Category: 医学一般

気管支喘息バイブル

By , 2016年5月3日 9:42 AM

気管支喘息バイブル (倉原優著、日本医事新報社)」を読み終えました。

研修医時代は、天気の変わり目の当直といえば喘息発作が列をなしていて、ひたすら気管支拡張薬の吸入やステロイドの点滴を使っていた印象が強く残っていますが、近年ではそういう患者を見かけることもめっきり減りました。おそらく、吸入薬の進歩によるものでしょう。

吸入薬の進歩はめざましく、近年では様々な製剤が出ています。私はせいぜい ICS/LABAとしてアドエアくらいしか使ってこなかったのですが、ICSおよび ICS/LABAの使い分け、ステップアップやステップダウンの方法など、とても勉強になりました。

また、気管支喘息と ACOS (気管支喘息+COPD)、咳喘息、アトピー喘息の鑑別法もとても丁寧に書いてありました。気道過敏性と気道感受性の違いも、本書で初めて知りました。

クリニックなどで一般外来をしていると、「夜になると咳が止まらない」等の主訴でいらっしゃる喘息患者はたまにいらっしゃいます。そういう時に、本書はとても役立ちます。

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骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの適切な使い方

By , 2016年4月23日 8:19 AM

医学界新聞に「骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの適切な使い方」という良記事を見つけました。

骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの適切な使い方

■FAQ1 BPによる治療で,本当に骨折は予防できるのでしょうか。
■FAQ2 BPの投与によってかえって増える骨折があるそうですが,どのように対処したらよいのでしょうか。
■FAQ3 BPの長期投与には弊害もあるため,5年間継続したら休薬すべきとの意見もありますが,どうしたらよいでしょうか?

この記事で特に素晴らしかったのは下記の部分です。

ただ,BPによる骨折予防効果を得るには,正しく治療されることが必要とされています。「正しく」というのは,少なくとも1年以上継続して,治療期間内の処方率が80%以上で,内服方法が遵守され,かつビタミンDやカルシウムが充足していれば,ということを意味します。そのため,骨粗鬆症治療を行う場合には,薬剤の選択のみならず,正しく治療を続けるための工夫が大変に重要なポイントです。

ビタミンDやカルシウムが充足していることが前提条件なんですね。

ここで、日本のステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドラインに脱線します。この問題は、いつか書こうと思っていたので。

ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン:2014年改訂版

読んでみると、とても突っ込みどころの多いガイドラインです。例えば下記の部分です。

・ガイドライン作成者の利益相反が開示されていない

→いまどき、利益相反の開示されていないガイドラインなんてありえません。このガイドラインは、製薬会社が宣伝に使っています (実際、私のところに、このガイドラインを持ってビスホスホネート製剤の宣伝に来た MRがいます)。「製薬会社にいくらもらってこの宣材 (=ガイドライン) 作ったんだ」と言われても、利益相反が開示されていなければ反論できないでしょう (ない、なら、ないって書けよっていう話です)。

・骨折の予測因子について

→「骨折を予測する因子」をコホート研究で作成し、スコアをつけています。そのコホート研究は、スコア作成に男性 117名、女性 786名のデータを用い、男性 1名、女性 143名のデータを用いて検証しています。検証に用いたデータが男性 1名って・・・。さらに、基礎疾患のほとんどが RA, SLE+PM/DM+血管炎です。他の疾患に外挿できるデータなのでしょうか?

・いきなりビスホスホネート

→欧米のほとんどのステロイド性骨粗鬆症ガイドラインでは、ビタミンD, カルシウムを内服した上でリスクの高い患者にのみビスホスホネートを使用することになっています。骨を作るための材料を入れずに、骨を作るように命令するような薬 (ビスホスホネート) を内服したところで「空打ち」になるからです (この表現は知り合いのリウマチ科医に習いました)。そもそも、このガイドラインでも引用しているような、ビスホスホネートの有効性を示した臨床研究では、「血清ビタミンDの低い患者を除外」し、「ビタミンDおよびカルシウムを内服している」上での追加効果をみているのです (例えばこの研究)。それを、このガイドラインではビタミンDやカルシウム内服なしでビスホスホネートをいきなり始めるように推奨しており、どう考えても変です。

