Category: 医学一般

誤嚥性肺炎と禁食

By , 2015年11月2日 5:58 AM

誤嚥性肺炎の患者に対しては、禁食、抗菌薬で治療するのが一般的かと思います。

しかし、逆に治療期間中、食事をさせた方が良いのではないかという論文が発表されました (2015年10月8日)。

Tentative nil per os leads to poor outcomes in older adults with aspiration pneumonia

抄読会で使用した資料に概要を纏めてみました (PDF)。

抄読会 Tentative nil per os leads to poor outcome in older adults with aspiration pneumonia

注意すべき点は、初期にきちんと嚥下評価をして経口摂取可能か判断していることと、呼吸不全の強い患者は除外してあることです。そのため、誤嚥性肺炎全てに経口摂取させようと勘違いされると危険ですが、一部の患者についてはこれまでと治療が変わってくる可能性があるわけですね。

まだ、マイナーな雑誌に掲載された論文一本にすぎませんし、limitationもいくつかありますので、今後の追試の結果を待ちたいと思います。

(参考)

propensity score 図解まとめ

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SGLT2阻害薬

By , 2015年7月9日 10:56 PM

糖尿病の治療に用いられる SGLT2阻害薬でケトアシドーシスの懸念があると、FDAが警告していることを知りました。

Diabetes Drug Warning (JAMA 2015.7.7 online published)

SGLT阻害薬使用者のケトアシドーシスは、2013年3月から 2014年6月の間に、”FDA Adverse Event Reporting System” 上で 20例見つかりました。多くは 2型糖尿病で、血糖値の上昇はごく軽度 (200 mg/dl未満) であるそうです。2型糖尿病かつ血糖値の上昇が軽度である症例でケトアシドーシスを疑うというのは、なかなか難しいですね。

稀な副作用ではあると思いますが、知らないと診断するのは難しいので、記憶の片隅に置いておこうと思いました。

(参考)

FDA Drug Safety Communication: FDA warns that SGLT2 inhibitors for diabetes may result in a serious condition of too much acid in the blood

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TECOS

By , 2015年6月26日 5:05 PM

糖尿病診療では、ここ数年 DPP-4阻害薬が広く使われるようになりました (とはいっても、2型糖尿病の第一選択薬はメトホルミンです)。

DPP-4阻害薬は、数社から製剤が販売されていることもあり、製薬会社間での競争が激化しています。こうした中、DPP-4阻害薬シタグリプチン (ジャヌビア) の安全性を示した研究が、 New England Journal of Medicineに掲載されました (2015年6月8日 published online)。

Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes

この TECOS試験は、DPP-4阻害薬で心血管イベントが増えるのではないかという疑念に対して行なわれた臨床試験でした。シタグリプチンを内服している 14671名の患者を (中央値) 3年間 follow upしても、プラセボと比較して心血管イベントは増えないという結論でした。

しかし、この臨床試験を批判的に捉える研究者が多くいます。この薬で血糖値を下げても、心血管イベントは減らせなかったことが大きな原因です。中でも、マッシー池田先生の意見は鋭いと思いました。詳しくはリンク先を御覧ください。

無罪は勝ち取っても

ジャヌビアのリスク

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Idarucizumab for Dabigatran Reversal

By , 2015年6月22日 10:59 PM

2015年6月17日のブログで、dabigatranの効果を打ち消す Idarucizumabの第 1相試験について紹介しました。Lancet誌に 2015年6月15日に掲載された論文です。そのちょうど 1週間後、2015年6月22日の New England Journal of Medicine誌に、出血や処置のため緊急に dabigatranの効果を打ち消さなければならない患者を対象とした臨床試験の結果が掲載されました。

Idarucizumab for Dabigatran Reversal

Idarucizumabを投与すると、数分のうちに、完全に dabigatranの効果が消失するようです。新規抗凝固薬 NOACsは拮抗薬がないことが欠点として指摘されていますが、dabigatranは近いうちにそれを改善することができるようになるのでしょうね。

(追記 2015.6.23)

と思ったら、apixabanでも同様のニュース。

Portola, Bristol-Myers Squibb and Pfizer Announce Full Results of Second Part of Phase 3 ANNEXA-A(TM) Study Demonstrating That Investigational Andexanet Alfa Sustained Reversal of Anticoagulant Effect of Factor Xa Inhibitor Eliquis (apixaban) – See more at: http://globenewswire.com/news-release/2015/06/22/746208/10139217/en/Portola-Bristol-Myers-Squibb-and-Pfizer-Announce-Full-Results-of-Second-Part-of-Phase-3-ANNEXA-A-TM-Study-Demonstrating-That-Investigational-Andexanet-Alfa-Sustained-Reversal-of-An.html#sthash.0u8phTLa.dpuf

この辺りは、それほど差のない薬剤が少しでも優位性を主張して鎬を削っていますので、競争が激化しています。

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医療関係者の方はいませんか?

By , 2015年6月8日 5:26 AM

最近、通勤電車内で「医療関係者の方はいませんか?」という放送がありました。何事かと思って現場に駆けつけると、すでにナースが手当をしていました。診察してみるとそれほど重症ではなさそうで、大事に至ることなく、患者さんは救急車に乗って行きました。

電車を降りると同僚の姿。「何で行かなかったの?」と聞いたら、「だって、職業ばれるでしょ。先生、もう電車で酒飲めませんよ。電車で飲んでたら『あ、またあの医者酒飲んでる』って言われますよ」と言われました。確かに・・・。その矢先にこんなニュース。

「お客様の中でお医者様はいらっしゃいませんか」←なんと6割の医者が無視することが判明

医者の知り合いたちと Facebookで話題になったのですが、やはり電車の放送で出て行くのはリスクが高いですね。完全ボランティアだし、仮に出て行ってもできることは限られるし、訴訟で敗訴しても保険金が下りるかどうかよくわかりません。ヘタすると億単位の借金を背負うことになります。私も次からは出て行くかどうか微妙なところ・・・。

