映画「アマデウス」を見たことがあると、モーツァルトとサリエリの仲が良かったとは思えないのですが、なんと二人が共同で作曲した作品が見つかりました。実際には仲は悪くなかったのかもしれませんね。
どんな曲だったのか、Youtubeで演奏を聴くことができます。落ち着きのある、心地よい曲ですね。
・モーツァルトとサリエリの共作カンタータ、約200年ぶりに演奏 Newfound Mozart-Salieri collaboration played for first time
・Newfound Mozart-Salieri collaboration played for first time (2)
作曲家の酒井健治さんのツイートで、「ファミリマートの主題による変奏曲」という曲を知りました。聴いてみると面白いですね。
上記の動画とは異なりますが、下記の試みも楽しくて、出来栄えが素晴らしいです。併せて紹介しておきます。
色々と忙しくて、ブログの更新が 3ヶ月近く滞ってしまいました。この 3ヶ月くらいの間にあったこと。
8月30日~9月5日に 1週間の夏休みを追加で頂きました。8月30日は酒井健治さん作曲のヴァイオリン協奏曲を成田達輝さんが演奏 (世界初演) するのをサントリーホールに聴きに行って、夜は酒井健治さん、成田達輝さんらと食事をしました。素晴らしい誕生日になりました。その後は実家に帰省し、連日大山乗馬センターにひたすら通いました。
9月13日は内科専門医試験でした。仕事が忙しく、勉強を始めたのは前日東京に向かう新幹線の車内。内科認定医試験は無勉強で通りましたので、内科他科の勉強をきちんとしたのは国家試験以来・・・。ごっそりと知識が抜けており、99%落ちたという手応えでした。ただし、知人から試験問題再現のバイトを教えていただき、100問近く概要を暗記して帰っていたので、交通費+ホテル代くらいにはなりそうです。来年頑張ります。
9月18~19日は角館で神経機能回復セミナーに参加しました。とても勉強になりました。
あとは 10月17日に DVD収録があり、7月頃からその準備に追われていました。というか、この仕事以外ほぼ何もできませんでした。3時間以上喋るのですが、6時間くらいかけて収録。カメラが回ると頭が真っ白になるものです。色々と反省しました。収録後にプロ棋士のハッシーと飲んで、愚痴を聞いてもらいました。その時に、カメラの前で喋るのに注意する点など色々質問しました。彼は何度もテレビ出演していて経験豊富だったので勉強になったのですが、収録前に聞くべきでした。
10月18日は楽器の合わせ。レスピーギ作曲、「リュートのための古風な舞曲とアリア第 3曲」を弾きました。半年ぶりに楽器のケースを開け、カラオケ屋で一人練習をしてから参加。合わせの途中に楽器の D線が切れてしまい、全部 G線で代用しました。1年くらい弦を張り替えていなかったからですかね・・・。
その他、某ガイドライン作成に systematic reviewの部分で関わることになったので、10月24日は東京医科歯科大学でガイドライン作成法の研究会。GRADE systemの話でした。日本の診療ガイドラインには質の低いものが少なくなく、GRADE systemのようにきちんとした方法論を用いて、全体の質を上げていかないといけないなと思いながら聞いていました。
JMECCという内科救急の講習会にも参加しました。秋田県の医療過疎地で月 1回行っている当直では、3次救急まで対応しなければいけない場合があるので、良い勉強になりました。
現在行っている仕事に関しては、Cochrane DTA (diagnostic test accuracy) reviewにエントリーしている 1本目の論文が protocol openに近づいているのと、タイトル登録にこぎつけた 2本目の論文があります。あとは、ガイドライン作成の準備と、知人から頼まれた和文総説 1本、年明けの講演の準備 (主催者がマスコミに案内状を送るようです) など、臨床以外の部分でかなり忙しくなっています。「何もすることがないよりはマシ」と思って頑張ります。当然、プライベートに関しては、非リアです (´・ω:;.:…
ブログは、Cochrane DTA reviewのデータ解析やガイドライン作成が本格的に始まったらまた滞ると思いますが、それまでは可能な範囲で更新していきたいと思います。