私は、ステロイド内服患者にはまずビタミンD製剤を優先して内服してもらっています。カルシウム製剤との併用でなくビタミンD製剤を優先しているのは、併用で高カルシウム血症の副作用が出やすくなるのを危惧するのと、下記の理由からです。

①カルシウムのサプリメント (単剤) で心血管イベントが増える報告がある。

Effect of calcium supplements on risk of myocardial infarction and cardiovascular events: meta-analysis

②カルシウムを単独で内服しても骨折リスクは減らないとする報告がある (ステロイドを内服していない患者ですが) 。

Calcium intake and risk of fracture: systematic review

③種々の免疫疾患で、ビタミンD低下が病状の悪化と関連するという報告がある。下記は多発性硬化症。

多発性硬化症と緯度の話

④ビタミンDは USPSTFが高齢者の転倒予防として推奨している薬剤である。

ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【1日目】

ビタミンD製剤を内服した上で、リスクの高い患者さんにはビスホスホネートなどを内服して頂いています。

(参考) 過去のブログ記事

ステロイドと骨粗鬆症

Glucocorticoid-Induced Bone Disease

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Dr.須藤の酸塩基平衡と水・電解質

By , 2016年4月19日 6:35 AM

Dr.須藤の酸塩基平衡と水・電解質 (須藤博, 中山書店)」を読み終えました。著者の須藤先生とは、米国内科学会日本支部総会で数度一緒に飲んだことがあります。

要点だけをまとめたコンパクトな本なのでポケットサイズになっていて、持ち歩くことも可能ですが、私はその中でも特に大事な部分を抜き出して、iPhoneのメモアプリに入れてあります。これまで輸液・電解質はあまり得意ではなかったのですが、本書を読んで知識がかなり整理されました。

前半は水と電解質の評価の話。高Na血症は Na過剰なのではなく水欠乏が本態である、とか、Na過剰でおきるのが浮腫である (浮腫の側からみると他にも鑑別はありますが・・・) など、病態の本質がクリアカットに解説されていました。それによって選択する輸液と量が決まってきます。

後半は酸塩基平衡の話。予想 PCO2で、winters formula, magic numberなどの式は初めて聞きました。

巻末に症例問題が付いています。”pH 7.45, PCO2 40, PaO2 100, HCO3- 25, Na 145, K 4.0, Cl 100″ を見て、「非常に重症」と思えない人は、是非本書で勉強しておいた方が良いと思います (解答は本書 p153)。

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頭蓋内のリンパ管

By , 2016年4月17日 5:22 PM

抄読会で 2015年6月1日に発表された Nature論文を読みました。結構インパクトのある論文でした。

Structural and functional features of central nervous system lymphatic vessels

3行でまとめると下記のようになります。

頭蓋内には古典的なリンパ排液系はないと思われていたが、硬膜静脈洞に隣接した髄膜にリンパ管が見つかった。このリンパ管は、免疫細胞や髄液を運んでおり、鼻粘膜のリンパ管と異なり深頸部リンパ節と交通しているようだ

頭蓋内悪性リンパ腫や種々の免疫疾患等の研究に大きな影響を与えそうですね。

私が抄読会用に作成した資料を添付しておきます。

抄読会資料

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入れる、締める、叩く!

By , 2016年4月10日 11:17 AM

以前、敗血症の定義が変わる話を書きました。簡単に触れただけでしたが。

敗血症の再定義

今回、週刊医学界新聞に、詳しい解説記事が出ました。書いたのは、知人の 2人です。

敗血症の新定義・診断基準を読み解く
2001年以来の改定で臨床・研究はどう変わるか

非常に勉強になる記事ですので、是非読んでください。敗血症研究の歴史、旧基準や新基準の問題点などを絡め、わかりやすく書かれています。

私は 2015年末に秋田県 (※お世話になった先生が勤める医師不足の病院に、毎月お手伝いに行っているのです。一人で全科当直してます。) で行った 4回の当直のうち、3回でショック患者の対応をしました。一人は旧基準での敗血症性ショック、二人目は消化管出血によるショック、三人目は慢性腎不全に鎮痛薬 (NSAIDs) を内服していたら腎不全が悪化し、カリウム保持性利尿薬の効果が強く出て、血清カリウム 7台というショックでした。

