Category: 医学一般

3秒で心電図を読む本

By , 2010年4月26日 7:53 AM

「3秒で心電図を読む本 (山下武志著、メディカルサイエンス社)」を読み終えました。岩田健太郎先生のブログで紹介されていた本でした。

楽園はこちら側-3秒で心電図を読む本-

心電図というと、学生時代に心電図の教科書を読んで、ミネソタ・コードの一部まで覚えようとして結局身に付かなかった苦い経験がよみがえります。でも医者になってから経験を積むうちに、循環器疾患は「放っておいて危険かどうか?」を判断することがまず大事であることに気付き、それから心電図アレルギーがなくなりました。要するに、心電図をマニアックに読んで診断をつけなくても、大丈夫そうかどうかがわかれば、循環器医以外はまず困らないわけです (経験的な話です)。

本書で勉強になったのは、QRSの解釈の仕方やST-Tの扱いです。無症状例での疑陽性、有症状例での偽陰性リスクを考えた ST-T変化の扱い方は必読ですね。これらを知ると、過剰診断をしたり、放っておくと危険な心疾患を見逃したりしにくくなるのではないかと思います。

書評は、上記の岩田先生のブログが素晴らしいものですので、是非御覧になってください。私がそうであったように、読みたくなるかもしれません。心電図を 3秒で読めるようになるかどうかは別として、本書は 3時間くらいで読むことができる、「優しい」本です。

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医学用語の起り

By , 2010年4月17日 12:04 PM

「医学用語の起り (小川鼎三著、東京書籍)」を読み終えました。我々が普段用いている医学用語には様々な歴史があることをまざまざと知りました。日本での多くの用語は杉田玄白らによる「解体新書」、大槻玄沢による「重訂解体新書」から生まれていますが、用語を作り出す時の事情も面白かったです。著者は非常に博学で、日本古来の医学書などを広く参考に考察しています。日本語にルーズになっている我々がこのような研究をすることは困難だと思うし、このような書籍という形で研究が残されたのは非常に価値があることと思います。また、著者は日本古来の医学書のみならず、海外の解剖学書を広く読んでいることも、この本を読み進めていくうちに良くわかります。読んで面白かった部分を抜粋して要約しておきます。気に入った方は是非購入して読んでみてください (とはいえ、中古本でもなかなか手に入り辛くなっているかもしれませんが)。

・瞳孔は英語で「pupil」である。「pupil」はラテン語の「pupilla」に起源がある。「Pupilla」は「Pupa」の縮小詞で女の孤児、「Pupillus」が「Pupus」の縮小詞で男の孤児を意味するらしい。この語は小さな人影が瞳孔に映ることが関係しているようだ。しかし、それ以前にギリシャ語のコーレ (χ’opη) が既に女の子供と同時に「ひとみ」を意味していたらしい (※ここからは私の推測だが、よく「isocoria」などという表現をするが、「coria」はコーレに由来するのだろうか?) (瞳孔)

・「医」は「醫」の略字である。「酉」の部分は元々「巫」(巫は舞をもって神おろしをなす象形文字で、从は舞うときの両袖の形、工はその舞に規矩があることを示すらしい) であった。「酉」は「酒」の意であり、医師が呪術から酒を用いて病人を治すものに変わったことを示すと推測される。しかし、「医者が酒を多く愛するから」とする説もある。「醫」の字の「医」の部分は「弓矢を蔵する器」という意らしく外科用語を意味すると思われる。「殳」の部分は兵庫の上から人を遠ざける用具であり、病気を払いのける道具として解釈され得る。(醫という字の分析)

・「膣」という字は、元々「肉が生じる」という意味であった。大槻玄沢はそれとは違った意味でこの語を用いようと思い、「シツ」と読むと定義した。しかし、この漢字には元々「チツ、チチ」という読みはあっても「シツ」という読みはなく、「チツ」として定着したという。(膣)

・解剖学者ヴェサリウスは著したファブリカで、第2頚椎をアトラス (athlas) と名付けたようだ。しかし、17世紀半ばのオランダのヴァン・ホルネらにより、第1頚椎をアトラスと呼ぶことになったらしい。Axisは元々第1頚椎の意で名付けられた。しかし、後に第2頚椎に用いられるようになった。 (捧宇内のこと)

