医師が患者になるとき
週間医学会新聞で毎回楽しみにしている李啓充先生の文章。今回は、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) についてでした。
続 アメリカ医療の光と影 第218回 医師が患者になるとき 李 啓充
この疾患を克服することは神経内科医の悲願ですが、この疾患に冒されながら啓蒙活動を続けたオルニー先生の話です。神経内科医は是非一読を
週間医学会新聞で毎回楽しみにしている李啓充先生の文章。今回は、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) についてでした。
続 アメリカ医療の光と影 第218回 医師が患者になるとき 李 啓充
この疾患を克服することは神経内科医の悲願ですが、この疾患に冒されながら啓蒙活動を続けたオルニー先生の話です。神経内科医は是非一読を
論文撤回の原因には、データの捏造・使い回し、二重投稿、倫理委員会など正しい手続きを踏まずに研究を行った場合などがあります。それがここ最近急増しているというニュースが、Nature blogに出ていました。
The new gatekeepers: reducing research misconduct
科学研究の分野では、優れた研究者でも職や研究費を得るのが大変と聞くので、こうしたものを巡る熾烈な争いが背景にあるのかもしれません。このニュースを知り、興味本位ですが、撤回論文にはどういう国籍、所属研究機関、地位の著者が多いのか、どういうジャンルの論文に撤回が多いのか、知りたいと思いました。
ちなみに、日本でもこの手の論文撤回がたまに話題になります。こうした話題を集めたブログもあるようです。
培養細胞に外来遺伝子を発現させる遺伝子導入には、試薬を用いる方法、高電圧パルスを用いる方法などがあります。
先日、Facebookで面白い方法があるのを教えてもらいました。インクジェットプリンターで遺伝子導入できることが下記に示す論文の Abstractに引用してあり、更に g-actinなんかも導入できるみたいです。プリンターで細胞膜に小さな孔を開けて導入するため、遺伝子以外にも約 10 nm以下の小蛋白質や分子が導入できるのだとか。
方法としては、細胞懸濁液にg-actin (in PBS) を加えて作った “Bioink” をカートリッジにセットし、スライドに噴射するらしいです。論文には実際の作業の動画、作製したスライドの顕微鏡写真などが掲載されているので、興味のある方は是非一読を。
※Facebookでは、「”HP Deskjet 500 printer” という古いプリンターが良く現役で働いていたな」、ということも話題になりました。
「ハカセといふ生物」という漫画を読みました。バイオ系研究者を題材にした四コマ漫画なのですが、結構私のツボでした。私は漫画を買って読みましたが、ネットでも一部読むことが出来ます。
ちなみに、私のお気に入りは第25話です。どーみてもゴルゴなんですが (笑)
バイオ系研究者の方は読んでみると楽しいと思います。
ラボでの実験が早く終わったので、久々に大学に遊びに行きました。たまたま研究会をやっていたのでふらりと参加したら、滅茶苦茶面白い講演でした。講演は「認知症の診断と治療の進歩」で、演者は東京医科大学老年病科の羽生春夫教授でした。教科書に書いていない、最先端が多かったです。以下、備忘録代わりに、内容の抜粋を書いておきます。
・Mini-Mental State Examination (MMSE) は、元々の認知機能が高い人、つまり学歴が高かったり社会的に高い立場の人に対しては感度が低い。Cut offを通常の 23/24に置くと、感度 0.66, 特異度 0.99, 通常より高い 27/28に置くと感度 0.89. 特異度 0.91になる。
・認知症スクリーニング検査での計算課題は注意力の低下を見ているので Diffuse Lewy body disease (DLB) で落ちやすい、遅延再生は Alzheimer病 (AD) で落ちやすい。
・MMSEが 10-12分かかるのが大変なので、1分間スクリーニングというのがある。Category fluencyは 1分間で動物の課題を出来るだけたくさん答えてもらうもので、頭頂葉内側機能を見ている。海外の studyでは得手不得手に考慮して、動物、フルーツ、スポーツなどいくつかの分野を出題することもある。Letter fluencyは「カ」で始まる言葉などを列挙してもらうもので、前頭葉機能を見ている。Category fluencyも Letter fluencyも Mild cognitive impairment (MCI) や ADで低下する。
・Test your memoryという検査法は、自己評価で行うことができる。ADや MCIでは病識がないので、他者からの評価より自己評価の方が高い。うつや神経症では逆になる。
・ADだと全脳の容積は 18%, 海馬は 45%低下する。海馬容積を評価する VSRADは、次期 Versionが開発され、より感度が高くなった。VSRADは Z-scoreの数字だけを見るのだけではなくて、元画像で正しい部位を評価しているか確認することが大事。また、海馬の atrophyは sensitiveだが ADにspecificではない。
・ADはアミロイドアンギオパチーを合併するなど、血管障害を合併することが多い。ADと Vascular dementia (VaD) は同じ spectrumで mixed-dementiaと呼ぶことがある。
