Category: 医学と医療

ステロイドと骨粗鬆症

By , 2013年7月28日 9:27 AM

神経疾患でステロイドを使う症例は結構あります。現在の私の外来でも、視神経脊髄炎 (NMO), 重症筋無力症、慢性炎症性多発根神経炎 (CIDP), Neuro-Sweet disease, Churg-Strauss症候群などの患者さんにステロイドの長期投与をしています。このようにステロイド投与をしている患者さんでは、投与後 3ヶ月以内に骨密度の減少が始まり、6ヶ月後ではその減少はピークに達します。そのため、骨粗鬆症対策が大事になってきます。しかし、神経内科医の間では、ステロイド性骨粗鬆症に対して議論になることは少ないのが現状なのではないかと思います。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011年版」を紐解くと、116~117ページに「ステロイド性骨粗鬆症」の記載があり、「2010年現在,わが国では「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2004年度版」が用いられており」とされますが、2004年のガイドラインではやや古い感は否めず、実際に新薬の開発に伴い薬物療法も変化してきています。

最近、アメリカリウマチ学会のガイドラインを読む機会があったのですが、非常にためになりました。無料でアクセスできて、内容もそれほど長くないのが素晴らしいところです。

American College of Rheumatology 2010 Recommendations for the Prevention and Treatment of Glucocorticoid-Induced Osteoporosis

JENNIFER M. GROSSMAN,1 REBECCA GORDON,2 VEENA K. RANGANATH,1 CHAD DEAL,3
LIRON CAPLAN,4 WEILING CHEN,1 JEFFREY R. CURTIS,5 DANIEL E. FURST,1 MAUREEN MCMAHON,1
NIVEDITA M. PATKAR,5 ELIZABETH VOLKMANN,1 AND KENNETH G. SAAG5
Arthritis Care & Research
Vol. 62, No. 11, November 2010, pp 1515–1526
DOI 10.1002/acr.20295
© 2010, American College of Rheumatology

このガイドラインの冒頭には、ガイドラインは絶対的なものではなく、個々の患者さんに応じて治療を決めるように、といった内容が書かれています。ガイドラインの立場を表した、非常に大事な文章だと思います (これを読むと、ガイドラインを訴訟の道具にすべきではありませんね)。

Guidelines and recommendations developed and/or endorsed by the American College of Rheumatology (ACR) are intended
to provide guidance for particular patterns of practice and not to dictate the care of a particular patient. The ACR
considers adherence to these guidelines and recommendations to be voluntary, with the ultimate determination regarding
their application to be made by the physician in light of each patient’s individual circumstances. Guidelines and recommendations
are intended to promote beneficial or desirable outcomes but cannot guarantee any specific outcome. Guidelines
and recommendations developed or endorsed by the ACR are subject to periodic revision as warranted by the evolution
of medical knowledge, technology, and practice.

以下、簡単に内容を紹介します。

①ステロイドを開始するときは、カルシウムとビタミン Dを補充することが推奨される。

Calcium and vitamin D supplementation counseling was recommended for all patients beginning glucocorticoid therapy. Vitamin D supplementation to achieve “therapeutic” levels of 25-hydroxyvitamin D, or dosages of 800–1,000 IU/day are 2 target dosing regimens; however, glucocorticoids can interfere with vitamin D absorption and may necessitate a higher supplementation dose to achieve therapeutic levels (97).

②閉経後女性、50歳以上の男性にステロイドを開始するときは、FRAXにより骨折リスクを評価して、治療を決定する。

・FRAXのサイトは下記。サイト上部にある「計算ツール」タブから、患者の人種を選べる (骨折リスクには人種差がある)。

FRAX

・ FRAXによる 10年間の骨折確率から、骨折リスクを ” ≦10% low risk, 10~20% medium risk, 20% < high risk” とする。

