哀しい色やね
私が毎日チェックするブログ、「産婦人科残酷物語Ⅱ」で、ある日「哀しい色やね」というエントリがありました。涙がこみ上げるような内容でした。
その後、読売新聞から取材があったとブログに書かれていました。
4月30日の読売新聞を購入し、社会面での新連載「医の現場」で記事を確認出来ました。勤務医開業つれづれ日記-「医の現場 疲弊する勤務医 (1)「医師逮捕」心キレた」 産婦人科残酷物語 Ⅱ-で、記事について詳しく知ることが出来ます。
私が毎日チェックするブログ、「産婦人科残酷物語Ⅱ」で、ある日「哀しい色やね」というエントリがありました。涙がこみ上げるような内容でした。
その後、読売新聞から取材があったとブログに書かれていました。
4月30日の読売新聞を購入し、社会面での新連載「医の現場」で記事を確認出来ました。勤務医開業つれづれ日記-「医の現場 疲弊する勤務医 (1)「医師逮捕」心キレた」 産婦人科残酷物語 Ⅱ-で、記事について詳しく知ることが出来ます。
言葉もありません。
昨年4月、日本大学医学部(東京都板橋区)の付属病院で研修期間中に自殺した埼玉県内の女性(当時26歳)に対し、池袋労働基準監督署が今年2月に労災を認定していたことが16日、わかった。
2004年に国が新しい臨床研修制度を導入してから、研修医の過労自殺が明らかになるのは初めて。新制度は、従来の劣悪な労働条件の改善などを目指してできたものだったが、女性は法定労働時間を大きく超えて勤務しており、依然として研修医の過酷な労働実態があることを浮き彫りにしている。
女性の父親(58)によると、別の大学出身の女性は05年3月に医師免許を取得し、同4月から、都内に3か所ある日大医学部付属病院で順次、研修を始めた。
しかし、女性は、同9月ごろから疲労感を訴えてうつ状態となり、06年4月下旬、自宅で筋弛緩(しかん)薬や鎮静薬を自ら注射し、死亡した。
父親が給与明細などで調べたところ、1週間の平均労働時間は、法定労働時間(週40時間)を大幅に超える72・8時間で、夜間や休日の当直は多い時で月に10回、1年間で計77回に上っていた。このため、父親は「娘の自殺は研修中の過重な労働が原因」として、06年8月に池袋労基署に労災を申請。同労基署は労災と認定し、今年2月、遺族に通知した。厚生労働省によると、「新制度スタート後の過労自殺は聞いたことがない」という。
(中略)
ただ、日大側からは明確な回答がないといい、遺族側代理人の朝倉正幸弁護士は「大学が反省しなければ再発防止につながらず、大変問題だ」と指摘している。
日大医学部庶務課は「個人情報なのでコメントできない」としている。(読売新聞)
(参考)
・基発第 0319007号-医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について
–
当直医の負担を減らすために、夜間の診療制限を始める病院が出てきています。素直に評価出来ます。
病院は公共施設なのだから、24時間診療するべきだという意見があるのはわかります。しかし、医師数が足りていない現実があります。医師は昼働いて、夜当直して、次の日の昼働いていて、何とか病院が持っているのが現状です。夜間に患者が殺到すれば、数時間の仮眠すらとれずに翌日の診療を行わざるを得ません。こうした条件での作業効率の低下は、飲酒と同レベルだという報告があります。もちろん労働基準法違反です。
24時間診療にこだわり、交代勤務を導入するためには、8時間交代としても、医師数を現在の相当数増やす必要があります。また、事務、薬剤師、検査技師等も 24時間体制にすると、人件費で病院が倒産します。医療費の著しい国民負担増加を受け入れられるのなら、医学部の定員を増やし、15年後くらいには実現出来るかもしれません。
ちなみに、アメリカでは、受診に際して診療予約をとる必要があり、だいたい予約が取れるのに数日かかるため、風邪での受診はあまりしないようです。医療費が高いというのもありますが。
伊関友伸のブログ-急患医療:“お気軽受診”の市外患者増え「診察を断る場合も」--大崎市 /宮城-
大崎市は同市医師会に委託し平日夜間と土曜午後・夜間に行っている急患医療で、市外の患者が増えていることから、栗原、美里、加美など隣接6市町に「医療機関の状況によっては診察を断ることもある」などと文書で申し入れた。病院の適切な利用を住民に啓発するよう求めている。急患医療は旧古川市以来12年目。市の単独事業で年間1億円を負担し、古川地域の8病院が週1・5回の割合で担当。隣接市町は無負担。
制度が知れわたるとともに、ちょっとした風邪でも「夜間の方が空いている」といったお気軽受診が市内外問わず増え、実質徹夜して翌日勤務に就く医療スタッフの心身を蝕(むしば)んでいるという。
(参考) アメリカの医療 (風邪の診療)
・アメリカと日本の医療システムの違い
