臣が意欲を示している旨があるブログに記されていました。パンドラの箱になるのではないかと言われています。下記サイトを紹介しておきます。

産科医療のこれから-勤務医の宿直についての議論 梅村聡議員 in 参議院厚生労働委員会(>▽<)!!!

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ポーランドを知るための60章

By , 2008年10月2日 11:46 PM

「ポーランドを知るための60章 (渡辺克義編著・明石書店)」を読み終えました。

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不確実性

By , 2008年9月3日 7:21 AM

今週の東洋経済は、「『不確実性』の経済学入門」でした。経済学は、「取引を行う/行わない」、「どの程度の取引を行う」など、人の行動が根本にあるためか、心理学的側面が非常に強いように思います。

生物学における多くの現象は正規分布に従うのに対し、経済現象はベキ分布に従い、平均に意味を持たないというのは興味深いことです。経済の専門家の予想が多くの場合外れるのは、標準的なファイナンス理論が正規分布を前提に理論を構築していますが、現実世界で問題になるのは、こうした理論を外れた異常値なわけです。サブプライムローンも金融市場に大影響を与えましたが、これまでの理論では予想できない”異常”でしたものね。

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長寿国

By , 2008年8月2日 11:09 AM

平均寿命が更に延びているようです。

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NHKスペシャル

By , 2008年6月15日 9:40 PM

今、NHKスペシャルで中国の医療について特集しています。驚きの連続です。

救急車は自腹。病院に着いたらすぐに、料金が請求されます(放送された事例では2100円)。それを払って診察室に入ると、今度は看護師が診察料を請求します。医療は現金と引き換えで、前金が鉄則です。未払いを防ぐためなのだそうです。

また、救急車を呼ばない場合、診察には診察券が必要で、診察券を買うのに2日間並ばなければなりません。病気であっても徹夜で並ぶのです。周辺にはダフ屋がいて、診察券を20倍(200円→4500円)の値段で売っています。

中国は医療費無料政策が廃止されたため、医療費が払えないせいで、必要な患者の半数しか病院を受診できません。脳梗塞で入院した、ある老人は、年収の2倍の医療費がかかったため、途中で治療を断念しました。入院患者について、取材した病院の一番安い部屋(部屋代450円)では、暖房もありませんでした。

農村部では貧困が問題になっていて、番組で取り上げられた男性は、年収15万円でした。数万円の医療費が工面出来ない場合も多いようです。また、治療のために多額の借金を背負うことになる場合も少なくありません。

一方で、高度な医療を希望して、都市部の病院に患者が殺到しています。都市部にはVIP病院があり、金持ち相手の高度医療を行っています。民間病院の参入もはじまりました。民間病院は、国の許可がなくても医療機器を導入出来、医師の数も規定より増やせるので、進んだ医療が行えます。1つのビジネスです。

激流中国
病人大行列 ~13億人の医療~

市場経済化が加速する中国で、今、政府自ら、最も取り組まねばならない課題としているのが「医療」問題である。激流中国では、北京の大型病院に密着し、その現実を浮き彫りにする。

私たちが取材した公立病院には、連日、全国から大勢の患者が押し寄せる。診察を受けるのは二日がかり、徹夜で並ばなければならない。なぜそうまでしなければ、診察を受けられないのか?医療制度はどうなっているのか?

かつて中国は、国家が医療費を負担し、医療サービスは無料だった。しかし制度の見直しで、利用者負担へと変わり、保険制度の整備も遅れているため、医療費が患者に重くのしかかるようになった。一般の人々が病院に行くのは、いよいよ症状が悪化してからで、地方の病院等ではとても手に負えず、こうした大型病院で診てもらうしか手がないのだ。しかも医療費が、患者家族にとって“破産する”ほど高額となるケースも頻繁に起きている。一方、制度見直しによって、病院は独立採算となり、優れた医師や医療設備を導入し、大勢の患者を集めることのできる病院だけが生き残れるようになっている。

こうした“医療格差”がますます拡大する中、患者家族、そして病院、「それぞれ」をつぶさに記録した。

再放送予定は、「2008年6月17日(火) 深夜 【水曜午前】0時55分~1時44分 総合」です。是非、ご覧下さい。カルチャー・ショックですよ。印象としては、金持ちのみが良い医療を受けられる、アメリカ型医療に似ている気がしました。

四川大地震って、こんな貧弱な医療基盤の中、起きたのですね。

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割り箸訴訟

By , 2008年2月21日 7:25 AM

最近、裁判所の判例を載せたサイトを定期的にチェックしています。

裁判所判例Watch

2月19日に割り箸事件の判決文がアップされていました。

個人的には、来院時にどのような手立てを打ったとしても救命は困難だったと思いますし、割り箸の発見も困難です。結局「綿菓子を加えたまま歩かない」事に尽きると思います。医師の責任を問うより、周囲の大人の責任こそ問われるべきではないでしょうか。原告の要求を棄却した裁判所の判決は妥当な様に感じました。

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