Category: 医学と医療

未納問題

By , 2007年6月2日 6:16 PM

いつも巡回するブログで知った情報です。

勤務医開業つれづれ日記-医療費未払い:「国立病院機構」の実態調査へ 厚労省-

給食費未納は22億円と言われています。

医療費未納は、
四病院団体協議会(病院の6割加盟)だけで
853億円。

今後、国の医療費削減政策によって経営が悪化する病院が増えますので、何らかの対策が必要になっていくでしょうね。

それより問題は私の未納問題。内科学会からFAXが医局に届きまして、「2007年度学会費が未納なので、認定医試験の受験票が送れません」と。

しかたないので、昨日仕事が終わって22時に郵便局に行ったのですが、時間が遅いので振り込みは出来ないと言われてしまいました。今日、何とか納入出来ました。ついでに、日本神経学会、認知神経学会などの会費も滞納分を納入。定期購読雑誌の購読料を納入。これで1年は振り込みに行かなくて済みます。

こうした会費って、なかなか郵便局の開いている時間帯に振り込みに行く暇がないんですね。秘書を募集したいところです。

しかし、未納は未納。年金未納だった菅直人のように、お遍路様行ってこようかなぁ・・・。仕事を休ませて貰えればね。

(参考)
勤務医開業つれづれ日記-救急患者医療費:未払い急増、10年で4倍…東京消防庁-

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OECD最低水準

By , 2007年5月29日 7:08 AM

厚生労働省は、医師が過剰になると従来より主張していますが・・・。

 人口1000人当たりの日本の医師数が、2020年には経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中最下位に転落する恐れがあることが、近藤克則・日本福祉大教授(社会疫学)の試算で分かった。より下位の韓国など3カ国の増加率が日本を大きく上回るためだ。日本各地で深刻化する医師不足について、国は「医師の地域偏在が原因で、全体としては足りている」との姿勢だが、国際水準から懸け離れた医師数の少なさが浮かんだ。
OECDによると、診療に従事する03年の日本の医師数(診療医師数)は人口1000人あたり2人。OECD平均の2.9人に遠く及ばず、加盟国中27位の少なさで、▽韓国1.6人▽メキシコ1.5人▽トルコ1.4人――の3カ国を上回っているにすぎない。
一方、診療医師数の年平均増加率(90~03年)はメキシコ3.2%、トルコ3.5%、韓国は5.5%に達する。日本は1.26%と大幅に低く、OECD各国中でも最低レベルにとどまる。各国とも医療の高度化や高齢化に対応して医師数を伸ばしているが、日本は「医師が過剰になる」として、養成数を抑制する政策を続けているためだ。
近藤教授は、現状の増加率が続くと仮定し、人口1000人あたりの診療医師数の変化を試算した。09年に韓国に抜かれ、19年にメキシコ、20年にはトルコにも抜かれるとの結果になった。30年には韓国6.79人、メキシコ3.51人、トルコ3.54人になるが、日本は2.80人で、20年以上たっても現在のOECD平均にすら届かない。
近藤教授は「OECDは『医療費を低く抑えると、医療の質の低下を招き、人材確保も困難になる』と指摘している。政府は医療費を抑えるため、医師数を抑え続けてきたが、もう限界だ。少ない医師数でやれるというなら、根拠や戦略を示すべきだ」と批判している。【鯨岡秀紀】 (Yahoo!ニュース)

国際的に日本の医師が不足していることが客観的に示された数字です。

厚生労働省の医師数に関する考えは、全国厚生関係部局長会議資料(健康政策局)将来の医師需給についてで知ることができます。

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耳の話

By , 2007年5月24日 6:59 AM

Paget病について調べていました。「Diagnosis of bone and joint diorders 3rd Edition (Resnick著)」の第4巻1924ページを読んでいて、面白い記述を見つけました。

Diagnosis of bone and joint diorders 3rd Edition (Chapter 54 – Paget’s Disease)

Neuromuscular complications are not infrequent. Neurologic deficits, such as muscle weakness, paralysis, and rectal and vesical incontinence, resulting from impingement on the spinal cord, can be apparent in patients with compression fractures of the vertebral bodies. Similar deficits may accompany platybasia owing involvement of the base of the skull. Compression of cranial nerves in their foramina is not common, although deafness may be apparent. In fact, some investigators suggest that Beethoven’s deafness resulted from Paget’s disease. Impingement on the auditory nerves usually is the result of pagetic involvement of the temporal bone and labyrinth, although structural abnormality of the ossicles of the middle ears also has been observed.