私のような神経内科医でも特にパニックになることなくショック患者の治療に当たれるのは、初期研修医の頃の指導医の言葉があるからです。

私は初めてショック患者を診た時、頭が真っ白になってオタオタしてしまい、他科の医師に助けられました。そのことを救命センターの指導医に告げたら、次の言葉を教わりました。

ショック患者を見たら、女を思い出せ!

「入れる (十分量の輸液を入れる)」

「締める/絞める (血管収縮薬を使う)」

「叩く (強心薬を使って心臓を働かせる)」

だ!

ショック治療の原則を押さえた、シンプルで非常に覚えやすい言葉です。女を思い浮かべて「入れる!締める!叩く!」。頭が真っ白になっても忘れませんね。とても有用なので、自分が指導医になって女性研修医を指導するときに、ニタニタしながらこの言葉を教えています。

順番も大事で、最初に「入れる」です。入れるだけで o.k. のことも多々あります。先に血管収縮薬や強心薬を入れると、心臓を空打ちさせて負担をかけてしまいます。女性も後 2つが先だと、入れさせてもらえな (自粛

もうワンランク上の診療のために、下記のブログ記事も読んでおきましょう。

Surviving Sepsis Campaign 2012 :日本語訳

敗血症のABCs② (循環、ショック治療)

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医師もMRも幸せにする患者のための情報吟味

By , 2016年4月6日 8:54 AM

医師もMRも幸せにする患者のための情報吟味 ディオバン事件以降の臨床研究リテラシー (山崎力, SCICUS)」を読み終えました。

「”spin (ねじ曲げられた報告)” をどう見ぬくか、読み解くか」「製薬会社とのつきあい方」などがテーマです。過去に山崎先生の本を読んで面白かったことや、彼の講演に感銘を受けたことがあり購入しました。素晴らしい本でした。

まず、本書ではさまざまな実例を使い、spinの見破り方をわかりやすく解説しています。これは、論文や MRからの情報提供をきちんと精査し、患者さんに最大限の利益をもたらすために知っておくべき知識だと思います。

後半は、製薬会社とのつきあい方についてです。大規模臨床研究には膨大な資金が必要ですが、日本では製薬会社以外から資金援助を受けることがほとんどできません。そのため、製薬会社といかに協力して研究を進めていくかが大事になってきます。本書には、win-winの関係を築き、研究結果の中立性を保つためのノウハウが書いてあります。

巻末は対談です。特に問題と感じたのが、データ入力のエラー率についてです。なんと、単純な手入力で 1万回打ち込めば平均 960回 (9.6%) 間違うというデータがあるそうです。研究の精度を高めるために、エラーを減らすいくつかの方法が紹介されています。年金記録で行われているのはおそらくシングルエントリーで、ある研究によると 1万回入力すると平均 26回間違うとのことでした。年金記録の管理は、この点からも難しい問題なのだと思いました。

最後に、本書とは関係ありませんが、”Association of American Medical Colleges (AAMC)” が作成した、医療関連企業による医学教育への資金提供に関する文章の日本語訳を付記しておきます。「この翻訳プロジェクトは、一般臨床、医学教育の場における利益相反の議論を、今後、我が国で広く展開していくための参考資料とすることを目的としている」そうです。

“医療関連企業による医学教育への資金提供 AAMC作業部会の報告書” 

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この失神、どう診るか

By , 2016年3月26日 1:32 PM

神経内科では、失神患者をしばしば診療します。「てんかん疑い」という病名で紹介されることが多いです (失神患者を診るたびに「TIA疑い」と紹介して来る医師もたまにいますが、「意識消失のみ」の TIAはないと言えるくらい稀です)。しかし、失神の原因は血管迷走神経性と起立性が併せて約 3割で、心原性が約 1割、てんかんは 5%程度といわれています。また、予後が最も悪いのは心原性です。てんかんは頻度がそれほど高くなく、初回発作では治療適応とならないことが多い (※ただし状況による) ことを考えると、失神は循環器科的な対応が最も求められるといえます。実際、失神のガイドラインは循環器学会などが主体となって出しています。失神患者が紹介されたとき、私は神経内科医であっても脳波検査より Holter心電図の方がオーダー件数が多いです。

