Category: 医学と医療

olesoxime

By , 2014年2月3日 9:46 PM

2014年1月21日の European Journal of Neurology誌に、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) に対する olesoxime の phaes II-III試験の結果が発表されました。リルゾールに olesoximeもしくはプラセボを上乗せしたものですが、18ヶ月の観察期間で有効性を示せませんでした。olesoximeは神経保護作用が期待される薬剤だったようですが、う~ん残念。これまでのような方法論では難しいのでしょうね。

A phase II−III trial of olesoxime in subjects with amyotrophic lateral sclerosis

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STAP

By , 2014年2月2日 9:14 AM

2014年1月29日のこと・・・。ふと「神経疾患についての iPS細胞の研究の現状を調べてみようかな」と思い、「まずは山中先生の研究からだろう」と考えて、2006年の Cell論文を読み始めました (実はまだ読んでなかった (^_^;))。

Induction of Pluripotent Stem Cells from Mouse Embryonic and Adult Fibroblast Cultures by Defined Factors

門外漢にとっては難解過ぎたので、”iPS細胞って何?” というブログ記事と照らし合わせながら読みました。如何にして 24因子から 4因子に絞り込んでいったかという話が、面白かったです。読んでいてワクワクする論文でした。

そして、翌1月30日。STAP (stimulus-triggered acquisition of pluripotency) の Nature論文が大きなニュースになっていて驚きました。

Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency

Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency

こちらも難解だったので、”体細胞の多能性への刺激惹起性運命変換” というブログ記事を参考にしました。弱酸性, 37℃, 30分だけが話題になっていますが、生後 1ヶ月のマウス細胞、DMEM/F12培地による数日間の浮遊培養という前処理という点には注意ですね。我々が弱酸性の石鹸で体を洗おうが、弱酸性の温泉に入ろうが、細胞の多能性が誘導されるわけではありません。

ハーバード大でサルで実験中との報告もありますので、論文の内容の信憑性は高いでしょう (※再現性のとれない科学研究も多々あるので注意が必要)。

新万能細胞、サルの治療で実験中…ハーバード大

【ワシントン=中島達雄】細胞に強い刺激を与えただけで作製できる新たな万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の開発に理化学研究所と共にかかわった米ハーバード大の研究チームが、脊髄損傷で下半身が不自由になったサルを治療する実験を進めていることを30日明らかにした。

研究チームの同大医学部・小島宏司医師によると、脊髄損傷で足や尾が動かなくなったサルの細胞を採取し、STAP細胞を作製、これをサルの背中に移植したところ、サルが足や尾を動かせるようになったという。

現在、データを整理して学術論文にまとめている段階だという。研究チームは、人間の赤ちゃんの皮膚からSTAP細胞を作る実験にも着手。得られた細胞の能力はまだ確認中だが、形や色はマウスから得たSTAP細胞によく似ているという。

(2014年1月30日14時37分  読売新聞)

すでに特許も出願中のようです。この点は抜かりありません。

発明者に小保方さんの名も、既に国際特許出願

「STAP細胞」の作製に成功した理化学研究所などが国際特許をすでに出願していることが30日、わかった。

今後、再生医療への応用などを目指した国際的な知財競争が激化することが予想され、今回の特許がどのような形で認定されるかが注目される。

国際特許は、理研と東京女子医科大、米ハーバード大の関連病院であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院の3施設が合同で米当局に出願。2012年4月から手続きを始め、昨年4月に出願した。発明者には、小保方おぼかた晴子・理研ユニットリーダー(30)ら7人が名前を連ねている。

出願内容は「ストレスを与えることで、多能性細胞を作製する手法」。iPS細胞(人工多能性幹細胞)のように、外部から遺伝子を導入したり、たんぱく質などを加えたりしなくても、皮膚のような体細胞が、多能性細胞に変化することを示した。ただ、最終的に特許当局にどこまで権利範囲が認められるかは分からない。

(2014年1月30日16時02分  読売新聞)