交通機関内ではある一定件数救急患者が発生するのだから、それを医師のボランティア精神にだけ委ねるというのは、どうかと思いますよ。医師は訴訟リスクを負っているわけですから。

そんな中、航空会社のルフトハンザは、このようなプログラムを用意しています。さすがと思います。ルフトハンザを使う機会があったら、これは契約しようかなと思いました。

「Doctor on board」プログラム

機内で医療援助が必要となった場合、「Doctor on board」プログラムにご登録の医師の方に援助をお願いいたします。ご登録いただいた皆様にはルフトハンザより謝礼を進呈いたします。

  • Miles & Moreの5,000アワードマイル
  • 「Handbook of Aviation Medicine: and In-Flight Medical Emergencies(航空医学・機内医療援助ハンドブック)」1冊
  • 今回より新しく追加: プログラム参加者用にデザインされた特製バッゲージタッグ「Doctor on Board」
  • 今回より新しく追加: 次回のフライト予約でご利用いただける50ユーロ分のプロモーションコードを1回分、および定期的なキャンペーン
  • 今回より新しく追加: ルフトハンザにてDeutsche Akademie für Flugmedizin(航空医学ドイツアカデミー)との提携による、ルフトハンザ医療サービスが提供するセミナー(有料)への参加。その際にはCME ポイントも取得できます。

賠償責任と保険

医療援助を行った医師の方は法的に保護されます。ルフトハンザ ドイツ航空がそのような事態に備え契約している責任保険の範囲で治療を受けた搭乗客からの賠償請求に対しては填補されますので、医師のお客様ご自身が責任を問われることはありません。ただし、故意による過失は除外されます。この免責は医師の方ならびに医療関係の援助者の方にも適用されます。

日本の交通機関も、こういう制度が出来ないものですかね。何かあっても、私はもう出て行きませんからね。(とかいって、また勢いで出て行ってしまうかもしれないなぁ・・・。)

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ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【1日目】

By , 2015年6月2日 5:06 AM

ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015に参加してきました。

10:00~11:30 第1会場  明日から外来・病棟で実践できる エビデンスに基づく成人の予防医療 (八重樫牧人)

米国予防医学作業部会 (USPTF) は予防医学のエビデンスを統括している。2015年5月現在、成人で 12のカテゴリーと 94のトピックスを扱い、5年毎に改訂。批判的吟味がしっかりしている。日本の臨床に適用できるかは吟味が必要。iPhoneAndroidのアプリもある。

・USPSTFの推奨には、”A: Strongly recommended”, “B: Recommended”, “C: No recommendation”, “D: Not recommended”, “I: Insufficient evidence” がある。

・「がん検診は予後が 10年以上あると、早期発見→早期治療につながり利益がある」「無症状の時期に早期発見・治療をしても、それが末期がんとなるまで生きることが予測される患者でなければ利益がない」「癌の診断はついたけど根治術である手術はしないような患者にはがん検診を行わない」→USPSTFで検診対象年齢であったも、「利益をもたらさず」「やることが変わらない」場合には推奨しない。

・がんの Screeningについて、USPSTFの推奨度は以下の通り。「推奨度 A, B= 肺癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌」。「推奨度 C, D= 卵巣癌、膵臓癌、精巣癌、前立腺癌」。「推奨度 I= 膀胱癌、口腔内癌、皮膚癌」

肺癌 (2013年):55-80歳の 30 pack year (1日の箱数 x 喫煙年数)、かつ 15年以内に喫煙歴のある者に対して、毎年低線量 CTによる肺癌のスクリーニングを推奨 (USPSTF; B)

子宮頸癌 (2012年):21-65歳の女性に 3年毎に細胞診を勧めるか、期間を延長したい 30-60歳女性は 5年間毎に細胞診と HPV検査を推奨 (USPSTF; A), 21歳以下、65歳以上ではスクリーニングは勧めない (USPSTF; D), 子宮摘出の既往があり、高分化の前癌病変 (CIN 2-3) や子宮頸癌がなければスクリーニングは必要ない (USPSTF; D)

乳癌 (2009年):50-74歳の女性に 2年毎のマンモグラフィーによるスクリーニングを推奨 (USPSTF; B), 40-49歳のルーチンでのスクリーニングは推奨しない。個別化し、患者の背景を考慮 (USPSTF; C)→日本では発症ピークが 40歳代であることから、日本の乳癌検診ガイドラインでは 40歳以上から推奨される。ただし、たくさん検診しても、乳癌で死亡する患者がそれほど減らせないということもあり、スイスでは乳癌のスクリーニングが中止された。(参考:ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2014)

乳癌・卵巣癌 (2013年):乳癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌の家族歴がある女性に、BRCA1/BRCA2の潜在的な遺伝子変異のリスクが高い家族歴を評価するツールでスクリーニングすることを推奨。スクリーニングが陽性の女性は遺伝子カウンセリングを受け、その後必要があれば BRCA遺伝子検査を受けることを推奨 (USPSTF; B) (本人の同意が得られる 18歳から。日本ではスクリーニング検査、予防的手術は保険適応外)

前立腺癌 (2012年):PSAをスクリーニングとして使用することを推奨しない (USPSTF; D)

大腸癌 (2008年):50-75歳の成人に、便潜血・大腸内視鏡を推奨 (USPSTF; A), 85歳以上には推奨しない (USPSTF; D), CT colonography, 便遺伝子検査は evidence不十分 (USPSTF; I)

胃癌 (2014年):胃 X線検査 50歳以上 (科学的根拠に基づくがん検診; B), 胃内視鏡検査 50歳以上 間隔 2-3年 (科学的根拠に基づくがん検診; B) (米国では罹患率が低いのでUSPSTFには推奨なし)