ところが、失神を多数紹介される神経内科医は、心原性の失神についてトレーニングを受ける機会がないのが現状です。私もしっかりとしたトレーニングを受けないまま、なんとなく診療してきました。「失神患者の初期対応は循環器科が行う」としている施設もありますが、少数派だと思います。そうすると、治療が必要性が高い心原性の失神を見逃してしまうリスクがありますね。

最近非常に勉強になる本に出会いました。

この失神、どう診るか?

循環器科医の目線から、失神の原因、治療についてわかりやすく解説しています。私はこの本を読んで、失神診療における植え込み型ループ式心電図計 (implantable loop recorder: ILR) の有用性を初めて知りました。普段失神患者の診療をする機会の多い神経内科医は、必読の本だと思います。

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ACP日本支部 年次総会 2016

By , 2016年3月23日 5:40 PM

ACP日本支部年次総会の申し込みが始まりました。私は 2013年から毎年参加していますが、非常に勉強になります。

ACP日本支部 年次総会 2016

もうすでに満席のセッションも出ているようです。申し込みはお早めに。ちなみに、私は下記のセッションに申し込みました。

<申込み種別>
医師

参加登録料: 6,000円 *お申込み済み(早期割引 / ACP会員)

<セッション等事前登録>
6月4日
10:00–11:30 1-1-1 第1会場 Shockのトリセツ♪(林 寛之)  (1,500円)*お申込み済み
11:45–12:30 1-1-2 第1会場 急性気道感染症診療の原則を再考する(山本 舜悟)  (1,500円)*お申込み済み
12:45–14:15 1-1-3 第1会場 身体診察(須藤 博)  (1,500円)*お申込み済み
19:00–20:30 レセプション  (6,000円)*お申込み済み
6月5日
9:30–11:00 2-2-1 第2会場 臨床研究はじめの2歩目、統計の基本シリーズ〜あなたの研究に必要な対象者は何人?〜(福原 俊一)  (1,500円)*お申込み済み
12:15–13:00 2-5-2LS 第5会場 (昼食付) ホスピタリストのための人工呼吸器セミナー in ACP Japan(則末 泰博)  (2,500円)*お申込み済み
13:15–14:45 2-2-3 第2会場 診断戦略カンファレンス(志水 太郎)  (1,500円)*お申込み済み

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ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【2日目】

By , 2016年3月23日 5:39 PM

(ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【1日目】からの続き)

朝は開始時間が遅かったので、のんびりと会場に向かいました。

9:30~11:00 第2会場  「論文執筆に活かせる FIRM2NESS」 (福原俊一、栗田宣明)

架空の症例から生まれた clinical questionを PICO/PECOの形にして、試験デザインを考えるワークショップでした。

日本の臨床研究がメジャージャーナルに載りにくいのは、試験デザインがきちんと組まれていないからで、本来なら半年~1年くらいかけて作り込んでいくもののようです。

12:00~13:00 第6会場  がんの予防・検診のエビデンスはどれだけあるでしょうか? (勝俣範之)

「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版を教材として用いて、胃癌の検診を行うべきかどうか議論した。問題点として、①推奨グレードの決め方が曖昧で、なぜその推奨グレードになったのか説明されていない、②推奨を判断するための一次文献が非常に貧弱で、質の高い研究がない。査読のない雑誌であったり、研究対象数が非常に少なかったり。→ガイドラインがさまざまな問題を抱えており、このガイドラインを用いて胃癌の検診を行うべきかどうか判断することは難しい。胃癌はアジア人に多いので、そういう地域から質の高い研究が出てくることが望まれる。

