Category: 医学と医療

謹賀新年

By , 2012年1月1日 12:05 PM

明けましておめでとうございます。今年もよろしく御願い致します。

元日に Twitterで 科学雑誌 “Cell” が縁起の良い論文を紹介していました。2009年の論文です。

Happyhour, a Ste20 Family Kinase, Implicates EGFR Signaling in Ethanol-Induced Behaviors

アルコール使用障害 (アルコール依存症など) に関わる遺伝子のスクリーニングをショウジョウバエで行い、”Happyhour遺伝子”を同定しました。この遺伝子は哺乳類の Ste20 family kinaseと強いホモロジーがあるそうです。

Happyhourの役割についてですが、ショウジョウバエでは EGFR signalingがエタノール感受性に関係があり、Happyhourはこの経路を阻害するらしいです。

それにしても Happyhourって、恰好イイ名前ですね。

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一般の方への風邪講座

By , 2011年12月21日 8:12 AM

nikkei TRENDYnetに『見分けて治す! 「本当のカゼ」と「カゼに似た病気」』という記事が掲載されました。一般の方が読んでもわかりやすいように書いてあります。知り合いの医師に、著者がどんな方か聞いたところ、非常に優秀な先生なのだそうです。

我々は平均して年に数度風邪を引きます。いざ風邪を引いてしまった時のために是非読んでおくことをオススメします。

見分けて治す! 「本当のカゼ」と「カゼに似た病気」

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神経内科のトレンド2011

By , 2011年12月16日 8:37 AM

消化器内科の先生が、ブログで 2011年の消化器領域での topicsを紹介していました。専門外の領域のトレンドはカバーしきれないので、こうしたサイトがあると非常に助かります。

消化器病のトレンド2011

ということで、私も独断と偏見に充ち満ちた神経内科領域のトレンド 2011を紹介したいと思います。

1) Dabigatran販売開始
経口抗トロンビン薬である Dabigatran (プラザキサ) が 2011年3月14日に発売されました。ワルファリンのような頻回の採血が不要で、薬物相互作用もほとんどない薬剤です(ワルファリンは一定の量で飲み続けても効果が変わることが多いので、定期的に採血をして量を調節しないといけない。また投与量も個人差が大きい)。ずっと期待されていた薬剤で、このブログでも 2006年に紹介したことがあります。この手の薬剤では、当初 Ximelagatranに注目が集まっていましたが、2006年2月14日に肝障害のため開発中止になったのでした。

ワルファリンのコントロール不良のため脳梗塞を発症する患者さんを日々診ていた我々にとって、1日 2錠で簡単にコントロールできる薬剤は夢のように思います。

2) ALSの原因遺伝子
筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の原因はほとんどわかっていませんでした。約一割の患者さんは遺伝性であり、その一部には SODなどの遺伝子変異が知られていました。新規の遺伝子は、2010年12月に VCP, 2011年8月に ubiquilin2と立て続けに見つかりましたが、ごくわずかな患者さんの原因を説明するものでしかありませんでした。

ところが、2011年9月24日に発表された intron領域における GGGGCCの 6塩基リピートは、家族性 ALSの 46.4%, 孤発性 ALSの 21%を占め、ALSにおいて中心的な役割を担っているものと予想されます。ALS研究において、TDP-43以来の impactであると思います。

(補足)Intron領域における 6塩基 repeatというのは最近のトレンドらしく、脊髄小脳失調症 SCAの一型 SCA36において intron領域に GGCCTGの 6塩基リピートが見られることが、2011年6月に本邦より報告されています

3) MSAにおける CNVの報告
原因が全く分かっていなかった難病、多系統萎縮症 (MSA) において、19p13.3の Copy number variation (CNV) が報告されました。この領域にはいくつかの遺伝子があり、どの遺伝子が原因かは正確にはまだわかっていません(※論文中では SHC2と推測している)が、病態解明の上で大きな手がかりとなることは間違いありません。

4) パーキンソン病治療ガイドライン 2011
パーキンソン病治療ガイドライン 2002が改訂され、パーキンソン病治療ガイドライン 2011が公開されました。パーキンソン病の専門家以外の医師にとっても使いやすいものになっていると思います。