骨粗鬆症 (2011年):65歳以上の女性ないしは 64歳以下でも骨折リスクが高い女性ではスクリーンングを推奨 (USPSTF; B), 男性では十分な evidenceなし (USPSTF; C) (骨折リスク評価には FRAXがある)

転倒予防 (2012年):転倒リスクの高い 65歳以上に転倒予防として、運動療法とビタミン D投与を推奨 (USPSTF; B) (65歳以上の成人において 30-40%は 1年に 1回の頻度で転倒する。転倒した人のうち 5-10%は骨折・裂傷・頭部外傷を負う。転倒リスク評価は転倒の既往・移動能力の障害・Get-Up-and-Go test (椅子から立ち上がって 3 m先で反転して座る。10秒が目安) の低評価。The American Geriatrics Society (AGS) による 1日のビタミン D摂取量の目安は 4000単位。1000単位のビタミン D投与が推奨される。海外は天然型ビタミン D, 日本では活性型ビタミン D3製剤が用いられる。天然型ビタミン D 40 IU=天然型ビタミン D 1.0 μg, 活性型ビタミン Dは天然型の 7.5倍活性が強い。天然型ビタミンD 400 IU=天然型ビタミンD 10 μg=活性型ビタミンD 1.3 μg, 高齢者では少量から)

糖尿病 (2008年):血圧 >135/80 mmHgの無症状の成人で推奨 (USPSTF; B)。糖尿病、高血圧合併患者の適切な血圧コントロールは、心血管イベントを減少させる。

脂質異常症 (2008年):35歳の男性 (USPSTF; A), 20-35歳の冠動脈疾患リスクのある男性 (USPSTF; B), 45歳以上で冠動脈疾患リスクのある女性 (USPSTF; A), 20-45歳で冠動脈リスクのある女性 (USPSTF; B)

高血圧 (2007年):18歳以上の成人に血圧スクリーニングを推奨 (USPSTF; A)

栄養指導 (2003年):脂質異常症や他の心血管・食事関係の慢性疾患をもつ成人に栄養士による栄養指導を行うことを推奨 (USPSTF; B)

肥満症 (2012年):全ての成人に肥満症のスクリーニングを推奨。BMI 30を超える患者に対し、集中的で多様な行動学的介入を行うことを強く推奨 (USPSTF; B)

腹部大動脈 (2014年):100本以上の喫煙歴のある 65-75歳男性に、1回のみ腹部超音波を推奨 (USPSTF; B), 喫煙歴のない 65-75歳の男性は推奨なし (USPSTF; C), 喫煙歴のある 65-75歳女性は evidence不十分 (USPSTF; I), 喫煙歴のない女性には推奨しない (USPSTF; D)

Aspirin予防投与 (2009年):45-79歳の男性に心筋梗塞現象の利益が消化管出血のリスクを上回るとき (USPSTF; A), 55-79歳の女性に脳梗塞の利益が消化管出血のリスクを上回るとき (USPSTF; A), 80歳以上では evidence不十分 (USPSTF; I), 45歳未満の男性の心筋梗塞予防、55歳未満の女性の脳梗塞予防には推奨されない (USPSTF; D)→日本人には推奨されない(JPPP trial)。

クラミジア感染症 (2014年), 淋菌感染症 (2014年):24歳以下の sexually activeな女性、またはリスクの高い 25歳以上の女性 (USPSTF; B), 男性は十分な evidenceなし (USPSTF; I) (ハイリスク= 新しい/複数の sex partner, partnerに複数の partnerがいる, partnerが STIに罹患している, 互いに monogamousではない partnerとコンドームを常には使わない, 過去あるいは現在 STIである, Commercial sex worker)

HIV感染症 (2013年):15-65歳の全ての人に HIVのスクリーニングを推奨、他の年齢領域であっても、リスクがあれば推奨 (USPSTF; A), 全ての妊婦に対して推奨 (USPSTF; A)→日本では全員へのスクリーニングは推奨されない (スクリーニングするのは HIV感染の有病率が 0.1%以上の集団、日本では有病率 0.02%なのでターゲットを絞るのはよい、リスク因子=MSM, 静注違法薬物利用者, 多数のパートナーとの無防備な性交渉, commercial sex worker, 他の STI感染者)

梅毒感染症 (2004):感染のリスクがある者に梅毒感染のスクリーニングを行うことを強く推奨 (USPSTF; A), 全ての妊婦に梅毒感染のスクリーニングを行うことを強く推奨 (USPSTF; A), 症状のないリスクのない人には推奨しない (USPSTF; D)

B型肝炎ウイルス (2014):リスクの高い人には B型肝炎のスクリーニングを推奨 (USPSTF; B) (リスク因子=有病率>2%の地域, HIV感染者, 静注薬物使用者, MSM, HBV感染者の家人や sex partnerがいる)

C型肝炎ウイルス (2013年):リスクの高い人、または 1945-1965年生まれのアメリカ人にスクリーニングを推奨 (USPSTF; B) (理由は不明だが、アメリカの C型肝炎の患者の 4分の 3は 1945-1965年生まれである。) (リスク因子=薬物注射使用者, 薬物注射使用者との性交渉歴, 1992年以前の輸血歴)

ヒトパピローマウイルス:サーバリックス (2価) またはガーダシル (4価) を接種。男性はガーダシルのみ (CDC), 日本では中学 1年-高校 1年生の女性に接種。

肺炎球菌ワクチン:ニューモバックス (PPSV 23) は髄膜炎、菌血症、侵襲性肺炎球菌感染症の予防に効果的。プレベナー (PCV) は 65歳以上の高齢者の肺炎球菌性肺炎の予防効果がある (CDC)。両方打つのが望ましいが、日本では自治体毎にカバー範囲が異なるので確認が必要。5年間隔をあける根拠は、金がかかるという政治的な理由。接種の仕方にはガイドラインがある。

・インフルエンザワクチン:流行株が近ければ、健康な学童・健康成人で 50-80%のインフルエンザ予防効果が期待できる。対象は出生後 6ヶ月以上のすべての人、妊婦も (CDC)。10-12月に接種。

