Category: 医学と医療

臨床医が語るしびれ・頭痛から認知症まで: 神経内科のかかり方

By , 2013年9月8日 10:23 AM

臨床医が語るしびれ・頭痛から認知症まで: 神経内科のかかり方 (岩田誠著、日本評論社)」を読み終えました。一般の方向けに書かれた本です。

書店の健康本コーナーに行くと、「よくぞここまで嘘八百並べられたものだ」と思うものが多いのですが、この本は自信を持ってお薦めできます。さまざまな症状について考えるべき病態が解説されていて、またどう対処すべきかが書かれています。著者は日本の臨床神経学を牽引してこられた先生で、臨床医の視点がそこにはあります。

神経内科医にとっても、「そう説明すればわかりやすいな」とか、「こういう解釈をすれば患者さんも前向きになれるだろうな」と、はっとさせられて、非常にためになりました。

内容の豊富さに比べて、良心的な価格の本でもありますし、是非多くの方々に読んで頂きたいです。

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ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム

By , 2013年8月24日 6:46 PM

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム (古屋晋一著、春秋社)」を読み終えました。

私は、演奏家がどうやって音楽を認識しているかや、音楽家の病気などに興味があり、たまに論文を読んでは過去にブログで紹介してきました。しかし、それらは断片的な知識の寄せ集めで、イマイチこの分野の研究の全体像が見えにくいところがありました。ところが、本書は最新の知見を織り交ぜつつ、体系的にこの分野を網羅して書かれています。きちんと文中に引用文献が示され、巻末には引用文献リストがついています。

一般に音楽認知のメカニズムに対するアプローチとしては、functional MRI, PET、脳波などが知られていますが、著者はこれらの方法を使った研究を広く解説しつつ、工学畑出身の人間であることを生かし、様々な機器を使ったアプローチを紹介しています。また、著者はピアノ演奏をされるそうで、ピアニストの視点がそこにはあります。私もヴァイオリン弾きとして、「あー、これは演奏する人間だったら実感できるな」なんて思いながら読みました。

内容は高度ですが、一般人向けに平易に書かれており、音楽好きの方に、今一番勧めたい本です。

(上記リンク先、アマゾンの書評も御覧ください)

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ニューキノロン系抗菌薬と末梢神経障害

By , 2013年8月21日 10:48 PM

ニューキノロン系抗菌薬は広域なスペクトラムを持ち、感染症診療の現場ではかなりよく見かける薬剤です (過剰に使われている感もありますが・・・)。一方で、約 1-4%に見られるという中枢神経症状 (けいれんや精神症状、頭痛、浮動性めまい、意識障害など)、あるいは アキレス腱断裂といった副作用に注意する必要があります。

2013年8月16日の New England Journal of Medicineのニュースに、FDAがニューキノロン系抗菌薬による末梢神経障害を添付文書に記載するように求めていることが掲載されました。どうやら末梢神経障害は、経口薬と注射薬で問題になるようです。

Fluoroquinolone Labels Updated to Reflect Heightened Risk for Peripheral Neuropathy

By Kelly Young

The FDA is requiring that the labels of fluoroquinolone antibiotics warn of the drugs’ increased risk for peripheral neuropathy.

The risk has been observed with oral and injectable fluoroquinolones, but not topical agents. Patients could experience peripheral neuropathy any time during their treatment, and it could persist for months or years or be permanent.

Patients should contact their healthcare providers if they develop symptoms consistent with peripheral neuropathy in the arms and legs, including pain, burning, numbness, or weakness; change in sensation to touch, pain, or temperature; or change in the sense of body position.

Patients who develop these symptoms should stop taking the antibiotic and receive alternative therapies unless the benefit of the fluoroquinolone outweighs the risk.

Link(s):

FDA MedWatch safety alert (Free)

これだけ使われていて、経験ないけどなぁ・・・、どういうタイプの末梢神経障害を起こすのだろうと思って、いくつか論文をチェックしてみました。

まずは Lancet誌に掲載された初期の症例報告。

Peripheral neuropathy associated with fluoroquinolones.