・元気という用語は後藤良山 (1659-1733) に始まったのではないかとされている。彼の口術を門人が筆記したという「病因考」に「元気」という語が登場する。水腫の治療に温浴を推賞して、「元気を固むるやうにすべし」とあり、現在と用いられ方は違う。現在のような用いられ方の古い例は近松門左衛門の「淀鯉出生滝徳」の「三条の元喜と申す医者で、めっきり元気が見えました」に見られる。どうやらこの頃から慣用的に用いられ始めたようである。一方で、「病気」という語は中国の「史記」の倉公伝に「其の色を望むに病気あり」、日本の「保元物語」に「左府御病気の由聞こえしかば」などとあり、よほど古いらしい。(元気と病気)

・梅毒はヨーロッパからまず広東に伝わった。それから沖縄を経て瞬く間に日本に伝わったようだ。日本で唐瘡、琉球瘡と呼ばれたのは伝来の方向を示しているらしい。梅毒は当時楊梅瘡と呼ばれたが、梅瘡と略す人たちもいたらしい。楊梅はヤマモモの意味である。江戸中期に香川修徳は、楊梅と梅は甚だ異なるので、「楊梅瘡」を「梅瘡」と呼ぶのは不適切であると「一本堂行余医言」の黴瘡の項に著した。その後、明治26年に東京大学に初めて講座制が布かれたとき、皮膚病黴毒学 (ばいどくがく) という講座が出来た。黴毒と同音であったので、一般に梅毒という語が定着したようだ。しかしこの言葉の紆余曲折を考えると果たして正しい用語なのかどうか・・・。 (楊梅瘡と黴毒、梅毒) (※梅毒の歴史も参考にしてください)

・口腔の「腔」の字は正しくは「コウ」と発音すべきだが、「孔」や「口」と区別できないので、間違いが起こりやすい。そのため、医者は必ず「クウ」と読むべきであると昭和初期の用語委員会で決まった。 (口の奥、のどの二構造・・・口蓋垂と喉頭蓋)

・橈骨は「トウコツ」と発音するが、大槻玄沢が初めてこの骨名を「重訂解体新書」で用いたときは、「ジョウコツ」と読ませるつもりだった。しかし「撓」という似た字を「トウ」と読むため、みんな「トウコツ」と呼ぶようになったようだ。杉田玄白の「解体新書」では、尺骨を「撓臂骨 (ドウヒコツ)」、橈骨を「直臂骨 (チョクヒコツ)」と名付けた。 (鎖骨と橈骨)

・バセドウ病を見つけたバセドウは発疹チフスの患者を死後剖検し、自分も感染して 1854年4月に 54歳で死亡した。一方で、橋本病を発見した橋本策も腸チフス患者を診察し、自分も感染し 1934年1月9日に 52歳で死亡した。 (バセドウ氏病)

・狭心症 Angina pectorisについて。ラテン語の anginaは動詞の angere (狭める、圧縮する、締め付ける、苦しめる) と連関する名詞で、語源的にはギリシャ語の agkhoneと関係があるという。 (狭心症 (その一))

・ギリシャ語で軟骨はコンドロス (chondros) であり、コンドロイチンなどが派生した。コンドロスの元々の意味は、日本の粥のようなもので、西洋ではオートミールや、その材料であるひきわり麦などを指したらしい。ラテン語では cartilagoすなわち果肉の意であり、いずれにしても柔らかいものを指す。 (軟骨)

・解剖という語は非常に古い。中国最古の医典である「黄帝王内経」の霊枢の経水篇に「其の死する解剖して之を視るべし」とある。 (解剖の学と生象の学)

・Prostataというギリシャ語起源の名称は、紀元前から用いられたが、対象物は一定せず、今日の定義に合うものはデンマークのバルトリンが最初に記載した。尚、バルトリンは父子孫三代に渡って解剖学者であったらしい。「解体新書」では Prostataはキリイル (腺) とのみ述べられ、大槻玄沢により摂護腺と呼ばれるようになり、以後ずっと摂護腺とされた。しかし、昭和になり「漢字が難しい」「意味が不明瞭である」との批判で前位腺と暫定的に改められ、昭和24年4月の「解剖学用語 (丸善発行)」で「前立腺」と改められた。 (摂護腺から前立腺へ)