B型肝炎ウイルスワクチン:ワクチン接種が推奨される対象者:HBV感染者と同居している人, HBV感染者と性交渉のある人, 2人以上の Sex partnerがいる人, 性感染症の検査や治療を受けた人, MSM, 血液汚染のリスクのある職業についている人, 血液汚染のリスクのある職業に就いている人, 慢性肝疾患, 慢性腎臓病, 糖尿病

帯状疱疹ワクチン:ACIPでは帯状疱疹予防のため ZOSTAVAXを 60歳以上の全ての高齢者に推奨 (CDC) (50%の人が 85歳までに帯状疱疹を発症。一生のうちに帯状疱疹になるリスクは 32%, ZOSTAVAXは帯状疱疹リスクを 60歳以上で 51%, 50-59歳で 69.8%減少する)→日本には ZOSTAVAXはない

水痘ワクチン:日本では水痘ワクチン (ウイルス量 42000-67000 PFU) を用いる。米国では小児の水痘予防に VARIVAX (ウイルス量 1350 PFU), 帯状疱疹予防に ZOSTAVAX (ウイルス量 19400 PFU) を用いる。→日本の水痘ワクチンは ZOSTAVAXに匹敵する。ただし、帯状疱疹に対する保険適応がない。

喫煙 (2009年):全ての成人に喫煙歴を尋ね、喫煙者には禁煙介入を行う (USPSTF; A), 全ての妊婦に喫煙歴を尋ね、喫煙者には強く妊娠に関連させたカウンセリングを行う (USPSTF; A), 学齢児童や若者に対し、喫煙開始を予防するため教育とカウンセリングを推奨 (USPSTF; B)

問題飲酒 (2013):18歳以上の問題飲酒を減らすため、スクリーニングと行動カンセリングを推奨 (USPSTF; B) (絵s都度ある飲酒は 20 g/日, ビール中瓶 500 ml=20 g, 清酒1合 180 ml= 22 g, 焼酎 (35度) 1合 180 ml= 50 g, ワイン 1杯 120 ml= 12 g, ウイスキー・ブランデー 60 ml= 2o g)

うつ病 (2009年):正確な診断・効果的な治療とフォローアップのためのケアが可能なとき、成人にうつ病のスクリーニングを行うことを推奨 (USPSTF; B) (スクリーニング (どちらか一方でも可 ①この 1ヶ月、落ち着いたり、抑うつになったあり、絶望したりすることは多かったですか。②この 1ヶ月、何かするときに興味や楽しい感情が湧かないことは多かったですか)

暴力 (2013年):妊娠可能な女性のパートナーからの暴力をスクリーニングし、陽性となった女性を介入サービスに委ねることを推奨 (USPSTF; B) (米国では、女性の 31%, 男性の 26%が生涯で家庭内暴力を経験している)

葉酸 (2009年):妊娠を予定しているないしは妊娠可能な女性は、毎日葉酸 0.4-0.8 mgを補充することを推奨 (USPSTF; A)。 (約 1000妊娠に 1例で 2分脊椎がうまれるが、葉酸には予防効果がある) (妊娠が発覚してから内服しても遅いので、子作りするときに既に内服を始めておく)

・上記全てを一回の外来でこなすことは出来ないので、一回の外来で一つずつ実施していく。

普段狭い領域の診療をしていると、神経内科医領域以外の予防医学関連の知識のアップデートは遅れがちになりやすいので、こうして纏めて講義して頂けて、非常に為になりました。USPSTFのアプリは早速インストールしました。明日からの臨床に活かしたいと思います。

11:45~12:45 第4会場  Antimicrobial stewardshipと感染症診療 (細川直登)

Antimicrobial stewardship: “Antimicrobial stewardship includes not only limiting inappropriate use but also optimizing antimicrobial selection, dosing, route, and duration of therapy to maximize clinical cure or prevention of infection while limiting the unintended consequences, such as the emergence of resistance, adverse drug events, and cost. Given the emergence of multidrug-resistant pathogens and their impact on clinical care, appropriate use of antimicrobial agents has become a focus of patient safety and quality assurance along with medication errors, allergy identification, and drug-drug interactions. The ultimate goal of antimicrobial stewardship is to improve patient care and health care outcomes.

全コンサルと症例及び血液培養陽性症例に感染症科医が介入し、症例ごとに最大の治療効果と最小のスペクトラムの抗菌薬を持つ最適の抗菌薬を提案。目の前の患者に最適の治療効果を与えるとともに、次の患者のための耐性菌抑制を行う。亀田総合病院ではこれを行い、イミペネム耐性緑膿菌が 40→5%まで減少、MRSAが 50→20%台、MDRP 0となった。ただしこれを行っても診療報酬加算がつかないことで、どこの病院でもできるとはいかない。

問題点として、全ての抗菌薬の使用症例を感染症科が把握できない、外来での抗菌薬使用を把握できないこと。そんため薬剤部と連携して ASPチームを作ることを検討している。

経口セフェム薬には問題がある。例えば点滴でセフェム系抗菌薬を使うときは「◯◯ g」の単位だが、経口薬だと「100 mg」程度。さらに、消化管での吸収が 20%程度なので、20 mg程度を点滴するのと効果が同等と予想される。耐性菌出現の原因となりうる。

質問者から「カルバペネムの使用を制限しても、多剤耐性緑膿菌を減らせなかった。原因として何が考えられるか?」→①他院からの持ち込みの可能性:入院してきた時に調べて統計をとればわかる。②院内伝播:医療従事者などを介して患者間で伝播する。手洗い等、感染管理が大事になる。

感染症科医の介入による抗菌薬の適正な選択で、ここまで耐性菌が減ることに驚きました。診療報酬はクリアしなければいけない問題と思いました。あと、私は数年間処方していませんが、経口セフェムは害が大きいのですね。勉強になるランチョンセミナーでした。

13:00~14:30 第1会場  最新論文 30選 2015年度版:忙しいあなたのために (平岡英治)

<循環器アップデート>

Angiotensin-neprilysin inhibition versus enalapril in heart failure.