37歳男性が化膿性脊椎炎のため pefloxacinで治療を受けた。Pefloxacinでの治療開始 5ヶ月に両下肢に手袋靴下型の錯感覚が出現し、続いて右下肢の筋力低下と歩行障害が出現した。総腓骨神経の神経伝導速度は 43 m/sだった。筋電図では前脛骨筋と長腓骨筋に脱神経電位と多相性運動単位電位を認めた。男性には Hodgikin病のため vincristine total 18 mgを含む、化学療法、放射線治療の既往があった。その他に末梢神経障害を起こしうる疾患はなかった。Pefloxacinを中止して 10日以内に末梢神経障害は著明に改善した。6ヶ月後に化膿性脊椎炎が再発したため、ofloxacinを開始したところ、15日以内に末梢神経障害が再発し、中止後 7日以内に改善した。Flucloxacillinは胃腸症状によりコンプライアンスが不良だったためか化膿性脊椎炎が再発したので、peflxacinを再投与したところ、15日以内に末梢神経障害が再燃した。Ciprofloxacinに変更したところ、2ヶ月間ごく軽い錯感覚が見られたのみだったが、その後これらの症状に耐えられなくなり、中止を余儀なくされた。総腓骨神経の伝導検査では伝導速度が 37 m/sで、短趾伸筋の針筋電図では脱神経電位を伴った多相性運動単位電位がみられ、toxic neuropathyに合致する所見だった。

Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌には、スウェーデンからある程度まとまった報告がありました。

Peripheral sensory disturbances related to treatment with fluoroquinolones.

1993年、スウェーデンの医薬品副作用委員会 (Swedish Adverse Drug Reactions Advisory Committee; SADRAC) に582例のニューキノロン系抗菌薬の副作用が報告され、37例が感覚性末梢神経障害だった。21例が男性で、15例が女性であり、平均年齢は 51歳だった (16~89歳)。症状の出現は、治療開始後 1時間~4ヶ月後の間だった。68%が投与開始後 1週間以内で、86%が 2週間以内だった。症状は錯感覚 (81%)、しびれ感/感覚低下 (51%)、疼痛/感覚過敏 (27%), 筋力低下 (11%) だった。投与をやめてから61%が1週間以内に、71%が2週間以内に改善した。発症までの期間と症状の持続期間には関連がなかった。症状出現の予測因子は、腎障害、糖尿病、リンパ悪性腫瘍、神経障害の原因となる他の薬剤の使用だった。末梢神経障害の正確なメカニズムはよくわからなかった。ある 1例では、筋電図で異常なく、神経伝導速度は正常だった (浮動性眩暈、疼痛、筋痙攣を呈した症例→疼痛、筋痙攣なので、small fiber neuropathyだったと考えれば、筋電図、神経伝導検査が正常だった説明はつくように思うが、その辺の記載なし)。

これを見ると、大体の臨床像のイメージがつかめます。投与を開始してから 2週間くらいまでに発症し、length dependencyのある sensory dominant neuropathyを呈し、投与をやめると多くは改善するようです。

ニューキノロン系抗菌薬を長期使用する患者さんを診る機会はあまりないけれど、注意しておこうと思いました。

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Glucocorticoid-Induced Bone Disease

By , 2013年8月15日 7:04 AM

2013年7月28日のブログで、ステロイドと骨粗鬆症について書きました。それに関連して、少し古いですが 2011年の New England Journal of Medicine 誌に面白い論文が掲載されているのを知りました。

Glucocorticoid-Induced Bone Disease

Robert S. Weinstein, M.D.

N Engl J Med 2011; 365:62-70July 7, 2011DOI: 10.1056/NEJMcp1012926

This article reviews the risks of osteoporosis and osteonecrosis associated with glucocorticoid use, which are present even in the absence of low bone mineral density, and discusses strategies to reduce the risk of fractures and the data to support the strategies.

