Category: 医学一般
朽ちていった命
「朽ちていった命 -被曝治療 83日間の記録- (NHK「東海村臨界事故」取材班、新潮文庫)」を読み終えました。涙なしでは読めない本でした。
この本は東海村での臨界事故をテーマにしています。ずさんな放射性物質管理が公然と行われる中で、大内久氏は初めての作業を上司から指示された通りに行い、チェレンコフ光を見ました。それは目の前で臨界事故が起きたことを意味しました。
事故翌日に行われた緊急被曝医療ネットワーク会議では議事録が残っていませんが、メモには 8 Svという文字が見られます。本書には、そこからの大内氏の闘病生活が詳細に描かれています。眼を見張るのが、ズタズタに引き裂かれた染色体の写真です。治療班は末梢血造血幹細胞移植を施し、移植細胞は生着しましたが、最終的には血球貪食症候群が全てを無に帰しました。また、ズタズタに引き裂かれた染色体から容易に推測出来る通り、脱落していく皮膚の再生は望むべくもありませんでいた。本書には見るも無残な皮膚の写真が掲載されています。彼の死後、司法解剖がなされました。筋線維のほとんどない筋病理の写真が印象的でした。彼のように、一瞬で染色体がズタズタに引き裂かれるような大量被曝をすると、現代医療では全く歯が立たないことがよく分かります。
この本は、放射線の恐ろしさを教えてくれるとともに、助かる見込みのない命に対して我々がどのように接するべきかを考えさせます。医学的な記載が非常にしっかりしているので医療従事者が読んでも違和感がありませんし、医学的知識がなくても読めるように書かれています。是非多くの人に読んでいただきたいです。
最後に、知り合いの先生からこの症例について記された論文・抄録を教えて頂いたので、紹介しておきます。
・2.東海村放射線高線量被曝事故における緊急被爆医療ネットワークの役割
ステロイドと骨粗鬆症
神経疾患でステロイドを使う症例は結構あります。現在の私の外来でも、視神経脊髄炎 (NMO), 重症筋無力症、慢性炎症性多発根神経炎 (CIDP), Neuro-Sweet disease, Churg-Strauss症候群などの患者さんにステロイドの長期投与をしています。このようにステロイド投与をしている患者さんでは、投与後 3ヶ月以内に骨密度の減少が始まり、6ヶ月後ではその減少はピークに達します。そのため、骨粗鬆症対策が大事になってきます。しかし、神経内科医の間では、ステロイド性骨粗鬆症に対して議論になることは少ないのが現状なのではないかと思います。
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011年版」を紐解くと、116~117ページに「ステロイド性骨粗鬆症」の記載があり、「2010年現在,わが国では「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2004年度版」が用いられており」とされますが、2004年のガイドラインではやや古い感は否めず、実際に新薬の開発に伴い薬物療法も変化してきています。
最近、アメリカリウマチ学会のガイドラインを読む機会があったのですが、非常にためになりました。無料でアクセスできて、内容もそれほど長くないのが素晴らしいところです。
American College of Rheumatology 2010 Recommendations for the Prevention and Treatment of Glucocorticoid-Induced Osteoporosis
JENNIFER M. GROSSMAN,1 REBECCA GORDON,2 VEENA K. RANGANATH,1 CHAD DEAL,3
LIRON CAPLAN,4 WEILING CHEN,1 JEFFREY R. CURTIS,5 DANIEL E. FURST,1 MAUREEN MCMAHON,1
NIVEDITA M. PATKAR,5 ELIZABETH VOLKMANN,1 AND KENNETH G. SAAG5
Arthritis Care & Research
Vol. 62, No. 11, November 2010, pp 1515–1526
DOI 10.1002/acr.20295
© 2010, American College of Rheumatology
このガイドラインの冒頭には、ガイドラインは絶対的なものではなく、個々の患者さんに応じて治療を決めるように、といった内容が書かれています。ガイドラインの立場を表した、非常に大事な文章だと思います (これを読むと、ガイドラインを訴訟の道具にすべきではありませんね)。
Guidelines and recommendations developed and/or endorsed by the American College of Rheumatology (ACR) are intended
to provide guidance for particular patterns of practice and not to dictate the care of a particular patient. The ACR
considers adherence to these guidelines and recommendations to be voluntary, with the ultimate determination regarding
their application to be made by the physician in light of each patient’s individual circumstances. Guidelines and recommendations
are intended to promote beneficial or desirable outcomes but cannot guarantee any specific outcome. Guidelines
and recommendations developed or endorsed by the ACR are subject to periodic revision as warranted by the evolution
of medical knowledge, technology, and practice.
