Category: 医学一般

英語の紹介状

By , 2010年10月6日 7:15 AM

海外から検査のため来日して、以後海外で再び治療を続けたい患者さんを担当していました。退院時に英語で紹介状を書いて欲しいと言われ、どうやって書こうか結構考えました。参考になるサイトがあったので紹介。

英語の紹介状(つよぽん医学講座その4)

英語の紹介状 Ver.2(つよぽん医学講座その4-2)

こうしたものを参考に、自分で書いたのがコレ。正しいかどうかわかりませんが、大体のニュアンスは通じる筈ですので、英語で紹介状を書く必要があるときは参考にして頂ければと思います。

 

英文紹介状の例August XX, 20XX

To whom it may concern,
Mr. Beethoven is a ○○-year-old male, who has complained amnesia and visual symptoms since 20XX. He was admitted to our department on August X, 20XX. His neurological examination was unremarkable. Brain MRI showed global brain atrophy, non-specific white matter lesions and sinusitis. There was no abnormal intensity on diffusion weighted image (DWI). Laboratory data were normal including vitamin B1, B12, folic acid, thyroid function, ammonia and treponema pallidum hemagglutination test. Brain cerebral blood flow SPECT showed hypoperfusion in bilateral parietal lobes, occipital lobes, medial aspect of frontal lobes and posterior cingulate gyrus.

Consequently, we examined his cognitive function. The result of mini-mental state (MMS) was ○ points and that of revised Hasegawa dementia scale was ○ points (full marks 30 points). His full scale intelligence quotient (IQ) was ○ (verbal IQ ○ and performance IQ ○). He showed mild impairment in color word conflict test (so called “stroop test”) and frontal assessment battery (FAB). By contrast, he showed significant impairment in Rey’s auditory verbal learning test (RABLT), Rey’s-Osterrieth complex figure test (ROCFT), Symbol digit modalities test (SMDST) and Wisconsin card sorting test (WCST). Visual perception test for agnosia (VPTA), created in Japan, showed remarkable impairment of his visual function.

Finally, he was diagnosed as posterior cortical atrophy (PCA) because his impairment was remarkable in visual function. As the cause of PCA, we suggested that he was visual variant of Alzheimer disease because of moderate global cognitive impairment and hypoperfusion of posterior cingulate gyrus in SPECT. Diffuse Lewy body disease was excluded because he had no parkinsonism and hallucination. Creutzfeldt–Jakob disease was also excluded because his course was mild and brain MRI showed no abnormal intensity on DWI.

We administered Donepezil hydrochloride (the trade name Aricept) since August XX, and will raise this from 3 mg to 5 mg on August XX. He should receive laboratory check for side effect after about two months.

I am confident that when Mr. Beethoven seeks medical attention at your clinic, he will receive appropriate care. If you have any questions concerning the detail of his therapy, please feel free to contact me at the e-mail address below.

Medication: Aspirin (Bayaspirin) 100 mg/day, Donepesil hydrochloride (Aricept) 5 mg, Magnesium oxide 1 g

Yours sincerely,

 

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Migunosuke, MD.
miguchi@miguchi.net
Yopparai university, School of medicine
Department of neurology
81-3-xxxx-xxxx (extended number xxxx)
x-x, Docokade-cho, Yopparai-ku, Tokyo, Japan
Post code xxx-xxxx
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

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死者の護民官2

By , 2010年9月14日 1:33 AM

さて、いよいよホジキン病の本題に入っていきます。1832年に「内科外科学会誌」がホジキンの論文「吸収腺および脾臓の病理所見について」を出版しました。ホジキン自らが経験した 6例と、パリのルゴールが診療した 1例を加えた計 7例の病理所見を纏めたものです。この疾患は、全身のリンパ節が腫脹する、結核とは別の病態でした。

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死者の護民官1

By , 2010年9月13日 6:30 AM

「死者の護民官 (マイケル・ローズ著、難波紘二訳、西村書店)」を読み終えました。ホジキン病に名を残したトーマス・ホジキンの話です。原著のタイトルは「CURATOR OF THE DEAD」です。長いので、2回に分けます。

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人体の語るもの

By , 2010年8月29日 10:58 AM

「人体の語るもの (小林隆、榊原什、古畑種基著、学生社版)」を読み終えました。科学随筆文庫の中の一冊です。

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輸血の歴史

By , 2010年8月14日 8:18 AM

「輸血の歴史 -人類と血液のかかわり- (河瀬正晴著、北欧社)」を読み終えました。本書は年表形式で書かれており、5章に分かれています。重要と思うところを纏めてみました。

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カイロプラクティック

By , 2010年8月3日 6:49 AM

カイロプラクティックの業界、英国で大騒ぎのようです。効果を否定する本を出版したサイモン・シンをカイロプラクティック協会が訴えた所、逆に検証の過程で効果の殆んどが否定される事態になったらしいのです。詳しいことはブログ「新小児科医のつぶやき」を御覧ください。