この論文で面白いのは、ステロイド性骨粗鬆症でFRAXを用いることの問題点を指摘していることです。著者はその理由として、次の点を挙げます。

・ステロイドの累積投与量や治療期間を勘案しておらず、ステロイドによる骨折リスクを低く見積もる可能性がある。

・大腿骨頚部の骨密度が使用されているが、ステロイドによる骨粗鬆症では椎体骨折の方がリスクが高い。そして閉経後女性での骨粗鬆症に対して、アルゴリズムに通常の危険因子を含めるのはそぐわないかもしれない。

アメリカリウマチ学会のガイドラインでは FRAXを用いていますが、これは今後の課題となるのかもしれません。

また、この論文では各種骨粗鬆症予防薬や各種ガイドラインの一覧表がよくまとまっていました。

Table2

Table2

Table3

Table3

多くのガイドラインでは、ステロイド内服時はビタミン Dとカルシウムを摂取することを進めていますが、合剤があると楽ですね。デノスマブを使用していると「デノタス」という合剤を処方できるのですが、何故かデノスマブを使用していないと保険適応外。デノスマブを使っていなくても処方出来たら良いのにと思います (ちなみに、ビタミンD+カルシウムの合剤は、OTCでは「カルシチュウ」という名前で販売されており、薬局で普通に購入できます)。

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生化夜話

By , 2013年8月10日 8:02 AM

「細胞を扱う研究者が飲み会で話す余談のネタを提供する」細胞夜話について、以前紹介しました。

同様に「研究者が飲み会で話せる生化学関係のネタを提供する」生化夜話も存在するそうです。

生化夜話

タイトルを見ると、どれも面白そうです。今は上記リンクからつまみ読みしていますが、。細胞夜話のように本になったら、纏めて読もうと思っています。

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抗体検査の話

By , 2013年8月9日 7:16 AM

神経疾患の中には、診断に抗体検査が大きな役割を示すものがあります。ギラン・バレー症候群の抗ガングリオシド抗体、視神経脊髄炎の抗アクアポリン4抗体、Isaacs症候群/Morvan症候群/抗 VGKC抗体陽性辺縁系脳炎の抗 VGKC抗体、重症筋無力症 (sero-negative) の抗 MuSK抗体、Lambert-Eaton myasthenic syndrome (LEMS) の抗 VGCC抗体、抗 NMDA抗体辺縁系脳炎での抗 NMDA抗体、橋本脳症での抗α-enolase抗体、傍腫瘍症候群での抗 Hu/Yo/Ri/Ma・・・抗体など。抗体が検出されれば診断の大きな裏付けになります。しかし、これらの抗体の多くは商用サービスでは測定出来ません。例外的に、傍腫瘍症候群の抗体は SRLという検査会社で受け付けていますが、かなり高額になります (私が以前提出したとき、抗 Hu/Yo/Ri/Ma・・・抗体は一つ数万円)。また、シノテストでは抗ガングリオシド抗体を受け付けていますが、抗ガングリオシド抗体の中でも測定出来るのは抗 GM1抗体と抗 GQ1b抗体のみです。

こうした抗体を測定しないでもある程度診断は可能ですが、やはり少しでも証拠を揃えて診断精度を高めたいですし、学会報告や論文発表の場合には、必ず抗体が陽性だったかどうかは突っ込まれるので、少なくとも大学病院クラスでは必要性の高い検査です。また、抗体と臨床症状の比較から、新しい知見が得られる可能性もあります。

では、神経内科医はどうしているかというと、研究機関に送っているのです。口コミで、「○○抗体なら△△大学」という情報が、出回っています。研究機関側からすれば全国からサンプルが集まりますし、臨床医からすればほぼ無料で検査して頂けることで、Win-Winの関係が作られます。しかし、この方法には欠点があります。一つは、研究機関はあくまで検査を研究のためにしているので、結果がどのくらいで戻ってくるかわからなかったり、申し込みの手間が煩雑だったりします。それに、研究目的ということは、研究者が研究をやめてしまえば、検査が出来なくなる可能性があります。

そんな中、コスミックコーポレーションの受託測定が面白いことを始めています。

①マイナーな検査も受け付けている

抗アクアポリン4抗体、抗VGCC抗体、抗NMDA抗体といった、これまで各研究機関に送っていた検査が可能です。ただし、学問的には、抗体の測定法で陽性率や陽性の意義が変わってくることがありますので注意が必要です。

