11月1日19時21分配信 ISM
現地31日、サンアントニオ・スパーズ対サクラメント・キングス戦の第1Q終盤に、コウモリが乱入するハプニングが起こった。試合が一時中断したものの、そこでスパーズのマヌ・ジノビリが、AT&Tセンターを飛び交うコウモリを捕まえるなど冷静な対応を見せ、追い払うことに成功した。
このジノビリの対応に、チームメイトのトニー・パーカーは、「信じられない、彼はクレイジーなことをしたね」と驚いていた様子だった。また、このとき会場には米国の人気ヒーロー“バットマン”のテーマが流れ、キングスの選手も、ジノビリに拍手を送ったという。
なお、試合はパーカー、リチャード・ジェファーソンといった主力が20得点以上と活躍したスパーズが、113対94で快勝している。
最終更新:11月1日19時25分
ちょっとした美談のようになっていますが、実は非常に危険な行為だったように思います。なぜなら、アメリカではコウモリが狂犬病の大きな原因になっているからです。狂犬病の場合、発症すれば致死率はほぼ 100%です。
アメリカではコウモリに御用心!(狂犬病)
IDWR 感染症の話 狂犬病
この選手が傷を受けたとは記事に書いてありませんが、細かい傷を受けていないとも言い切れませんので、念のためワクチンやグロブリンなどの治療を受けた方が良いように思いました。
「音楽家の手 臨床ガイド (イアン・ウィンスパー、クリストファー B ウィン・ペリー編著、酒井直隆、根本孝一監訳、協同医書出版社)」という本を買いました。
音楽家と手の痛みなどについて詳しくまとめられています。ほとんどは整形外科疾患なのですが、本書で取り上げられている絞扼性神経障害やジストニアは神経内科医にとって身近な疾患です。この分野に興味を持った方には是非お勧めしたいと思います。
Hypermobility症候群の項では、Paganiniや Listが取り上げられていました。以前、Paganiniの手についての論文を集めたとき、私がPaganiniが Hypermobility症候群であるとする最初の提唱者ではないかと思ったのですが、すでに本書の著者らが触れていましたね。先を越されたのは少し残念でしたが、自分の意見が彼らと同じであることを嬉しく思いました。
ちなみに、訳者の酒井直隆先生は、「ピアニストの手 障害とピアノ奏法」という本も書かれており、本書と一緒に購入しました。
笑ってはいけないのですが、思わず笑ってしまった話です。
(2009年10月1日)
飯田市大通の栗山会飯田病院(千葉恭院長)は1日、新型インフルエンザ対策の一環として正面玄関にサーモグラフィーを設置し、発熱している来院者を見分けて個別対応することで院内感染を防ぐ取り組みを始める。県健康づくり支援課は「県内の病院で同様の事例は聞いたことはない」としている。
同病院によると、サーモグラフィーは体の表面の温度が37度を超えるとアラームが鳴るように設定。発熱者はほかの来院者から分かれて待機してもらい、問診や検診によって必要があればインフルエンザの簡易検査を実施する。
同病院は、10月に流行がピークになるとの予測を受けて、熱があることに気付かないで来院する人をチェックするためにサーモグラフィーの導入を決めた。費用は約200万円。院内の感染対策委員会チームリーダーの秋城京子さん(55)は「いち早くキャッチして院内感染を防いでいきたい」と話している。
(提供:信濃毎日新聞)
「感染症診療の原則-37度以上の人をサーモグラフィで識別(長野県)-」というブログのコメント欄にかかれていた一言が、私のツボを刺激しました。以下、コメントを引用します。
>説明書を読むと、『温風や冷風の当たる場所では±3℃変わります』、『暑いまたは冷たい場所から来た場合は20~30分室温に均してから測定下さい』…。
これを玄関に置くんですってね (^^;
先日、東京近郊の医療崩壊地域で当直をしていました。私が当直に行っている病院は、小児科医を守るため、12歳以上は小児も内科医が診ています。
そこへ、小児救急の患者が直接来院しました。神経疾患の疑いが強かったので、幸いなことにすぐに診断がつきました (おそらくMELASの初発 (ないしは2回目) 発作)。
入院が必要なので、近隣に電話をかけ始めたのですが、小児専門病院は 15分かけ続けても「ただいま回線が混み合っております。もうしばらくお待ちください」のメッセージが延々と流れるのみ。おそらくインフルエンザの問い合わせの対応でパンクしているのだと思います。小児科を有する基幹病院 2件も、「インフルエンザ以外の入院は受けられない」とのこと。病棟にインフルエンザ患者がたくさんいて、院内感染の可能性が高いからでしょうかね。そのほか、大学病院 1件断られ、大学病院 2件目で受け入れ可能でした。ただでさえ小児科はリソース不足なのに、インフルエンザが追い打ちをかけています。