以下、簡単に内容を紹介します。
①ステロイドを開始するときは、カルシウムとビタミン Dを補充することが推奨される。
Calcium and vitamin D supplementation counseling was recommended for all patients beginning glucocorticoid therapy. Vitamin D supplementation to achieve “therapeutic” levels of 25-hydroxyvitamin D, or dosages of 800–1,000 IU/day are 2 target dosing regimens; however, glucocorticoids can interfere with vitamin D absorption and may necessitate a higher supplementation dose to achieve therapeutic levels (97).
②閉経後女性、50歳以上の男性にステロイドを開始するときは、FRAXにより骨折リスクを評価して、治療を決定する。
・FRAXのサイトは下記。サイト上部にある「計算ツール」タブから、患者の人種を選べる (骨折リスクには人種差がある)。
FRAX
・ FRAXによる 10年間の骨折確率から、骨折リスクを ” ≦10% low risk, 10~20% medium risk, 20% < high risk” とする。
・下記フローチャートに則り、治療を決定する。
※薬物名に関しては次の通り
alendronate: フォサマック、ボナロン, risedronate: ベネット、アクトネル, teriparatide フォルテオ, zoledronic acid: ゾメタ (※ゾメタは、日本においては骨粗鬆症では保険適応外。内分泌学会から要望が出されたが却下された模様)
③閉経前女性および 50歳未満の男性にステロイドを開始するときは、下記フローチャートに従う。
SCIWORA
最近、外傷後の頸髄損傷の方を診療する機会がありました。珍しいことに、その患者さんは明らかに両上肢の筋力低下があるにも関わらず、頚髄 MRIでは脊柱管狭窄も髄内異常信号もありませんでした。念のため針筋電図を検査すると、軽度の神経原性変化がみられ、神経再支配が始まったばかりと解釈すると損傷からの時期 (2~3週間) と一致する所見でした。神経伝導検査では障害部位に一致して CMAP amplitudeの低下がありました。病歴や電気生理検査の所見を踏まえると、脊髄損傷が神経症状の原因であることは明らかです。MRIで異常がないことが矛盾しないのか少し調べてみると、2ヶ月くらい前に面白い論文が出ていました (というか、知り合いの整形外科の先生から教えて頂きました)。
Early magnetic resonance imaging in spinal cord injury without radiological abnormality in adults: a retrospective study.
J Trauma Acute Care Surg. 2013 Mar;74(3):845-8. doi: 10.1097/TA.0b013e31828272e9.
Boese CK, Nerlich M, Klein SM, Wirries A, Ruchholtz S, Lechler P.Source
Department of Trauma, University Hospital Giessen and Marburg, Marburg, Germany.Abstract
BACKGROUND:
The purpose of this study was to describe the clinical and imaging characteristics of patients experiencing blunt spinal trauma without radiological abnormalities but transient or persistent neurological deficits.
METHODS:
This retrospective study analyzed plain radiographs, computed tomographic scans, and magnetic resonance images of patients with spinal cord injury without radiological abnormality (SCIWORA) who were admitted to a Level I trauma center. Neurologic status, Frankel grade, and short-term patient outcome were assessed.