・下記フローチャートに則り、治療を決定する。

Approach to postmenopausal women and men age > 50 years

Approach to postmenopausal women and men age > 50 years

※薬物名に関しては次の通り

alendronate: フォサマック、ボナロン, risedronate: ベネット、アクトネル, teriparatide フォルテオ, zoledronic acid: ゾメタ (※ゾメタは、日本においては骨粗鬆症では保険適応外。内分泌学会から要望が出されたが却下された模様)

③閉経前女性および 50歳未満の男性にステロイドを開始するときは、下記フローチャートに従う。

approach to premenopausal women and men age < 50 years

Approach to premenopausal women and men age < 50 years

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SCIWORA

By , 2013年7月25日 8:02 AM

最近、外傷後の頸髄損傷の方を診療する機会がありました。珍しいことに、その患者さんは明らかに両上肢の筋力低下があるにも関わらず、頚髄 MRIでは脊柱管狭窄も髄内異常信号もありませんでした。念のため針筋電図を検査すると、軽度の神経原性変化がみられ、神経再支配が始まったばかりと解釈すると損傷からの時期 (2~3週間) と一致する所見でした。神経伝導検査では障害部位に一致して CMAP amplitudeの低下がありました。病歴や電気生理検査の所見を踏まえると、脊髄損傷が神経症状の原因であることは明らかです。MRIで異常がないことが矛盾しないのか少し調べてみると、2ヶ月くらい前に面白い論文が出ていました (というか、知り合いの整形外科の先生から教えて頂きました)。

Early magnetic resonance imaging in spinal cord injury without radiological abnormality in adults: a retrospective study.

J Trauma Acute Care Surg. 2013 Mar;74(3):845-8. doi: 10.1097/TA.0b013e31828272e9.
Boese CK, Nerlich M, Klein SM, Wirries A, Ruchholtz S, Lechler P.Source
Department of Trauma, University Hospital Giessen and Marburg, Marburg, Germany.

Abstract
BACKGROUND:
The purpose of this study was to describe the clinical and imaging characteristics of patients experiencing blunt spinal trauma without radiological abnormalities but transient or persistent neurological deficits.
METHODS:
This retrospective study analyzed plain radiographs, computed tomographic scans, and magnetic resonance images of patients with spinal cord injury without radiological abnormality (SCIWORA) who were admitted to a Level I trauma center. Neurologic status, Frankel grade, and short-term patient outcome were assessed.
RESULTS:
Of 1,604 patients experiencing blunt spinal trauma, 21 (12 men and 9 women) with a mean age of 35.5 years (range, 16.2-70.9 years) presented with a clinicoradiographic mismatch. Magnetic resonance imaging (MRI) was available in 15 patients. In seven patients (46.6%), MRI revealed either neural (n = 2, 13.3%) or extraneural (n = 5, 33.3%) spinal abnormalities. Importantly, in eight patients (53.3%), no spinal abnormalities were visible on MRI. Furthermore, subgroup analysis revealed no prognostic value regarding the presence or absence of detectable spinal injuries.
CONCLUSION:
Spinal abnormalities were not detected on MRI in a substantial proportion of patients presenting with SCIWORA. The prognostic value of MRI findings in SCIWORA needs to be validated by future studies.
LEVEL OF EVIDENCE:
Epidemiological study, level V.

2005~2011年にレベル1外傷センターで鈍的脊髄外傷と診断された1604例を対象としました。神経学的所見を有するものの、X線及び単純 CTで脊髄損傷を示唆する所見がない患者 (SCIWORA) は 21例 (男性 12例、女性 9例, 16.2~20.9歳 (平均 35.5歳)) で、交通外傷が 10例、スポーツ外傷が 7例、転倒が 4例でした。21例のうち 15例で、24時間以内に全脊髄 MRI (1.5T) を施行したところ、8例では異常がなく (real SCIWORA)、2例では脊髄に異常所見があり、5例では脊髄以外に異常所見がありました。退院時、MRIで異常がなかった 8例のうち 5例は完全に改善しましたが、3例で神経学的後遺症が残りました。脊髄に浮腫性変化が検出された 2例では、1例が完全に回復し、残りの 1例では一時的な感覚障害のみが見られました。頸椎椎間板に変性があるものの脊柱管狭窄や神経圧迫の所見がなかった 5例では、3例で完全に改善しましたが、残りの 2例では回復が不完全でした。MRIを施行しなかった 6例では、24時間以内に完全に神経学的な改善がありました。

