Category: クラシック音楽
杉ちゃん&鉄平
6月28日のブログで、スーパーマリオブラザーズに合わせて演奏するヴァイオリニストを紹介しました。
そのヴァイオリニスト鉄平がピアニストの杉ちゃんと組んで演奏する、「杉ちゃん&鉄平」。有名な二つの曲を融合させたユーモアたっぷりの演奏が Youtubeで見られます。
DUDLEY MOORE
ダドリー・ムーアという俳優さん。自身が音楽家であったのですが、面白い作品をたくさん残しています。
私の一番のお薦めは、何と言っても「Beethoven Sonata Parody」です。全然別の曲の主題用いてベートーヴェンのピアノソナタ風に演奏しています。どこからどう聴いてもベートーヴェンですので是非聴いてみてください。主題が執拗に繰り返されるあたりはいかにもです。曲がなかなか終わらないあたりなど、ユーモアたっぷりです。
・Dudley Moore Beethoven Sonata Parody 1
何と、6月12日に紹介した Muppet Showという番組にムーアが登場しているのを見つけました。これも面白い。
ムーアのことを調べていたら、彼が進行性核上性麻痺で亡くなっていることを知りました。自分の専門領域の病気であり、ビックリしました。ご冥福をお祈り致します。
俗称
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は「メンコン」と略されるし、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲だと「チャイコン」と略されます。
どこまで略して良いか議論があるところなのですが、Wikipediaに俗称を纏めたサイトを見つけました。
いや、もう凄い俗称がたくさんですね。一例を挙げます。
・運力 (うんりき), 運チ (うんち) – 歌劇「運命の力」序曲(ヴェルディ)
・散髪屋 – 歌劇「セビリアの理髪師」序曲 (ロッシーニ)
・虎刈り – トゥランガリーラ交響曲(メシアン)
・バタフライ – 蝶々夫人(プッチーニ)
・ひげじょ – 悲劇的序曲(ブラームス)
・ウラエロ – 「ウラニア」レーベルから発売された、フルトヴェングラー指揮のベートーヴェン交響曲第 3番「エロイカ」のレコード
虎刈りなんて、誰が考えたんでしょうね。思わず笑ってしまいました。
シンディング
グリーグから始まった北欧音楽家シリーズ。グリーグ(6月18日)、シベリウス(6月19日)、スヴェンセン(6月21日)、ニールセン(6月22日)と紹介してきました。
そういえば5月4日にパッサカリアを紹介しましたのでハルヴォルセン(5月4日)も加えないといけませんね。
最後を締めくくるのはシンディング。グリーグの後継者と言われていたそうです。ヴァイオリンの曲では、ヴァイオリンと管弦楽のための組曲イ短調op.10『古い様式で』が有名です。非常に技巧的な曲で、特に第一楽章の速いパッセージは聴いていてドキドキしますね。
パールマンはこの曲を得意にしています。「自薦 ベスト・パフォーマンス」というCDにも収録していたくらいです。
・Perlman plays Sinding
ニールセン
グリーグ、シベリウス、スヴェンセンと北欧の作曲家を紹介してきて、今回はカール・ニールセン。
カール・ニールセンはデンマークを代表する作曲家です。父親はペンキ職人で、家庭はかなり貧しかったと言われています。ニールセンは12人兄弟で、父親からヴァイオリンの手ほどきを受けました。
デンマークでは、ドイツから招聘した音楽家達により宮廷音楽は盛んであったそうですが、最も大きな影響を及ぼしたのはニルス・ゲーゼでした。ゲーゼはライプツィヒに留学し、メンデルスゾーンに後継者として認められ、コペンハーゲンに戻ってきました。ニールセンはそのゲーゼの弟子にあたります (「音楽現代」2004年4月号より)。
非常に半音階的な独特な音階で曲が出来ているので聴き手を選ぶかもしれません。ただ、この音階には意味があり、デンマークの民族音楽などに見られる音階なのだと研究者から聞いたことがあります。しかし、演奏しにくいことこの上なく、口の悪いヴァイオリニストは、「ニールセンがヴァイオリニストとはして大成せず、オーケストラの第二ヴァイオリンを弾かされていたので、ヴァイオリニストへの腹いせに弾きにくく書いているんだ」と言うそうです (^^;
この「前奏曲とプレスト」も、協奏曲と共通する音階で書かれているように感じます。この音階、慣れてくると、たまらなくなってきますね。
・Carl Nielsen “Preludio e presto” for solo violin, “Preludio”
・Carl Nielsen “Preludio e presto” for solo violin, “Presto”
スヴェンセン
グリーグ、シベリウスと北欧の作曲家を紹介してきて、今回はスヴェンセン。スヴェンセンはスウェーデン統治下のノルウェーに生まれ、ほとんどデンマークで過ごしました。スヴェンセンの曲を聴く機会はなかなかないのですが、聴いてみると素晴らしい作品がたくさんあります。
「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス」は甘美なメロディーが徐々に燃え上がっていき、ベートーヴェンとはまた違った「ロマンス」を見せてくれます。