医療に関して「無駄を省く」という大号令の元、予備能が全くなくなってしまうと、今回のようにインフルエンザなどで過度の負荷がかかった事態に搬送先を探すのが困難となるのは、目に見えています。不幸な事件が起きないと良いのですけれど。
「蛋白質科学イラストレイテッド (竹縄忠臣著編集, 羊土社)」を読み終えました。今年の春から読み始めたので、半年くらいかかってしまいました。その間に他の本も色々と読みましたが。
前半は、蛋白質の基礎的な話や品質管理の話を中心としていて、非常に読みやすかったのですが、蛋白質修飾の話からだんだん難しくなり、続く蛋白質機能の辺りはちんぷんかんぷんでした。ここを理解するためには、もう少し基本的な本を読まないといけません。
本書の最後は、疾患が具体例に示され、神経変性疾患や分子標的治療薬の標的部位の話などが登場し、臨床に近かったので楽しめました。
全体的には難解だったのですが、神経変性疾患を克服するには、こうした基礎の話が非常に重要な訳で、読んでいて得ることの多い本でした。普段の臨床から少し距離を置いた本も新鮮なものですね。
第1章 タンパク質の基礎知識 【末次志郎】
第2章 タンパク質動態の基本
1 タンパク質の合成 【姫野俵太】
2 タンパク質の構造 【神田大輔】
3 分子シャペロンとタンパク質のフォールディング 【寺澤和哉,南 道子,南 康文】
4 タンパク質分解【八代田 英樹,小松雅明】
5 タンパク質輸送と局在【谷 佳津子,多賀谷 光男】
第3章 タンパク質修飾
1 セリン・スレオニンホスファターゼ 【後藤英仁,稲垣昌樹】
2 チロシンキナーぜ 【小谷武徳,伊東文祥,岡田雅人】
3 哺乳動物細胞のプロテインセリン・スレオニンホスファターゼ 【田村眞理,佐々木 雅人,小林孝安】
4 チロシンホスファターゼ 【大西浩史,的崎 尚】
5 アセチル化,脱アセチル化 【六代 範,北林一生】
6 タンパク質の脂質修飾 【内海俊彦】
7 ポリADP-リボシル化 【三輪正直,金居正幸,内田真啓,花井修次】
8 糖鎖修飾 【佐野琴音,小川温子】
第4章 タンパク質機能
1 細胞骨格タンパク質 【馬渕一誠,池辺光男,伊藤知彦,豊島陽子】
2 受容体 【橋本祐一,芳賀達也】
3 情報伝達関連タンパク質 【尾崎惠一,河野通明】
4 転写調節複合体 【吉田 均,北林一生】
5 アポトーシス関連タンパク質 【高澤涼子,酒井潤一,須永 賢,田沼靖一】
6 細胞周期関連タンパク質 【野島 博】
第5章 タンパク質分析法
1 タンパク質の分離と精製 【長野光司】
2 マススペクトロメトリーとプロテオミクス解析 【長野光司】
3 タンパク質の発現系 【本庄 栄二郎,黒木良太】
第6章 タンパク質と疾患
1 タンパク質分解異常と疾患 -神経変性疾患を中心に- 【荒木陽一,鈴木利治】
2 フォールディング異常と疾患 【大橋 祐美子,内木宏延】
3 タンパク質変異と疾患 -癌にかかわるタンパク質- 【鎌田 徹】
4 癌治療の分子標的タンパク質 【丸 義朗】
昔、ちらりと「肺炎球菌ワクチンを海外では複数回打てる」という話を紹介しました。
日本でも、ついに打てるようになったそうです。下記の岩田健太郎先生のブログで知りました。ワクチン行政も、一歩前進ですね。
楽園はこちら側 -やったぜ!-
岩田先生のブログでも紹介されている記事を、引用しておきます。
厚生労働省は18日、肺炎の重症化を予防する肺炎球菌ワクチンについて、1回目の接種から5年程度経ていれば再接種を認めることを決めた。
新型インフルエンザに感染した65歳以上の高齢者が重篤な肺炎を併発することを防ぐ効果も期待される。
同ワクチンは従来、再接種すると強い副作用が出るとして、接種は一生に1度とされていた。だが、同ワクチンの効果は5年以上たつと低下する。海外などで4年以上の間隔を置けば、再接種は問題ないとの報告が出され、現在では欧米の多くの国で再接種が認められている。
この日開かれた同省の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会は、5年を目安に一定の間隔があれば、医師の判断で再接種を認めることで合意。同省はインフルエンザワクチンとの同時接種も認めた。