一点注意しないといけないのは、序文に「治療ガイドラインは、あくまで、医師が主体的に治療法を決定する局面において、ベストの治療法を決定する上での参考としていただけるように」とわざわざ断っているように、押しつけるものではありません。患者さんによって置かれた状況は違いますし、薬への相性も違うので、ケースバイケースで対応していくことが大切です。

5) 多発性硬化症治療薬フィンゴリモド承認
2011年11月28日、多発性硬化症治療薬に対する初の経口治療薬フィンゴリモド (イムセラ) が発売されました。私も FTY720というコード名で治験に関わった薬剤です。経口治療薬でありながら、注射薬であるインターフェロンと同等以上の効果が期待できるのがウリです。しかし、海外では重篤なヘルペスウイルス感染症、白人における melanomaのリスク増加などが報告されているので、症例を選んで使うことが大切です。

6) 筋無力症における LRP4抗体
筋無力症 (重症筋無力症; MG) は、神経筋接合部に対する自己抗体が原因で、脳からの命令が筋肉に伝えられなくなる疾患です。抗AChR抗体が原因としては最も多いのですが、抗AChR抗体が検出されない症例も多く、sero-negative MGと呼ばれます。sero-negative MGからは 抗MuSK抗体が検出されるケースがあることは有名でしたが、抗AChR抗体、抗MuSK抗体ともに検出されない、double sero-negative MGの原因は不明でした。

日本から、新たに LRP4抗体が報告され、double sero-negative MGの診断/治療に福音をもたらすことになりそうです。

7) Dexpramipexoleの衝撃
筋萎縮性側索硬化症 ALSは、有効とされる治療法がほとんどありません。唯一といってよい治療薬リルゾールは、若干の延命効果が指摘されていますが、効果が実感できるほどではありません。その中で、Dexpramipexoleが観察期間内での死亡率低下のみならず、運動機能低下を抑制するかもしれないことが報告されました。治療効果は限定的かもしれませんが、一歩前進といったところです。

8) Dabigatranで重篤な副作用
第一位で紹介した Dabigatranですが、5例の死亡例が報告されました。いずれも腎機能低下のあった症例です (筋肉量の乏しい 80歳代において、Cr 1.1は腎機能障害ありととらえるべき: 参考)。

新規に薬剤が承認されたとき、積極的に使う医師と、しばらく様子をみる医師がいますが。私は後者です。いくら良さそうな薬剤であっても、治験では見つからない副作用が明らかになる場合があるからです。Dabigatranも、どのような症例では危険なのか、当初わからなかったことが明らかになってきたのだと思います。

9) ガランタミン、メマンチン発売開始
2011年3月22日にガランタミン (レミニール)6月8日にメマンチン (メマリー)が相次いで発売されました (メマンチンは震災のため 3月18日から発売延期)。アルツハイマー病の新薬として期待を集めていますが、実際には治療効果は非常に小さいのではないかという意見もあります

10) 脳における直感の局在
全くの個人的趣味で申し訳ないのですが、私が被験者として協力させて頂いている研究の一部が、2011年1月21日サイエンス誌に載りました。高次脳機能なので、一応神経内科領域です (^^;

この将棋思考プロセス研究から、どうやら直感は尾状核を通る神経回路と関係がありそうだということがわかりました。また、熟練によって身につけたパターン認知には楔前部が重要であるということもわかりました。

※トレンドって書きましたけど、正確にはトレンドというより私にとっての十大ニュースと言えると思います (^^)

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医学英語

By , 2011年12月14日 1:03 AM

論文を書くとき、医学英語の表現に迷うことが多いのですが、非常に素晴らしいサイトを見つけました。ノバルティス、GJ!

A Guide to Medical Writing  

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Dexpramipexole

By , 2011年12月3日 9:58 AM

2011年 11月 21日、非常に興味深い論文が Nature Medicineに掲載されました。掲載された日に読んだのですが、紹介するのが遅れるうち、別のブログに要約したのを見つけました。

takのアメブロ 薬理学などなど。-筋萎縮性側索硬化症(ALS)におけるdexpramipexole (KNS-760704)の効果

内容としてはこの通りなのですが、もう少し追加すると、Dexpramipexoleはパーキンソン病治療薬 Pramipexole (商品名:ビ・シフロール) の鏡像異性体 (R体) です。

 About dexpramipexole

Dexpramipexole, also known as (R+) pramipexole, was developed under the name KNS-760704 by Knopp Biosciences (then called Knopp Neurosciences) of Pittsburgh.