・イギリスのガイ病院はトーマス・ガイ (Thomas Guy) が私費を投じて設立した。ほぼ同時代にブライト病の Richard Bright(1789-1858)、アジソン病の Thomas Addison (1793-1860)、ホジキン病の Thomas Hodgkin (1798-1866) が活躍し、この三人は「The great men of Guy’s」と呼ばれたらしい。 (ガイ病院を訪ねて)

・「解体新書」の原本「ターヘル・アナトミア」には松果体は記載されているが、下垂体は載っていない。デカルト (1596-1650) が脳の精神作用に松果体の存在と働きを重視したことが関係している? (下垂体と松果体)

・第三脳室、第四脳室という語はあるが、第一、第二というのがあるのか気になる。Paul Terra著の “Vademecum anatomicum” (解剖学名集, 1913年) によると、右側脳室が第一、左側脳室が第二とある。しかし、放射線医学では伝統的に左を先にとるため、左側脳室を第一脳室、右側脳室を第二脳室と呼ぶのである。このようにややこしいので、現在では第一、第二という呼び方は付けず、単に右側脳室、左側脳室と呼ぶ。第五脳室は左右の透明中隔の間、第六脳室は Verga腔だが、厳密には脳室ではない。

・長崎の通詞本木良永 (蘭皐) がオランダ語の天文学を訳して、1744年に「天地二球用法」を書き、日本に初めて地動説を紹介した。その本木良永は木村蒹葭堂の「一角纂考」の成立に尽力した。一角とはナルワルという鯨の一種の一本だけのびた長い牙で、江戸時代には貴重な薬とされたようだ。日本最古の図入り百科事典として有名な寺島良安著の「和漢三才図会」にも一角 (ウンカフル) についての記載がみられる。また、一角の牙だけを見た人々が想像を膨らませ、神話と結びついて一角獣が生まれたという。 (一角の話 (その二))

・東大医学部の初代解剖学教授の田口和美は「解剖攬要」を著した。明治二十年に留学した際、渡航、滞在費の全てをこの印税でまかなったらしい。

※ギリシャ語やラテン語の表記で、記載の仕方がわからなかった文字については、近いアルファベットで表記してあります。可能であれば原著で確認ください。

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By , 2010年4月12日 12:05 PM

教師が嘘の安全日を教えて、教え子が次々と妊娠した話があるそうです。人生設計滅茶苦茶ですね。この話を読んで憤りを感じました。

河野美代子のいろいろダイアリー-「私と性教育」②うその安全日を教えたために。-

この一連のエントリーの最後 河野美代子のいろいろダイアリー-「私と性教育」④問題発言がきっかけとなって。- に「妊娠する性を持っている女性は自分の体に、妊娠させる性をもっている男性は女性の体に責任をもて、これが基本です」とあるようですが、至言ですね。

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はじめてのメタアナリシス

By , 2010年4月4日 2:08 PM

「はじめてのメタアナリシス (野口善令著、福原俊一監修、健康医療評価研究機構)」を読み終えました。小冊子ながら、メタアナリシスのエッセンスが簡潔に纏めてあり、さくっと読むことができました。

メタアナリシスとは、同じテーマの論文を集めて統合して解析する研究手法です。多くの研究を総合的に解釈できるため、エビデンスレベルは高いと考えられています。しかし、質の高いメタアナリシスにするために、統合する前の研究の同質性が問題になってきます。また、セレクションバイアスやパブリケーションバイアスといったバイアスが出来るだけ入らないようにしなければいけません。

本書では、メタアナリシスの概念を説明し、どのような研究がメタアナリシスにふさわしいか概説しています。さらに実際にメタアナリシスをやってみせながら解説していきますので、その過程でどうやってバイアスを処理していけばよいのかが実感を持って理解できます。

薄くて軽い本で持ち運びに便利ですので、通勤の電車の中でお勧めの一冊です。

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花粉症ワクチン

By , 2010年3月27日 7:49 AM

花粉症に悩まされる私としては朗報です。今は抗ヒスタミン薬を内服していますが、花粉が酷いと症状が出てしまうし、かといって抗ヒスタミン薬の量を増やすと眠くなってしまうという板挟み状態です。このワクチンが完成すれば悩みから解放されます。