(2009年10月18日21時13分 読売新聞)
小さな政府、大きな政府という議論があります。
財政赤字が拡大している中、政府をスリム化しようというのが小泉構造改革とされています。ところが、李啓充先生の分析を見ると、国際的にも小さな政府の方が国民負担が大きいことがわかります。そして、必ずしも上手くいっているわけではなさそうです。
「国民負担率」がどれだけ misleadingな言葉であるかを4回にわたって論じてきたが,ここまでの議論を以下にまとめる。
1)国民負担率は個々の国民の実際の負担を反映しない:国民負担率が日本よりも小さい国(たとえばアメリカ)の国民負担は日本よりも極端に重いし,逆に,国民負担率が日本よりもはるかに大きい国(たとえばフランス・スウェーデンなど)の国民負担は,日本とそれほど変わらない。
2)国民負担率が大きい国で国民負担が重くならない最大の理由は,事業主が手厚く社会保障費を負担していることにあり,先進諸国の実情を見る限り,「小さな政府」は,実際的には「国民の負担が重く,事業主負担は軽い国」と同義と言ってよい。
小さな政府と大きな政府のどちらが良いかという議論は別にして、急にどちらか一方に舵を切れば、その反動は大きいように思います。民主党がどんな党で、今後どんな失政を起こす可能性があるかは別として、今回民主党が政権をとり、福祉などの充実に大きな予算を当てているのは、小泉改革の反動であると言えます (民主党が急激に大きな政府を目指せば、またその反動は来るかも知れません)。
小さな政府、大きな政府の議論には、医療費の話が大きく関わってきますが、下記の李啓充先生のコラム (計 8回) を読むと、増大する医療費をどう捉えていけば良いか、とても参考になります。
緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(1)
「ロレンツォのオイル」という映画の DVDを見ました。副腎白質ジストロフィーという難病についての映画です。
物凄く描写が細かくて、リアリティーのある映画でした。本編に関係のない描写での説明は一切ないのですが、「あ、今眼底をみているな」とか、「flash VEPの検査中だな」とか「典型的な痙性歩行だな」とか思いながら観ました。この手の映画では「かわいそう」という同情を訴えようとするものが多いのですが、この映画は事象を客観的に描写し、純粋に映画としての感動がありました。また、多くの医療系ドラマ/映画では、「これは、ないな」というシーンがいくつもあり感情移入できないのですが、この映画ではそう感じることもありませんでした。
この映画は色々物議をかもした映画であり、李啓充先生のコラムを読んでから観ると、倍楽しめると思います。
「ロレンツォのオイル」 その後(1)
「ロレンツォのオイル」 その後(2)
10月5日0時54分配信 毎日新聞
長妻昭厚生労働相は4日、山井和則厚労政務官と協議し、格差問題の解決に本格的に取り組むため、国民の「貧困率」を政府として調査する方針を固めた。5日にも担当部局に対し、全国的なデータ収集と貧困率の削減目標設定を指示する。山井政務官が4日夜、NHKのテレビ番組で明らかにした。
貧困率とは、全国民の平均的な年収の半分に満たない人の割合とされるが、政府は正式な指標として算出していない。06年に経済協力開発機構(OECD)の発表したリポートで日本の貧困率が先進国中、米国に次ぐ2位という悪い結果となり、貧困問題に取り組むNPO(非営利組織)などが政府に調査を求めていた。民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)に「貧困の実態調査を行い、対策を講じる」と明記している。【佐藤丈一】
格差社会というのが問題となって久しくなりますが、李啓充先生が 6話連続で書いているコラムが面白かったので、紹介しておきます。
続 アメリカ医療の光と影 第128回 格差社会の不健康(1)
亀田総合病院感染症科のブログに、同院での抗インフルエンザウイルス薬の使用法が載っています(記事の最後に、改訂された使用法へのリンクがあります)。
今にも落ちて来そうな空の下で-当院の抗インフルエンザウィルス薬の使用方法 ポジションステートメントを改訂しました-
その他、亀田メディカルセンターのサイトには、各1ページで読める、同院の感染症診療ガイドラインも掲載されているようです。さすがに量が足りない印象がありますが、研修医が簡単に各論を把握するには丁度良いように思います。
臨床ガイドライン