Category: 医学と医療

第 2回 Journal club

By , 2012年12月23日 11:49 AM

12月21日に第 2回 Journal clubを開催しました。

ぶぶのすけ先生は、多発性硬化症についての論文を読んできました。

Shift work at young age is associated with increased risk for multiple sclerosis.

2つの独立した population based, case-control studyを元に調べた。20歳以下でシフトワークすることは、多発性硬化症に罹患するリスクとなる。原因としては、日内リズムの障害や睡眠制限がメラトニン分泌の障害と関係しており、炎症反応をもたらすためかもしれない。

シフトワークというのは、日勤とか夜勤を交互に繰り返す勤務形態ですが、日内リズムが障害されやすく、様々な疾患リスクを高めることが報告されています。この論文は、疫学から迫った研究のようですが、メラトニン分泌の障害が何故多発性硬化症を起こしやすくするのかなど、いまいち釈然としませんでした。また、20歳以下でシフトワーカーになるということは、経済的に貧しい人が多いのではないかと推測され、そのバイアスはどうなのだろうと感じました。

次に、兄やん先生は、ラクナ梗塞に対する抗血小板薬についての論文を読んできました。

Effects of clopidogrel added to aspirin in patients with recent lacunar stroke.

この論文の内容については、別のブログで紹介されていたので、そちらへのリンクを貼っておきます。

ラクナ梗塞の二次予防に対して、アスピリンにクロピドグレルを併用すると出血と死亡リスクが上昇

ラクナ梗塞の発症メカニズムを考えると、アスピリンとクロピドグレルを併用してもあまり効かないことは想像できるし、ラクナ梗塞では micro bleedsの頻度が多いことから、ある程度頭蓋内出血が増えることも想像できます。消化管出血は言わずもがなです。

私は、Hoehnと Yahrが書いた論文を読んできました。1967年の古い論文です。Parkinson病の “Hoehn & Yahr分類” というと分かる人が多いかもしれません。

Parkinsonism: onset, progression and mortality.

内容については、Power Pointに纏めたので下に貼っておきます  (※二次使用の際は、miguchi@miguchi.netまで御一報ください)。Parkinson病の中に進行性核上性麻痺や多系統萎縮症などが含まれていることが推測されたり、色々割り引いて評価しないといけない部分はありますが、疾患の特徴をかなり詳細に評価しており、参考になります。単なる重症度分類として意味があるだけではありません。

Parkinsonism抄読会用ファイル

Post to Twitter


The musicality of Franz Liszt

By , 2012年12月17日 8:28 AM

The Musicality of Franz Liszt」という論文が、2011年10月28日号 Cell Culture誌の読み物として掲載されたので、「おっ?」と思って読んでみました。内容は直接リストに関係したものではなかったのですが、リストの生誕 200周年を記念して、聴覚と認知について興味深いトピックスが紹介されていました。短い論文ながら、内容は 4部構成となっています。以下簡単に紹介します。

The Musicality of Franz Liszt

①Frequency Detection a Presto

リストは超絶技巧で有名でしたが、聴衆の耳は彼の奏でる複雑な和声や速いフレーズを瞬時に分離することができました。そのメカニズムに関する知見です。

耳にある外有毛細胞の細胞膜には prestinと呼ばれる陰イオン輸送体が多数あります。Cl-が prestinの細胞内側の表面に結合すると脱分極し、prestin容積の減少と細胞の短縮といった構造変化が起こります。2008年に Dallosが prestin変異のマウスを作製したところ、変異 prestinは細胞膜に正しく局在したものの、外有毛細胞を短縮させることは出来ませんでした。そのマウスは音への感度低下を示し、音波を個々の振動数に分離する能力が低下しました。

prestinの働きは、音による振動を増大させることによって、有毛細胞がその下にある基底膜と共に作り出す振動数マップの分離能を向上させているようです。

音波は有毛細胞の脱分極と過分極の周期を作り出し、prestinはそれに合わせて細胞を繰り返し伸縮させます。基底膜は音波と同じ振動数で振動することになり、シグナルは増幅され、周波数の選択性は増します。なんと、prestinは他の蛋白質の約 1000倍もの速さで機能し (μ秒単位)、細胞膜の分極がそのようなスピードについていくことが出来るそうです。

②Pitch Picking

リストは “perfect pitch” を持っていました。つまり、音符を見ずに、音名を当て、同じ高さの音を再現することが出来ました。

2005年に、Bendorと Wangは音程に特異的に応答する神経細胞の一群を見つけ、オクターブにまたがっていたり異なる楽器の楽音を人がどのように認識するのかに言及しました。

ピアノで “A (ラ)” の鍵盤を叩くと、440 Hzの倍音成分 440, 880, 1320, 1760…Hzが発生します。しかし聴き手は最も低い周波数 440 Hzのみを認識します。基礎となる 440Hzの周波数を失ってさえ、脳は (倍音成分に含まれる) 別の周波数から音を再構成し、その音程が 440Hzの “A” であると認識します。

