路上演奏に飛び入りで参加した韓国人ウッドベーシストが話題になっています。
【鳥肌】路上演奏に飛び入り参加を申し出た青年。最初はナメていたバンドマンたちだが、、
私が気になったのは、路上演奏していたジプシー演奏家の方で Romdraculasというグループのようです。ヴァイオリニストが良い味を出しています。
CDは手に入らなかったのですが、Youtubeでいくつか演奏を聴くことが可能です。
・CZARDAS por ROMDRACULAS DE FIRENZE
チャルダーシュはジプシー音楽の定番ですね。
・I Will Survive (Cover) – Romdraculas
私にとって “I will survive” といえば Igudesman & Jooなのですが、Romdraculasも素晴らしいです。
・Rom Draculas
こちらは、ジャズのスタンダード・ナンバーの “minor swing” から始まり、途中でモーツァルトの交響曲第40番第1楽章がアレンジされます。そこで拍手。
ちなみに、私が最も好きなジャズ・ヴァイオリニストであるステファン・グラッペリが、ギタリストのジャンゴ・レインハルトと演奏した “minor swing” も youtubeで聴くことが可能です。
・Minor Swing – Django Reinhardt & Stéphane Grappelli
ジャンゴといえば、モダン・ジャズ・カルテットのジョン・ルイスが「ジャンゴ」を作曲していて、私はステファン・グラッペリが演奏する「ジャンゴ」を聴いたのが、彼にハマったきっかけです。
・Django Reinhardt & Stephane Grappelli – Django (動画はラインハルトではなく別のギタリスト)
話が随分と脱線してしまいました。とはいえ、いずれもお勧めの動画なので是非ごらんください。
5月 30日はベニーグッドマンの誕生日。有名なジャズクラリネット奏者です。Youtubeでグッドマンが日本の演奏家達とモーツァルトのクラリネット五重奏曲 (通称:クラ五) を演奏する動画を発見しました。
・Benny Goodman In Japan 1957
ベニー・グッドマンは色々クラシックも録音していますが、私は彼がブダペスト弦楽四重奏団と録音したクラ五の CDを持っていて、これまで愛聴していました (The Budapest string quartet: Mozart string quartet No.17/Mozart Clarinet Quintet/ Dovorak String Quartet, Budapest recordings, LAB140, 1996年)。グッドマンは音楽の流れに対する感覚が鋭くて、クラシックを演奏してもやはり超一流だと思います。
上記の動画のテロップを見ると渡邉暁雄が共演しているようです。渡邉暁雄は地元近くの津山市に年一回第九を指揮しに来ており、私も高校生の頃彼の指揮で第九を演奏しています。何か懐かしさを感じました。
もう何年も前にブームになったヴァイオリニスト、ロビー・ラカトシュ。ロマ音楽 (ジプシー音楽) で有名な人物です。ジプシーという呼び方は日本でも流浪の民といったイメージで広く認識されていますが、差別用語であるとの意見もあり、最近ではロマと呼ばれることが多いようです。
ロマ音楽家は代々子に曲を伝えていきます。したがって、同じ曲でも家によって、あるいは演奏家によって全然アレンジが違うのが面白いところです。また、即興性も重視されますので、同じ演奏家でもその時毎に演奏が違ったりします。
ロビー・ラカトシュはロマ音楽の名家に生まれました。彼の祖先はベートーヴェンの前で演奏したこともあるといいます。彼はロマ音楽のみならずクラシックヴァイオリンも勉強し、ブダペスト音楽院に通いました。クラシック音楽でのコンクール受賞歴もあります。更に、彼はジャズを勉強しました。彼の優れた即興性は一つの魅力ですが、ジャズで培ったものも多分にあると思います。
ラカトシュはNHKでも特集されたことがあり、そのときは「だんご三兄弟」をアレンジして好評を博しました。また、津軽三味線の木下伸一氏と即興を行い、意気投合して「遭遇」というタイトルの CDにもなりました。
Youtubeにいくつか動画がアップされています。
・Roby Lakatos – Hejre Kati from the album Fire Dance
私のヴァイオリンの師の友人がブリュッセルの飲み屋で変な髭のおっさんの演奏を聴き、「誰だこいつ?無茶苦茶上手いし」と思っていたら、後でラカトシュだと知ったという逸話がありますので紹介しておきます。
以前紹介したDVD「レナード・バーンスタイン 音楽のよろこび~オムニバス~」の第2話は、「ジャズの世界」でした。