②とにかく安い

Neurolineのサービスを見ると、非常に安いです。傍腫瘍症候群の抗体とか、目が点になる安さです。筋炎の抗体検査も充実しています (※この検査がどうかは確認していませんが、知り合いの先生から、安かろう悪かろうの検査には注意しなければならないということを教わりました)。

 

抗体測定

抗体価格

 

研究用なので診断に用いないでくださいとか、保険請求しないでくださいとは書いてありますが、そうではあっても神経内科医にとってかなり便利なサービスだと思います。(とはいえ、まだ使用したことがないので、実際に使用した方から意見が伺えると嬉しいです)

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PiB PET

By , 2013年8月8日 7:12 AM

アルツハイマー病の原因は良くわかっていませんが、β-アミロイドが毒性を持って神経を傷害するという β-アミロイド仮説が有力な仮説として支持されています。実際にアルツハイマー病の脳組織には β-アミロイドが沈着しており、β-アミロイドに結合するリガンドを放射性同位元素でラベリングすれば、PETを用いて早期から β-アミロイドを検出することができます。そして Carbon11 ([11C])-labeled Pittsburgh Compound B (PiB) PETが、近年研究に広く用いられるようになってきています。アルツハイマー病に対する感度 95%、軽度認知障害 mild cognitive impairment (MCI) での感度 60%と、他の検査法に比べてかなり高い感度を誇ります。

ところが、アミロイドが蓄積する疾患はアルツハイマー病だけはありません。Archives of Neurologyに、興味深い症例報告が掲載されました。

Does a Positive Pittsburgh Compound B Scan in a Patient With Dementia Equal Alzheimer Disease?

Simon Ducharme, MD, MSc1,2; Marie-Christine Guiot, MD, FRCPC3; James Nikelski, PhD4; Howard Chertkow, MD, FRCPC3,4

JAMA Neurol. 2013;70(7):912-914. doi:10.1001/jamaneurol.2013.420.

Importance The clinical role of amyloid brain positron emission tomographic imaging in the diagnosis of Alzheimer disease is currently being formulated. The specificity of a positive amyloid scan is a matter of contention.

Observations An 83-year-old Canadian man presented with a 5-year history of predominantly short-term memory loss and functional impairment. Clinical evaluation revealed significant, gradually progressive short-term memory loss in the absence of any history of strokes or other neuropsychiatric symptoms. The patient met clinical criteria for probable Alzheimer disease but had a higher than expected burden of white matter disease on magnetic resonance imaging. A positron emission tomographic Pittsburgh Compound B scan was highly positive in typical Alzheimer disease distribution. The patient died of an intracerebral hemorrhage 6 months after the assessment. Autopsy revealed cerebral amyloid angiopathy in the complete absence of amyloid plaques or neurofibrillary tangles.

Conclusions and Relevance This patient demonstrates that a positive Pittsburgh Compound B scan in a patient with clinical dementia meeting criteria for probable Alzheimer disease is not proof of an Alzheimer disease pathophysiological process. A positive Pittsburgh Compound B scan in typical Alzheimer disease distribution in a patient with dementia can be secondary to cerebral amyloid angiopathy alone.

78歳頃から徐々に進行する記憶障害を持つ男性が 83歳で受診し、診察時の認知機能検査 MMSEで 23点 (満点は 30点) と低下を認めました。頭部MRIでは側脳室周囲の白質病変が目立ちましたが、脳梗塞や微小出血を示唆する所見はありませんでした。PiB PETは陽性で、β -アミロイドの分布は典型的なアルツハイマー病の所見でした。6ヶ月後に、患者は脳出血で死亡しました。病理解剖では、アルツハイマー病を示唆する所見は一切ありませんでしたが、皮質やくも膜下の多くの血管は β-アミロイド陽性であり、アミロイドアンギオパチーと診断されました。著者らは、アミロイドアンギオパチーによって PiB PETでアルツハイマー病のような所見を呈することがあると伝えています。