そのような神経細胞を探していて、Bendorと Wangは marmoset monkeyの聴覚皮質で活動電位を記録しました。低周波数領域の境界部を調べたとき、彼らは 131個の神経細胞のうち 51個が音程の選択性に関わっているのを見つけました。これらの神経細胞はそれぞれ基礎となる音に由来する倍音の周波数に応答していました。例えば、ある神経細胞は 200 Hzとその倍音成分である 800, 1000, 1200 Hzの組み合わせに応答しました。聴神経細胞が非常に狭い範囲の周波数に対応していることにより、音程の選択性が生まれることは驚くべきことです。

2011年に Chenらは、”high-speed two-photon microscopy method” を用いて、マウス聴神経細胞の樹状突起棘のシナプスカルシウムシグナルを記録しました。約 45%の樹状突起棘が 1オクターブ以内の周波数に応答しました。しかしもっと驚くことに、同じ樹状突起にあるそれぞれ隣り合う樹状突起棘は異なった周波数で同調されることです。ニューロン全体の最適な刺激は、最適ではない周波数刺激と比べて 2倍もの樹状突起棘でシナプスのカルシウム信号を誘導します。これは、単なる個々の音から調和的に関連した音の周波数まで扱うピッチ選択的ニューロンを形成する仕組みを示唆しています。

③O Please Gentleman, A Little Bluer!

“perfect pitch” に加え、リストは共感覚を有していたと言われています。共感覚とは、ある感覚刺激が、刺激と関係ない感覚の引き金となることです。リストは音符や和音が色に見えました。共感覚は、脳の隣り合った領域の相互刺激によるものであると考えられていますが、よくわかっていません。

2010年、Neelyらは新しい「痛み遺伝子」の研究中にこの現象に出くわしました。彼らはショウジョウバエの高温面からの逃避行動をみることで、痛み知覚を研究しました。彼らは個々の遺伝子を knock downして調べましたが、580個調べた遺伝子の中の一つが straightjacket でした。straightjacket遺伝子は voltage-gate Ca2+ channelのサブユニットをコードしていました。straightjacket遺伝子の哺乳類でのホモログは α2δ3であり、神経痛の 2つの治療薬の分子ターゲットとなっています。また、この遺伝子を除去したマウスは、温度や炎症による熱への感受性が低下します。この遺伝子変異のあるヒトは熱や慢性疼痛への感受性が低下することから、α2δ3はハエからヒトまで保存された「痛み遺伝子」と考えられます。

驚くべきことは、α2δ3欠損がどのように痛覚の認知を変えるかです。有害な熱刺激は脳の疼痛に関係した部位を賦活します。しかしα2δ3変異マウスでは、この領域の不活化が減少し、視覚野や聴覚野、嗅部が賦活されることがわかりました。言い換えると、α2δ3の障害は痛みが「見えて、聞こえて、匂う」共感覚の原因になるのです。α2δ3遺伝子はシナプス発達に関係しています。そのため、α2δ3欠損は視床と高次の痛覚中枢を結ぶシナプス回路を微妙に変化させるのだと考える研究者もいます。

④Lisztomania in the Striatum

リストは音楽の組織やチャリティーに快く応じる慈善家でした。精神疾患に対する音楽療法を試みた最初の一人であるとさえ考えられています。それから 150年近く経って、感動に満ちた音楽は、セックスや薬物、食事と同じように、快楽中枢や報酬中枢にドパミンを放出させることが報告されました。

過去の研究では、音楽は脳の報酬回路を賦活しますが、ドパミン活性を直接調べた研究はありませんでした。さらに、音楽も実験者に選ばれたものが用いられていました。

Salimpoorらは、被験者に自分の好きな曲を選んでもらい、曲のクライマックスで一貫して身震いするような人々に焦点を当てました。ドパミン活性の測定には、ドパミンの D2受容体と競合する 11C-racloprideを用いた PET検査を用いました。普通の音楽と違って、身震いを起こさせるような音楽は、線条体、特に側坐核でのでのドパミン放出の引き金となります。ここは、コカインでの高揚感と関係した部位です。functional MRIと併せて解析すると、歌の感情的なクライマックスは側坐核のドパミンと関連していますが、クライマックスの瞬間への予感は、報酬の予測と関係した尾状核を活性化させることがわかりました。このことで、「リストマニア」を説明できると考える研究者もいます。

 

Post to Twitter


論文の競売

By , 2012年12月13日 7:38 AM

研究者が研究内容を発表する最も重要な場が科学雑誌です。少しでも Impact factor (IF) の高い雑誌に掲載されるように、皆鎬を削っています。しかし、雑誌社が「掲載しない」と言えば、いくら優れた内容の論文であっても日の目を見ることはありません。そのため、雑誌社は研究者に対して強い立場にあります。

最近、ある研究者が面白い方法を取り、話題となっています。なんと、自分の論文を競売に掛け、掲載する雑誌社を募集したらしいのです。

Richard Smith: Why not auction your paper? (BMJ blog)