しかし困ったことに、報道が過熱し、小保方氏は細胞リプログラミングユニットのサイトで、”報道関係者の皆様へのお願い”  を出すことになりました。論文が出た瞬間、世界中の研究者が追試をして、競争が激化します。小保方氏を追い回して足を引っ張るのではなく、研究に専念させてあげるのが重要だと思います。研究者にとって最も大事なのは、”研究資金” と “研究のための時間” です。

最後に、みぐのすけと知人医師達のゲスなやりとり (完全にネタです)。
みぐのすけ:膣の中って、37℃、酸性でしょ?STAP細胞できるんじゃね?
A医師:何言ってるんですか、STAPどころか一切の培養操作なしで人体丸ごと発生しますよ。
みぐのすけ:すげー、natureに報告しようかな!
A医師:何言ってるんですか、報告も何もnatureの摂理ですよ。
B医師:ねーちゃんと報告してください。親に。
お後がよろしいようで・・・。
(参考)

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ALSの長期生存

By , 2014年1月29日 6:10 AM

ALSは予後の厳しい疾患ですが、10年以上経過しても ADLや呼吸機能がある程度保たれる方がいます。例えば、作曲家のショスタコーヴィチも進行の遅い ALSであったと推測されています。しかし、どのくらいの割合の患者が長生きし、それがどういう特徴をもった患者なのかは、まだ未知の部分が大きいのが現状です。

2014年1月2日の Annals of neurology誌に ALS患者の生存期間に関するコホート研究が掲載されました。

 Long-term survival of amyotrophic lateral sclerosis. A population-based study

 人口 4947554人が住む北イタリアにおいて、コホート研究を行った。ALS患者は 1998年1月1日~2002年12月31日に登録され、亡くなるか、もしくは 2013年2月28日まで前向きに観察された。その結果、517名が登録され、重複などを除く 496名が対象となったが、13名は追跡できず、483名を解析した。 男性 280名、女性 203名、18~93歳、平均 63.9歳で、診断時の平均罹病期間は 10.6ヶ月だった。登録時、definite ALS 44.1%, probable ALS 26.9%, possible ALS 19.3%, suspected ALS 9.7%だった。経過期間中、motor neuron diseaseとして 2名が PMA、1名が PLS 1名であることが明らかになり、また27名は ALSでないことが明らかになった。

 診断時から見た累積生存率は、12ヶ月 76.2%, 3年 38.3%, 5年 23.4%, 10年 11.8%だった。初発症状出現時から見た累積生存率は、12ヶ月 92.1%, 5年 28.6%, 10年 13.3%だった。男性、若年、possible/suspected ALS, spinal onset、診断まで 12ヶ月以上である方が長期に生存した。観察期間終了後に生存していた 41名のうち、胃瘻、非侵襲的換気 (NIV), 気管切開などを行っていたのは 7名 (17%) だった。75歳以上の男性患者では、10年間の生存率は一般人と変わらなかった。

 我々神経内科医が ALS患者に予後を説明するときなど、非常に役立つ研究だと思います。

今回の研究では遺伝子検索はしていませんが、例外を除き遺伝子型と表現型は相関がはっきりしないそうです。しかし、進行の遅い ALS患者で見られたという EPHA変異があるかどうかとか、個人的には遺伝学的背景も気になるところです。

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musician’s dystoniaとARSG

By , 2014年1月28日 5:32 AM

音楽家のジストニアに関する本を過去に紹介したことがありました。私が興味を持っている分野の一つです。

音楽家の 1~2%に、楽器演奏に使用する身体の部分 (ヴァイオリン奏者/ピアノ奏者/ギター奏者などの手や、管楽器奏者の口唇など) を思い通りに動かせなくなる症状がみられ、”musician’s dystonia” とか “musician’s cramp” と呼ばれます。特に若い男性に多く、発症した多くの患者は、プロの演奏家としての道を諦めることを余儀なくされます。ロベルト・シューマンがそのせいでピアニストとしてのキャリアを諦め、作曲家になったことはあまりに有名です。また、”musician’s dystonia” で右手の自由を失い、左手だけで演奏を続けたフライシャーのようなピアニストもいます。

原因は不明とされてますが、2013年11月の JAMA neurologyでは、「遺伝性の要素と、環境因子 (長時間の練習など) の両方が関与している」という論文が掲載されています。

Challenges of Making Music: What Causes Musician’s Dystonia?