PiB PETは特許の関係もあり非常に高額ですが、信頼性の高い検査とされています。それでも、アルツハイマー病以外にアミロイドアンギオパチーのアミロイドを認識してしまう可能性については、肝に命じておく必要があると思います。なかなか教訓的な症例でした。

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朽ちていった命

By , 2013年8月7日 12:18 AM

朽ちていった命 -被曝治療 83日間の記録- (NHK「東海村臨界事故」取材班、新潮文庫)」を読み終えました。涙なしでは読めない本でした。

この本は東海村での臨界事故をテーマにしています。ずさんな放射性物質管理が公然と行われる中で、大内久氏は初めての作業を上司から指示された通りに行い、チェレンコフ光を見ました。それは目の前で臨界事故が起きたことを意味しました。

事故翌日に行われた緊急被曝医療ネットワーク会議では議事録が残っていませんが、メモには 8 Svという文字が見られます。本書には、そこからの大内氏の闘病生活が詳細に描かれています。眼を見張るのが、ズタズタに引き裂かれた染色体の写真です。治療班は末梢血造血幹細胞移植を施し、移植細胞は生着しましたが、最終的には血球貪食症候群が全てを無に帰しました。また、ズタズタに引き裂かれた染色体から容易に推測出来る通り、脱落していく皮膚の再生は望むべくもありませんでいた。本書には見るも無残な皮膚の写真が掲載されています。彼の死後、司法解剖がなされました。筋線維のほとんどない筋病理の写真が印象的でした。彼のように、一瞬で染色体がズタズタに引き裂かれるような大量被曝をすると、現代医療では全く歯が立たないことがよく分かります。

この本は、放射線の恐ろしさを教えてくれるとともに、助かる見込みのない命に対して我々がどのように接するべきかを考えさせます。医学的な記載が非常にしっかりしているので医療従事者が読んでも違和感がありませんし、医学的知識がなくても読めるように書かれています。是非多くの人に読んでいただきたいです。

最後に、知り合いの先生からこの症例について記された論文・抄録を教えて頂いたので、紹介しておきます。

Brief Note and Evaluation of Acute-radiation Syndrome and Treatment of a Tokai-mura Criticality Accident Patient

Pathological Changes in Gastrointestinal Tract of a Heavily Radiation-exposed Worker at Tokai-mura Criticality Accident

2.東海村放射線高線量被曝事故における緊急被爆医療ネットワークの役割

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フィンゴリモド

By , 2013年8月3日 10:11 PM

多発性硬化症の治療薬にフィンゴリモド (商品名ジレニア) という薬剤があります。治験に関わった医師には “FTY720” という方がしっくりくるかもしれません。FREEDOMS試験TRANSFORM試験といった臨床試験で、有効性が示された薬剤です。

導入時に徐脈になったり、ヘルペスウイルス感染症が重篤化したり、白人でメラノーマが増えたりといった副作用は懸念されますが、自己注射が必要なインターフェロンと異なり経口薬というのが大きなウリです。

ところが、2013年7月30日の Reuter誌で、フィンゴリモドによると推測される進行性白質脳症 (PML) の症例が報道されてしまいました。

Patient taking Novartis MS pill developed rare disease

Tue Jul 30, 2013 5:18am EDT
* Patient took Novartis’ Gilenya MS pill

* Developed progressive viral disease

* First incidence in 71,000 patients

* Gilenya facing competition from Biogen’s Tecfidera

ZURICH, July 30 (Reuters) – A patient taking Novartis’ multiple sclerosis pill Gilenya developed a rare and potentially fatal viral disease, the Swiss drugmaker said on Tuesday, an unexpected setback as it faces growing competition from new oral treatments.

Gilenya is one of Novartis’ big new drug hopes, growing 66 percent in the second quarter to $468 million. But the drug faces competition from new medicines such as Biogen Idec’s Tecfidera.

Novartis said it had been informed of a case of progressive multifocal leukoencephalopathy (PML) in a patient who had been taking Gilenya for MS for seven months.