RESULTS:
Of 1,604 patients experiencing blunt spinal trauma, 21 (12 men and 9 women) with a mean age of 35.5 years (range, 16.2-70.9 years) presented with a clinicoradiographic mismatch. Magnetic resonance imaging (MRI) was available in 15 patients. In seven patients (46.6%), MRI revealed either neural (n = 2, 13.3%) or extraneural (n = 5, 33.3%) spinal abnormalities. Importantly, in eight patients (53.3%), no spinal abnormalities were visible on MRI. Furthermore, subgroup analysis revealed no prognostic value regarding the presence or absence of detectable spinal injuries.
CONCLUSION:
Spinal abnormalities were not detected on MRI in a substantial proportion of patients presenting with SCIWORA. The prognostic value of MRI findings in SCIWORA needs to be validated by future studies.
LEVEL OF EVIDENCE:
Epidemiological study, level V.
2005~2011年にレベル1外傷センターで鈍的脊髄外傷と診断された1604例を対象としました。神経学的所見を有するものの、X線及び単純 CTで脊髄損傷を示唆する所見がない患者 (SCIWORA) は 21例 (男性 12例、女性 9例, 16.2~20.9歳 (平均 35.5歳)) で、交通外傷が 10例、スポーツ外傷が 7例、転倒が 4例でした。21例のうち 15例で、24時間以内に全脊髄 MRI (1.5T) を施行したところ、8例では異常がなく (real SCIWORA)、2例では脊髄に異常所見があり、5例では脊髄以外に異常所見がありました。退院時、MRIで異常がなかった 8例のうち 5例は完全に改善しましたが、3例で神経学的後遺症が残りました。脊髄に浮腫性変化が検出された 2例では、1例が完全に回復し、残りの 1例では一時的な感覚障害のみが見られました。頸椎椎間板に変性があるものの脊柱管狭窄や神経圧迫の所見がなかった 5例では、3例で完全に改善しましたが、残りの 2例では回復が不完全でした。MRIを施行しなかった 6例では、24時間以内に完全に神経学的な改善がありました。
神経内科では外傷を診療する経験は少ないですが、「MRIで異常がないから外傷による神経障害は考えにくくて、他の神経疾患がないか診て欲しい」という依頼を受けることはあり、MRI正常の脊髄損傷は存在しうるという論文を知っておく価値は高いのかなと思いました。
アニサキス
徳田安春先生達が、BMJ case reports誌に面白い論文を投稿されています。アニサキスの症例報告なのですが、何と駆除する際の動画が付いています。エルガー作曲の威風堂々が BGMとして使われており、素晴らしい出来栄えです。是非御覧ください (2013年7月18日現在無料で視聴できます)。
Endoscopic capture of Anisakis larva (a video demonstration)
アニサキスは救急当直をしているとたまに診療する機会があって、消化器科の先生に胃カメラを御願いすることがあるのですが、こんな感じで駆虫するんですね。
ミトコンドリア置換、臨床応用に向けて
2013年2月19日のブログで生まれてくる赤ちゃんからミトコンドリア病の遺伝子を排除出来る方法があることをお伝えしました。2013年1月31日の Natureに掲載された紡錘体移植の論文です。イギリスでは、臨床応用に向けて着々に進んでいるようです。今年末に草案が作られ、早ければ 2年以内に手続きが制定されると BBCが報じています。
UK government backs three-person IVF
The UK looks set to become the first country to allow the creation of babies using DNA from three people, after the government backed the IVF technique.
It will produce draft regulations later this year and the procedure could be offered within two years.
Experts say three-person IVF could eliminate debilitating and potentially fatal mitochondrial diseases that are passed on from mother to child.
(略)
‘Designer baby’
“It is a disaster that the decision to cross the line that will eventually lead to a eugenic designer baby market should be taken on the basis of an utterly biased and inadequate consultation.”