普段聴き慣れたベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタも、古楽器奏法で演奏されるとまた異なった趣があります。
私が初めて聴いたのが、ヤープ・シュレーダー (Violin) / ジョス・ファン・インマゼール (Fortepiano) による全集でした。ただ、この録音は、技術的不安定さが目立ちましたり、細かなヴィブラートが時に耳障りに感じました。
次に聴いたのが、寺神戸亮 (Violin) / ボヤン・ボデニチャロフ (Fortepiano) の全集です。音楽的にも技術的にも満足いくものでした。ただ、モダン楽器の演奏に慣れすぎているせいか、クロイツェル・ソナタはイマイチ迫力不足な感じがしました。ベートーヴェンの時代には楽器も進化を続けており、後半のソナタになってくると古楽器だと楽器の性能的に不利なのかなと感じましたが、私の思い過ごしかもしれません。
数年前に聴いたのは、イザベル・ファウスト (Violin) / アレキサンダー・メルニコフ (Piano) による全集。モダン楽器に古楽器奏法を取り入れた演奏で、素晴らしい演奏効果をあげています。一時期はこの録音ばかり聴いていました。ファウストは、バッハの無伴奏ソナタ (CD1, CD2) や、シューベルトのヴァイオリン・ソナタなど、秀逸な録音が多いですね。
最近聴いたのが、ヒロ・クロサキ (Violin) / リンダ・ニコルソン (fortepiano) です。私は学生時代、このコンビでのモーツァルトのヴァイオリン・ソナタの録音を聴いてカルチャー・ショックを受けたのですが、今回の演奏も素晴らしいものでした。
ということで、興味のある方はイザベル・ファウストやヒロ・クロサキの演奏を是非聴いてみてください。この聴き慣れたソナタ達に違った世界が見える筈です。
(参考)
・ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ
福島県に引っ越してきて、クラシック音楽専門チャンネル「CLASSICA」の視聴継続が難しくなりました。そこで、オンラインで視聴できるベルリン・フィルの “Digital Concert Hall” を契約することにしました。年間 149ユーロで、ベルリン・フィルの一部のライブや過去のアーカイブスを見ることができます。PCを大画面テレビに接続すれば、自宅でライブ感覚が味わえそうです。また、iPhoneアプリを用いれば、外出先でも視聴が可能です。
値段は一見やや高めに感じられるかもしれませんが、月々 CD 1枚買う程度と考えれば、安いものと思います。ネット配信で流通コストを抑えているのが大きいのでしょうね。クラシック音楽好きの方にお勧めです。
(※リンク先上段のタブから “DIGITAL CONCERT HALL” を選択)
私はまず、室内楽や大好きな Frank Peter Zimmermannのソロ演奏、以前ベルリンに聴きに行った時のシューマン/ブラームスの交響曲 (客席の自分が映っているらしい) などを楽しむつもりです。また、ゴールデンウィークに帰省しますので、実家でも家族で見たいと思います。
福島県への転居に向けて、物件を探しています。ところが楽器可の物件はほとんどありません。物件探しに支障が出てきたので、ピアノを処分することにしました。YAMAHAの UX100 (5338987) です。
ところが、このピアノは知人から「大事にしてくれそうな人に譲りたい」といって、安く売って頂いたものです。ピアノ業者に売って、行方がわからなくなってしまうことに抵抗がありました。
困っていたところ、この春結婚する馬券オヤジ氏が買ってくれると言ってくれました。夏頃に新居が建て上がったら置いてくれるそうです。
共立ラインサービスによる運送、保管の見積もりは下記となりました。東京から岡山県だと結構な運送料になりますが、事情が事情だけに仕方のないところです。それよりも、ピアノの行き先が決まってホッとしています。
運送料(お預り) 20,000
特殊作業料(9FEV) 3,000
保管料(4ヶ月分) 24,000
運送料(戻し) 65,000
消費税(8%) 8,960
合計 ¥120,960(税込)
2014年12月11日に東京オペラシティのコンサートに行ってきました。
ハイドンの主題による変奏曲 op.56a (ブラームス)
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 (ブラームス)