論文をオークションにかけよ(ブログ紹介) (日本語記事)

著者が Twitterで論文を競売にかけることを tweetしたところ、8時間後に 4件の応募があり、Journal of Royal Society of Medicine (2011年 IF 1.1411) が落札しました。かなり特殊な例ですが、面白いことを考える人もいるものですね。

(参考)

インパクトファクターから見たジャーナルの地殻変動

Post to Twitter


脳の探求者ラモニ・カハール スペインの輝ける星

By , 2012年12月10日 8:16 AM

「脳の探求者ラモニ・カハール スペインの輝ける星 (萬年甫著、中公新書)」を読み終えました。ラモニ・カハールについては、「神経学の源流 2 ラモニ・カハール」で説明したばかりですね。

本書はカハールについての伝記です。手の付けられない悪童が改心して研究者になり、義憤にかられてキューバ遠征に行くもマラリアにかかり散々な目にあって帰国し、以後研究に没頭してニューロン説を確立するまでの話が豊富な資料を元に書かれています。出版が中公新書ということからわかるように、専門家以外の方でも読める内容になっています。200ページくらいの薄い本なので、あっという間に読めますね。

印象に深かったことは物凄くたくさんありましたが、触れておきたい逸話があります。カハールが突起を発見できず、「第三要素」と呼んだ細胞群がありました。弟子オルテガが、師のカハールに「第三要素に突起がある」と告げた時、カハールは複雑だったようです。明らかに弟子が正しかったのですが、カハールを以ってしても、歳下の学者に自分の学説の間違いをストレートに指摘されると素直になれなかったようです。師弟という点では異なりますが、ゴルジがカハールに間違いを指摘された時の不愉快さも似たようなものであったのではないかと感じました。

以下は、備忘録。

Continue reading '脳の探求者ラモニ・カハール スペインの輝ける星'»

Post to Twitter


神経学の源流 2 ラモニ・カハール

By , 2012年12月7日 8:21 AM

「神経学の源流2 ラモニ・カハール (萬年甫編訳、東京大学出版会)」を読み終えました。カハールはニューロン説の礎を築き、ノーベル賞を受賞した研究者です。

第一章は著者の神経解剖学の「研究の端緒」で、カハール研究所を訪れ、その標本を見るところから始まります。第二章は「神経解剖学の方法・その史的発展」と題し、神経解剖学の研究の歴史を簡単に紹介しています。

第三章「ニューロン説の原典」が、カハールの論文の翻訳です。カハールはゴルジ法 (黒い染色) を用いて研究を始めた訳ですが、同じ方法を用いて同じものを見たゴルジが網状説 (神経は網目状に吻合している) を唱え、カハールがニューロン説 (各神経は独立した単位であり、接触により刺激が伝導する) を唱えたのは興味深いことです。凄いことに、カハールは詳細に形態を観察することで、神経の機能、刺激の伝導の方向まで明らかにしてしまいます。1892年に行われた「神経中枢の組織学に関する新見解」という講演は、次のように結ばれています。この結びを読むと、彼が唱えたニューロン説の概要がわかります。

以上取り急ぎ申し上げた諸事実を総括し、いくつかの考察を行なってこの講演を終わることにしたい。

1) 中枢細胞の形態学について、一般的な結論を下すならば、それは神経細胞、上皮性細胞ならびに神経膠細胞の突起の間には物質的な連続性がないということである。神経細胞は正真正銘の単一細胞であり、Waldeyerの表現によればノイロン (neuronas) である。

2) 物質的な連続性がないのであるから、興奮が 1つの細胞から他の細胞へ伝わる場合、あたかも 2本の電話線の接合点におけるがごとく、接近ないし接触 (por contiguidad o por contacto) によって行なわれねばならない。このような接触は一方は軸索の終末分枝あるいは枝側と、他方は細胞体ならびに原形質突起 (※樹状突起のこと) との間に行われるのである。網膜の神経膠細胞、脊髄神経節の単極細胞ならびに無脊椎動物の単極細胞のごとく、原形質突起のない場合には、細胞体の表面が神経性分枝の付着する唯一の場所となるのである。

3) 2種類の突起をもつ細胞のなかで神経興奮の伝わる方向として考えられるのは、原形質突起のなかでは求心性、軸索のなかでは遠細胞性ということである。(略)

4) 双極性細胞 (聴神経、嗅神経、網膜、Lenhossekと Retziusによれば蠕虫の知覚性双極細胞、魚の脊髄神経節の知覚性双極細胞など) では、末梢性突起は太くて興奮 (求細胞性の興奮) を受け入れる役をなし、原形質性のものとみなすべきである。(略)

5) 原形質突起は、Golgiならびにその一派が考えているように毛細管から放出される血漿を吸う細根のごとき単なる栄養装置ではなく、軸索と同じように伝導を行なっているのである。(略)