LCZ696 (ネプリライシン+ARB合剤) はエナラプリルと比較して死亡および心不全による入院のリスクを低下させる。Limitationは製薬会社スポンサー、価格不明、長期副作用不明。死亡率低下が証明されている収縮能低下性心不全 (HFrEF) の治療は、ACE阻害薬 (ARBは ACEに非劣性)、β遮断薬、アルドステロン阻害薬、心臓再同期療法 (QRS≧120のみ), 植込み型除細動器, ネプリライシン阻害薬 (New)。 (※ネプリライシン+ACE阻害薬の合剤は、ブラジキニン蓄積に伴う深刻な血管浮腫が報告されたため、ネプリライシン+ARB合剤となっている)

Fractional flow reserve-guided PCI for stable coronary artery disease.

前提:不安定狭心症 or 心筋梗塞疑いは CAGを行う→それ以外で心筋負荷試験で虚血がある場合は安定狭心症の診断で診断・治療→高リスク病変の疑いの場合は左冠動脈主幹部/3枝病変等なら CAGとする。安定狭心症の患者ではまず薬物療法を行い、それでも狭心症状がある場合は PCIとなる。安定狭心症の患者に対する PCIは、狭心痛の頻度が減るが、死亡率は不変、術後短期間の心筋梗塞は増えることが知られている。

安定狭心症患者において FFRガイド下の PCI (FFR=狭窄部位遠位圧力/狭窄部位近位圧力 <0.8) は薬物療法のみと比較して良好な転機をもたらす。FFR>0.8群においては薬物療法のみで良好な結果が得られた。

Digoxin-associated mortality: a systematic review and meta-analysis of the literature.

メタ解析の結果、 ジゴキシン使用により死亡率が増加することが示唆される。→ジゴキシンは過去の薬 (慢性心不全でも心房細動でも)。心房細動なら第一選択薬 (β遮断薬やカルシウム拮抗薬 (ジルチアゼム、ベラパミル) でレートコントロール)

Duration of dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.

薬剤溶出ステント (DES) を留置された症例に対し、短期間 DAPT使用群および長期間 DAPT使用群を比較した RCTを抽出してメタ解析を行った。短期間 DAPTは長期間 DAPTに比べて出血率は少なかったがステント血栓症は多かった。ただし、第二世代ステントの使用によりステント血栓症のリスクは減弱する。→第二世代ステントの DES患者では、DAPT内服は 3-6ヶ月と短くて良いかもしれない。Antibiotic treatment strategies for community-acquired pneumonia in adults.

Should atrial fibrillation patients with 1 additional risk factor of the CHA2DS2-VASc score (beyond sex) receive oral anticoagulation?

CHA2DS2-VAScスコアで 1点 (女性は 2点) においても脳梗塞のリスクは有意に増加するため抗凝固療法を検討する必要がある。→ESCガイドラインのように、CHA2DS2-VAScスコアで 1点 (女性は 2点) の心房細動患者に抗凝固を推奨しても良いかもしれない。レートコントロール、リズムコントロール (オプション) も忘れずに。

<呼吸器・集中治療・周術期>

Lower versus higher hemoglobin threshold for transfusion in septic shock.

敗血症患者における輸血閾値は、Hb 7 g/dlと Hb 9 g/dlで 90日間の死亡率に差を認めなかった。→Limitationとして、評価者のみ盲検化で患者・治療者にはオープン。注意事項として、1単位ずつの輸血は日本では 2単位ずつに相当。これらの輸血閾値は AMI, 大量出血や ECMOの患者は除く。7 g/dlより更に低くても安全かは知られていない

Withdrawal of inhaled glucocorticoids and exacerbations of COPD.

チオトロピウムとサルメテロールを併用している重症 COPD患者において、ステロイド中止群と継続群で、中等度あるいは重度の増悪は同様であった。→Limitationとして、吸入ステロイド離脱群で 43 mlの 1秒量低下があった。また、喘息合併の COPD患者を除外している。スポンサーが雇用した medical writerが関与。→長時間持続型β刺激薬 LABAと長時間持続型ムスカリン受容体拮抗薬 LAMAの両方を吸入していれば、吸入ステロイドが安全に taperできるとするには、時期尚早かも。

Goaldirected resuscitation for patients with early septic shock.

初期の敗血症性ショックを呈する救急受診患者において、EGDTは 90日死亡率を改善しなかった (この論文の背景として、EGDT 2001に対する反論がある。例えば、筆頭著者がカテーテルの特許を持っていたが利益相反の記載がない、デバイスが高い、対照群の死亡率が高すぎ、単施設研究・・・など)。→Limitationとして、抗菌薬投与が EGDTの 6時間より短く約 70分など。→敗血症性ショックに EGDTは不要。でも、「抗菌薬を 1時間以内に投与 (培養提出後)」「初期輸液は 6時間で 1.7 L以上」「CV挿入&昇圧剤投与 (ノルアドレナリン)」は重要。

Antibiotic treatment strategies for community-acquired pneumonia in adults.

非 ICU入院肺炎患者において、βラクタム単剤療法は、βラクタム+マクロライド or キノロン併用療法と 90日死亡率において劣ってはいなかった。→Limitationとして、非定型病原体 (レジオネラ、マイコプラズマ、クラミドフィラ) は 2%のみ、25%が割付から逸脱など→良質の痰が得られない場合かつ軽症なら非定型カバーなしで βラクタム単剤も選択肢。曝露歴・シックコンタクト等も考慮して抗菌薬を決める。

Efficacy and safety of nintedanib in idiopathic pulmonary fibrosis.