One of the main concerns raised in the HFEA’s public consultation was of a “slippery slope” which could lead to other forms of genetic modification.
Draft regulations will be produced this year with a final version expected to be debated and voted on in Parliament during 2014.
(略)
ミトコンドリア病を持つ方にとっては朗報です。日本でこのような治療が出来るようになるのはいつになるのでしょうか。
まだ1万人
「感染症診療の原則 -歴史に残る暴言 もしくは 救いの言葉か-」で知ったのですが、厚生労働大臣から「風疹はまだ 1万人」との言葉が発せられたそうです。
ことしの風疹患者数、1万102人に 厚労相は財政支援に否定的
国立感染症研究所は18日午前、2013年に入ってからの風疹の患者数が、あわせて1万102人に達したと発表した。
ワクチン接種に、国の財政支援を求める声が上がる中、田村厚生労働相が18日朝、財政支援に否定的な考えを示した。
国立感染症研究所によると、風疹患者数は、2013年に入り、あわせて1万102人に達した。
患者数のおよそ8割は男性で、その多くを20~40代が占める状況は変わらない。
こうした中、17日夕方、妊娠中に風疹にかかり、子どもに障害が出た母親らが厚生労働省に要望書を提出した。
「先天性風疹症候群」の子どもを持つ西村 麻依子さんは「風疹の流行を食い止め赤ちゃんを守るために、国の積極的な対応を求めます」と話した。
要望では、風疹を予防接種法に基づき、国などが費用を負担する「臨時接種」の対象とすることや、必要なワクチンの量の確保などを求めている。
理化学研究所の加藤茂孝氏は「1万人も患者を出したということを世界から危惧されていて、(拡大防止には)集団接種、つまり臨時接種以外にはあり得ない」と話した。
要望に対し、18日朝、田村厚生労働相は「(臨時接種とは)緊急時のパンデミック(世界的大流行)のおそれがあるものに対してという話で、なかなか風疹がそのような状況ではない。なかなか財政的措置をして、ほかの予防接種疾病と(比べ)、特別な対応ということころまでは来ていない。風疹は、まだ1万人ということでございますので」と述べた。
また、このままいけば、ワクチンが不足する可能性があるが、その場合、厚生労働省は、妊娠を予定している女性や、その同居人などを優先的な予防接種の対象にする方針。
先天性風疹症候群とは
免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風疹症候群 (CRS)と総称される障がいを引き起こすことがある。(略)
母親が顕性感染した妊娠月別のCRS の発生頻度は、妊娠1 カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度である。成人でも15%程度不顕性感染があるので、母親が無症状であってもCRS は発生し得る。(略)臨床症状
CRS の3 大症状は先天性心疾患、難聴、白内障(図3)である。このうち、先天性心疾患と白内障は妊娠初期3 カ月以内の母親の感染で発生するが、難聴は初期3 カ月のみならず、次の3 カ月の感染でも出現する。しかも、高度難聴であることが多い。3 大症状以外には、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球など多岐にわたる。
風疹予防接種啓発動画
少し前から、風疹の流行がニュースになっています。特に妊婦が感染すると、胎児が多奇形を伴う先天性風疹症候群に罹患するリスクがあります。
プライマリ・ケア連合学会が、風疹予防接種啓発動画を作成しました。演者は、秋田での当直などプライマリ・ケアを中心とした場面で私が普段から色々相談させて頂いてる守屋章成先生です。現在ホットな話題ですので是非御覧ください。微妙な関西訛りが良い味出しています (^^;
日本プライマリ・ケア連合学会
ワクチンに関するワーキンググループ
風疹予防接種啓発動画 前半 後半
※この動画は医療従事者向けです。
—
2013.6.21追記
この動画の発表と同じタイミングで、ワクチン不足が明らかになったそうです。