バーンスタインは、「Young people’s concert」という一連の講義の、第2話「アメリカ音楽ってなに? 」で、ジャズこそが、アメリカの民族音楽であると結論づけています。
バーンスタインは、「長い間 音楽の頂点は作曲家とされてきましたが ジャズは演奏家の芸術なのです」と述べ、その魅力を語ります。ここでは、主としてブルースを例に取ります。古典的なジャズで、解説しやすいからかもしれません。私は、ジャズについて、時々聴くことはあっても、きちんと勉強したことがなかったので、興味深く拝見しました。以下、内容を簡単に紹介します。
①音程
ジャズの音階は、正規の長音階 (ドレミファソラシド) を変形させて使います。それには、第3音 (ミ)、第5音 (ソ)、第7音 (シ)を半音下げます。この3つの音をブルーノートと呼びます。
ただ、これらの音程は、旋律のみで使われ、ハーモニーは正規の音階で作られます。旋律での音階とハーモニーの音階が違うことに由来する不協和音が、ジャズをジャズらしくします。
また、4分音 (隣り合う音程を4分割して生み出す音程) がジャズにはあり、これはアフリカ音楽に由来するとされます。しかし、ピアノでは表現出来ないので、隣り合う2音を同時に鳴らし、その間に求める音があるとします。
ここで、バーンスタインは、アフリカで覚えてきた歌を歌って聴かせてくれます。アフリカの雰囲気がしっかり伝わってきます。
②リズム
基本はビートです。1小節に主として 2ないし 4拍を途切れず続けます。テンポは一定です。これが鼓動となります。
さらに、シンコペーションが加わります。これには 2通りの方法があり、規定のアクセントを移動させたり、予想外の個所に置いたりします。
バーンスタインは、8ビート (12345678:1と5が強拍) を例にとって解説します。弱拍である4番目の音を強くするとルンバに聞こえ、さらに強拍である5番目の音を鳴らさなければコンゴに聞こえます。
③音色
ヴィブラート、弱音器などを用いて、「ジャズの音」を作り出します。
④形式
ブルースを例に取ります。本来のブルースには、伝統的な詩の形式があります。2行連句 (弱強の5歩格) と呼ばれます。例を出します。「わたしの彼は嫌なやつ あいつは最低の男」。ブルースでは1行目を繰り返します。「わたしの彼は嫌なやつ そうさ 私の彼は嫌なやつ あいつは最低の男」。バーンスタインは、「ということは、シェークスピアの 2行連句でも ”マクベス・ブルース” を歌えるはずなのです」と、実際にブルースを ”マクベス” をブルースにして歌って見せます。
これらのジャズの法則がなかったら、音楽がどう聴こえるか、実演され、その重要性がわかります。上記は基礎的な話をわかりやすく解説したものですが、 DVDでは、更に発展した解説があり、最後にバーンスタイン作曲の「前奏曲、フーガとリフ」が演奏されます。
私がジャズを聴くようになったきっかけは、高校生時代に、「文学部唯野教授」「俗物図鑑」などの名作で知られるなど筒井康隆の小説を読みあさったことでした。書店で手に入る本はほとんど全て読んだと思います。その筒井康隆が、タモリや山下洋輔とジャズを楽しんでいたと知って、山下洋輔のCDを聴いて興味を持ちました。その後キース・ジャレットのCDを買ったりしました。ジャズではないのですが、高名なジャズ・クラリネット奏者ベニー・グッドマンがモーツァルトのクラリネット五重奏曲のCDを演奏したのを貰って聴いたこともありました。
とはいっても、それほど多く聴いた訳でもなく、ジャズについて詳しくないのですが、好きな演奏家は?と聴かれれば、断然「Stephane Grappelli」と答えます。一時期ジプシー音楽にはまっていた頃、「ラカトシュ」というジプシー兼クラシック兼ジャズヴァイオリニストを知り、その流れでグラッペリに流れ着き、聴いたのが最初です。一発ではまりました。
グラッペリの人生について、DVDが出ています。「Stephane Grappelli A Life in the Jazz Century」というタイトルです。グラッペリはヴァイオリンをほぼ独学で修め、正規の音楽教育は数年間しか受けていません。しかし、安定したテクニック、比類ない音楽性、作り出すムードによって、我々は快感に導かれます。更に凄いのは、彼はピアノも弾けて、人手不足のバンドでピアノを弾いたりしています。
ジャンゴ・ライハルトはグラッペリとバンドを組んでいたギタリストですが、キャラバンの火事で第4・5指が動かなくなってしまったのです。しかし、彼は第2・3指のみで早いパッセージを演奏し、コードは第2・3指に加えて、動かない第4・5指を叩きつけて演奏していたそうです。すさまじい演奏家魂です。
数多くあるグラッペリの曲の中では、ジャンゴ・ラインハルトに捧げられた「Django」という曲が一番好きです。是非聴いてみてください。