6) 原形質突起茎のあるもの (大脳の錐体細胞、Purkinje細胞など) がきわめて長いことや、側方および基底部からでる原形質突起が豊富なのは、多数の神経性分枝と連絡を確保し、その興奮を集める必要があるからであろう。多くの原形質突起分枝に見られる表面の粗いことや、棘の間の切り込みはおそらく神経線維終末の作用や接触が行われることを示しているのであろう。

第四章は、「網状説とニューロン説」です。「ストックホルムの壇上にて」という副題が付いています。ゴルジとカハールは同時にノーベル医学生理学賞を受賞し、それぞれ講演を行いました。ゴルジの講演は 1906年 12月 11日、カハールの講演は同 12月12日でした。それぞれの講演の全容が記されています。読むと互いにかなり意識していることがわかります。ゴルジのと比べ、カハールの講演の方が、理路整然としていて、説得力があります。

第五章は「カハール以後」です。著者達が如何にして研究を進めていったかが解説されています。地道な作業の連続に、研究とは忍耐なのだと感じさせられます。一方で、著者の行った工夫にも感嘆します。最終章は「ゴルジ法発見から 100年」と題されていて、”黒い染色” 記念シンポジウムです。著者がゴルジの住んでいた家を訪ねたり、ゴルジが作った標本を観察したことが記されています。

さて、カハールの論文を読んでいて、どうしてもわからない部分がありました。下記のくだりです。

後根はそれぞれ、遠心性線維と求心性ないしは知覚性線維から成っている。

遠心性のものは (Lenhossekとわれわれが同時に証明したように)、前角の細胞から出て、途中分枝したり枝分かれしたりすることなしに後根および脊髄神経節に入る。

大多数を占める求心性のものは、、後索に入って斜にその深部に進み、Y字状に分枝して上行枝と下行枝に分かれ、それぞれ縦走して後索の線維となる。これらの枝は白質に沿って何センチも走った後灰白質に侵入するらしい。そして遂には後角の細胞の間で遊離の樹上分枝として終わる。

この中で、「遠心性のもの」が何を示しているのかわからなかったのです。先日、岩田誠先生に会う機会があったので、質問してみました。すると、「それが Lenhossek (レンホセック) 細胞だよ」とのことでした。

通常、運動ニューロンは直接脳幹ないし脊髄の前方から出てきますが、レンホセック型のニューロンは一旦脳幹ないし脊髄の後ろ側に回って、側方よりの前方から出てきます。この手の細胞は、やや原始的なもので、運動成分のみならず自律神経成分を含むとされています。脳神経にはいくつかあり、顔面神経などがそれにあたります (リンク先 17から出る線維の走行参照)。

レンホセック細胞は呉建先生がかなり精力的に仕事をなさっていて、犬の後根を離断し、二次変性を起こすニューロンと起こさないニューロンがあることを突き止め、片方が前角由来の自律神経線維ではないかと提唱されていたそうです。それが、上記の「遠心性のもの」に当たるのではないかと考えられます。

余談ですが、カハールはレンホセックより先に「レンホセック細胞」を見つけていたのですが、発表に慎重になっていたところ、レンホセックに先に報告されてしまい、随分悔しがったという逸話が残っているそうです。

岩田先生、レンホセック細胞についてよくご存知だったなと思って聞いてみたら、「カハールが書いた教科書 (※分厚い本 2冊) にかなり詳しく書いてあったよ。僕はスペイン語じゃなくてフランス語翻訳で読んだけどね」とのことでした。たかだか 300ページくらいの日本語の本書を 2ヶ月かけて読んだ身としては、能力の違いをまざまざと知らされました。

(参考)

神経学の源流 1 ババンスキーとともに― (1)

神経学の源流 1 ババンスキーとともに― (2)

神経学の源流 1 ババンスキーとともに― (3)

神経学の源流 1 ババンスキーとともに― (4)

神経学の源流 1 ババンスキーとともに― (5)

神経学の源流 1 ババンスキーとともに― (6)

神経学の源流 1 ババンスキーとともに― (6)

神経学の源流 1 ババンスキーとともに― (7)

神経学の源流 2 ラモニ・カハール 冒頭部引用

Post to Twitter


誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方

By , 2012年12月2日 12:42 PM

誰も教えてくれなかった血算の読み方・考え方 (岡田定著、医学書院)」を読み終えました。薄い本なので数時間で読めます。

血液内科の領域は、学生時代に勉強してからかなり知識が抜けている部分があるのですが、再度整理することができました。

本書は血液内科専門医が実際に経験したファインプレーやエラーの実例が読めるのも貴重ですね。

岩田健太郎先生も絶賛の本です。

Post to Twitter


誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた

By , 2012年12月1日 7:39 PM

誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた (岸田直樹著、医学書院)」を読み終えました。

これまで風邪の患者さんは数え切れないくらい診てきたけれど、本書のように体系だってまとめたものを読むのは初めてです。あまりに、面白くて 1日で読了しました。

ある部分では「俺が感じていたのと同じこと言っている」と親近感が湧きましたし、ある部分では「へー、初めて聞いた」と勉強になりました。

風邪の患者さんを診療しない医者はほとんどいないと思うので、読んでおきたい一冊です。

Post to Twitter


第 1回 Journal club

By , 2012年11月30日 8:17 AM

医局の後輩たちを集めて第 1回 Journal clubを行いました。後輩たちに英語を読むのに慣れてもらうのが目的で、医局主催の抄読会では読まないような論文を読むきっかけになればと思っています。資料は英語で書かれていれば、「Play Boy」以外何でも O.K. です。とにかくハードルは低く、低くです。この日の論文を極簡単に説明します。