交響曲第 2番 ニ長調 op.73 (ブラームス)
パーヴォ・ヤルヴィ指揮
ドイツ・カンマ―・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
12月11日 (木) 19時開演 東京オペラシティ
ハイドンの主題による変奏曲は、ピリオド奏法が随所に見られ、高い演奏効果をあげていました。
2曲目はヴァイオリン協奏曲。テツラフはあまり音量の大きいヴァイオリニストではないので、オーケストラにかき消されてしまうことがよくあります。しかし、ヤルヴィはソロヴァイオリンの魅力が最大限引き出されるようにオーケストラを鳴らしていました。その御蔭でソロ・パートがくっきりと浮かび上がって、素晴らしい演奏でした。テツラフがこの曲をどう伝えたいのか、意図がはっきりと伝わってきました。
前半のアンコールは、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第 3番第 3楽章 (Largo) でした。私が好んで弾く、大好きな曲です。テツラフが最初を出した瞬間、その響きの広がりに痺れました。こんなに美しいバッハを聴ける機会はなかなかありません。テツラフは、さすがバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ・パルティータ全集を複数回録音しているだけありますね。
後半の交響曲第 2番は、秋にベルリンに行ってサイモン・ラトル指揮、ベルフィン・フィルハーモニー管弦楽団で聴いてきたばかり。その時の演奏はすばらしかったですが、今回もとても情熱的な演奏で、終演後は拍手がなりやみませんでした。オーケストラが完全に退出した後でも拍手が止まらないので、ヤルヴィが再び舞台に登場して、みんなに感謝の意を示す場面があったほどです。後半のアンコールは、ハンガリー舞曲の第 3番と第 5番でした。大満足の演奏会でした。
ピアノ五重奏を聴いてきました。
ピアノ五重奏曲第2番 イ長調作品81 (ドヴォルザーク)
ピアノ五重奏曲 ヘ短調 (フランク)
萩原麻未 ピアノ
ヴォーチェ弦楽四重奏団 (ダラ・ダイヤン、セシル・ルーバン、ギヨーム・べケール、リディア・シェリー)
2014年12月5日(金) 19時開演、紀尾井ホール
ドヴォルザークは、弦楽器の音がチェコっぽい響きじゃなかったのが、少し不満でしたが、後は素晴らしい演奏でした。チェコっぽい響きというのは、スメタナ弦楽四重奏団やヤナーチェク弦楽四重奏団がドヴォルザークを演奏する時のような、すこし無骨な、でもノスタルジーを感じさせる音です。もちろん、ヴォーチェ弦楽四重奏団の出す音も美しかったし、自分たちが理想と思う音で弾くことは大事だと思いますので、好みの問題かもしれませんが。
・Antonin Dvorak (1841-1904): Piano Quintet in A Major, Op.81, B 155 (スメタナ弦楽四重奏団)
・Eva Bernathova plays Dvorák Piano Quintet in A op.81 (ヤナーチェク弦楽四重奏団)
フランクは 、スケールの大きい演奏でした。初めて聴いたのですが、良い曲ですね。
萩原麻未さんが、演奏後の挨拶で思い詰めたような口調で「皆さんに伝えたいことがあります」と言われたので、結婚発表かと思って凄いびっくりしました。実際には、広島県の土砂災害の募金の御願いでした。
アンコールは、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲第2番より第3楽章と、赤とんぼでした。赤とんぼは、始まりのピアノパートで鳥肌が立ちました。
曲の感想ではありませんが、ヴォーチェ弦楽四重奏団の第二ヴァイオリンの方は、凄く楽しそうに笑顔で弾いていて、印象的でした。演奏中、眼くばせをして音の出し始めを合図する場面で、いつも幸せそうにニコッとしていて、見ているこちらが温かい気分になりました。彼女のような人がカルテットにいれば、雰囲気は良いでしょうね。
知人の作曲家酒井健治氏の交響曲 (世界初演) を聴いてきました。
第543回定期演奏会
酒井健治:ブルーコンチェルト (読響委嘱作品・世界初演)
メシアン:トゥーランガリラ交響曲
指揮 シルヴァン・カンブルラン
ピアノ アンジェラ・ヒューイット
コンサートマスター 小森谷巧
2014年12月4日 (木) サントリーホール