・VaDと思われる症例で、MRIでの白質病変が同じくらいでも認知機能が異なることがある。Diffusion tensor image (DTI) で走行線維を見ると、認知症のある患者は脳室周囲の前後方向の線維がかなり落ちている。従って、同じ白質病変でも病理学的に違うのだろう。”cell/synaptic density” を反映する 123I-iomazenil (IMZ) で見ると、VaDでは前頭葉が、VaD+ADでは前頭葉+頭頂側頭葉で取り込みが低下している。
・MRI T2*も VaDと ADの鑑別に有用で、VaDでは 77%, ADでは 32%に micro-bleedingがある。
・REM sleep behavior disorder (RBD) は Parkinson disease (PD) / DLBに先行する。 MCIから ADを発症するのは 3~5年だが、RBDから PD/DLBになるには 10~20年以上かかるので追跡が難しい。さらに、PD/DLBを発症すると、RBDが軽くなることがある。
・idiopathic RBD (iRBD) では、84例中 82例で MIBGシンチで取り込みが低下している。 また、iRBD患者の MRIで Voxel-based morphometryを行うと、小脳・中脳橋被蓋部で容積低下がある。SPECTでは、DLB, iRBDともに後頭葉で血流低下がある。経過中画像が悪化しても、必ずしも症状は悪化しない。
・Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia (BPSD) には、メマンチン、抗てんかん薬、漢方薬などを使用する。漢方薬について、太っている患者には、抑肝散より柴胡加竜骨牡蛎湯の方が良く効く。
2012年4月1日から、介護福祉士や介護職員が喀痰の吸引をできるようになります。しかし、この資格を取得するのに、実習以外に 50時間の講義を聞かないといけないようです。個人的には、2日間くらいで全て終わるようにしないと、参加に躊躇する介護職の方が多いと思うのですが・・・。一方で、これから介護福祉士を目指す方の場合は、養成課程で資格を取得できるようです。
多くの神経疾患で、喀痰の吸引を必要とするだけに、気になる制度です。
・平成24年4月から、介護職員等による喀痰吸引等(たんの吸引・経管栄養)についての制度がはじまります。(PDF)
・厚労省:喀痰吸引等(たんの吸引等)の制度について
「蝉コロン」というブログが面白いです。最近の記事で面白かったのがコレ。
手塚治虫が本格的な研究をしていたのを知って、ビックリしました。何かに打ち込む姿勢は、漫画家になる前から身に付いていたものだったのですね。
少し前の記事ですが、「ゾンビ遺伝子による疾患」も読み応えがありました。肩甲上腕型ジストロフィーは神経内科医として診療経験がありますが、ゾンビ遺伝子という言葉は初めて聞きました。興味深かったです。
神経内科医の小鷹先生が大学病院をやめて南相馬市立病院に勤務することをお伝えしました。
しかし、市の対応は十分ではないようです。上昌広先生が、twitterでこんな呟きをされていました。
小鷹先生はそれなりの覚悟を持って行くのでしょうが、それに応える体制作りを考えていかないといけないと思います。
神経内科医をやっていると、膠原病は比較的目にします。「何らかの神経障害があって、膠原病を疑って膠原病科医にコンサルト」というパターンが多いです。
しかし、神経障害以外の部分の知識不足は否めません。学生時代に勉強した教科書的な知識は年月と共にどんどん抜けていきますし、学問もどんどん進歩していきます。
そんな中、臨床医にとって非常に役立つ話をわかりやすく解説した連載を見つけたので、紹介します。
もう膠原病は怖くない! 臨床医が知っておくべき膠原病診療のポイント
エルゼビアという会社があります。科学雑誌を発行する最大手の雑誌社です。
ところが、この会社、過去に兵器取引という副業があり、問題視されていました。
今回、別の問題で反エルゼビア運動が起きているようです。
欧米圏で“学術の春”運動始まる、電子ジャーナル出版大手Elsevierに対し学者たちのボイコット運動が急拡大
【編集部記事】英The Economist紙によると、欧米圏の学者たちを中心にオランダの電子ジャーナル出版大手Elsevier社(本社:オランダ・アムステルダム市)のボイコット運動が急拡大している模様。
記事によると、発火点となったのは米国下院の委員会において昨年末から策定作業が始められたResearch Works Act法案。この法案は、アメリカ国立衛生研究所のオープンアクセス論文サイト「PubMed」を実質停止させることを狙った法案で、米国の出版社団体AAPや学術ジャーナル出版界などが後押ししている。これが引き金となり、1月21日にフィールズ受賞数学者であるCambridge大学Timothy Gowers教授がElsevier社からの出版をボイコットすることをブログ上で宣言。あっという間に欧米圏の主要大学に飛び火し、約3,900名(本稿執筆時点)の研究者がボイコット活動に署名する事態となっている。
The Ecomonist紙はこれをArab Spring(アラブの春)になぞらえて、Academic Spring(学術の春)運動と命名。ネット上で今後ますます拡大し続けるだろうと予想している。【hon.jp】
記事中にある、基礎研究者や臨床医が文献検索をするのに最も多く使用する Pubmed実質停止は、もし現実になれば影響力が大き過ぎますね。Research Works Act法案が通るかどうか、非常に気になります。Elsevierボイコットの背景には、出版業者が後押しするこの法案のみならず、雑誌の値段が高いことなどもあるようです。
この問題、研究者にとっては目が離せませんが、末端の研究者の本音を言うと、「Elsevierだろうがなんだろうが、とにかく論文を acceptしてください」。ボイコット出来るくらい、実力があれば良いのだけれど・・・ orz
Panorama Theme by Themocracy