新・小児科医のつぶやき-ストライサンド効果-
新・小児科医のつぶやき-カイロプラクティック-

カイロプラクティックについて私はあまり詳しくないですが、施術者が頚を急に回旋させた際に椎骨動脈解離を発症した患者さんを治療した経験があります。稀な合併症でしょうが、気をつけなければいけない手技があることも確かなようです。

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三毛猫

By , 2010年8月1日 3:59 AM

三毛猫にはオスはいない・・・なんていう話を聞きますが、実はいるらしい。それはクラインフェルター症候群なんだとか・・・。

下記のサイトに詳しく書いてありますので、遺伝子の御勉強がてら読んでみてください。

三毛猫の科学

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病院の窓から

By , 2010年7月9日 7:26 AM

「病院の窓から (島村喜久治・野村実・正木不如丘著、学生社版)」を読み終えました。「物理学者の心」「医学への道」と紹介してきた科学随筆文庫シリーズの一冊です。

島村喜久治氏は巻末の略歴を見ると岡山県出身なのだそうです。同郷ということで、少し親近感が湧きました。生物学者志望だったそうなのですが、生計が苦しかったので医師を目指したとされています。医師になった動機がそのようなものであったからこそ、逆に生計が立てば儲けるつもりはなかったと述懐されています。東京大学医学部を卒業しましたが、「医学部は、卒業しても研究室(医局)に無給で残って、教授に頤使されなければ学位も貰えず一人前にもなれないというルール」があったこともあり、昭和12年、当時ミゼラブルな疾患であった結核の治療を志しました。

「院長日誌」というエッセイは、都立府中清瀬病院の院長時代を書いたものです。なお、都立府中清瀬病院は後に国立清瀬病院を経て、国立療養所東京病院と改称されました。

乏しい予算を工面して何とか退院時に赤飯を出せるように奔走した話、生活保護法と結核予防法の板挟みになった話(当時は制度の併用が難しかった)、自殺しかけた患者に家族が「いっそ、そのまま死んでくれた方がよかった」とつぶやいた話(自宅療養を続ける必要のあった結核は、かえって家族に厄介と思われていた)、暇をもてあました政治患者たちとの戦い・・・。ストレスからか胃潰瘍を発症し、「こうして、私は、徹底的に愛し切れず、かと言って徹底的に憎み切れない患者たちの院長として、夏目漱石のように胃薬ばかり飲みながら、院長室に坐って」いた話が記されています。

島村氏は先進的な考え方を持っていて、「憂楽帳」というエッセイでは「妻が夫から独立して自分自身の社会的活動をもつ段階。これが妻の社会的進化論である」と書いてらっしゃいます。昭和初期としては画期的な意見だと思います。一方で、「世の主婦たちよ。中年すぎての美容法もいいが、もっと大切なのは心の美容法である」と耳の痛いことも述べています。

「憂楽帳」で特筆すべきは「七つの注文」という項。新聞記者が気をつけないといけないことが書いてあるのですが、今の時代でもそのまま通用しますね。その7つを列挙します。

①報道は客観的に
②センセーショナリズム自粛のこと
③記事の裏には被害者が生じることの自戒
④東京中心主義の反省
⑤科学記事、特に影響力の大きい医学記事は慎重に。
⑥読者の批判精神を引き出して、世論を読者に作らせる指導を
⑦広告にも責任をもつこと。化粧品と薬品には誇大広告が多すぎるし、映画の広告はあくどすぎる。

本書二人目のエッセイストは野村実氏。彼は大正九年に内村鑑三の話を聞いて一日でキリスト教徒になりました。エッセイの端々に信仰について出てくるのですが、それほど宗教じみた話が多い訳ではなく、本質は「生と死を受け入れること」であるように感じました。死にゆく患者さんたちとの付き合いを通じて、それをどう受けいれていけば良いのか、内面的な葛藤が赤裸々につづられています。

野村実氏は九州大学を卒業し、結核の診療に従事していました。昭和初期の結核病院では、入院患者の半数以上が死亡していたそうです。そのような過酷な状況下におかれた患者達にとって、野村氏のように向き合って心まで診てくれる医師と巡りあえたことは、不幸中の幸いであったように感じました。

野村氏はしばらくアフリカを訪れ、シュバイツァーと働いています。シュバイツァーが作った診療所にはハンセン病の患者が非常に多かったそうです。シュバイツァーの精力的な一日や黒人達の生活などは「シュバイツァー博士と共に」というエッセイで生き生きと描かれています。シュバイツァーはピアノが上手だったらしく、夜な夜なバッハのフーガを演奏していたそうです。このエッセイで初めて知ったのは、シュバイツァーが30歳代から書痙で悩んでいたということです。シュバイツァーは自身は遺伝と言っていました。それでも多くの著書を残していることに感銘を受けました。