 神経内科では外傷を診療する経験は少ないですが、「MRIで異常がないから外傷による神経障害は考えにくくて、他の神経疾患がないか診て欲しい」という依頼を受けることはあり、MRI正常の脊髄損傷は存在しうるという論文を知っておく価値は高いのかなと思いました。

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Brainbow

By , 2013年7月21日 8:50 AM

以前紹介した、「脳の歴史」という本に、脳細胞に蛍光蛋白質を発現させて撮像する “Brainbow” の写真が載っていました。脳を意味する “Brain” と、虹を意味する “Rainbow” を掛けあわせた言葉ですね。

最近、科学雑誌に Cellに、Brainbowの写真が載っているのを見つけました。とても綺麗な写真です。無料で公開されています。

 Cell -Brainbow-

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アニサキス

By , 2013年7月18日 7:48 AM

徳田安春先生達が、BMJ case reports誌に面白い論文を投稿されています。アニサキスの症例報告なのですが、何と駆除する際の動画が付いています。エルガー作曲の威風堂々が BGMとして使われており、素晴らしい出来栄えです。是非御覧ください (2013年7月18日現在無料で視聴できます)。

Endoscopic capture of Anisakis larva (a video demonstration)

アニサキスは救急当直をしているとたまに診療する機会があって、消化器科の先生に胃カメラを御願いすることがあるのですが、こんな感じで駆虫するんですね。

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統計学的有意差

By , 2013年7月13日 5:14 PM

研究で統計学的有意差が出なかった時・・・すごくポジティブな解釈をまとめたブログが面白いです。でも、本当に論文で使ったら多分大変なことになります (笑)

 A borderline definite marginally mild notably numerically increasing suggestively verging on significant result

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今後の予定と寄生虫

By , 2013年7月4日 5:00 PM

2012年11月、私は国内留学から大学に戻ったのですが、論文投稿が佳境だったこともあり、夜は仕事が終わってからラボにでかけて実験していました。あまりの時間の足りなさに、外勤日 (大学医局からは週 1日与えられている) を半日減らしてラボに行って実験を続け、最近なんとか論文が通りました。そして、一区切りということで、2013年6月30日を以ってラボを卒業しました。

その結果、7月に入って、週に半日フリーな時間が出来ました。外勤をもう半日増やして、その分、大学当直以外に月 3回やっている土曜日当直をやめるというのは一つの選択肢でしたが、折角なので、この生活を続けることを検討しています。

とりあえず、8月頃から、親しい先輩に乞うて、週半日ほど電気生理検査の修行をしようと思います。神経疾患には画像にうつらない病気が多くあり、電気生理検査が診断の決め手になることがあります。ところが、神経内科医の中でも、電気生理検査を行う能力、解釈する能力にはかなりのばらつきがあるのが現状です。私はこの分野があまり得意ではないので、時間が作れるうちに勉強しておこうと思ったのです。

7月中は、美術館や博物館など、普段行けないところに行くことにしました。今日行ったのは、目黒寄生虫館です。入館料は無料で、その分寄付を募っています。入り口で 1000円入れて、中に入りました。昔当直中に見つけたアニサキスや、郡山の病院勤務時代に患者さんの便の中にいたサナダムシが、標本として展示されていました。学生の頃の講義以来名前を見る寄生虫もいて、懐かしかったです。女子高生の集団が、バンクロフト糸状虫で胸が膨らんだ女性の写真を見て大盛り上がりして、ベルリンの医学博物館で男性器の標本前で盛り上がっていたドイツ人女学生たちを思い出しました。ちなみに、Yahoo!Japanで「寄生虫博物館」と検索すると、関連項目で「デート」と出てきますが、今回もいつもながらの一人ですた。