遺伝性の要素の詳細はこれまでベールに包まれていましたが、2013年12月26日付 (first online) で Movement Disorders誌に genome-wide association study (GWAS) の結果が報告されました。

Genome-wide association study in musician’s dystonia: A risk variant at the arylsulfatase G locus?

Using a genome-wide approach with an independent replication and validation in other forms of dystonia, we identified the intronic variant rs11655081 in the ARSG gene as the first possible genetic risk factor for MD with genome-wide significance.(略)

ARSG is located on chromosome 17q24.2 and belongs to family of sulfate genes whose gene products hydrolyze sulfate esters. These proteins are involved in cell signaling, protein degradation, and hormone biosynthesis.

どうやら、ARSG遺伝子の多型により、musician’s dystoniaの発症リスクが高まるようです。この遺伝子多型は、書痙患者に対する GWASでも関連が示唆されました。実際、musician’s dystonia患者の 44%に、書痙など他のタイプのジストニアを合併することが知られているそうです。

遺伝子多型が一つわかっただけで musician’s dystoniaの原因が明らかになったわけではありませんが、これまで未知であった遺伝学的背景の解明にむけて、最初の一歩です。

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抗MOG抗体と NMO/NMOSD

By , 2014年1月27日 6:07 AM

2014年1月13日の JAMA neurologyに、視神経脊髄炎 (NMO)/視神経脊髄炎スペクトラム疾患 (NMOSD) における抗 aquaporin-4 (AQP4) 抗体陽性例と抗 myelin-oligodendrocyte glycoprotein (MOG) 抗体陽性例の臨床像を比較した研究が掲載されていました。

Neuromyelitis Optica Spectrum Disorders With Aquaporin-4 and Myelin-Oligodendrocyte Glycoprotein Antibodies

A Comparative Study

NMO/NMOSD患者の多くは抗 AQP4抗体陽性と考えられています。しかし数年前から、抗 AQP-4抗体陰性例に抗 MOG抗体が検出されることが報告されるようになりました。そこで著者らは、2010年1月1日~2013年4月1日に初回の脱髄イベントを起こした、抗 AQP-4抗体もしくは抗 MOG抗体陽性患者について調べました。

Table1

Table1

その結果、明らかになった臨床的特徴は下記。

・抗 AQP4抗体と抗 MOG抗体が両方陽性の患者はいなかった

・抗 MOG抗体陽性患者は、抗 AQP-4患者と比較して、男性に多い、若年という特徴が見られた。

・抗 MOG抗体陽性患者は、視神経炎と横断性脊髄炎を併発もしくは 1ヶ月以内に続発することが多かった。抗 AQP4患者では同時発症はみられなかった。

・44%の抗 MOG抗体陽性患者は、発症時に視神経脊髄炎の診断基準を満たした。抗 AQP-4抗体では発症時に視神経脊髄炎の診断基準を満たした患者はいなかった。

・最重症時の EDSSは両群間で差はなかったが、抗 MOG抗体陽性患者の方が、EDSS、運動障害、MRI画像とも改善が大きかった。抗 AQP4抗体陽性例と異なり、抗 MOG抗体陽性例では観察期間中に再発した患者はいなかった (単相性)。

・脊髄病変の長さは両群間で差はなかったが、抗 MOG抗体陽性例では脊髄円錐が侵されやすかった。また、抗 MOG抗体陽性例では、脳 MRIで白質病変が一般的に見られた (ADEM-like)。

・髄液所見は両群間で差がなかった。

・回復後の抗体陰転化は、抗 MOG抗体 (56%) の方が抗 AQP4抗体 (15%) よりも一般的に見られた。

・多発性硬化症 (MS) 患者において抗 MOG抗体をスクリーニングしてみたが、陽性例はなかった。別の研究では一部患者で陽性だったと報告しており、抗体のアッセイ系の違いが原因と推測される。

 この論文を読むと、NMO/NMOSDにおいて、抗 MOG抗体陽性例と抗 AQP4抗体陽性例では、臨床像がかなり異なるようです。、読みながら、「あっ、そういえば、昔診たあの患者さんがそうだった」と思いながら読みました。しかし、抗 MOG抗体陽性 NMO/NMOSDを疑ったとして、一般の病院では検査することは難しいですね。ググると、すでにキットも販売されていますし、測定して報告している大学が国内にいくつかあるので、そういうところに依頼することになるのでしょうか。