野村氏のシュバイツァー談義には後日談があります。シュバイツァーは生き物を殺すのを非常に嫌い、診療所は「巡回動物園」と呼ばれるほど動物が我が物顔で歩いていました。放し飼いの犬、猫、猿、豚、野猪、山羊、アヒルの群れ達・・・。野村氏はシュバイツァーに「先生は動物を殺すなというけれど、治療で細菌を殺しているじゃないですか。細菌だって生き物でしょ?」と聞いたことがあるらしいのです。そうするとシュバイツァーはしばらく困った後に「あれは悪者だから良いんだ」というようなことを言ったらしいです。私の知人が野村氏の講演を聴いて教えてくれました。そんなことを聞く野村氏も野村氏ですけれど、そんな会話が出来る間柄だったのですね。

最後のエッセイストは正木不如丘(ふじょきゅう)氏。東京帝国大学医科大学を卒業し、大正五年に福島市福島共立病院で副院長を務められています。彼も島村氏や野村氏同様、結核診療に従事していました。自分の周りの医師や患者についてのエッセイが主ですが、諧謔に富んでいます。とは言っても、少し不謹慎に感じる話も多いですが。

正木氏はパスツール研究所に留学していたせいか、研究に関する話も残しています。「すべて研究というものは運と鈍と根の三拍子が揃わないと完成されぬものだと言われている」と述べているところに、先日紹介した寺田寅彦氏のエッセイ「科学者とあたま」を思い出しました。

タイトルからはわかりませんでしたが、本書のテーマは「結核」にあると思います。現代においても結核は静かに流行していますが、診療報酬などの問題から敬遠する病院も多いのが現状です。

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乳癌の検診

By , 2010年6月15日 10:38 AM

Twitterで議論になった「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」。番組内容がおかしいとして、内容見直しの要望書や公開質問状が TBSに出され、物議を醸しています

TBS「余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン」の内容見直しを求める要望書提出について

世間一般では検診信仰というのがあるように思いますが、良い面ばかりではなく、なかなか複雑な問題を孕んでいます。李啓充先生のコラムを読むと、それらの問題を理解でき、上記の要望書の意味がわかるようになります。是非読んでみてください。

乳癌検診をめぐる大論争(1)

乳癌検診をめぐる大論争(2)

乳癌検診をめぐる大論争(3)

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膀胱結石手術図

By , 2010年4月26日 9:30 AM

マラン・マレー (1656-1728) に「膀胱結石手術図」という曲があります。知る人ぞ知る作品です。

マレーの時代は、膀胱結石手術の治療成績は悪かったらしく、手術はかなりの割合で死を意味しました。抗菌薬や無菌法もなかった時代です。麻酔も行われていなかった筈です。

「膀胱結石手術 -バロック期の標題音楽集 (WPCS-5989)」 という CDをアーノンクールが出しており、そこにこの曲は収録されています。ライナー・ノーツに語り手の台詞の日本語訳がありますので紹介しておきます。

Le Tableau de I’Operation de la Taille

[index I]
手術の様子
それを見て震える
手術台に登ろうと決心する
手術台の上まで行き
降りてくる
真剣に反省
腕と足の間に
絹糸が巻きつけられる
いよいよ切開
鉗子を挿入する
石が取り出される
声も出ない
血が流れる
絹糸がはずされる
寝台に移される

[Index 2]
快癒 (陽気に)

[index 3]
その続き

この曲は Youtubeで演奏を聴くことができます。

・Le Tableau de l’Opération de la Taille

・Marais – Le Tableau de l’Opération de la Taille

いかにもおどろおどろしい曲で、手術が成功に終わってもあまり明るさはありません。どちらかというと安堵感の方が表現されていると思います。

ちなみに上記の CDには、他に「常軌を逸したカルパッチョ (ファリーナ)」「フェンシング指南 (シュメルツァー)」「描写的なヴァイオリン・ソナタ (ビーバー)」「協奏曲 <夜> (ヴィヴァルディ)」が収録されています。

特に「常軌を逸したカルパッチョカプリッチョ」は面白い曲なので寄り道して紹介しておきます。この曲は動物の鳴き声を楽器で模倣するなど一見やりたい放題です。しかし音楽史上に残る貢献をいくつもしているんですね。まず、コル・レーニョという奏法で、弦を弓の木の部分で叩くテクニックはこの曲で初めて登場します。曲中の指示は「qui si batte con il legno del archetto」となっているようです。また、ヴァイオリン奏者が楽器の駒の近くを弓で弾く「ポンティチェッロ」もこの曲で初めて用いられました。

ヴィヴァルディの「」もお薦めです。良かったら聴いてみてください。

(2016.8.15)

動画リンクが上手く表示されなかったので貼り替えました

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