(関連)

黄熱の歴史

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ミトコンドリア置換、臨床応用に向けて

By , 2013年7月1日 7:47 AM

2013年2月19日のブログで生まれてくる赤ちゃんからミトコンドリア病の遺伝子を排除出来る方法があることをお伝えしました。2013年1月31日の Natureに掲載された紡錘体移植の論文です。イギリスでは、臨床応用に向けて着々に進んでいるようです。今年末に草案が作られ、早ければ 2年以内に手続きが制定されると BBCが報じています。

UK government backs three-person IVF

The UK looks set to become the first country to allow the creation of babies using DNA from three people, after the government backed the IVF technique.

It will produce draft regulations later this year and the procedure could be offered within two years.

Experts say three-person IVF could eliminate debilitating and potentially fatal mitochondrial diseases that are passed on from mother to child.

(略)

‘Designer baby’

“It is a disaster that the decision to cross the line that will eventually lead to a eugenic designer baby market should be taken on the basis of an utterly biased and inadequate consultation.”

One of the main concerns raised in the HFEA’s public consultation was of a “slippery slope” which could lead to other forms of genetic modification.

Draft regulations will be produced this year with a final version expected to be debated and voted on in Parliament during 2014.

(略)

ミトコンドリア病を持つ方にとっては朗報です。日本でこのような治療が出来るようになるのはいつになるのでしょうか。

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第6回上肢の神経機能回復セミナー

By , 2013年6月23日 12:14 PM

2013年6月21~22日に開催された第 6回上肢の神経機能回復セミナーに参加してきました。

脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科や、機械工学の専門家などが集まり、科の垣根を越えて活発な議論が行われました。田舎の一都市で開かれた小さな会にも関わらず、例年通り米国脳卒中学会の理事 Goldestein先生 (DUKE大学教授)、日本脳卒中学会の前会長篠原幸人など錚々たるメンバーが集まりました。

6月21日 (金) の演題で個人的に興味深かったのは、塚本浩先生が講演された「上肢の末梢神経エコー」でした。末梢神経エコーは一昔前にブームがあったのですが、いつしか下火になっています。しかし、ここ 10年くらいで probeが改良され、腕神経叢や神経根まではっきりと見ることができるそうです。交通外傷での引き抜き損傷なども非常に評価がしやすいとのことでした。私は過去に、往診で診療していた関節リウマチ末期の患者さんが正中神経領域の感覚障害/筋力低下・筋萎縮を呈した症例を経験しました。診察所見上も神経伝導検査からも典型的な手根管症候群だと思ったのですが、レントゲンを撮ってみると、手関節の亜脱臼による正中神経圧迫でビックリしました。末梢神経エコーだと、こういう症例も一発で見抜けるのでしょうね。川平和美先生の「促通反復療法の併用療法による麻痺改善促進」も面白い講演でした。いわゆる川平法に電気刺激や経頭蓋磁気刺激を併用し、素晴らしい成績を残しておられました。

この日の夜の打ち上げでは、この会恒例となった Everlyの演奏が聴けました。最近では、川平慈英氏や V6? というメンバーの誰か (芸能情報疎くてすみません) でやっているミュージカルなどとジョイントして活躍しているそうです。

その後少人数で飲んだ時、隣の席が福島県立医大の宇川義一教授でした。気さくに話してくださって、オフレコトークを散々楽しみました。震災の話題も結構しました。寝たきりの患者さんを大勢転送しなければならないときに、途中で誰が誰だかわからなくなってしまう可能性があるそうです。そういうときに、トライアスロンで使用するペンで患者さんに名前やカルテ番号を書いておけば、皮膚が欠損しない限りは取り違えがないという話を聞いて、なるほどと思いました。

最後に、ホテルで某先生と飲みました。彼はローマの 1000床くらいの病院に留学中で、イタリアの医療について色々と教えてくれました。

・イタリア人はとにかくずさん。Infection control doctor以外、病院で感染防護の手洗いを励行している職員を見たことがない。医療の内容も結構アバウト。