BeethovenがPaget病で難聴を来していたという可能性です。Beethovenの耳についてはさまざまな議論があります。

音楽に関する病跡学の本として有名な「音楽と病 病歴にみる大作曲家の姿 (ジョン・オシエー著, 菅野弘久訳, 法政大学出版局)」には、Beethovenの耳について詳しく記載されています。

ベートーヴェンの難聴の原因に最終判断を下すまで医学は至っていない。聴神経そのものが傷ついて起こる感音性難聴が原因なのか、耳小骨 (中耳を通して音を伝える三つの骨) が厚く固まる耳硬化症が原因なのか、医学界では意見が分かれている。耳と脳については、解剖所見にある程度詳しく記されているものの、驚いたことに耳小骨については何も触れられていない。解剖を担当したヨハネス・ワーグナーは、耳小骨と錐体の一部を後で調べるために取っておいたが、紛失してしまった。ベートーヴェンの遺体は、一八六三年と八八年に二度発掘されている。なくなった耳小骨は見つかっていない。その骨がない以上、ベートーヴェンの病気についてなされるさまざまな診断から、耳硬化症の可能性を除くことはできない。

更に、オシエーの本の「序」には、ワグナー教授がベートーヴェンの解剖を行いそのときの弟子がロキタンスキーだったこと、ロキタンスキーにとって最初の解剖がベートーヴェンだったことが記されています。その後、ロキタンスキーは解剖学で名前を残した名教授となりました。

オシエーの本に載っている、ベートーヴェンの耳疾患の鑑別診断は下記です。

伝記作家が推測するベートーヴェンの難聴の原因 (1816-1988)

発疹チフス/髄膜炎 ヴァイセンバッハ (1816)
外傷性感音性難聴 フォン・フリンメル (1880)
梅毒
(a)髄膜血管 ヤコブソン (1910)
(b)先天性 クロッツ-フォーリスト (1905)
(c)初期 マッケイブ (1958)
耳硬化症 ソルスビー (1930)
血管機能不全 スティーヴンズ、ヘメンウェイ (1970)
耳硬化症 スティーヴンズ、ヘメンウェイ (1970)
ぺージェット病 ナイケン (1971)
医原病 ギュート (1970)
自己免疫性感音性難聴 デービス (1988)
(耳硬化症が好まれる診断)

こうした記述からは、耳硬化症の説が強いようです。

「ミューズの病跡学Ⅰ 音楽家篇 (早川智著, 診断と治療社)」でも、「ベートーヴェンの聴力障害」という項で、Beethovenの耳疾患について扱っています。しかし結論は示されていません (ちなみに、著者の早川先生とは、年に一度くらい飲む機会があり、個人的にお世話になっております。最近は、「mozart effect」について議論しました)。

最後に、オシエーの本から、ベートーヴェンの解剖報告書のうち、耳と脳に関する記述を紹介しましょう。

 外耳は大きく、正常である。舟状窩、とくに耳殻はたいへん深く、通常の1.5倍はある。さまざまな突起や湾曲部が目立つ。外耳道は輝きのある鱗屑で覆われて、鼓膜の辺りが見えない。耳管はかなり拡張しているが、粘膜が膨れているため、骨の部分でやや収縮している。開口部の前と扁桃腺に向かう部分に窪んだ瘢痕が見られる。乳様突起の中心細胞は大きくて無傷だが、充血した粘膜で覆われている。錐体全体にも同じような充血が見られる。かなり太い血管が、とくに蝸牛部分を横断しているためで、螺旋状の粘膜部分が少し赤くなっている。
顔面神経は異常なほど太い。逆に聴神経は細く、鞘がない。それに沿った動脈は拡張して羽軸ほどの太さになり、軟骨化している。左のさらに細い聴神経は、三本の灰色の糸からなり、右の聴神経は、より太く白い糸からなっている。これらは他のどの部分よりも堅く、充血している第四脳室から生じている。脳回には水が溜まり、異常に白い。通常より太く、また多いように思われる。頭蓋冠は全体に厚く、半インチほどある。

解剖の際の情景が浮かんでくるようです。ボンでデスマスクを見た時のことを思い出しました。

ちなみに、Beethovenの死因は、アルコール性肝硬変という説が最も有力です。

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医療過誤訴訟

By , 2007年5月13日 2:28 AM

海外の話ですが、医療と訴訟について、ショッキングなデータがあります。訴訟がこの手の紛争解決にどのような意味を持つか考えないといけません。

 週間医学界新聞-〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第5回 Harvard Medical Practice Study(医療過誤と医療過誤訴訟)-