さて、一人目の「ぶぶの助」先生は、シラミについての論文を読んできました。

Topical 0.5% ivermectin lotion for treatment of head lice.

治療抵抗性のアタマジラミに対して、疥癬治療薬 Ivermectin (商品名:ストロメクトール) を使用し、他の虫卵駆除剤と比較しました。この試験に参加したのは、生後 6ヶ月以上の患者でした。乾いた髪につけて、10分後に洗い流しました。シラミが検出されなかった割合は、Ivermectinとその他の虫卵駆除剤でそれぞれ、day 2 (94.9%, 31.3%), day 8 (85.2%, 20.8%), day 15 (73.8%, 17.6%) でした。副作用は、掻痒感、表皮剥離、紅斑でした。

ぶぶの助先生に何故この論文を選んだのか聞いたら、「もし女の子からシラミ貰っちゃったときにこの薬を使ったら、あそこの毛を剃らなくて済むかなと思って・・・」とのことでした。残念、この論文はアタマジラミ、女の子からプレゼントされるのはケジラミです。貰わなくて済むような日常を送りましょう。

二人目の先生は、脳卒中と非脳卒中をベッドサイドでどう見分けるかの論文です。

Distinguishing between stroke and mimic at the bedside: the brain attack study.

多変量解析の結果、脳卒中であることを最も示唆するのは NIHSS>10であることで、Odds比 7.23, 次に OCSP分類 (strokeを total anterior circulation, partial anterior circulation, posterior circulation, lacunar infarctionに分ける) が可能なことで、Odds比 5.09でした (Table 3) (※単変量解析の結果は Figure 1)。NIHSS>10だと 8割くらいの確率で脳卒中と言えます (Figure 2)。非脳卒中で多かったのは、てんかん、敗血症、代謝性などでした (Table 2)。

脳卒中を見慣れた専門医が迷うことは少ないと思いますが、わからなければとりあえず NIHSSをとってみるのは有用だということですね。この先生は、その日ベストプレゼンテーション賞を受賞し、景品の「ホワイトロリータ」を贈られたため、ニックネームが「ホワイトロリータ」になってしまいました (その先生はロリコンではありません)。

最後に、私が Jolt accentuationについて纏めました。髄膜炎の中には、見逃すと致死的なものが含まれます。診断のためには、腰椎レベルでの椎間から針を刺して脳脊髄液を取ってこないといけません。ところが、どんな患者さんにその検査をするには議論があるのです。例えば、風邪を引いて発熱し、頭痛がするだけで病院で脳脊髄液を取られたら、症状の軽い患者さんは「何故ここまでするのか?だったら受診しないで市販の風邪薬飲んでおくよ」と思うでしょう。さらに検査にかなり時間がかかるので、風邪の流行るシーズンには、数名しか診察できないことになってしまいます。

内原俊記先生は旭中央病院勤務時代に、このジレンマを解決する画期的な方法を見つけました。それは Jolt accentuationと呼ばれるものです。頭をイヤイヤと振ってみて、頭痛が悪くなるようなら髄膜炎の可能性が高くて脳脊髄液の検査が必要、悪くならなければ多分大丈夫・・・というものです。簡単で、感度が高いというので、あっという間に広まりました。ところが、2010年に海外から、まったく違った結論の論文が出てしまいました。Jolt accentuationは感度が低すぎて、陰性だからといって髄膜炎は否定できないというのです。ネットでも話題にしている方がいらっしゃいます。

Jolt Accentuationの追試まとめ

それぞれの患者背景、状況を把握しないと議論になりませんので、Excelで一覧表にしてみました  (※二次使用の際は、miguchi@miguchi.netまで御一報ください)。

 Jolt accentuation一覧表

こうして見ると、意識障害のない軽症そうな症例では rule outのために Jolt accentuationを行なって不要な髄液検査を省き、意識障害や神経学的異常所見があれば Jolt accentuationの有無にかかわらず髄液検査をすべき、というのが落とし所な気がします。

細菌性髄膜炎の自験例では、「自宅では頭が痛くて動かせなかった」患者さんが、来院時には Jolt accentuation陰性となっていたケースがあり、所見を取るタイミングなども関係してくるのかもしれません。

Post to Twitter


What’s dose it mean to be musical?