花粉症根治薬、8年後にも実用化=鳥居薬品と共同研究開始-理研

理化学研究所と日本たばこ産業(JT)グループの「鳥居薬品」(東京)は25日、理研が開発したスギ花粉症ワクチンの実用化に向けた共同研究を開始すると発表した。研究成果を臨床応用に生かすための仕組みを整備し、2012年に臨床試験を始め、18年の実用化を目指す。
このワクチンは、アレルギー反応の原因となるスギ花粉の主要な抗原たんぱく質2種類に、抗体反応を抑える化合物を遺伝工学的手法で融合させたもの。マウスの実験では効果が確認されており、花粉症シーズン前に摂取すれば、症状を引き起こさない初の根治薬として期待されている。
実用化には治験や生産など製薬会社の協力が必要だが、市場がほぼ国内に限定されることや、予想される薬価が低いことなどから、提携先を見つけることが難しかった。(2010/03/25-18:53)

余談ですが、抗ヒスタミン薬の臨床試験はかなり過酷です。密室に人を入れて、上から花粉をばらまいて、実薬群とプラセボ群を比較するというもの。このワクチンの治験も同じようなことをするのでしょうか、それとも日常生活での症状で比較するのでしょうか。ちょっと気になります。

さて、このワクチンが実用化されれば、積極的に受けたいという方がたくさんいそうです。私もその一人。楽しみにしています。それにしても、2012年治験開始、2018年実用化が目標って、まだまだ先の話ですね。途中でボツになる薬も多いだけに、順調に製品化されて欲しいです。

(参考)
理化学研究所プレスリリース

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本当はやさしい臨床統計

By , 2010年3月14日 9:14 PM

「臨床医による臨床医のための 本当はやさしい臨床統計 一流論文に使われる統計手法はこれだ! (野村英樹/松倉知晴著、中山書店)」を読み終えました。

統計の教科書を読むのは初めてですが、内容が高度な割にすっきりとまとめていて、飽きずに読むことができました。

本書の長所は、各解析パターンで使われる頻度の多い統計手法を分類し、その後各々を説明していることです。

例えば、時系列を扱う論文を 「CLo(C)K論文」と命名します。これらは「Cox比例ハザードモデルにおける相対ハザードの算出」「Log-rank検定」「Kaplan-Meierの生存曲線」の頭文字を取ったもので、丁度「時計」の意味になるようになっています。また、表を扱う論文は「Table FCx」論文と命名され、「Fisherの直接確率検定」「Cochran-Mantel-Haenszel検定」「x^2検定」の頭文字です。

このように何を解釈したい時にどの統計を用いる明らかにした後、個々の統計手法の原理を説明します。

本書の最終章は医療ツールとしての統計の扱い方です。例えば、プラバスタチンでの心血管イベント抑制を示した WOSCOPでは、相対リスクが 31%減少したと宣伝されます。相対リスク減少率を言い換えれば、内服していなくてイベントを起した人のうち、内服していればイベントを起こさずに済んだと思われる人の割合です。31%と言われれば滅茶苦茶効くように思えますが、ここにトリックがあります。そこで別の指標で評価してみると、何人がプラバスタチンを飲んだら 1人イベントを起こさずに済むかという治療必要数 (number needed to treat; NNT) は 162人なのです。つまり、せっせと内服しても (観察期間内に) 心血管イベント抑制の恩恵に蒙れるのは、162人に 1人いう結果なのです。売るために、どちらの数字を宣伝したくなりますか?プラバスタチンが良い薬か悪い薬かとは別で、提示された数字を鵜呑みにしてはいけないというのが勉強になるところです( もちろんNNTですら万能の指標ではありません)。

統計の本は初めてだったので、目から鱗なことも多く、勉強になりました。今まで論文を読んでいても、「有名雑誌なのだから、統計方法で嘘をつくことはしないだろう」と思って統計方法の所はとばして読んでいましたが、次からはきちんと目を通してみたいと思いました。

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アルコール

By , 2010年2月28日 12:38 PM

酒を飲んで、何故幸せな気分になるのか良くわかりませんでしたが、下記のブログに面白い論文が紹介されていました。

5号館のつぶやき-適度な量のアルコールは脳内エンドルフィンを放出させる-

お酒好きの方、是非読んでみてください。

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Wii fracture

By , 2010年2月7日 2:02 PM

以前、Wiiitisについて紹介しました。ちなみに綴りですが、”i” は連続 3つですから要注意。Wiiitisであって、Wiitisではないんですね。

先日、たまたま New England Journal of Medicine (NEJM) をみていたら、”Wii fracture” なる報告が・・・。

 A Wii Fracture

In the United Kingdom, a healthy 14-year-old girl presented to the emergency department at Horton General Hospital in Banbury (near Oxford), having sustained an injury to her right foot with associated difficulty in mobilization. She had been playing on her Wii Fit balance board and had fallen off, sustaining an inversion injury. (The Wii Fit replaces handheld controls with a pressure-sensitive board about 2 in. off the ground that lets the user participate in tricky games that can improve balance.)