あと、2014年1月20日の JAMA neurologyでは、NMOにおける免疫抑制療法の比較が掲載されていました。

Comparison of Relapse and Treatment Failure Rates Among Patients With Neuromyelitis OpticaMulticenter Study of Treatment Efficacy

Results  Rituximab reduced the relapse rate up to 88.2%, with 2 in 3 patients achieving complete remission. Mycophenolate reduced the relapse rate by up to 87.4%, with a 36% failure rate. Azathioprine reduced the relapse rate by 72.1% but had a 53% failure rate despite concurrent use of prednisone.

アザチオプリンは、ステロイド併用していても約半数で治療失敗がみられるんですね。

薬価を見ると、アザチオプリン 100~200 mg/day (2~3 mg/kg/day) で 306.2~612.4円/日、ミコフェノール酸モフェチル 1000~2000 mg/dayで 1304.8~2609.6円/日、リツキシマブ 1000 mg 初回投与及び 2週間後投与併せて 856640円。3剤の中で最も安いアザチオプリンの治療失敗が最も多いとは・・・残念です。

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HPVワクチン

By , 2014年1月23日 7:57 AM

HPVワクチンの後に見られた副反応に対する評価、妥当な判断だと思います。

子宮頸がんワクチン、心身の反応が慢性化-安全性判断は次回へ、副反応検討部会

医療介護CBニュース 1月20日(月)22時11分配信

子宮頸がんワクチン、心身の反応が慢性化-安全性判断は次回へ、副反応検討部会

接種後の重い副反応が相次ぎ報告されている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)に関し、厚生科学審議会の検討部会は20日、慢性的な痛みといった副反応症例について、接種に伴う痛みや緊張などが身体の不調として現われた「心身の反応」の慢性化したものとする評価をまとめた。ワクチンの安全性については、次回会合で最終的に議論することとし、昨年6月以来中止している接種勧奨を再開するかどうかの判断も持ち越された。【烏美紀子】

この日の部会では、これまでの論点を整理した。副反応として報告されている症例が、▽接種から発症までの期間や症状の持続期間が一定していない▽リハビリや心のケアにより改善している症例もある-などの特徴から、接種後の局所の疼痛などが「心身の反応」を引き起こし、慢性の疼痛や運動障害として現われたと考えられると評価した。その場合、接種後1か月以上経過してからの発症は、接種との因果関係に乏しいなどとし、「身体的アプローチと心理的アプローチの双方を用いた治療」が重要だとした。

神経システムの異常による疾患や薬剤による中毒症状、免疫反応による可能性は、「これまでの知見からは考えにくい」とした。また、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの診断が付いている症例とワクチンとの因果関係は否定した。

この日の議論を基に報告書案をまとめ、次回会合で最終的な議論を行う予定。

私はこのワクチンの副反応を起こした方を実際に診たことはありません。しかし随分前に、ニュースである被害者の映像を見たことが印象に残っています。両下肢の不随意運動という訴えだったのですが、映像を見ると「不随意運動としては一般に見られないタイプの運動である」「肢位によって運動の周波数が変化する」「随意運動の最中には不随意運動が消失する」など、心因性 (いわゆるヒステリー) を疑わせる証拠がいくつかありました。その方の場合は、母親に疾病利得もありそうでした。こういう患者さんは神経内科医の診察を受けるべきだとブログに書こうかと思ったのですが、どのニュースかわかると個人が特定出来る状況だったので、当時は触れませんでした。

このように被害を訴える方の中には、心因性の要素の強そうな方が混ざっているのは事実だと思います。今回の副反応部会の結論は、「心身の反応」という表現でそこに言及しており、心因性としての治療のチャンスを逃さないためにも、評価出来るものだと思います。 (今回は心因性の症状についてのみ書きましたが、もし器質的な障害を伴う副反応が存在するならば、そこはそこで議論が必要です)