It said it was working with the reporting physician to understand all possible contributing factors, including those beyond treatment, given several atypical features of the case.

“The course of the underlying neurological disease was rapid with some atypical findings for MS on the MRI scans of the brain and spinal cord, as well as some unusual clinical features,” Novartis said in a statement.

Novartis said all previously reported cases of PML among the approximately 71,000 patients treated with Gilenya thus far had been attributed to prior treatment with Biogen Idec’s Tysabri, which bears a known risk of PML.

Deutsche bank analyst Tim Race said the case may provoke some concerns about Gilenya’s future growth potential. But he noted the incidence of reported PML cases for Gilenya has so far been extremely low.

“By the time there was a similar level of patient experience with Tysabri there had been 298 cases reported. Thus, even if the risk proves to be real it is likely to be of a very different order of magnitude,” Race said in a note.

販売元のノバルティス社は、これまでフィンゴリモド内服中に発症した PMLは全て、過去に使用されていた Natalizumab (タイサブリ) に起因するものだったとしています。しかし、今回の症例はフィンゴリモドが原因と認めざるを得ないようです。おそらく稀とはいえ、フィンゴリモドで PMLを発症することがあるとすれば、使用するハードルはこれまでより高くなりますね。記事では、患者が 7ヶ月間内服していたという情報以外書かれていないので、今後詳細な症例報告が出てくるのを待ちたいです。

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Sad music induces pleasant emotion

By , 2013年8月2日 8:55 AM

2013年6月13日の frontiers in psychology誌に、”Sad music induces pleasant emotion” という論文が掲載されました。無料公開されています。

Sad music induces pleasant emotion

著者は東京芸術大学、理化学研究所のグループです。責任著者は、鳥の歌研究で有名な岡ノ谷一夫先生です。

論文を読んで最初に驚いたのが、査読者の名前が公開されていることです。こうされると、査読される側もいい加減な査読は出来ませんね (^^;

内容は、理化学研究所のプレスリリースがあるので、そちらをご覧いただくのがよいと思います。

悲しい音楽はロマンチックな感情ももたらす

-なぜ私たちは悲しい音楽を聴くのかが明らかに-

プレスリリースで大体の内容はわかるのですが、折角論文を読んだので、プレスリリースの補足をしながら、簡単に内容を紹介します。

悲しみは一般に negativeな感情と考えられるのに、われわれは何故悲しい音楽を聴くのか?

最初に著者らが立てた仮説は以下の 2つでした。

①体験した感情 “felt emotion” は必ずしも判断された感情 “perceived emotion” と一致しないのではないか ?

②音楽的経験のある方が、悲しい音楽を聞いた時により悦びを感じるのではないか?

そんな問に答えるため、18歳~46歳の44人(男性19人、女性25人)の実験参加者に聞いてもらい、鑑賞後にどのような感情が生じたか、62の感情 (Table 1) とその強度を答えてもらいました (神経心理学の研究でよく用いられる手法です)。

table.1

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その結果、悲しい音楽は悲しみを与えるものの、被験者は実際にはそこまで悲しい感情になっておらず、曲から受けとるよりもロマンチックな感情 (romantic) や、陽気な感情 (blithe emotion) が生じていることが明らかになりました (Figure 1)。

figure.1

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このことには、音楽経験は関係ないという結果でした。音楽経験が関係ないという結果は、Kawakamiらによる先行研究とは矛盾しますが、著者らは Kawakamiらが使用した評価尺度に問題があったのではないかと考えているようです。

著者らは、悲しい音楽で快の感情が生じるという「両価的感情 (ambivalent emotion)」が何故生じるのか、3つの可能性を考えました。

1) 聴き手が予期したことが当たると心地よいと感じる予測効果 (prediction effect) です。例えそれが悲しい音楽であったとしても生じます。

2) 芸術を愉しむという審美的なコンテクストでは、悲しい音楽でも快の感情が引き起こされるのかもしれません。

3) 日常では、判断された感情は周囲の状況にマッチしています。しかし、音楽が危険を表現していても、聴き手は安全です。そのため、われわれは代理的に感情を経験をすることができます (代理感情)。

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