IPF患者でニンテダニブは FVCの低下を抑制した。下痢が多く認められた。→Limitationとして、軽症患者が対象で重症患者でのデータ不明。長期データ不明。下痢 60%, MI 約 1.5%, コスト不明, FVC低下は代替アウトカムに過ぎない。

<消化器・老年医学>

Sofosbuvir and ribavirin in HCV genotypes 2 and 3.

Genotype 2と 3の HCV感染に対する Sofosbuvir+リバビリン併用療法では、Type  2への 12週間投与で SVR (sustained virologic response (HCV-RNAが 3ヶ月後も検出感度以下)) 93%, Type 3への 24週間投与で SVR (85%) であった。副作用による治療中断は 1%→画期的な C型肝炎治療薬, ソホスブビルは 2015年 5月に日本でも発売予定。日本では 100~150万人が HCV感染に気付いていないので、そこを拾う努力を。

Helicobacter pylori eradication therapy to prevent gastric cancer in healthy asymptomatic infected individuals: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.

胃癌に対する H.pylori除菌の NNT= 124 (95% CI: 78-843), 各国の胃癌の lifetime liskと合わせて考えると、除菌による胃癌発生率低下の NNTは、日本人男性 15.3, 日本人女性 23.0, 米国人男性 163.4, 米国人女性 245.1

Appropriate and timely antimicrobial therapy in cirrhotic patients with spontaneous bacterial peritonitis-associated septic shock: a retrospective cohort study.

肝硬変患者の SBP (spontaneous bacterial peritonitis) による敗血症性ショックでは、院内死亡率は 80%と高率である。院内死亡率に影響する独立因子は、適切な抗菌薬開始までの時間、APACHE IIスコア、乳酸値であった。血圧低下後、抗菌薬投与が 1時間遅れる毎に院内死亡率が平均 1.86倍上昇する (肝硬変で腹水貯留症例に置ける腹水穿刺の一般論として、入院症例は (穿刺できる量があって禁忌がなければ) 全て腹水穿刺の適応。SBP症例は、肝性脳症のゲシュタルト 50%, 腹痛 60%, 熱発 70%, 下痢 30%, 無症状 25%)

Low-dose aspirin for primary prevention of cardiovascular events in Japanese patients 60 years or older withatherosclerotic risk factors: a randomized clinical trial.

60歳以上の心血管リスク (高血圧、高脂血症または糖尿病) のある日本人に 1次予防目的に 100 mg/日の低用量アスピリンを投与すると、心血管系関連死亡・非致死的な心筋梗塞、非致死的な脳血管疾患の複合を改善しないが、消化管出血の有害事象は明らかなに増加する。→アスピリンは 1次予防としては投与しない

Antipsychotics, other psychotropics, and the risk of death in patients with dementia: number needed to harm.

認知症に対する抗精神病薬・抗鬱薬などの投薬は死亡率を上昇させる可能性があり、そのリスクは以前考えられていたより高い。それぞれの薬剤の NNHは (1名死亡に対して) 、ハロペリドール 26, オランザピン 40, クエチアピン 50, リスペリドン 27, 抗鬱薬 166であった。→抗精神薬の使用は可能なら短期間に。継続する場合も減量可能か検討。入院中は入れ歯、メガネ、補聴器、カレンダー、時計等が取り上げられるせいで “Reorient patient” となる可能性があるので注意。

<腎・内分泌>

Blood pressure-lowering treatment based on cardiovascular risk: a meta-analysis of individual patient data.

心血管リスクの高い症例ほど降圧治療が心血管イベントを減らす。RRRはほぼ変わらないが、5年主要 CVDリスクが 11%未満の時 NNT 71, 21%以上なら NNT 26となる。→CVDハイリスクからでも降圧効果は十分あるので、降圧薬内服を。もちろん CVD低リスクの方にも降圧管理を。

Follow-up of blood-pressure lowering and glucose control in type 2 diabetes.

糖尿病に対する降圧療法は、長期的に心血管イベントを抑制する。長期罹患患者に対する厳格な血糖管理は、心血管イベントを抑制せず、腎不全進行は減らす。

Comparison of weight loss among named diet programs in overweight and obese adults: a meta-analysis.

どのダイエット法も減量効果あり、継続できる方法を選ぶ。→ただし、Atkins diet (を含む low carb diet) は、体重減少効果も大きいが、副作用も多い (便秘・下痢・こむら返り・頭痛・脱力感・口臭)

Co-trimoxazole and sudden death in patients receiving inhibitors of renin-angiotensin system: population based study.

ACE-I/ARB使用中の高齢者に ST合剤を併用すると突然死が増える (1000人に使用すると 14日以内の突然死が 3人増える)。高 K血症が誘因かもしれない。CPFXの併用も突然死は増える。→膀胱炎の外来治療選択肢の引き出しを。Sanford 2015における、acute uncomplicated cystitis in womenでの治療選択肢は、ST合剤、Nitrofurantoni, Fosfomycin, キノロン, AMPC/CVA, 第 1世代セフェム (セファレキシン), 第 2世代セフェム (セファクロル)

Ultrasonography versus computed tomography for suspected nephrolithiasis.

最初にエコー検査をしても害を認めない。救急医エコーの 4割で CTを追加するが総被曝量は減る。→腎結石症を疑ったら、まず腹部超音波検査、それから必要なら CT検査。

<神経内科・感染症編>

Hemicraniectomy in older patients with extensive middle-cerebral-artery stroke.

高齢の急性期広範囲脳梗塞患者における開頭減圧術は、死亡率を減少させるが、生存者に多くの中等度以上の障害が残存する。→寝たきりは不効果?”Disability paradox (長期間経過するとたとえ高度障害が残ってもそれを受け入れ QOLを高く評価することがある)” という概念がある。植物状態、少しだけ意識がある状態ではどうか?

Atrial fibrillation in patients with cryptogenic stroke.

