過去10回に渡って、ヨーロッパの病院食を紹介してきました。情報は、写真が掲載されている個人のブログを中心に集めましたので、ブログを書かれた方の病状、病院の規模などによって違ってくることは容易に想像されます。
ただ、それらを勘案しても、日本の病院食は素晴らしいなと感じました。医師には、検食が義務づけられていて、当直先では患者さんと同じ物を食べています。私は 10カ所以上の病院で検食をしてきて、不味くて嫌な経験をしたことがありません。というか、当直するときは検食は楽しみな仕事の一つです(15年以上食べ続けているコンビニ食から離れるチャンスだし・・・)。決められた予算の中、栄養を考え、365日食事を作り続けてくださるスタッフには、本当に感謝ですね。
今回、こうして情報を集めていてわかったことは、福祉が充実しているとされるヨーロッパでも、患者さんがかなりの我慢を強いられていることで、日本以上のサービスがヨーロッパだから供給されるわけではありません。また、食事に満足している方は、それなりに金のかかる病院に入院している事が多い傾向にありました。私が紹介したブログ達の、病院食以外の部分も読んで頂ければ、ヨーロッパの医療の生の姿が伝わってくるのではないかと思います。例えば、大部屋は日本独自のシステムなのかと思っていましたが、ヨーロッパでも珍しくないということは、色々なブログを見て初めて知りました。
情報に関しては、病院食の写真が載っているサイトを出来るだけ網羅したつもりですが、いくつか漏れがあるかもしれません。参考になるサイトなどありましたら、コメント欄などで教えて頂ければ幸いです。
「ヨーロッパの病院食」もいつの間にやら十回目。今回は社会福祉が充実しているとされる北欧からです。残念ながら、ノルウェーとフィンランドの病院食が載ったブログは見つけられませんでした。色々探す過程で、フィンランドの病院食からネズミの頭というニュースを見つけびっくりしました。
2008年 01月 27日 12:27 JST
[ヘルシンキ 26日 ロイター] フィンランド東部の病院が入院患者に出した食事の中にネズミの頭部が混入していたのが見つかった。病院の管理責任者が26日に明かした。
病院食として出された温野菜にネズミの頭が入っているのを、食事を出された男性患者が発見。この患者は食欲を失ってしまったという。
ネズミの胴体部分は見つかっておらず、調理に使われた袋入りのベルギー野菜にネズミの頭部だけが入っていたとみられている。
<スウェーデン病院食>
・スウェーデンで天使ママ-スウェーデンの病院食 8.13-8.22-
・スウェーデンで天使ママ-スウェーデンの病院食・その2 7.24~8.2-
・LIVING ROOM-入院
・LIVING ROOM-病院食第一弾-
<デンマーク病院食>
・丁抹よろず帖-病院食-
「ヨーロッパの病院食」の第九回。今回はポーランドを紹介します。病院食の画像はほとんど見つけられなかったのですが、資金不足で病院食がほとんど出なくなったニュース (2005年) を紹介しておきます。
2.医療現場の苦難
資金不足が深刻な公立病院では、医療現場の荒廃が指摘され、給与不足による診療制限、診療所の閉鎖、不良機器の修理・買替えの遅れ、医師・看護婦の志気低下、薬品関連の犯罪などが目立ってきている。2月17日付FAKT紙は、病院の悪現象のワースト6を上げた。
①賄賂-例:心臓診療に正規料金外に数千plnを要求された。
②長大な診療待ち行列-例:自動車事故での腎臓障害治療に2ヶ月待たされ、悪化。
③誤診の頻発-例:扁桃腺除去で、アレルギーを無視した手術が行われ、5才児童が死亡
④劣化医療機器の使用-例:故障したままの放射線照射で火傷
⑤低所得者層に高額な薬品-例:月800zlの年金で心臓薬毎月100plnの負担
⑥入院条件の悪化-例:病院食がほとんど出ず、家族が毎日差し入れ
「ヨーロッパの病院食」の第七回。今回は、スペイン、ポルトガルです。
スペイン料理は、地域によってかなり調理法が異なるみたいですが、今回紹介するブログはバルセロナでの入院が多かったようです。ちなみに、食事の満足度が高かった「トゥルリラトリップ♪」のブログ主の方、腎盂炎で1週間入院して入院費が100万円だと・・・保険に入っていて良かったですね。
<スペイン病院食>
・KTダイアリ--スペインの病院食-
・トゥルリラトリップ♪-バルセロナ 後編-
・WJWN-バルセロナ出産体験記:VIEWS 2010年秋号(第23号)掲載-
続いてお隣のポルトガル。
<ポルトガル病院食>
・エラい国に嫁いでしまった!-嗚呼・・・病院食。-
「ヨーロッパの病院食」もすでに第六回。ベルギーはビールが美味しい国ですね。でも、病院食にビールは出ないみたいです (^^;
<ベルギー病院食>
・ベルギー駐在員写真日記-うわさどおりの病院食-
・ベルギーの小人の家から・・・-入院生活のこと-
・ヨーロッパご飯作り日記 in ベルギー-あと半分とベルギーの病院ご飯-