“Wii fit” というゲーム中に台から落っこちたというだけで、天下のNEJMに論文掲載。そういえば、”Wiiitis” の最初の報告も NEJMでした。

興味深いと思って Twitterでつぶやいたら、gamitake1919氏から、”Wii knee” の存在を教えて頂きました。

 Wii knee

We present the case of a 16-year-old boy who injured his knee whilst playing on the video games console Nintendo Wii. The patient presented with an acutely swollen and painful knee to the emergency department of our institution. Initial radiographs revealed an effusion and an osteochondral fracture. Further imaging with magnetic resonance imaging demonstrated evidence of lateral patella dislocation with medial patello-femoral ligamentous damage and a large femoral osteochondral fracture. The patient was successfully treated with surgical fixation of the osteochondral fragment and medial patello-femoral ligament repair. This case highlights the force that can be generated whilst using these new games consoles.

PMID: 18340471 [PubMed – indexed for MEDLINE]

Wiiのゲームで膝の靱帯や骨軟骨の損傷したとの報告です。Abstractを見る限りでは、ゲームの名前はわかりませんでした。

さらに、探すと頚椎損傷もありました。

 A Wii-related clay-shoveler’s fracture.

A 38-year-old man presented to the accident and emergency department complaining of severe neck pain. This had started immediately after swinging his Wii game console control during a rather vigorous game. An X-ray demonstrated a clay-shoveler’s fracture of C7. This had radiological features to suggest an acute injury. This is the first report of a clay-shoveler’s fracture strongly suggestive of being related to the use of a Wii console.

PMID: 19882086 [PubMed – indexed for MEDLINE]

Wiiでの怪我については、さらに詳しい研究がされていました。

 Wii have a problem: a review of self-reported Wii related injuries.

PURPOSE: The increasing popularity of the Wii video game console has been associated with a number of gameplay related traumas. We sought to investigate if there were any identifiable injury patterns associated with Wii use. METHODS: Utilising a database of self-reported Wii related injuries, the data was categorised by type of injury and game title being played at the time of injury. FINDINGS: We found that of 39 reported Wii related injuries over a two-year span, 46% occurred while playing the Wii Sports Tennis software. Further, we identified 14 distinct injury patterns sustained during gameplay. Of these injuries, hand lacerations were the most common, accounting for 44% of the total number of reported cases. CONCLUSIONS: Injury associated with video game play is not unique to the Wii, nor is it a new phenomenon. However, the Wii console appears to have a higher rate of associated injuries than traditional game consoles because of its unique user interface. We review the literature and discuss some of the medical complications associated with the Wii and other video game consoles.

PMID: 19490774 [PubMed – indexed for MEDLINE]

最も危険なのは、”Wii Sport” のテニスゲームらしいです。Wii関連の外傷の 46%に上るのだとか。気をつけて、ほどほどに遊びましょう。

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大規模臨床試験の正しい見方

By , 2010年2月3日 7:45 AM

2月2日に医学統計セミナーに参加してきました。特別講演は「大規模臨床試験の正しい見方」。

近年、高血圧治療薬の競争は凄まじく、各社がしのぎを削っています。特にドル箱である ARBでは様々な大規模研究が行われています。良い結果が出れば製薬会社の宣伝材料になります。

EBMにおいて、最もエビデンスレベルが高いのはランダム化比較試験のメタアナリシスとされています。しかし、これにも問題があります。どのランダム化試験をメタ解析するかによって結果が異なり、好きなランダム化試験を選んできて、望む結果を得ることが可能なのです。全てのランダム化試験をメタ解析すれば良いのではないかという意見もありますが、年間ランダム化試験は 2000くらい発表され、当該の分野だけでも数十に上ることを考えると、非現実的です。

そこで行われたのが BPLTTC (Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration) というメタアナリシスで、結果の出ていないどのランダム化試験を組み込むか予め宣言し、「前向き」に試験したことです。結果は、どの降圧剤を使ったかはではなく、血圧を下げることが脳卒中の予防に重要であることが明らかになりました。一方で、冠動脈疾患には ACE-Iの方が ARBより有効でした。