By , 2012年11月27日 6:41 AM

2012年2月23日の Neuron誌に、”What’s does it mean to be musical?” という論文が掲載されました。音楽能力についての科学的な検討です。

かなり難しい論文だったのですが、私に理解できた範囲で簡単に内容を紹介します。

What Does It Mean to Be Musical?

<The functional neuroanatomy of music>

研究初期には、言語は左半球、音楽は右半球と考えられていたが、もっと詳しくわかってきた。音程 (ピッチ) の処理は、ピアノの鍵盤のように音程順に大脳皮質に分布した tonopic mapによって説明される。異なった楽器の音 (音色) は、後Heschel回と上側頭溝の特定の領域で処理される。テンポやリズムの処理には小脳や基底核の階層的オシレーターが用いられるとされている。音の大きさは、脳幹から下丘、側頭葉への経路で処理される。音の位置の把握には、両耳間での音の到着時間の差、周波数及び時間スペクトラムの変化などが用いられる。

音楽における、より高次な音の認知には、特定の神経処理ネットワークが関わっている。音楽を聴くと、側坐核、腹側被蓋領域、扁桃体といった報酬経路が活性化し、ドパミン産生が調節される。音色やハーモニー、リズムの予測を必要とする課題では、前頭前野、特に Brodmann 44, 45, 47野、及び、辺縁系や小脳を含む皮質ネットワークの一部である前帯状回、後帯状回が賦活される。

音楽のトレーニングは、灰白質体積や皮質再現の変化に関与している。鍵盤奏者の小脳体積は、練習効果により増加している。

作曲に関与する経路は、文字を書く経路とは異なるようで、文字の失書を伴わない音楽失書の症例が報告されている。また、音楽失書と、音楽失読の解離も報告されている。

<Defining Musicality>

楽譜を読んだり音楽を記憶したり、演奏の様々な特性を聴き取ったり、楽器を弾いたり・・・といった各々のコンポーネントは、直感的には音楽能力と関係があるといえるだろう。これらには遺伝的影響が関与する可能性がある。それは単一の「音楽遺伝子」というより、むしろ複数の遺伝子が関与していそうだ。例えば、catechol-O-methyl transferase (COMT) の遺伝子多型は前頭前野のドパミンを調節し、それにより作業記憶に影響を与える。他の遺伝子多型も、間違いなく一連のリズムにおける目と手の協調運動や、聴覚的長期記憶に影響を与える。

ただ、音楽能力の研究で難しいのは、何を以て音楽能力があるとするかである。例えば、楽器が違ったり、やっている音楽が違うと単純に比較はできない。

ディスクジョッキーは曲の1秒くらいを聴いて、タイトル、作曲家、演奏家などを当てることができる。そして普通の人が気付かない音楽の結びつきを明らかにする (例えば、Foscariniの “Toccata in E” を逆再生して Led Zeppelinの “Gallows Pole” との結びつきを明らかにする)。これには曲のある要素を抽出する能力と共に詳細な音楽的記憶を必要とする。こうした結びつきを認識することは、どんな音楽家にも出来ないことである。

音楽の一番の目的は、人の感情を動かすことだと推測され、これもまた音楽能力の評価の対象である。音楽家の中にはこのことに長けている者もいて、その音楽家がある特性を欠いている時に特に明らかになる。例えば、Bob Dylanや Bruce Springsteenは美声とは言い難いけれども、多くの人たちに感動を与える。

また、独自性や新規性も大切である。全ての音楽家が備えている訳ではないが、これらを持っている音楽家は賞賛を集める。 Mozart, Louis Armstrong, Beatlesなどは、彼らが有する音楽能力は別として、それに相応しい。彼らは音楽に最大級の独創性をもたらす。

<Nonmusical Genetic Factor>

一般認知機能や身体的要素は音楽的成功に関与しているが、これにも遺伝的要素が関係してくるかもしれない。例えば、親のしつけと DRD4遺伝子 (新規探索傾向や、努力、ドパミン機能と関連) の関係は、研究の出発点になるのかもしれない。

<Amusia>

失音楽は様々な原因による様々な集まりを含む概念である。歌が識別出来ないとか、うまく歌えないというのもあるし、また脳損傷あるいは先天的な原因でリズム、ピッチ、音色に関する能力がそれぞれ特異的に欠落した人々もいる。色々と研究が盛んな分野だ。

<Quantifying Musicality and the Future of Music Phenotyping>

最もよく使われる音楽テストは Seashoreの音楽能力テストである。しかし、個性や情動、創造性を評価できるものではない。実際にプロの演奏家が、Seashoreテストの 6項目中 3項目で一般人と差がなかったりする。Seashoreテストに代わるような、新しい評価法が必要とされる。