続いて勝俣範之先生の講演。①検診乳癌の 31%が過剰診断という論文がある。乳癌検診により、早期癌は増えたが、進行癌は減らなかった (→見つける必要のない癌を見つけているだけでは?)。メタ解析では、2000人の検診を受けると 1人の乳癌死亡を減らし 200名に偽陽性、10人に過剰診断・治療することになる結果だった。②GRADEシステムについて、③一般に、癌検診は 50%以上の人間が受けないと死亡率は下がらない。啓蒙だけしても受診率は上がらない。日本は 10~20%, 欧米は 70~80%のものが多い。癌検診の受診率向上のためには、受診者へのリマインダー (督促状) やスモールメディア (メディアパンフレットやニュースレターなど) が効果的で、マスメディアを用いて受診率が向上するかどうかは「証拠不十分」という扱いになっている (CDC “The Community Guide” 2011)。④タバコは癌の最大の原因である。喫煙者では 60%程度寄与。非喫煙者の場合、食生活 10~30%, 肥満 10%となっている。日本人でも、タバコは最多、その次は感染 (HCV, HBV, HPV, EBV, HTLV-1) となっている。⑤一時期、健康食品として βカロチンがブームになったが、過剰摂取で逆に癌が増えることが明らかになった。⑥HPVワクチンについて。2011年のメタ・アナリシスの問題は、有効性について「浸潤がんでのデータではない」「子宮頸癌の死亡率減少まで示していない」「コスト分析がない」、安全性についての問題点は「RCTに登録・同意されたボランティアのみを対象としている」「サンプルサイズが少ない」「日本人でのデータはない」。米国 CDCによる市販後調査では、他のワクチンの有害事象率と比べて有害事象は多くないとしているが、過小評価の可能性がある。第10回厚生科学審議会・ワクチン分科会副反応検討部会の資料の結論は、「ワクチンとの因果関係は否定できない」「国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」、問題点は「過剰評価の可能性」「詳細な解析結果が明らかにされていない」。⑦まとめ:国内の診療ガイドラインの質を評価できるようにしましょう。USPSTF Recommendationを参照しましょう。

ガイドラインを金科玉条のようにしている人をたまに見かけますが、ガイドラインの質を評価するというのは、重要なことなんだなぁ・・・と痛感しました。

13:15~14:45 第3会場  Medical Eponyms for Clinician (清田雅智)

・人名を医学用語につけることについての議論 Medical eponyms: taxonomies, natural history, and the evidence.

・Ramsay-Hunt症候群: James Ramsay Hunt (1874-1937) は何故一人の人間なのに Ramsay-Huntと書くのか→Huntは父が亡くなり苦学した。母のことを想い、Ramsayという母の名前を入れたのではないか。現在では、Hunt症候群と呼ぶ人もいる。

・Ramsay-Hunt症候群は鼓索神経、アブミ骨筋神経、大錐体神経領域を侵す。Ramsay-Huntの報告は J Nerve Ment Dis 1907;34:73-96で、56の文献と 4の自験例をまとめている。

・Sir Henry Head (1861-1940):Dermatomeは herpes zosterの患者から導き出された。Head H, Campell W. Brain 1900;23(3):353-523

・Geniculate Ganglion (膝神経節) の VZVには 3つのグループがある。これは Zosterの前著に書いてある。1. Herpes Zoster auricularis, 2. Herpes Zoster in any of the zoster zone of cephalic extremity with facial palsy, 3. Heroes Zoster of the cephalic extremity with facial palsy and auditory symptoms

・Ramsay-Hunt症候群の 60例中 19例に auditory symptomがある=VIIIもやられている。Hunt 1915;38:418-46

・耳の裏の Zoster→ここも geniculate zoneである

・1909年 Zosterの痛みに顔面神経の中間神経を切断すると疼痛が改善する→感覚枝の存在。耳には、X (ABVN), C2-3 (GAN), V3 (ATN) の感覚神経が分布する。

JNNPの総説によると、皮疹が顔面麻痺に遅れて出現することがある。2.9%では IX, Xの症状がみられる。

・Tolosa-Hunt症候群は Tolosa E (J Neurol Neurosurg Psychiatry 1954;17:300-2) と Hunt WE (Neurology 1961;11:56-62) がそれぞれ報告したものである。