・何をしているかわからない職員がかなりいる。食堂に入るためのネームカードを発行してもらいに事務所に行くと、10:00~12:00しか開いていない。10時に行ってみたけれど開いていない。11時 30分くらいに行ってみると開いていたけれど、そのままコーヒーを飲みに出かけるところだったそう。

・患者さんがカルテコピーを持って自分の健康情報を管理している。

・医療費は高くないが、金を惜しむ人が多い。検査をしているときに、「検査する神経を一本減らしてくれ」と言ってきたり、「レポートを作ってもらう金がないから、口頭で所見を教えてくれ」なんて言ってくることもあるそう。

・研究目的の検査はタダなので、基本的にみんな喜んで受ける。研究で検査がしたくなったら、医者が患者宅に電話すると、断られることはほとんどないらしい。

6月22日 (土) は前日と会場が変わっていたのを把握していなくて、前日の会場に行って、少し遅刻してしまいました。最初は宇川義一先生の「QPS (quadripulse stimulation)」でした。QPSは、 4台の刺激装置を用いて、4連発の単相性磁気刺激を一単位とし、これを 5秒間隔で 30分行うものです。5 ms間隔での 4連発 QPS5, 50 ms間隔での4連発 QPS50では、運動野に与える効果がかなり違い、彼らはこれを用いて脳の可塑性を調べる研究を精力的に行なっていました。また、とある神経疾患で、治療薬投与後では QPS後の LTP/LTDが改善したデータを提示され、興味深く拝見しました。QPS50に因んで、48 ms間隔で 4連発刺激をする QPS48という名前のユニット (AKB48風) を組んで売り出したら、磁気刺激の知名度も上がるのではないかというアホなことを思いついたのですが、口に出すと関係者から殴られそうなので、ここだけのネタにしておきます (^^;

大島秀規先生は「神経機能障害に対する神経刺激療法:その現状とリハビリテーションへの応用の試み」という講演をされました。Spinal cord stimulation (SCS) による難治性疼痛の治療などの話が興味深かったです。講演が終わって、パーキンソン病のジストニアについて質問すると、「neuromodulationで腰曲がりは良くなるけれど、首下がりと Pisa症候群は良くならない」という返事でした。

Goldstein先生は、「Update on Reperfusion Therapy for Acute Ischemic Stroke」と題して、rt-PA及び血管内治療について講演されました。SYNTHESIS Expantion Trial, IMS-III,MR-RESCUEの結果から見ると、急性期の血管内治療はなかなか思わしい成績ではないようです。

知り合いの医師達が最もインパクトを受けていたのは岸拓弥先生の「脳をターゲットにした循環器治療」という講演でした。彼らは本来の圧受容器反射と同様に機能するバイオニック圧受容器システムを組み込むことで圧受容器不全ラットの圧受容器機能を代替し、ラットの起立性低血圧を改善しました (何と、ラットに tilt試験!)。また、ラットの頸動脈洞を隔離し、頸動脈洞圧に定常圧を入力することで圧受容器反射異常モデルを作り上げ、圧受容器反射が左心房の容量不耐性に大きく関与していることを突き止めました。圧受容器が具体的にどのように生体に影響を与えているかはよく知らなかったのですが、この発表を聞いて唸らされました。

この日の打ち上げが終わった後、東京医科歯科大学血管内治療学分野の根本繁教授、日本大学の大島秀規先生達と飲みに行きました。脳卒中の話などを中心に、グデングデンに酔っ払うまで語り合って楽しかったです。また来年のこの会が楽しみです☆

(参考)

上肢の機能回復セミナー1 (2009年)

上肢の機能回復セミナー2 (2009年)

上肢の機能回復セミナー3 (2009年)

第3回上肢の機能回復セミナー1 (2010年)

第3回上肢の機能回復セミナー2 (2010年)

第4回上肢の機能回復セミナー (2011年)

第5回上肢の機能回復セミナー (2012年)