ただし、BPLTTCはメタアナリシスであって、降圧剤の直接対決ではありません。しかし、ACE-IとARBの直接対決を行ったONTARTGET試験では、BPLTTCの正当性を裏付ける結果が得られました (結果が BPLTTCで予想される範囲に収まっていました)。

製薬会社は薬が売れないと潰れますで、都合の良いデータを広報します。従って、TRANSCEND, PRoFESSのように、都合が悪いデータは宣伝されず、専門家以外は知らない試験になってしまいます (すべての大規模試験を追いかけるのは、一般臨床医には難しいと思います)。例えば、ある ARBが複合腎イベントでプラセボに負けているとか、ある ARBは心血管イベント、脳卒中、心不全の入院などでプラセボに勝てなかったという話もあります。結果の解釈も問題で、ある ARBは蛋白尿のデータを元に、腎保護作用が ACE-Iと同等であると宣伝しますが、蛋白尿を減らしても総死亡が減っていなかったりします。ELITE試験は、ある ACE-Iに対して、ある ARBが心不全の総死亡において良い結果を得たとするものですが、同じ試験デザインで nを増やすと結果が変わりました。驚きの結果です。

ARBは ACE-Iに対して忍容性では勝る (咳が少ない) ので広く使われているのが現実ですが、医師は宣伝される臨床試験に騙されないようにしないといけません。私は ARBが良いとか悪いとかいうつもりは全然なく、都合の良い結果も悪い結果も一つの結果として、総合的にバランス良く考えるのが大事だと思います。現在は ARBが宣伝されすぎていると感じたので、こうした批判的な講演を聴いて面白いと思いました (とはいえ、これだけ多くの試験があるのだから、どう解釈するかで、どっちの立場からでもモノは言えますよね)。

現在の所、脳卒中に関しては BPLTTCの結果や、どの大規模研究でも降圧で脳卒中が減っていることを考えると “The lower, the better” が正解に近い気がします (ただし、高度の頚動脈狭窄がある患者では、過度の血圧降下は脳血流低下を招くので注意が必要です)。心臓に関しては専門外なので良く知りませんが、 ARBに対して ACE-Iの優位性がありそうで、AHAのガイドラインでもそのように区別されています。

(追記)
とはいえ、私は ARBを良く処方します。結局は下がれば良い・・・ってのが一つと、海外の ACE-Iと比べて日本の ACE-Iは降圧効果が弱いのではないかという疑問があるからです。また、ACE-Iを最初に処方して咳の副作用が出ると、患者さんから「藪医者」とか思われるリスクがあります。治療を drop outされてしまうと、何をしてるんだかわかりません。

色々書きましたが、降圧剤の選択は、議論が多いところですので、何が良いのか絶対的な見方をしないのが大事です。

今回の講演で面白かったのは、ACE-I (ひょっとしたら ARBも?) は夜に飲む方が効果があるのかもしれないということです。レニン、アルドステロンの日内変動と関係があるかもしれません。ただ、夜だと飲み忘れが増えるかもしれませんね。

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針治療後の呼吸不全

By , 2010年1月10日 12:00 AM

まず、亡くなられた方のご冥福をお祈りします。

はり治療後に女性急死 大阪府警、鍼灸院を家宅捜索

1月9日12時41分配信 産経新聞

大阪府池田市内の鍼灸(しんきゅう)院で昨年12月、患者の女性=当時(54)=がはり治療を受けた直後に容体が急変し、翌日に死亡していたことが9日、池田署への取材で分かった。池田署は業務上過失致死容疑で鍼灸院を家宅捜索するとともに関係者から事情を聴き、死亡と治療との因果関係を調べている。

池田署によると、女性は肩こりのために定期的に鍼灸院に通院し、はり治療を受けていた。昨年12月15日午前、女性が鍼灸院ではり治療を受けた後、院内のトイレで倒れているのが見つかった。女性は病院に運ばれたが、翌日に死亡したという。

司法解剖の結果、女性の死因は呼吸不全などによる低酸素脳症の可能性が高いという。治療ではりが女性の体内に深く入り、肺周辺が傷付けられたことで呼吸不全につながった可能性もあるといい、池田署が詳しく調べている。

しかし、いくつか気にかかるニュースです。

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