・アメリカ事情 from Mitsuko
最初は怒りがこみ上げましたが、その後何とも言えない嫌な気分になりました。
小児科医の過労死事件に対して、東京地裁は「空き時間に横になれば、体を休めることはできた。過労にはあたらず、自殺と業務との因果関係は認められない」との判決を下しました。
過労死した医師の99年3月の勤務時間は、勤務医開業つれづれ日記-【速報】 一転、 医師自殺は過労死と言えない…遺族の訴え退ける判決-によれば、宿直8回、休日出勤6回、24時間以上の連続勤務が7回、休日は月に2日とのことでした(医師の宿直には代休はなく、連続して通常勤務です)。
このくらいの労働をしている医師は他にも多いと思います。短期間であり、かつ自分である程度労働強度の調整が出来るのであれば、耐えられるでしょうが、いつまで続くかわからない中、強制された労働であれば、耐え難いものであると思います。一生この生活が続くのかと思うと、鬱的になる気持ちもわかる気がします。
それにしても、この労働環境に対して、「空き時間に横になれば、体を休めることはできた」とは良く言えたものです。小児科は特に夜間の患者数が多く、日によっては内科の倍の患者が当直帯に受診します。横になる時間があるかも疑問ですし、数十分横になれたから疲れが取れるものでもありません。
最悪のパターン、昼働いて、夜当直して、翌日も勤務して、やっと家に帰ったら、また病院に呼び出されということも時々あります(その翌日が更に当直だと死にますね)。
上記のサイトをみた、多くの医師が、コメント欄に「心が折れた」と記しています。これが過労と認可されないのであれば、自分の身は自分で守るしかなくなってしまいますね。
医師の遺書の最後の言葉です。
間もなく21世紀を迎えます。
経済大国日本の首都で行われているあまりに貧弱な小児医療。
不十分な人員と陳腐化した設備のもとで行われている、
その名に値しない(その場しのぎの)救急・災害医療。
この閉塞感の中で私には医師という職業を続けていく気力も体力もありません。
2007年3月18日に日本医師会が打った新聞広告。いささか遅すぎた感もありますが・・・。
今、日本の産婦人科・産科の半分は、 お産を受け入れられない、という事実があります。
地域の産科が、次々と閉鎖に追い込まれています。
それにより、将来50万人の「お産難民」が発生する可能性があります。「休日・夜間急患センター」を訪れる救急患者の50%以上は、 赤ちゃんや子どもたちです。
しかし、夜間に子どもを連れて行っても小児科医がいない、 という事態が今、全国各地で起きています。こうした問題の要因として考えられるのは、
まず、地方と都市部において、
医師数に格差が生じていること。
さらに、日本は人口1,000人当たりの医師数が、
先進国中、最も少ない国であること、
などがあげられます。国は、5年後の平成24年3月末までに、
全国に現在38万床ある「長期療養者のためのベッド」を、
半分以下の15万床まで削減する方針を打ち出しています。それにより、退院を余儀なくされる「医療難民」が、2万人。
在宅や施設での受け入れすら困難な「介護難民」が、4万人。
計6万人の「難民」が発生するおそれがあります。WHOから「健康達成度世界一」と評価されてきた日本の医療は、 今や、崩壊に向かっています。
この国の医療が抱える危機を、乗り越えるためのタイムリミットは、刻々と近づいています。
あなたとともに私たち日本医師会は、医療の崩壊を食い止めたい。
医療の未来を守っていきたいのです。
あなたの声を、ぜひ、私たちにください。
私たちは、みなさんのご意見を、国に訴えかけてまいります。
奈良県の産科19病院転送不能事件で、最後に受け入れることが出来た病院は「国立循環器病センター (国循)」です。日本の循環器領域では最高峰として存在し、世界的に見てもトップレベルの実力を持つ病院です。
ここの循環器外科集中治療室 (ICU) を担当する医師5名が全員辞表を提出しました。彼らは、年間 1100人の超重症患者を 5名で管理していたそうです。文字通り不眠不休だったのでしょう。
今後は、執刀した外科チームがそれぞれ ICU管理をするそうですが、執刀した上に、更に重症管理などという激務に耐えられないかもしれません。彼らがやめたら、循環器外科医のいない病院となり、循環器内科も機能しなくなります。大新聞のトップを飾るような大ニュースだと思います。マスコミが取り上げないのが、不思議なことです。
(参考)
・勤務医開業つれづれ日記-【速報】春の大嵐 大阪 国循センター ICU医師全員退職へ 執刀との分業困難–
・勤務医開業つれづれ日記-国循ICU …「庶務課長は『診療機能の低下はなく、患者への影響はない』と話している。 」…-
・勤務医開業つれづれ日記-国循ICUショックから一夜 国循自体が循環不全とは…-
1年前に、誰がこのことを想像したでしょうか?