原因不明の脳梗塞患者に長期間モニタリングを行うことで、心房細動の検出率があがる。→イベント・モニター (日本でも売っている) は体にリードを貼らなくても良い。数週間くらい記録できる。Implantable loop recorderは皮下に埋め込む。最長 2年くらい記録できる。

A randomized trial of intraarterial treatment for acute ischemic stroke.

頭蓋内主要血管閉塞における急性期脳梗塞患者への血管内治療は、t-PA単独治療に比べて予後を改善した。→SWIFT PRIME, EXTENDED IA, ESCAPE, MR CLEANの mRS 0-2の NNTは、それぞれ 4, 3.2, 4.1, 7.6

Timing of antiretroviral therapy after diagnosis of cryptococcal meningitis.

クリプトコッカス髄膜炎を有する HIV患者では、髄膜炎治療開始から 2週間以内の ART開始で死亡率上昇。最適な ART開始のタイミングは不明だが、ARTの導入は遅らせた方がよい。→日和見感染ありの AIDS患者への HAARTは、早めに開始 (結核は 2週間以内に)。クリプトコッカス髄膜炎は遅い目に開始。個別化が大切であり、専門家と相談。

Influenza vaccination of pregnant women and protection of their infants.

妊婦へのインフルエンザワクチンでは、HIV非感染妊婦では母児ともにインフルエンザが減少し、HIV感染妊婦では母体のインフルエンザが減少した。流産、低出生体重には影響なかった。→妊婦へのインフルエンザワクチンは、母、子供に対して予防効果あり!!, ただし (打っても打たなくても) 一定の割合で流産があるので、十分説明してからワクチンを。

<血液腫瘍・膠原病>

Platelet transfusion: a clinical practice guideline from the AABB.

化学療法・放射線治療時は、血小板数 1万以下ならアフェレーシス血小板 1単位 (=日本の濃厚血小板 15単位) を輸血 (strong recommendation, moderate quality evidence)。低浸襲手技時、中心静脈穿刺では血小板 2万以下なら血小板輸血、腰椎穿刺では 5万以下なら血小板輸血をする (weak recommendation, low quality evidence)。手術 (神経以外) の時、血小板 5万以下なら血小板輸血、心臓手術 (人工心肺あり) では出血+血小板低下したら血小板輸血 (weak recommendation, very low quality evidence), 抗血小板薬+脳出血時は血小板輸血は推奨も否定もできない (Uncertain recommendation, very low quality evidence)。→血小板は 77000円/10単位、大事に使う

Chimeric antigen receptor T cells for sustained remissions in leukemia.

再発性、難治性 ALL患者に対し、CD19特異的キメラ抗原受容体 (CTL019) 導入 T細胞療法を行った所、1ヶ月時点で 90%が寛解、フォローアップ時点 (中央値 7ヶ月) で 63%が寛解維持、 23%が死亡であった。6ヶ月無増悪 67%, 6ヶ月生存 78%, CTL019の発現は最長 11ヶ月まで持続した。キメラ抗原受容体を用いた T細胞療法は再発難治 ALLに対し有効である。→T細胞の活性化には、抗原提示細胞が MHC peptideを発現して T細胞の T cell receptorがそれを認識すること (シグナル1)、抗原提示細胞の CD80, 26と T細胞の CD28が結合すること (シグナル2) が必要。腫瘍細胞はシグナル 1と 2を両方抑え、免疫系から逃れている。そこで、シグナル1と 2両方が活性化する抗 CD19抗体を作成 (患者から T細胞を採取し、遺伝子を注入して培養増殖) し、患者に投与する。→腫瘍細胞を攻撃できるようになる

Multitarget therapy for induction treatment of lupus nephritis: a randomized trial.

ループス腎炎患者に対する「ステロイド (mPSL 0.5 g x 3 days, PSL 0.6 mg/kg/day) + ミコフェノール酸モフェチル (1 g/day) + タクロリムス (4 mg/day)」は、「ステロイド (mPSL 0.5 g x 3 days, PSL 0.6 mg/kg/day) + シクロフォスファミド静注 (0.5~1.0 g/m2 4週間毎 6ヶ月)」に比べ、24週での寛解率が良く、有害事象は同程度だった。→今回されたのは寛解導入のレジメの比較で、3剤にした方が寛解率が改善 (45% vs 25%) した。しかし、長期予後は controversialであり、今のところ 2012年 ACRガイドラインが基本。

Overall Survival and Long-Term Safety of Nivolumab (Anti-Programmed Death 1 Antibody, BMS-936558, ONO-4538) in Patients With Previously Treated Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.

濃厚治療歴のある非小細胞肺癌に対し、ノボルマブは生存期間中央値を 10ヶ月延長し、有害事象は許容範囲であった。→腫瘍は PD-L1, 2を発現させ、CD28陽性 T細胞の PD-1と結合することで免疫抑制させ、攻撃から逃れる。ニボルマブは PD-1を阻害する。(T細胞が活性化されないため存在する抑制系=チェックポイント)

Barriers to goals of care discussions with seriously ill hospitalized patients and their families: a multicenter survey of clinicians.

治療のゴールに関する話し合いの障壁。医師へのアンケート調査で、患者と「ケアのゴール設定」を議論できない理由は、患者および家族に関することが多い (e.g. 家族が予後不良を受け入れられない、家族が生命維持装置の不利益を理解できない、家族間で治療のゴールに合意形成できない、患者が生命維持装置の不利益を理解できない・・・)。

私は有名誌は定期的にチェックしているのですが、知らない論文も多く、随分と選り好みしていたんだなぁと思いました。論文の背景がしっかりと説明されていたので、神経内科領域以外で、特に勉強になりました。あとこの講義は、多くの論文で批判的吟味もしっかりされていたのが、良いですね。来年も受講したいです。

夜は、赤垣屋に行きました。12名の参加者のうち、5名が医学書の著者という豪華メンバーでした (今回の学会で講演をしたのも 5名)。博学なメンバーが多く、医学史の話など盛り上がりました。色々と刺激を受けました。