(ちなみに、お隣のオランダは入院食の写真付きブログが見付かりませんでした)
ヨーロッパの病院食をウォッチする「ヨーロッパの病院食」の第五回。食文化の国イタリアですが、病院食はどうでしょう。・・・と思ったのですが、纏まった写真付きでイタリアの病院食を紹介しているサイトほとんどないんですね。
三食確認出来るサイトで見てみると、なかなか悪くない様子。腎移植をできるくらいなので、ある程度の規模の病院なのでしょうね。もう少し色々なブログが見つけられれば、病院による違いが比較できるのですけどね。
<イタリア病院食>
・献体腎臓移植日記(イタリア)-イタリアの病院食:朝食-
・献体腎臓移植日記(イタリア)-イタリアの病院食:昼食-
・献体腎臓移植日記(イタリア)-イタリアの病院食:夕食-
イタリアのすぐご近所、ギリシャは凄く豪華な食事・・・と思ったら有名な産院の豪華個室なのですね。公的サービスの充実したヨーロッパも、よりよいサービスを受けるには、やはり金が必要なのかもしれません。
<ギリシャ病院食>
・ギリシャのごはん-ギリシャの産院の食事-
ヨーロッパの病院食を食べ歩いた気になる夢の企画「ヨーロッパの病院食」の第四回。今回はスイス編です。チーズフォンデュは流石に出ないとは思うのだけど・・・。
<スイス病院食>
・ドイツの日々-妊娠事情 日本とスイスの違い-
・+スイス+はじめての出産・育児-病院食-
・ダンゴでタンゴ-スイス病院食 その①-
・ダンゴでタンゴ-スイス病院食案内-
・ジュネーブその日暮らし-ラトゥール入院体験(4) 夕食が食べたい・・・-
・ジュネーブその日暮らし-ラトゥール入院体験(5) あっという間に退院- (その時の入院費についてはコチラ)
(追記) ちなみにスイスにはこんな記事がありました。
2004-07-05 06:29
このほど、ジュネーヴ大学が同大学病院の病院食について1,700人の入院患者を対象に調査し、その結果を発表した。退院したら、栄養失調だったというケースもあり、病院の食事は食材、ケアともに改善されなければならないと同調査は指摘している。
病院で出される食事の量は問題ないとしても、食事が困難な人は補助がなければ食べられず、結局残してしまう。食事が問題で、入院期間が長くなってしまうこともあると調査では指摘している。
病院では怪我や病気の治療にあたるばかりではなく、患者の栄養面での面倒を見なくてはいけない。ジュネーヴ大学がこのほど、1,700人の患者に対して行い、以下の通りの結果を発表した。入院患者の5人に1人は既に入院時に栄養失調の兆候があるというが、入院中に十分な食事を取らず、栄養失調になって退院する人もあるという。
3人に1人が栄養失調
3人に1人が栄養失調のまま退院している。入院中に栄養が行き届かないため、患者の体力が落ち、意識障害に陥ったり、病気に対する抵抗力が下がったりして、その入院期間が延長しているケースも多い。こうした結果になり、調査にあたったクロード・ピカール氏自ら驚いたという。「病院の食事予算は、たとえばフランスでは、1日10フラン(約850円)が相場。スイスはこの4倍だから、すばらしい料理が出てくるはずと思われるだろうが、栄養失調の問題は大きい」と同氏は指摘する。
食欲不振になる理由
調査結果によると、入院患者の5人に1人は、「美味しくない」、「冷えてしまっている」、「選択肢が少ない」という理由を挙げ、病院食は食べない。また、4人に1人は入院していて食欲が湧かないと訴えている。
食事そのものの質も問題だが、患者がゆっくり時間を取って食べられないということもある。配膳されてから食器の回収までたったの20分。患者の中には一人で食べることができず、助けの必要な人もいる。「看護婦や患者の介護にあたる人は、患者一人一人の事情を把握していなければならない」と前出のピカール氏。食事は病院の付属的なサービスではなく、治療の一環で、患者に体力をつけさせるものということが忘れられてはいないだろうか。
他の病院の実情
今回発表された調査は、ジュネーヴ大学付属病院に限っているが、ドイツ語圏の病院を対象にした他の機関による調査でも、病院食の不十分さが患者の健康に影響を与えているという結果が出た。対象となった患者10,268人のうち18%が栄養失調に陥る可能性が高いか既に栄養失調になっている。特に手術後、栄養失調のために他の病気に感染したりする危険も高く、入院期間が長くなるということもありうると調査は訴えている。
食事内容から食事の出し方まで、病院食の見直しは患者へのサービスの向上ばかりではなく、医療コストを下げることにつながる。
同調査の結果を踏まえ、ジュネーヴ大学付属病院では9月から食事を見直すことにしたという。日本でも、病院食は嫌われる傾向にあるが、美味しい食事をとるのは「贅沢」ではなく、患者の健康に重要であるというスイスの調査結果を参考にしてほしいものである。
スイス国際放送 エリザベス・メーン(佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)