福島大野病院の産科医逮捕事件は、産科崩壊、ひいては医療崩壊を顕在化させる結果となりました。その後、奈良の産科搬送19病院拒否、堀病院内診問題など、個々の医師の犠牲でかろうじて成り立っているところに、更に追い打ちをかける問題が繰り返し報道されています。元々限界一杯であった現場では、それを教訓にした改善が行われるべくもなく、ただ崩壊の進行を早めただけです。このようなやり方では、医療が改善しない、むしろ滅びることに早く気づいた方が良いと思います。
「我々は福島事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します」
Yosyan先生のブログから拡がった運動です。
(参考)
・勤務医開業つれづれ日記
・新小児科医のつぶやき
・ある産婦人科医のひとりごと
医療費、医療崩壊問題を一気に問題を社会的現象に広めた立役者の一人が、「医療崩壊」を執筆した小松医師です。
「ある町医者の診療日記」では、その小松医師と本田医師の講演会で使用されたファイルがアップロードされていました。
ある町医者の診療日記-日本の医療が崩壊している-からダウンロード可能です。
奈良県南部地域で、ついに産科が絶滅したそうです。
ある産婦人科医のひとりごと-奈良南部の病院、産科ゼロ 妊婦死亡、町立大淀も休診へ (産経新聞)-
大淀病院は、脳出血を合併した妊婦の搬送先がなく、19病院で拒否などとセンセーショナルに報道された病院です。しかし、問題となったのは、マンパワーを含めたゆとりない運営によってどの病院も超重症患者の搬送を受け入れられない状況にあったためと考えられ、当事者の産科医を責めても何の解決にもなりません。医療システムの問題です。
常勤医は、週3回以上の宿直(医師の宿/当直は36時間連続勤務ですし、代休はありません)など、地域の産科医療を身を粉にして、支えてきた方であったと思いますが、あげくの果てに(医師から見てもほとんど過失がないのに)事故報道ですから、産科医を続ける意欲はなくなったでしょうね。彼を最後に、地域から産科医がいなくなったのは、「最後の武士」という言葉を連想させます。
上記のブログに書かれていた文章を紹介します。
「たとえ理想には程遠い不十分な医療施設であろうとも、何も無いよりははるかにましだということに、世の中の人々が早く気付く必要があると思います。」
低コストで、高い医療水準を保っている日本の医療が、崩壊してきています。その崩壊も目に見える形として、いくつかの地域で噴出するようになりました。
今後は医療制度として、「低コストで低い医療水準」を選ぶか、「高コストで高い医療水準」を維持するか、「払った金に応じた水準の医療」を受けられるようになるのか、どの方向かに進むのでしょう。安倍政権の印象では、最後の選択肢の可能性が他よりやや高いかもしれません。
今後、奈良県南部地域では、産科に限って言えば、医療事故は0になります。「人がやることだから絶対にミスはある。それを前提に議論しないといけない。ミスをなくすには医療行為をしないこと。そういうわけにいかないから、システムを・・・」などという冗談から始まる講義を聞いたことがありましたが、冗談ではなくなってしまいました。今、神奈川県でも大量のお産難民が発生し、千葉県まで搬送するのもしばしばのようです。
まだ、くだらない医者叩きバラエティー番組をみて笑っていて大丈夫でしょうか?この地域の問題だけではないと思います。もっと建設的な議論をしなければ・・・。
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