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ALSとテンシロン

By , 2014年1月21日 10:25 PM

以前の抄読会に関するブログ記事で触れたことがある通り、ALSの患者さんでは、反復刺激試験で waningが見られることがあります。ある年配の先生に聞いたら、「そうだよ。おれ昔重症筋無力症と間違えたことあるもん(´・ω・`)」とおっしゃっていました。さすがにそれは針筋電図をしっかりやればわかりそうなものですが・・・ (^^;

第2回抄読会

ALSの患者の下痢にワゴスチグミンが有効であった経験や、ALSの電気生理検査でしばしば疲労現象が見られることから、テンシロンテストを行って呼吸機能を評価したらどうなるだろうか?などと議論が盛り上がりました。

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の患者さんで、たまに「疲れやすい」という訴える人がおり、こうした知見から考えると、神経筋接合部異常が易疲労感の原因なのかなと推測されます。でも、私自身、実際に易疲労感を訴える ALS患者で反復刺激試験をしてみたことがないので、実際のところはよくわかりません。

ALSでの反復刺激試験の異常が何故起こるか、最近 “Electromyography and Neuromuscular Disorders Clinical-Electrophysiologic Correlations Third Edition (David C. Preston, Barbara E. Shapiro)” を読んでいたら 60ページに解説がありました。

Other Disorders that may Show a Decrement on RNS

A decremental response with RNS occurs predominantly in primary disorders of the NMJ. However, a decrement also may be seen in other disorders, especially in severe denervation disorders (e.g., motor neuron disease). In any condition in which there is prominent denervation and reinnervation, newly formed NMJs, which occurs as denervated fibers are reinnervated , are immature and unstable. These immature and unstable NMJs may show a decrement in response to RNS. In addition to denervating disorders, some myopathic conditions, including the myotonic disorders and the metabolic myopathies (e.g., McArdle’s disease), may show a decrement in reponse to RNS. This underscores that RNS should not be performed in isolation.For every patient, a clinical history and directed neurologic examination, as well as routine nerve conduction studies and needle EMG, must be performed so that any decremental response during RNS can be interpreted correctly.

神経再支配が起こる時、新生した神経終末が幼若で不安定であるのが原因のようです。2004年の Neurology論文を見ると、”The decrement is probably a result of neuromuscular transmission failure caused by reduced readily available quantal stores in nerve terminals” とか “The most likely explanation for the reduction in SMUP size with a small increase in stimulus frequency is failure of neuromuscular transmission because of inability of the nerve terminal to release sufficient quanta of acetylcholine to evoke an endplate potential above the muscle fiber membrane threshold.” と書いてあり、新生された神経終末が幼若で不安定で十分量のアセチルコリンが放出されないということですね。

そして、かねてより疑問だった 「ALSの患者にテンシロンテスト (edrophonium test) を行ったらどうなるか」というも論文を見つけました。1994年に Muscle & Nerve誌に掲載された論文です。導入部に “Decremental motor responses to repetitive nerve stimulation (RNS) was originally reported in a case of amyotrophic lateral sclerosis (ALS) by Mulder, Lambert, and Eaton in 1959.” とあり、ALS患者での疲労現象を最初に報告したのがLambertや Eatonら (Lambert-Eaton myasthenic syndromeを報告した人たちですね) であったことを知り、ちょっとびっくり。余談はともかく、考察に “Excercise alone and edrophonium alone had no significant effect on the baseline decrement but in combination the two had a small effect on reducing the decrement.” とあります。テンシロンテストや運動負荷単独では効果なく、テンシロンテスト+運動負荷を行った場合のみ、少しだけ効果が見られたようです。強い効果はなさそうということですね。長年の疑問が氷解しました。

話は変わりますが、最初に紹介した、Electromyography and Neuromuscular Disorders Clinical-Electrophysiologic Correlations Third Edition (David C. Preston, Barbara E. Shapiro)という本、眺めていると色々面白いです。例えば、Guillain-Barre症候群の神経伝導検査で、初期にしばしば腓腹神経 (sural nerve) が保たれ “sural sparing” と呼ばれますが、393~394ページに、その仮説も紹介されていました。腓腹神経が感覚神経としては他の神経より大径なので、炎症/脱髄に強いのが理由と推測されているようです。へぇ~と思いました。