風疹ワクチン、夏に不足の可能性…流行が影響
妊婦がかかると胎児に障害が出る恐れのある風疹が流行している中、厚生労働省は14日、風疹のワクチンが夏に不足する可能性があるとして、妊婦の周りの人や妊娠希望者らが優先して接種を受けられるよう、全国の自治体に通知した。
大人が受ける風疹の任意接種の接種者数は、例年は年にのべ約30万人だが、流行を受けて今年5月は1か月でのべ約32万人に上った。同省は、現在の在庫数やメーカーの出荷計画などから今後の在庫数を推計した。
その結果、6~9月に月にのべ35万人が接種した場合、1人の接種回数を一定程度の免疫を獲得できるとされる1回とすると、8月末に3万1700人分、9月末に1万8200人分が不足するとみられた。
(2013年6月15日 読売新聞)
ということで、プラクティスを変える必要があります。岩田健太郎先生が書かれているブログが参考になります。当面はこのような方法をとるしかないのではないかと思います。
(今なら)MRワクチンは1回だけでよい
風疹ワクチン不足については、こちらの記事も御参照ください。
平成のワクチン行政、最大のピンチの夜(という電報、いやメールが)
ACP日本支部年次総会 2013
ACP日本支部年次総会 2013に行って来ました。製薬会社が一切タッチしない手作りの学会運営で、内容も素晴らしく、とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。
5月24日 (金)
外来を終えて京都へ。22時頃 methyl先生と合流してまず京都国際ホテルにチェックイン。オステリア・エ・バールに食事に出かけました。深夜まで空いていたので助かりました。
5月25日 (土)
「臨床推論ケースカンファレンス~~綜合内科医の思考プロセスを探る~」 徳田安春
症例は、化膿性関節炎→敗血症性ショック+DKA→意識消失→交通外傷。小出しに集まる情報を元に、小グループでディスカッションしながら診断を進めていきました。小グループに学生がいて、学生の頃から勉強に来て意識が高いなと思いました。といいつつ、一緒のグループの研修医が可愛かったことが私にとっての一番の関心事だったのですが・・・ (^^;
Tipsとして、最近では糖尿病ベースの group G streptococcus感染症を診断することが多い、関節炎は 6Kと覚えると良い・・・というのがありました。
急性の 3K:化膿性 (細菌、ウイルス、真菌)、結晶誘発性 (痛風、偽痛風), 血腫 (関節内骨折、血友病などの出血傾向)
慢性の 3K:膠原病 (SLE), 関節リウマチ, 血清反応陰性 (ライター症候群、強直性脊椎炎、ベーチェット病、炎症性腸疾患)
講義が終わった後、桿状核球、分葉核球を知らない高齢の先生に、隣の席の医師が丁寧に教えてあげていて、アットホームな雰囲気を感じました。
“Snap diagnosis” Hiroshi Sudo
全て英語での講演。最初に、”The art of medicine is observation” というオスラーの言葉が紹介されました。爪についての話が多かったです。爪については、「爪 -基礎から臨床まで」という本が詳しいそうです。
1. Spoon nail: iron deficient anemia
2. Terry’s nail: hepatic cirrhosis, “Ground glass” like nail bed, no lunula
3. Lidsay nail: chronic kidney disease
4. Bean’s line: severe systemic disease (severe infection, myocardiac infarction), history of chemotherapy
5. Osler’s node, Roth spot, petechia, Janeway lesion, etc: peripheral stigma of endocarditis
6. Palmar crease pallor: shock vital
7. conjunctival rim pallor: anemia, sensitivity 10%, specificity 99%, LR +16.7
8. severe anemia looks like icterus.