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Breast cancer drug may help men with prostate cancer

By , 2015年4月30日 6:57 PM

ある癌に対する分子標的治療薬が、別の癌に対して効果を示すというのはたまにあることで、EGFR, VEGF, HER2などがそうですね

発熱のため、仕事を休んでゴロゴロしながら Science Newsを見ていたら、興味深い記事がありました。

Breast cancer drug may help men with prostate cancer

Poly (adenosine diphosphate [ADP]-ribose) polymerase (PARP) は、DNAへの damageを修復する酵素です。乳癌・卵巣癌で BRCA1 or BRCA2に変異がある患者では、PARP阻害薬での治療が試みられることがあります。

DNA修復酵素に変異を多く持つ前立腺癌で更に PARPを阻害すれば、DNA修復が出来なくなるのでダメージが与えられるんじゃないか・・・と考えた学者たちがいました。実際に患者に使ってみると、DNA修復酵素に多く変異がある前立腺癌患者では、大部分が 6ヶ月以上治療に反応しましたが、そうした変異がない場合だと 3ヶ月以内に悪化しました。

癌細胞への分子標的治療薬は、リン酸化酵素をターゲットにしたものが多いですが、DNA修復酵素に着目した治療戦略というのも出てきているのだなぁと思いました。まだ治療効果は限定的かもしれませんが、色々と治療選択肢が増えると良いですね。

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JAMA

By , 2015年4月24日 5:27 AM

新しい勤務先では、以前ほど文献が自由に閲覧出来ません。私はお気に入りの医学雑誌を 10誌くらい頻繁にチェックしていて、それらにアクセスできないのはかなりのストレスになります。例えば、JAMA neurologyは現在の勤務先では取り寄せないと読めません。そこで必要な医学雑誌を個人契約し、定期購読することにしました。

JAMA neurology

JAMA neurology

手続きがてら JAMAのサイトをチェックしていたら、次の一文を見つけました。

The online version is made freely available to institutions in developing countries.

発展途上国の研究機関では無料で JAMAにアクセスできるそうです。素晴らしい配慮だなと思いました。

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ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015

By , 2015年3月25日 8:42 AM

毎年参加している、米国内科学会日本支部年次総会まで後 2ヶ月となり、事前登録しました。

ACP (米国内科学会) 日本支部 年次総会 2015

A Paradigm Shift in Internal Medicine:From Diagnosis / Treatment to Prevention

内科のパラダイムシフト – 診断・治療から予防

今年は下記の講演を申し込みました。製薬会社がスポンサーについていない会ため多少費用はかかりますが、学問的な話が利害関係で歪められるリスクが少なく、好感が持てます。

講師の中に数名知り合いがおり、一緒に飲む約束をしていて、そちらも楽しみです。

非常に勉強になる会なので、興味のある方は、是非登録を。

<セッション等事前登録>
5月30日
10:00–11:30 1-1-1 第1会場 明日から外来・ 病棟で実践できる エビデンスに基づく 成人の予防医療(八重樫 牧人)  (2,000円)
11:45–12:45 1-4-2LS 第4会場 (昼食付) Antimicrobial stewardshipと感染症診療(細川 直登)  (3,000円)
13:00–14:30 1-1-3 第1会場 最新論文30選2015年度版:忙しいあなたのために(平岡 栄治)  (2,000円)
19:00–20:30 レセプション  (7,000円)
5月31日
10:00–11:30 2-2-1 第2会場 ACP臨床研究WSシリーズ 3「論文執筆に活かせるFIRM2NESSチェック」(福原 俊一・栗田 宜明)  (2,000円)
12:15–13:15 2-6-2LS (昼食付) 第6会場 がんの予防・検診のエビデンスはどれだけあるのでしょうか?(勝俣 範之)  (3,000円)
13:30–15:00 2-3-3 第3会場 Medical eponyms for clinician(清田 雅智)  (2,000円)

ちなみに、私が 2013年、2014年に参加したときに聴いた講演の内容は下記になります。

ACP日本支部年次総会 2013

ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2014

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アスピリン、NSAIDsと結腸直腸癌リスク

By , 2015年3月22日 12:48 AM

以前、アスピリンの癌予防効果について書きました。2015年3月17日の JAMAに、そのテーマで遺伝学的なアプローチをした論文が掲載されました。遺伝子多型により、癌予防の恩恵を強く受ける人と、恩恵があまりない人、逆にリスクが増加してしまう人がいるようです。

Association of Aspirin and NSAID Use With Risk of Colorectal Cancer According to Genetic Variants

アスピリンや NSAIDsの常用は、常用しない場合と比較して、結腸直腸癌のリスク低下に関連していた (有病率 28% vs 38%, オッズ比 0.69)。

rs2965667 TT genotypeを持つ人びとでは、アスピリンや NSAIDsにより結腸直腸癌のリスク低下がみられた (有病率 28% vs 38%, オッズ比 0.66) が、稀 (4%) なTAあるいは AA genotypeを持つ人びとでは、結腸直腸癌のリスク上昇がみられた (有病率 35% vs 29%, オッズ比 1.89倍)。

rs16973225 AA genotypeを持つ人びとでは、結腸直腸癌のリスク低下がみられた (有病率 28% vs 38%, オッズ比 0.66)。しかし、より頻度の少ない (9%) ACあるいは CC genotypeを持つ人びとでは、リスクとの相関はなかった (有病率 36% vs 39%, オッズ比 0.97)。

このように、アスピリンや NSAIDsの結腸直腸癌に対するリスク減少は、rs2965667 (chromosome 12p12.3) や 16973225 (chromosome 15q25.2) 遺伝子多型の影響を受けるようです。将来、こういう遺伝子多型をチェックしてから薬の選択をする時代がくるのでしょうか。

ちなみに、先行研究では、PIK3CA変異があると、アスピリンの恩恵をうけやすいことが示されているそうです。

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