・Judy Schomper plays ‘Romance’ Johan Svendsen
また、Youtubeで初めて知った弦楽四重奏はとても聴きやすい、良い曲なので是非聴いてみてください。いつか演奏してみたいものです。
シベリウス
6月 18日に、グリーグについて紹介しました。今回は北欧の作曲家第 2弾です。シベリウスを紹介します。シベリウスは北欧の作曲家の中で一番有名かもしれません。私の興味によりヴァイオリン曲のみ触れます。
シベリウスはフィンランド出身です。父親は外科医であり、1868年にコレラで死亡しました。また、シベリウス自身 1908年に喉頭癌の疑いで手術を繰り返し、禁酒禁煙を言い渡されていたそうです (「音楽現代」2004年4月号より)。最終的に彼は脳出血で亡くなりました。
まず紹介する曲は、1903年に作曲されたヴァイオリン協奏曲。シベリウスの作品では、どちらかといえば交響詩フィンランディアの方が有名かもしれませんが、ヴァイオリン弾きにとっては、こちらの方が親しみがあります。シベリウスのヴァイオリンコンチェルトなので、シベコンと略します。初版は不人気で、シベリウスはブラームスのヴァイオリン協奏曲に感銘を受け改訂しました。改訂版の初演は何とリヒャルト・シュトラウスだったそうです。
演奏はヴェンゲーロフやツィンマーマンの演奏が個人的に好きですが、Christian Ferrasを紹介しておきます。フェラスは最後自殺した悲劇のヴァイオリニストでもあります。彼はカラヤンとの録音を繰り返したことが有名ですが、この録音の指揮者はズビン・メータですね。この動画ではメータは凄く若く見えます。ちなみにメータは医学を志していたことがあるそうで、親近感を持ちました。(Ferrasは「ヴァイオリニスト33 名演奏を聴く (渡辺和彦著、河出書房新社)」によると正しくはフェラと発音するそうですが、日本での慣習に則りフェラスとしておきます)
・Christian Ferras plays Sibelius Violin Concerto: 1st mov.
・Christian Ferras plays Sibelius Violin Concerto: 2nd mov.
・Christian Ferras plays Sibelius Violin Concerto: 3rd mov.
演奏される機会は少ないですが、シベリウスは弦楽四重奏曲も作曲しています。1908年から1909年にかけて作曲された「親愛なる声」という弦楽四重奏曲は、シベリウスが喉頭癌を疑われ、健康不安を抱えていた時期に一致します。彼の悩みをついつい曲に重ねて聴いてしまいます。非常に内向的な曲と思います。
グリーグ
先日、ハンセン病資料館に行った話で、少し触れましたが、ハンセン病に名を残したハンセンはノルウェー人です。
ノルウェーという国のイメージはなかなか湧きにくいもので、スウェーデン、デンマーク、フィンランドといった他の北欧諸国とどうも入り交じってしまいます。
ノルウェー出身で日本知られている人物では画家のムンクが有名ですが、もう一人忘れてはいけないのはグリーグです。劇音楽「ペール・ギュント」が有名かも知れませんが、多くのピアノ曲を残し、「北欧のショパン」とも呼ばれました。私もお気に入りの曲がいくつかあるので、今日は軽くグリーグについて紹介します。
クラシック音楽がロマン派に於いて一つの技術的な頂点を迎えた後、新たな世界を求め、民族音楽との融合が流行りました。勿論ベートーヴェンなども民謡をテーマにしたりしているのですが、音楽に織り込まれた民族性の要素という点が桁違いに違うのです。例を挙げると、ロシアのチャイコフスキー、ハンガリーのコダーイやバルトーク、ルーマニアのエネスク、日本の伊福部昭、アメリカのガーシュウィン、チェコのドヴォルザークやスメタナ、スペインのファリャなどが有名です。
北欧においては、グリーグ、ニールセン、シベリウス、スヴェンセンなどが優れた曲を残しています。
さて、グリーグの置かれた音楽史的な背景に簡単に触れたところで、実際の楽曲を紹介します。私が特にお気に入りの曲です。
・Edvard Grieg String Quartet in G minor, Op. 27: I (part 1)
・Edvard Grieg String Quartet in G minor, Op. 27: I (part 2)
北欧の自然が脳裏に浮かぶような壮大なスケールの弦楽四重奏曲です。目を閉じていると、まだ見ぬ冬の北欧を旅しているような気持ちにさせてくれます。
・Grieg – Violin Sonata No.3, 2nd mov. / Ion Mazur & Akiko Danis, piano
始まりのピアノの澄んだ美しさが心に沁みます。ピアノの使い方の巧さに、グリーグが「北欧のショパン」と言われたことを納得させられます。ヴァイオリンの穏やかな始まりは、私にとって暖炉脇で赤ん坊を見つめる老人のイメージです (この演奏はやや音を張って弾いていますが、他の演奏家だともっと抑制的に演奏することが多いと思います)。曲の終わり方の未来に向かっていく感じも大好きです。
ちなみに、この曲は、あのフリッツ・クライスラーが録音しています。録音の相手は何とラフマニノフです。私はクライスラーの自作自演の全集を、レコード会社別に2セット持っていますが、そのうち1つに収録されていました。歴史的録音と言えますね。