9. asterixis: ≒metabolic encephalitis, CO2上昇でも出現しうる。baseline PaCO2 + 15 torr以上の CO2貯留で出現しうる。
10. Look at Jugular veneous wave: クラシカルには胸骨前面 (angle of Louis) より頸静脈を 5 cm挙上して怒張しているかどうか
11. Tachycardia: 鎖骨上部で拍動が見える (NEJM, 1998)
12. Goiter/Hyperthyroidemia: 喉を横から見て、正常では線状、goiterがあると前方に凸。
13. Hypothyroid speech:「 調子の悪い酔った人が風邪にかかり口の中にスモモを含んでの声を調子の悪い蓄音機で聴くような・・・」
14. Delayed ankle reflex (hypo thyroid, sensitive), Brisk ankle reflex (hyper thyroid, specific)
15. 血糖値チェックの針跡: endocarditisの peripheral stigmaと間違えないように
16. Auscultatory percussion of the bladder
17. Visible peristalsis: small bowel obstruction
18. “Sippu” indication most painful area: 湿布は患者さんが最も痛い場所を教えてくれる
19. ズボン膝部が破れている/汚れている: sudden loss of consciousness→cardiac syncope
20. 尿の色 (確か、ダ・ヴィンチのカルテに載っていたような尿の色調からの鑑別)
須藤先生の turning pointは、”on the bedside teaching” という論文だったそうです。あと、Sapiraの「身体診察のアートとサイエンス」はお薦めです。
「綜合内科医が知っておくべき膠原病診療のピットフォール~身体診察から鑑別疾患まで」 高杉潔
高杉先生の講談のように “聞かせる” 講演。関節所見の取り方は、高杉先生が作った DVDが入手可能なので、中外製薬の MRに聞くと良いそうです。Tocilizumabの治験で、診察所見の標準化をする時に作ったもの。以下、個々の関節について。
1. 頚椎: 口の中に指を入れて、硬口蓋に沿って示指先を伸ばせば自然に環椎の前結節に突き当たる筈。ただし患者さんにやるときは要マウスピース (噛まれないように)
2. 顎関節: 顎関節発症 RAは非常に稀。でもとても痛い。
3. 輪状披裂関節
4. 肩関節: 肩峰下・三角筋下滑液包の炎症が多い。hanging down stretchが有用。またbiceps long headの腱鞘炎も多い。
5. 肘関節: ① dimpleの触診大事。②肘頭滑液包炎, ③olecranon bursitisは肘をつくと起こる。関節との交通はない。④テニス肘、ゴルフ肘はステロイドを使わなくても、手で強く圧迫すると良くなる。阻血性?
6. 手関節: ①de Quervain diseaseは APL/EPBの腱鞘炎, ②MCP/PIP関節の腫脹は視診で確認可能なことが多い。
7. 股関節: 内旋運動が障害される
8. 膝関節: ①鵞足炎 (Anserine Bursitisは盲点になりやすい), ②膝窩部も診る, ③ Hamstringsの拘縮で歩容がおかしくなることがあり、ストレッチすると良くなる
9. 足関節:①Chopart’s joint, Lisfranc jointは部位を知っていれば正面から触れる, ②MTP 罹患頻度が極めて高い
次いで、岸本暢将先生、萩野昇先生による症例提示。サルコイドーシス、PANと紛らわしかった結核性動脈瘤, PMR (PMRの 15%は赤沈正常), 掌蹠膿疱症など。
血管炎の国際分類が変わったことなども話題にのぼりました (2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides)。
講演が終わってから、夜のレセプションまで京都大学周辺を散策しました。レセプションでは、研修医時代にお世話になった先生 (今ではすっかり大御所) に会うことが出来て話し込みました。終わってからは、6名くらいで佳久に移動して飲み直しました。ACP日本支部年次総会で講演される先生が何名かいて、濃い飲み会でした。