・Tolosaの原著は、cartoid siophon部の肉芽腫性血管炎で、V1領域の疼痛、III (時に IV, V, VI) の進行性麻痺であった→intercranial GCA説あり

・Huntの原著は、Retroobital pain+ophthalmoplagiaであり、ophthalmoplegic migraineだった可能性がある。

・Sir Jonathan Hutchinson (1828-1913) は Pagetの弟子だった。

・Hutchinson’s nailは subungual melanomaのサイン (BMJ 1886;1:491)

・Hutchinson’s signは V1→眼神経→鼻毛様体神経領域の VZVでみられる。診断制度としては RR 3.35~4.02という Arch Clin Exp Ophthalmol 2003;241:187-91

・Herpes Zoster Ophthalmicusについて Arch Ophthalmol 1983;101:42-5

・播種性VZV→隔離が必要。隣接しない 2領域以上 or 3領域以上

・John Benjamin Murphy (1857-1916):Surgical Clinics of North Americaという雑誌の前身は Murphyが作った。

・Five diagnosis method of Jon B Murphy (Surgical clinics of J.B. Murphy 1912;1:459-66)

(1) First percussion of kidney:CVA tenderness→腎疾患

(2) Hanner-stroke percussion:中指を立てて第9肋骨レベルに置いてその手をたたく→急性胆嚢炎

(3) Deep-grip palpation:患者を剤にして背後に回り、術者の右手の指先を曲げて右季肋部の下から “deep grip palpitation” という手技で深呼吸→急性胆嚢炎 (後の Murphy徴候)

(4) Pian Percussion:第4指から第2指まで順番にデリケートに打診→腹水

(5) Comparative bimanual examination:両側の iliac fossaeを同時に触診し、障害のある部位に抵抗を感じる→急性虫垂炎

Does this patient have acute cholecystitis? JAMA→Murphy Sn 65%, Sp 87%, LR+2.8, LR- 0.5 そんなに診断制度は高くない。現在はエコーのプローベで圧迫して確認する sonographic murphy signがお勧め。① Sn 63%, Sp 93.6%, LR+ 2.7, LR- 0.13, ②Sn 86.3%, Sp 35%

・Ismar Isidor Boas (1858~1938):痛みの部位と疾患との対応

・Guan A, Keddie N. Lancet 1972;2:239-241:痛みの最強点について

・Collin’s sign:自分で背中を押して痛みを誘発→胆石

・Capps. Arch Intern Med 1911;8:717-33:金属のスタイレットで胸腔内を刺激してどこが痛くなるか。横隔膜の腱中心を刺激すると肩が痛くなる→放散痛?

・Clinical sign’s of pain:腹腔内を wireで刺激して痛みを感じる部位を調べる Arch Intern Med 1922;30(6):778-89

Hospitalist 「気楽に学ぼう身体所見(第4回)胆嚢」 オススメ!

・Medical Eponysmは深く学べば役立つに違いない

・Medical Eponysmを調べるのに、Whonameditというサイトがお勧め。

・(質疑応答) 咽頭の神経分布について:咽頭の神経分布には Xが関係している→心筋梗塞で痛むことも! The radiology of referred otalgia.

人の名前が語源になった医学用語についての講演。清田先生とは、ACP日本支部総会の時に、毎年一緒にお酒を飲んで医学史ネタで盛り上がるのですが、この講演には圧倒されました。

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p値

By , 2016年3月16日 9:01 AM

統計学は確率の世界であり、p値 0.05を境目に真実が 180度ひっくり返ってしまうことはないはずです。また、どのような対象をどのように評価したかでも、p値の持つ意味合いは変わってきます。

あまりに p値だけが一人歩きしている状況を受けて、米国統計学会が声明を出したそうです。下記のブログがわかりやすく説明しているので、勉強しておきたいと思います。

「p値や有意性に拘り過ぎるな、p < 0.05かどうかが全てを決める時代はもう終わらせよう」というアメリカ統計学会の声明

 

p<0.05時代はついに終焉か?米国統計学学会による声明

(参考)

統計学的有意差 (ネタです)

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