ブルーコンチェルトは、酒井氏が「これまでの僕の音楽の集大成である」という評価を与えた交響曲です。いくつか印象的な部分があり、特にシェパードトーン (無限音階) がオーケストラ全体で奏でられるシーンはとても壮大で美しく感じました。また、鐘が打ち鳴らされる中、弦楽四重奏曲が奏でられる箇所も幻想的でした。昔ウィーンのロプコヴィッツ邸中庭で、ヤナーチェク弦楽四重奏団を聴いた時、演奏中に近くの教会で鐘が打ち鳴らされていたのがとても美しかったのですが、それを思い出しました。
少し気になったのは、オーケストラが鳴る中で各弦楽器のトップが別の旋律を弾く箇所。オーケストラに埋もれてしまっている感があり、もう少し目立っても良いのかなと思いました。また、この曲の終わりの部分は、酒井氏の「カスム」という曲を思い起こさせましたが、私が彼の他の曲をもっと知っていれば、この交響曲をより深く味わえたのかなと思いました。予習不足だった点は反省です。
メシアンは、冒頭の電子音の音量が大きすぎ、耳が痛くなってしまい、騒音性難聴のリスクを回避するため耳を塞いで聴きました。うるさいとしか感じない、生理的に受け付けない曲でした。
—
(参考)
4日に世界初演される酒井健治「ブルーコンチェルト」の曲目解説を公開
「モーツァルトとベートーヴェン その音楽と病-慢性腎臓病と肝臓病 (小林修三著, 医薬ジャーナル社)」を読み終えました。
第一章はモーツァルトの病についてです。モーツァルトの診断を下すにあたって、病歴上いくつもの大きなヒントがあります。
・死の直前まで、ベッドで身体を起こして作曲していた (=起座呼吸)
・モーツァルト 6歳時に父親が手紙に「息子の咽頭がやられて、熱を出したあと痛いというので診ると、足のすねにやや盛り上がった、銅貨ほどの大きさの赤く腫れ上がった発疹がいくつかできていました (扁桃炎+結節性紅斑?)」と記載。咽頭の腫れは何度か繰り返した。
・「水腫」という記述
・オペラ「魔笛」上演後に呼吸困難で倒れた
・死の約 2時間前に痙攣を起こし昏睡状態となった。両頬は膨らんでいた。熱のために体は汗でびっしょりぬれていた。
こうした病歴より、著者の診断は、直接の死因は心不全となります。原因疾患は原発性慢性糸球体腎炎、もしくはへノッホ・シェーンライン紫斑病、あるいは水銀中毒による間質性腎炎からの慢性腎臓病。その終末疾患としての尿毒症で死亡。併発疾患は大動脈弁狭窄・・・としています。
溶連菌感染→心臓弁膜症、糸球体腎炎というのは、もっとも合理的な説明ですね。起座呼吸や水腫という病歴もこれらの疾患に合致します。モーツァルトの病としてはとても有力な説です。へノッホ・シェーンライン紫斑病説は、確か私が学生の頃、2000年頃に論文を読んだことがあり、これも有力な説の一つかなと思っていました。
第二章はベートーヴェンの病についてです。ベートーヴェンについては腹水の病歴があり、病理解剖で肝臓に萎縮と表面に結節があったそうですから、肝硬変はほぼ確定診断です。その他、虹彩炎と思われる症状、繰り返す消化器症状、関節炎もあったようです。著者は鉛により誘発されたベーチェット病と診断しました。やや踏み込み過ぎの感はありますが、積極的に否定する証拠もないように思います。
話は脱線しますが、ベーチェット病では HLA-B51 typeが多いことが知られています。一方で、欧米人では HLA-B51は少ないそうです。2009年の Lancet Neurologyの総説を読むと、日本人やトルコ人のベーチェット病患者で HLA-B51 がみられるのは 60-70%である一方で、ヨーロッパ人では 10~20%に過ぎないと記載されていました (ただし、その論文は “Behçet’s syndrome: disease manifestations, management, and advances in treatment.” を引用したものです)。欧米人の診断をつけるときは要注意ですね。
本書は、一般人が読んでもわかりやすく書いていますし、医学的にもまっとうな内容だと思います。唯一残念なのは参考文献が示されていないことです。著者が下した診断は過去に別の研究者が論文にしているのと同じですし、そのことは明記すべきと思いました。また、診断根拠となる所見がどの文献に書かれていたのかによっても信ぴょう性は変わってくるので、その辺りは記しておくべきでしょう。
(参考)
・Beethovenの耳の話
・楽聖ベートーヴェンの遺体鑑定