5月26日(日)
「臨床研究デザインの指標~研究デザイン 7つのステップ~」 栗田宜明, 福間真悟, 渡邉 崇
「臨床研究の道標(みちしるべ)―7つのステップで学ぶ研究デザイン」という本とほぼ同じ内容。小グループでリサーチクエスチョンを実際に研究デザインしてみて、やってみるといかに難しいかよく分かりました。知識より、それが収穫でした。
「膠原病の検査の見方~乱れ打ちは今日からやめよう!~」 萩野昇, 岸本暢将
流れるような講義でした。いくつか備忘録としてメモしたのが下記。でも、一覧表をさっと示された時とかメモが取れませんでした。やっぱり乱れ打ちはしちゃいそうです (-_-;)
・抗核抗体の検査法としては Immunofluorescenceが最も優れている。EIAは勧められない。
・抗核抗体のパターンによって、対応する疾患が異なる
・中年女性の 1/4が抗核抗体陽性になる (健常人で 1:40が 32%, 1:80が 13%, 1:320が 3%)
・抗核抗体陽性のときは、抗ds-DNA抗体、抗RNP抗体, 抗Sm抗体, 抗SS-A抗体, 抗SS-B抗体をチェック。
・抗核抗体陰性のときは、抗 ds-DNA抗体は必ず陰性。抗SS-A抗体, 抗SS-B抗体陽性は時として存在する。
・抗Sm抗体はだいたい抗 U1-RNP抗体と共に陽性となる、抗SS-B抗体はだいたい抗 SS-A抗体と共に陽性となる。
・1987年の関節リウマチ (RA) 分類基準では、早期関節リウマチの 13%しか陽性にならない。そこで ACR/EULAR 2010 Criteria for RAが出来たが、適応するには明らかな滑膜炎の存在、他の疾患によらない・・・というのが前提。
・リウマチ因子を測定する時は、RF定量を選ぶ。IgG-リウマトイド因子は選ばない。
・リウマチ因子の陽性率は、RA発症 3ヶ月 33%, 4-12ヶ月 70~80%, Sjogren 90%, 健常人 (60歳以上) 24%・・・であり、特異度が問題になる。
・リウマチ因子は疾患活動性の指標。ただし、リウマチ性血管炎では別。
・抗CCP抗体は、感度は RFと同じだが、特異度が高い。でも他の collagen diseaseや結核などで陽性になることもある。
・急性 B型肝炎の前黄疸期に関節炎をきたすことがある。
・血管炎での ANCAの陽性率は、GPA (旧 Wagner症候群) 90%, EGPA 40~50%, MPA 70%くらい。
・免疫抑制剤を使う前は Tbの家族歴を聞く。
・赤沈の基準値 (上限) は、男性 年齢/2, 女性 (年齢 + 10)/2
・ヘパリン、経口避妊薬で赤沈が上がることがある。
・赤沈高値、CRP低値では、高ガンマグロブリン血症 (多発性骨髄腫、クリオグロブリン血症、IgG4関連疾患)、SLE, Sjogren症候群などを考える。
医学統計ライブスタイル
「医学統計ライブスタイル (山崎力著、SCICUS)」を読み終えました。
山崎力先生の講演は以前一度聴いたことがあり、過去のブログでも紹介したことがあります。
よく製薬会社のパンフレットで見かけるような臨床試験が批判的に吟味されており、「こうやって解釈するのか」というのがすごく勉強になりました。
臨床試験は医師の判断に大きな影響を与えるため、その結果の解釈は非常に大事です。臨床医必読の本だと思います。
最後に、個人的経験談から。現在悪い意味で話題の JIKEI HEART Studyですが、数年前、ノバルティス社の医薬情報担当者 (MR) に、「JIKEI HEART Studyは途中で primary end point変えているし、実薬/プラセボどっち飲んでいるか知っていてエンドイントが入院だから、ちょっと信用出来ないんじゃないの?」と聞いたことがあります。その時、MRが自信満々に「○○という理由です。これ以上は、当社の統計解析の専門家が説明できますけど、機会をセッティングしますか?」と答えました。私はそこまで確信を持って質問したわけではなく、統計解析の専門家と議論しても丸め込まれるだけなので断りましたが、本書ではかなり厳しく批判されており、当時本書を読んでいればもう少し自信を持って主張出来たのになぁと思いました。