Dexpramipexole’s chemical structure is the mirror image of Mirapex, a prescription drug approved for the treatment of Parkinson disease and restless legs syndrome. The structural difference between the two molecules results in significantly different pharmacological effects.

Mirapex, also known as (S-) pramipexole, mimics the actions of a neurotransmitter called dopamine, which would be an undesirable strategy for ALS.

Although its mechanism of action in ALS remains unclear, dexpramipexole has demonstrated neuroprotective properties in multiple studies involving cell cultures and laboratory animals. It may work by improving the function and efficiency of cellular “energy factories” called mitochondria. In ALS, mitochondria endure a cell-damaging process called oxidative stress. It’s suspected that dexpramipexole may help maintain energy production in stressed mitochondria within motor neurons. (See Knopp Neurosciences to Pursue Development of ‘Mirror-Image’ Molecule.)

この薬剤、ミトコンドリア機能を改善する作用があるかもらしいのですが、詳しくはよくわかっていないそうです。しかし、ALSに対して、初めてある程度の効果が期待出来そうな薬剤なので、今から注目しています。一応リルゾールも生存期間を多少延長する効果があると言われていますが、効果を実感出来るほどではないのが現状です。

Dexpramipexoleは、論文中で機能スコアの低下を送らせ、観察期間内で死亡率を減少させているので、期待のかかる薬剤です。しかし、現時点では低下した機能を改善する作用や進行を完全に停止させる作用は確認されていないみたいですので、更に効果のある治療薬の開発が望まれます。個人的には、先日明らかになった C9ORF72の解析から、新しい治療薬が出てくることに期待しています。

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細胞夜話

By , 2011年11月23日 12:13 PM

「細胞夜話 (藤元宏和著、mag2libro)」を読み終えました。培養細胞の開発秘話、名前の由来、研究のこぼれ話など、非常に興味深かったです。

この本は、GEヘルスケアジャパンのバイオダイレクトメールに記されていた内容をまとめたものです。私は本の方が読みやすいので本で読みましたが、同じ内容が webでも公開されています。

細胞夜話 バックナンバー

専門的な知識をそれほど必要としない読み物です。興味のあるかたは上記リンクからどうぞ。

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Japanese M.D. in New York

By , 2011年11月16日 7:20 AM

週報の Nature, Science誌はこまめにチェックしないくせに、バミュ先生のブログは毎週チェックするオーレ。

日本の産婦人科医が、妻のアメリカでの出産を体験中。ほぼリアルタイムで書かれています。

 父親になりかけの産婦人科医 4

一度も医者に会わないうちに
診察が終わった。

(略)

数日後に
病院から郵便物が届いた。

医療費の請求書だった。

その額は
4500ドルだった。

いくつかのトラブルに見舞われているようで、上手く乗り越えられるよう、祈るような気持ちで読んでいます。

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アメリカでの出産

By , 2011年11月10日 7:02 AM

2週間前に紹介した、産婦人科医バミュ先生の奥様の妊娠の件、結構大変なことになっているみたいで・・・。アメリカの医療はやっぱりカネがかかるんですね。日本の出産の 5~10倍くらいが相場のようです。

 Japanese M.D. in New York  がんばろう日本-父親になりかけの産婦人科医 3-

NYでは
全額自費の場合
妊婦検診から分娩まで
3万ドルから5万ドルかかる
そうだ。

5万ドルなんて
どうやって払えばいいのか
検討もつかない。

母体と胎児の事だけを考えていたら
そこに
保険の心配事も加わった。


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オリンパス

By , 2011年11月9日 7:47 AM

世界最大手の内視鏡メーカー、オリンパスに火の手が上がっています。

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不死細胞ヒーラ

By , 2011年11月8日 9:55 PM

「不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックス」の永遠なる人生 (レベッカ・スクルート著、中里京子訳、講談社)」を読み終えました。

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