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症例報告

By , 2013年6月21日 10:20 AM

昔のボスから「症例報告は医者の義務」と言われ、報告すべき症例は出来るだけ論文にするようにしています。EBM最盛期の時代、メタ解析や RCTが重宝がられますが、これらは万能ではありません。例えば、稀な疾患だったりすると大規模研究が出来なかったりします。こうしたとき、症例報告には大変お世話になります。日本神経学会が発行する邦文誌が症例報告主体なのは、特に神経疾患において稀な疾患が多いことが関係しているのかもしれません。

この度、「ケースレポート(症例報告)を書くためのコツを教えるウェブセミナー」がオンラインで見られるようになりました。英語なのでうまく聴き取れず、大部分私は寝落ちしてしまいましたが (汗)、英語のヒヤリングが苦にならない方には勉強になるのではないかと思いますので、紹介しておきます。

ケースレポート(症例報告)を書くためのコツを教えるウェブセミナー 【無料動画配信中】

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まだ1万人

By , 2013年6月21日 10:06 AM

感染症診療の原則 -歴史に残る暴言 もしくは 救いの言葉か-」で知ったのですが、厚生労働大臣から「風疹はまだ 1万人」との言葉が発せられたそうです。

ことしの風疹患者数、1万102人に 厚労相は財政支援に否定的

国立感染症研究所は18日午前、2013年に入ってからの風疹の患者数が、あわせて1万102人に達したと発表した。
ワクチン接種に、国の財政支援を求める声が上がる中、田村厚生労働相が18日朝、財政支援に否定的な考えを示した。
国立感染症研究所によると、風疹患者数は、2013年に入り、あわせて1万102人に達した。
患者数のおよそ8割は男性で、その多くを20~40代が占める状況は変わらない。
こうした中、17日夕方、妊娠中に風疹にかかり、子どもに障害が出た母親らが厚生労働省に要望書を提出した。
「先天性風疹症候群」の子どもを持つ西村 麻依子さんは「風疹の流行を食い止め赤ちゃんを守るために、国の積極的な対応を求めます」と話した。
要望では、風疹を予防接種法に基づき、国などが費用を負担する「臨時接種」の対象とすることや、必要なワクチンの量の確保などを求めている。
理化学研究所の加藤茂孝氏は「1万人も患者を出したということを世界から危惧されていて、(拡大防止には)集団接種、つまり臨時接種以外にはあり得ない」と話した。
要望に対し、18日朝、田村厚生労働相は「(臨時接種とは)緊急時のパンデミック(世界的大流行)のおそれがあるものに対してという話で、なかなか風疹がそのような状況ではない。なかなか財政的措置をして、ほかの予防接種疾病と(比べ)、特別な対応ということころまでは来ていない。風疹は、まだ1万人ということでございますので」と述べた。
また、このままいけば、ワクチンが不足する可能性があるが、その場合、厚生労働省は、妊娠を予定している女性や、その同居人などを優先的な予防接種の対象にする方針。

そして、この発言を受け、 複数の医師達が大臣に抗議メールを送ったそうです (一例はこちら)。風疹はただ罹患して終わりなのではなくて、先天性風疹症候群のリスクになることを考えると、この流行は看過できませんよね。厚生労働大臣がこんな認識では・・・と思います。

先天性風疹症候群とは

免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風疹症候群 (CRS)と総称される障がいを引き起こすことがある。(略)

母親が顕性感染した妊娠月別のCRS の発生頻度は、妊娠1 カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度である。成人でも15%程度不顕性感染があるので、母親が無症状であってもCRS は発生し得る。(略)
臨床症状 
CRS の3 大症状は先天性心疾患、難聴、白内障(図3)である。このうち、先天性心疾患と白内障は妊娠初期3 カ月以内の母親の感染で発生するが、難聴は初期3 カ月のみならず、次の3 カ月の感染でも出現する。しかも、高度難聴であることが多い。3 大症状以外には、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球など多岐にわたる。
(補足)
風疹予防接種啓発動画の記事で、2013年6月21日に追記しました。

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