昔、「ベートーヴェンの遺髪 (ラッセル・マーティン著/高儀 進 訳, 白水社)」を興味深く読みました。その後、遺髪の遺伝子解析がされていると聞いてはいましたが、結果を followしていませんでした。
関西医科大学の法医学教室の「法医学鑑定の話題」というサイトに、遺伝子解析が行われた有名人について特集されています。その中で、ベートーヴェンについて詳細に述べられていました。
楽聖ベートーヴェンの遺体鑑定
ベートーヴェンの毛髪と、彼の墓から発掘された頭蓋骨の DNA鑑定が行われ、両者が一致しました。そして、彼の毛髪からも、頭蓋骨からも高濃度の鉛が検出されたのでした。
鉛中毒の原因は、当時ワインに含まれていた甘味料が鉛を含んでいたという説が有力なようですが、納得できる話です。
DNA鑑定の話は面白いので、是非上記サイトを見てみてください。
感染症診療の原則-死亡率が低いのは-で紹介されていた論文です。
Epidemiological characteristics and low case fatality rate of pandemic (H1N1) 2009 in Japan
以前、私が新型インフルエンザ年齢別死亡率で紹介したようなことを更に詳細に行った研究です。インフルエンザに関する疫学的研究で、年齢別患者数、年齢別入院患者数、年齢別死亡率などのデータが示されています。また、海外との比較、季節性インフルエンザとの比較なども検討されています。
日本の治療成績が何故良いのか?抗ウイルス薬が寄与しているのかもしれないけれど、本当のところはわかっていません。抗ウイルス薬を初期から投与しても重症化が防げないケースがあることがわかっています。抗ウイルス薬が季節性インフルエンザの合併症を減らすかどうかは疑問視されていますし、新型インフルエンザの重症化を防ぐかどうかの根拠もそれほど強いわけではないのですね。
こうしたことを考えると、我々は「○○かもしれない」「○○の方が良いのではないかなぁ・・・」という判断を通じて、インフルエンザと戦っているのだと実感します。まさに試行錯誤ですね。
岩田健太郎先生のブログにカルバペネムのまとめがありました。面白かったので紹介。
楽園はこちら側-カルバペネムのまとめ-
ついでに、もう一つ、過去の勉強になるエントリーも紹介。
楽園はこちら側-透析療法と感染対策-
当直の日を休肝日として、普段から飲んだくれているみぐのすけとしては、看過できないニュースです。
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読んで ムカつく噛みつき評論に、視聴者を安心させないでというエントリーがありました。
「(医師は)健康番組の打ち合わせで、テレビ局側に最初に念を押されたという。
『視聴者を安心させないでください』
不安を覚えた視聴者はチャンネルを切り替えずに番組を注視し、続編を出せば飛びついて見てくれる」
健康番組の翌日は、不安を感じた一般人の受診が多く、外来担当医に負担となることがあります。いつもに比べて「○○が不安」という受診が多いのです。不安症の方の受診ばかりで、実際にその病気の方が受診するのを見たことがありません。症状がないのに、「新型インフルエンザが不安だから検査してくれ」なんてのも似てますね。
もし、上記に書かれた打ち合わせの風景が本当だとすれば、ただ不安をあおるのではなく、きちんと事実を伝えて欲しいものだなと思います。
11月15日に季節性?というエントリーを書きました。A型インフルエンザに罹患後、1ヶ月後に再度インフルエンザA型が陽性になった患者を診察したときの話です。その時は、新型と季節性、各1回ずつ罹患したのかなと思ったのですが、どうやら新型インフルエンザに 2度罹患することがあるらしいという話が出てきています。
大阪府内で5月、新型インフルエンザの集団感染が確認された関西大倉中学・高校の生徒を対象にした血清疫学検査で、府立公衆衛生研究所は11日、ウイルスに感染しながら症状が出ていない「不顕性感染者」が確認されたと発表した。
検査は8月下旬、生徒550人、教職員95人、生徒の家族2人の計647人を対象に実施。ウイルスに感染もしくは疑いが強い、高濃度(抗体価160倍以上)の抗体量を示した98人のうち18人(18.4%)に発熱、せきなどの症状がなかった。
また検査後に発症した108人のうち、高濃度の抗体を持つ人は3人おり、発症が1度にとどまらない可能性もあることが判明した。
同研究所は「(年齢層に偏りがあるため)必ずしも一般化できない」としながらも、「季節性インフルエンザと似ている」との見解を示している。(2009/12/11-22:35)
Idatenという感染症専門メーリングリストでも同様の報告がされており、今後の動向が注目されます。
新型インフルエンザに同年に再感染することがあるのなら、ワクチンを接種したにも関わらず感染することがあるのも納得出来ます。まぁ、2回新型インフルエンザに感染すれば、よっぽど強い免疫の「記憶」が出来そうですけどね。
研修医の頃に「医者やめたい病」に罹患してしまったようで、「早く引退したいなぁ・・・。音大とか他の学部にも通ってみたいなぁ・・・。こんな雑用だらけの毎日から解放されたいなぁ・・・」と思いつつ働いていました。働かないで食べられる程金も貯まらないし、医者という職業の中に楽しいこと(学問的な興味、気の合う患者さんとのコミュニケーションなど)がいくつか見つかり、まだ辞めずにいます。この病気は慢性疾患のようで、治癒した訳ではありません。でも、なんとなく実際に私が医者を辞めるシチュエーションは訪れなさそうな気がします。
こんなこと考えるの私だけだと思ったら、同じ病気の患者が非常にたくさんいるのですね。聞けば親友の医師もそうだし、知り合いの医師で「医者やめて小説家になる」宣言をされている方もいます。
実は有病率が高い病気なのではないかと思っていたら、まっしー池田先生のサイトにこの病気のことが扱われていました。
医者を辞めずに済む方法 医者やめたい病のあなたのための認知行動療法
このサイトの「私の病歴・経過のスライド」というファイルみると、約 60%の勤務医がこの病気に罹患していることがわかります。凄い有病率です。なんだ、みんなそんなこと考えながら仕事してたんだ・・・と。
ハリソンにも書いていない病気ですが、ハリソンに載っている病気と同じくらい、医師たちは知っていないといけない病気だと思います。まっしー池田先生の上記のサイトは治療法も書いてあって面白いので、是非見てみてください。
小名浜生協病院の館山政美先生のサイトで、インフルエンザ年齢別感染率、死亡率が掲載されています。わかりやすくまとめられているので、是非ご覧ください。
Dr. Tateyama Penguin Homepage -年齢別感染率 死亡率-
実際にデータを見ると、老人はかかりにくいけど、比較的重症化しやすいことがわかります。インフルエンザに感染して死亡した場合、すべてインフルエンザが死亡原因とは断定できませんが、80歳以上で感染した場合 10000人中 3.6人が亡くなるというデータは、急変リスクを考える上で一つの目安になります。