<Targeting Genes>

ダンスについての遺伝学的研究から、 AVPR1a (Vasopressin) という遺伝子が浮かび上がった。これは、かつて親和的、社会的、求愛的行動、学習、記憶、興味、疼痛感受性などを調節するとされていた遺伝子である。加えて、ダンサーと非ダンサーでセロトニン輸送体 SLC6A4に有意に違いがあるということもわかっている。SLC6A4は、霊的体験に関与することがかつて報告されている。SLC6A4は脳での Vasopressinの放出を促進することから、これらの遺伝子には相互作用がありそうだ。

Vasopressin遺伝子は、音楽能力にも関与しているようだ。AVPR1aは聴き手としての振る舞いや音声構成能力に関係しているとされている。AVPR1aと SLC6A4のプロモーター部分の遺伝子多型と音楽的記憶にはかなりの遺伝的相互関係がある。共感を含む哺乳類の社会的行動に関与し、AVPRa1との関連が知られている oxytocin (OTXR) をコードする遺伝子のさらなる研究も望まれるところだ。

また、AVPR1aは、不安や抑うつと関係していて、音楽的創造性と不安や抑うつの関係はよく知られている。

性格の多様性と遺伝的多型の関係については、盛んに研究が行われており、これらの研究から、音楽的才能と関係した遺伝子が今後見つかるだろう。

音楽遺伝子については、この論文で初めて知りました。音楽好きとしては興味深いです。今後の発展に期待しています。

Post to Twitter


IgG4関連疾患

By , 2012年11月16日 7:36 AM

11月13日に、第14回ニューロトピックス21 「IgG4関連疾患」という講演を聴きに行きました (神経内科領域だと、肥厚性硬膜炎が IgG4関連疾患として有名です)。梅原教授の話に、滅茶苦茶感動しました。内科学会誌に総説が載ると言われていたので、メモは取らなかったのですが、取っておけばよかったと後で後悔。覚えている範囲で紹介します。

第14回ニューロトピックス21

「温故知新~『IgG4関連疾患』 ―21世紀に日本で発見された新たな疾患概念―」

金沢医科大学血液免疫内科学 梅原久範教授

まずは掴みの二つのギャグ。梅原教授は、慶應義塾大学医学部を卒業し、地元の京都大学病院で研修をしました。京都大学病院に初出勤の日、「慶応ボーイが来る」ということで、ナースが数十人病棟に列を作っていたそうです。ところが、梅原教授の顔を見るや、「なーんだ」とみんな解散したのだとか。また、金沢医科大学に教授として赴任してしばらくして、大雪が降った時のこと。朝降った雪で、車が埋まり、みんなどうするのかと思って見ていたら、「マイ・スコップ」で器用に道を作って車の除雪をしていました。ところが、車の除雪をしていた人が、車を間違えたことに気付き、わざわざ雪を元に戻している姿を見て、「大変なところに来てしまったなぁ」と思ったそうです。

さて、肝心の IgG4関連疾患について。話は「ミクリッツ」から始まります (ミクリッツは、過去にこのブログでも登場しました , )。ミクリッツは「唾液腺が腫脹する疾患」を「ミクリッツ病」として報告しました。ところが、癌などでも唾液腺が腫脹することがあるので、原因がはっきりしているものをミクリッツ症候群、特発性のものをミクリッツ病とすることで、一応のコンセンサスが得られました。その後、眼科医シェーグレンが眼と唾液腺に異常を来たす疾患を報告し、「シェーグレン症候群」として纏めたのですが、欧米では「ミクリッツ病はシェーグレン症候群の一部」という理解が進み、「ミクリッツ病」という概念が姿を消していってしまったのです。(この辺りの歴史をわかりやすく記したサイトが存在します)

ところが、日本の医師たちは、「ミクリッツ病」と「シェーグレン症候群」が別々の病気だと理解していました。そして、ミクリッツ病で得られた唾液腺に抗 IgG抗体を当てると IgGの集簇が確認され、さらに IgGのサブクラスを調べるため抗 IgG4抗体で免疫染色してみると、綺麗に染まりました。その軽鎖に対して、抗κ染色、抗λ染色をしてみると、monoclonarityはなく、悪性リンパ腫などの原因による IgG4陽性細胞の腫瘍性増殖ではないことが確認できました。IgG4は血中でも高値を示しました。一方で、シェーグレン症候群ではこのような現象は見られませんでした。

面白いことに、他の様々な臓器の病変で IgG4で染色されることが報告されてきました。例えば、自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、尿細管間質性腎炎・・・などです。それでこれらの疾患をまとめようではないかという話が出てきたのです。

(参考) Wikipedia-IgG4関連疾患

主に以下の疾患の重複概念として提唱されている

  • ミクリッツ病(Mikulicz disease)
  • 自己免疫性膵炎(AIP)
  • IgG4関連硬化性胆管炎
  • IgG4関連腎症
  • IgG4関連肺病変
  • 後腹膜線維症の一部
  • Kuttner腫瘍
  • 下垂体炎の一部(IgG4関連下垂体炎)
  • リーデル甲状腺炎
  • 慢性前立腺炎の一部(IgG4関連前立腺炎)