事故や過誤はまったく存在しなかったと考えられる事例の約半数で賠償金が支払われている一方で,過誤が明白と思われる事例の約半数でまったく賠償金が支払われていなかったのである。それだけではなく,賠償金額の多寡は医療過誤の有無などとは相関せず,患者の障害の重篤度だけに相関したのだった。

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労働時間

By , 2007年5月13日 2:08 AM

少し古い話ですが、いまだに腹に据えかねる発言があります。「女性は産む機械」発言より、もっと深刻な話です。

 勤務医開業つれづれ日記-失言再び 柳沢「強制労働」大臣 「医師の労働時間はたいしたことない発言」??-

柳沢厚労大臣

「たしかに病院に着いてから帰るまでの時間は長いかも知れないけど、その中には待機してる時間や休憩時間、自分の研究をしてる時間も含まれてるんだから、本当の勤務時間である『患者を診察してる時間』だけを見たら、厚労省の調査では別にたいしたことはない」

ブログ主は、「それを言うなら、国会議員が国会で実際に発言している時間以外は仕事じゃない、ってことですか?」と述べています。

私にとっての、問題点は、労働時間云々が主ではありません。現在の医学は、先人達の研究、現在から見れば未熟であった当時の医療の犠牲となった患者達の上に成り立っています。医師達は、どんなに環境が劣悪であっても、研究をないがしろに出来ません。医学が進歩しないからです。研究が労働時間にならないのはどういうことでしょうか?

研究が労働ではないとしたら、研究者のアイデンティティはどうなりますか?

(参考)
新小児科医のつぶやき-予算委員会-

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先輩の話

By , 2007年5月10日 11:18 PM

電気生理専門の I先生と最近飲む機会が多いです。I先生とは、お互いに音楽が好きで、話が合うのです。

I先生は、ベートーヴェンの「田園」が好きなのだとか。その理由を語ってくれました。

 俺は喘息持ちだったんです。でも、俺の実家は、東北で、昔は病院なんて夜はかかれなかったんです。夜発作を起こすと、朝病院が開くまで待つしかなかった。

お袋が、辛いのを紛らわすために、発作中いつも田園のレコードをかけていてくれました。俺はその田園を聴きながら、朝を待っていたんです。

東北は今も医者がいない。だから、東北地方に戻って、医者をやりたい。故郷に恩返しがしたいんです。

深刻な事情に、聞いていて胸が痛くなりました。

しかし、「東北で医者をやるのは辞めた方が良い。先生が専門の電気生理なんてやる機会ないよ。一般の内科疾患の診療に追われて、こき使われるだけこき使われて捨てられるだけだよ。」

と、止めました。彼の崇高な志はわかるのですが、状況が悪すぎます。専門分野に専念出来る環境を与えれば、素晴らしい業績を残すことが出来るでしょうが、野戦病院では才能を埋もれさせてしまいます。

現在も、東北の医師不足は深刻です。しかし、埼玉では言うに及ばず、東京でも医療崩壊が始まっています。I先生は、都内の病院で、白紙の小切手を渡され、勧誘されたことがあるそうです。既に医師不足に陥り、そのような方法で医師を勧誘していたのは、○○区、△△区・・・。次の医療崩壊が危ぶまれる地域なのかもしれません。

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哀しい色やね

By , 2007年5月2日 7:27 AM

私が毎日チェックするブログ、「産婦人科残酷物語Ⅱ」で、ある日「哀しい色やね」というエントリがありました。涙がこみ上げるような内容でした。

その後、読売新聞から取材があったとブログに書かれていました。

4月30日の読売新聞を購入し、社会面での新連載「医の現場」で記事を確認出来ました。勤務医開業つれづれ日記-「医の現場 疲弊する勤務医 (1)「医師逮捕」心キレた」 産婦人科残酷物語 Ⅱ-で、記事について詳しく知ることが出来ます。

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東京レントゲンカンファレンス

By , 2007年4月29日 1:02 PM

第 295回東京レントゲンカンファレンスで発表してきました。個人的には、今回で 2回目の発表となります。

これは、各大学の放射線科医が症例を呈示して、他大学の放射線科医が読影するという試みです。

Discusserは、放射線科医達が大勢見守る前で読影し、プレゼンテーションします。それを踏まえ、Moderatorは解答を示します。読影のプロセス、ポイントが示されるため、とても勉強になります。