Why sural sparing occurs is not completely unknown, but it is likely related to preferential, early involvement of smaller myelinated fibers in AIDP.
Although it is not intuitively obvious, the recorded sural sensory fibers are actually larger, and accordingly have more myelin, than the median and ulnar sensory fibers. The routine median and ulnar sensory potentials are recorded distally over the fingers, where the nerve diameters are more tapered than those of the sural nerve. The sural nerve actually has larger-diameter myelinated fibers where it is stimulated and recorded in the lower calf. These larger-diameter fibers presumably are relatively more resistant to the early inflammatory, demyelinating attack.

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ゴルゴ13とギラン・バレー症候群

By , 2014年1月18日 11:02 PM

ゴルゴ13を読んでいたら、ゴルゴが髄液検査をするシーンに遭遇しました。ギラン・バレー症候群の診断を受けるシーンです。おー、ゴルゴが医者に背中を向けている (゚д゚)!

ゴルゴ13

ゴルゴ13

でも、このシーン、医学的におかしなことのオンパレードなんですね。

まず髄液検査が腹臥位になっている!普通は、側臥位ですし、どうしても難しい場合でも座位です。腹臥位で出来る検査ではないです。

そして、特異度の低い髄液検査での「蛋白細胞解離」を根拠に、診断を下してしまっています。症状がギラン・バレー症候群としては極めて非典型的 (手が突然しびれて、力が入らなくなって、数分後には症状が消失する) なので、電気生理検査や抗体検査 (ただし、この時代には抗体検査は出来なかったと思われる) などで詰めていかないと誤診の元です。こういう医者に身を任せるとは、ゴルゴにしては見る目がなかったものです。

ゴルゴオタクの先生にこの話をした所、「ゴルゴがギラン・バレー症候群だという描写は、他に数度出てくる (女工作員の話、台湾の漢方薬で治そうとする話、フィリピンの話)」と教えてくれました。基本的に、ギラン・バレー症候群は単相性の経過なので、再発を繰り返すのも不自然ですね。

この漫画は有名な某神経内科医が監修するようになったという噂で、2012年頃の連載で、「修験道の最奥の修行を完成して症状を克服し,結果的に心因であったと結論づけた」そうです (※私は連載を読んでいないので、確認したわけではありません)。

数十年に渡る誤診にも、やっとケリがついたと言えます。

さて、2013年12月の Lancet Neurologyの総説が、”axonal Guillain-Barre syndrome“でした。千葉大学の桑原先生の書かれた総説ですが、非常によく纏まっていて、神経内科医必読だと思います。あと、2012年に結城先生が New England Journal of Medicineに書かれた総説 “Guillain-Barre syndrome” も併せてお勧めしておきます。

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不適切な CM

By , 2014年1月16日 5:46 PM

最近、テレビ CMを見て不愉快な思いをしました。シオノギ製薬が行っているインフルエンザの CMです。

シオノギ製薬 CM

薬局で売っている薬ならともかく、病院で使用される薬剤についてテレビCMを行うのは変です。なぜなら、このような薬剤を使用するかどうかは、医師が医学的根拠に基づいて決定すべきことだからです。感染症の知識に乏しい一般人が誤解するような CMを行うことは、有害と言えます (医学的に必要ない薬剤を、患者さんが必要あると思い込んでいる時、しばしば不信感を持たれます。また、説得にも長い時間を要します)。この CMは医療関係者の間で批判が高まっており、いくつかのサイトでわかりやすく解説されているので紹介しておきます。

不誠実な製薬会社の宣伝キャンペーン

塩野義製薬のインフルエンザの啓蒙CM・サイトについて

年末から医療従事者の間でひどいと話題になっていた塩野義製薬の抗インフルエンザ薬のCMについて

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指輪の外し方

By , 2014年1月13日 3:17 PM

手術などで指輪を外さなければならないのに外れない・・・そういうときに役立つサイトを知り合いに Facebookで教えて頂きました。

指輪の外し方教えます

特に外科系の医師やナースにとって、参考になると思います。

ちなみに、某先輩の結婚指輪は、女性との飲み会になると勝手に外れます (^^;

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