梅原先生は、病理学や消化器、眼科、腎臓内科など幅広い分野からメンバーを集め、最後、班会議の申請期限ギリギリに岡崎先生に電話しました。午後 11時くらいの話でした。ところが何度電話しても電話中でした。何度目か、やっとつながって「おい、何を長電話をしているんだよ?」と言ったら、「お前こそ何を長電話しているんだ?」と返されました。ふたりとも班会議を作ろうとしていて、お互いに同時に電話して相手を誘おうとしたので繋がらなかったらしいのです。結局、梅原班と岡崎班を作って、どちらかが落ちたら合流しようという話にまとまり、両方申請が通りました。

会議が出来て、まずやらなければならなかったことは、名称の統一でした。それまでは、研究者毎にさまざまな名称で報告されていたのです。結局、”IgG4-related systemic disease” と “IgG4-related disease”が最後に残り、多数決で “IgG4-related disease (IgG4関連疾患)” に決定しました。

ところが、マサチューセッツ総合病院 (MGH) で IgG4関連疾患のシンポジウムが開かれた時、プログラムが “IgG4-related systemic disease” になっていたのです。そして、日本からの “IgG4-related disease” に関する演題名も、全て “IgG4-related systemic disease” に書き換えられていました。梅原教授は猛抗議し、メールで「もし “IgG4-related systemic disease” という語にするのだったら、日本人の演者は全員ボイコットする」ことを伝えました。結局相手は折れて、「そこまで名前には拘っていないんだ」と返してきて、”IgG4-related disease” の名前を用いることが決まりました。国際的にも、日本発のこの名前を用いることとなり、大きな意義のある出来事でした。

さて、次は診断基準です。研究班がこだわったのは、「専門家でなくても診断できる」ことでした。そのため、3項目しかない簡単な基準が出来上がりました。

IgG4関連疾患診断基準

1. 臓器病変

2. 血清IgG4>135 mg/dl

3. 組織学的にIgG4陽性細胞の浸潤がみられる

この 3つを満たせば確定診断になります。IgG4は商業ベースで測れます。3番目に 病理基準を入れたのには理由があります。実はアトピー性皮膚炎や類天疱瘡などでも IgG4はある程度増えることが知られています。これらを混ぜてしまうと、疾患概念が曖昧になってしまうのです。ということで、他の疾患が混ざりにくいように少しハードルを上げたという意味合いがあります。

ただ、自己免疫性膵炎のように、組織を取りにくい場所に病変があると、組織診断ができませんので、その場合は “IgG4-related disease” という名前ではなく、”IgG4-related 組織別病名” と名付けることにしました。例えば、”IgG4 related pancreatitis” といった感じです。この疾患では一つの臓器に限らず病変をつくることがありますが、その場合には PET検査が病変の検出に有用であるようです。

この診断基準には裏話があります。”Modern Rheumatology” という雑誌に掲載されたのですが、本来なら受理されてから掲載まで 1年くらい待たされる筈でした。しかし、早く発表しなければいけないということで、Editorと掛けあって、12ヶ月飛び越して 2012年 1月に掲載してもらったとのことでした。雑誌社もフットワークが軽いですね。好感の持てるエピソードです。

ところで、この疾患の発症メカニズムはよくわかっていません。しかし、いくつかの知見を講演で聴くことが出来ました。IgG4が他の IgGサブクラスと決定的に違うのは、二量体を形成するのに S-S結合を欠くことです。そのため、二量体がバラけて単量体になりやすいことが知られています。そしてその単量体が他の単量体とヘテロ二量体を形成すると、より多くの抗原に反応しやすくなるのではないかと推測されます。また、IgG4関連疾患では、Th2 shiftが起きていることが、サイトカインの解析からわかっています。その結果として、自然免疫の異常もきたすそうです。現在では、患者血清と健常者の血清をそれぞれラベリングして 2次元電気泳動し、患者血清のみが形成するタンパク質のバンドを MS解析したり、治療の前後で発現パターンの変わる遺伝子を探したり、様々な研究がされているようです。

治療は、ステロイド、免疫抑制剤、リツキシマブが効くとされています。梅原先生らは、まずステロイドを 0.6 mg/kgで開始し、漸減する方法を推奨しています。自己免疫性膵炎で行われていた治療を応用して、この投与量に決めたそうです。この疾患は、ステロイドへの反応が良好です。従って、もしきちんと診断されればステロイドの内服だけで良くなるのに、疾患を知らないがために腫瘍として手術されてしまう症例が出てきます。こうした事態を避けるために、疾患の啓蒙活動が必要なのだと思います。

推定患者数は、約 20000人と言われています。金沢大学、金沢医科大学で診断された患者数と、石川県の人口から人数を推定したそうですが、自己免疫性膵炎から推定した数字とそれほど大きな開きはないようです。

(参考)

呼吸器内科医 -IgG4関連疾患-

日本発の新たな疾患概念  IgG4関連疾患の潮流

Post to Twitter


Panorama Theme by Themocracy