東京レントゲンカンファレンスのサイトには、各科にまたがる過去の症例が掲示されており、楽しむことが出来ます。

です。医師のみなさん、腕試しにどうぞ。

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第3回抄読会

By , 2007年4月24日 11:06 PM

昨日は抄読会でした。

K医師は、tumefactive MS (腫瘤形成型多発性硬化症) の画像と病理についてReviewしました。具体的に用いた文献は、

①K. M. Schwartz et al. Pattern of T2 hypointensity associated with ring-enhancing brain lesions can help to differentiate pathology. Neuroradiol 48: 143-149, 2006
②W. Bruck et al. Inflammatory central nervous system demyelination: Correlation of magnetic resonance imaging findings with lesion pathology. Ann Neurol 42: 783-793, 1997
③Lucchinetti C, et al. Heterogeneity of multiple sclerosis lesions: implications for the pathogenesis of demyelination. Ann Neurol 47: 707-717, 2000

tumefactive MSはしばしば脳腫瘍との鑑別が困難で、脳生検を行わないと診断がつかないことも多々あります。従来のMS (Devic type)とは違う疾患なのではないかと考える研究者もいます。

I先生は、Park2 patientにおける末梢神経伝導検査についての論文を紹介しました。

Ohsawa Y, et al. Reduced amplitude of the sural nerve sensory action potential in PARK2 patients. Neurology 65: 459-462, 2005

Parkinson病患者はしばしば下肢の違和感を訴えますが、Park2患者では、末梢神経伝導検査では Sural nerveのamplitudeが低下しているというのです。しかし、論文では感覚系の診察所見は正常だとしており、疑問な点があります (ここまで検査で異常が出ていれば、診察所見が正常であるとは考えにくいと思います)。

逆に Parkinson病の患者で、Sural nerveのamplitudeが低下していた2例で遺伝子検査をすると、Park2の異常を認めたとも紹介されています。

また、Park2の発現している部位の分子生物学的手法を用いた分析も興味を引かれました。

私が紹介したのは、失音楽についての論文でした。

Pearce JMS. Selected observations on amusia. Eur Neurol 53: 145-148, 2005

要旨を箇条書きすると
・失音楽には先天的なものと後天的なものがある
・脳損傷症例から研究が進められた
・少なくとも、音程を認知する経路とリズムを認知する経路がありそうである
・失音楽を起こす部位については、従来右側頭葉が関与するとされていたが、異なる報告も存在する。また前頭葉も関与しているようだ。
・先天性失音楽は音楽教育とは関係なく存在する

時々音程の高低が判断出来ない人がいますが、先天性失音楽の可能性があります。ただ、この分野の研究はあまり進んでいません。

それとは別に、音楽を認識できるのに、感情の応答が起こらない人がいて、高次機能の研究の分野で注目されています。私も、ヴァイオリンの先生から「芸大受験をする学生を教えているんだけど、テクニックはあるのに何の感情もなく弾いているの。本人も感情を感じていないみたい。」と相談を受けたことがあります。

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・・・

By , 2007年4月19日 11:10 PM

言葉もありません。

 昨年4月、日本大学医学部(東京都板橋区)の付属病院で研修期間中に自殺した埼玉県内の女性(当時26歳)に対し、池袋労働基準監督署が今年2月に労災を認定していたことが16日、わかった。

2004年に国が新しい臨床研修制度を導入してから、研修医の過労自殺が明らかになるのは初めて。新制度は、従来の劣悪な労働条件の改善などを目指してできたものだったが、女性は法定労働時間を大きく超えて勤務しており、依然として研修医の過酷な労働実態があることを浮き彫りにしている。

女性の父親(58)によると、別の大学出身の女性は05年3月に医師免許を取得し、同4月から、都内に3か所ある日大医学部付属病院で順次、研修を始めた。

しかし、女性は、同9月ごろから疲労感を訴えてうつ状態となり、06年4月下旬、自宅で筋弛緩(しかん)薬や鎮静薬を自ら注射し、死亡した。

父親が給与明細などで調べたところ、1週間の平均労働時間は、法定労働時間(週40時間)を大幅に超える72・8時間で、夜間や休日の当直は多い時で月に10回、1年間で計77回に上っていた。このため、父親は「娘の自殺は研修中の過重な労働が原因」として、06年8月に池袋労基署に労災を申請。同労基署は労災と認定し、今年2月、遺族に通知した。厚生労働省によると、「新制度スタート後の過労自殺は聞いたことがない」という。

(中略)

ただ、日大側からは明確な回答がないといい、遺族側代理人の朝倉正幸弁護士は「大学が反省しなければ再発防止につながらず、大変問題だ」と指摘している。

日大医学部庶務課は「個人情報なのでコメントできない」としている。(読売新聞)

(参考)
基発第 0319007号-医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について

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