Category: 音楽
Hogwoodの Beethoven全集
先日ホグウッドの第九を聴きに行って興味が湧いたので、ホグウッド指揮のベートーヴェン交響曲全集を購入してみました。
“Beethoven Symphonies 1-9, The Academy of Ancient Music, Christopher Hogwood”
N響と演奏したときは慣れないオケに短い準備期間だったと思いますが、エンシェント室内交響楽団は彼の楽団であり、息がぴったりと合っていました。
この楽団が使用した古楽器はバロック~古典派期、ベートーヴェンが登場する頃までに用いられていた造りの楽器です。少なくともベートーヴェンの中期くらいまでの曲は、こうした楽器で演奏されていたものと思います。モダン楽器では聴くことの出来ない表現を可能にし、非常にダイナミックな演奏を生み出しています。
実に清々しく、メリハリの利いた演奏なので、興味のある方は是非聴いてみてください。
クラリネット協奏曲
Hogwoodがモーツァルトのクラリネット協奏曲を録音しており、最近 CDを入手して聴きました。Hogwoodですので、当然、古楽器演奏です。
私が持っている版 (FLORILEGIUM 414 339-2) のライナーノーツを見ると、クラリネットは 1800年ウィーンの Kaspar Tauber製作の basset clarinetを 1984年に Daniel Banghamが復元したようです。更にライナーノーツに書いてあることですが、当時の演奏習慣なども解釈に加えています。
Youtubeでも一部聴けます。気に入った方は是非ご購入を。
・Mozart Clarinet Concerto in A major *on period instruments* k. 622 (1/4)
・Mozart Clarinet Concerto in A major *on period instruments* k. 622 (2/4)
また、モダンな楽器の演奏と聴き比べてみると面白いと思います。こちらは、ベルリン・フィルの主席クラリネット奏者だったカール・ライスターの演奏を推しておきます。
・Mozart Clarinet Concerto, Karl Leister – I. Allegro
ホグウッド
11月 3日に第九を聴いてきました。
サントリーホール 25周年記念
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
ベートーヴェン:交響曲第 9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」指揮:クリストファー・ホグウッド指揮
ソプラノ:スザンネ・ベルンハルト
アルト:クラウディア・マーンケ
テノール:ジョン・トレレーベン
バリトン:ルドルフ・ローゼン
合唱:東京混声合唱団、二期会合唱団
管弦楽:NHK交響楽団
ホグウッドを初めて知ったのは学生時代。古楽器演奏の大家です。モーツァルトの交響曲全曲録音で痺れました。感情べったりの演奏とは対極的に、曲本来の持つ魅力を引き出しています。Youtubeでいくつか聴くことができます。
さて、一曲目のアヴェ・ヴェルム・コルプス。弦楽器奏者の弓速のコントロールから、古楽器での奏法を取り入れて演奏しているのがわかりました。普段の N響とは全く違うサウンドでした。
そのまま第九の演奏開始。オーケストラは流行の対抗配置(第一ヴァイオリンが左側、第二ヴァイオリンが右側で向き合う形)。サントリーホールは舞台の後ろにも客席があるので、そこを使って合唱団を並べました。通常男女を左右に並べるのですが、面白いことに、女性が前、男性が後ろという配置でした。音響を考えてのことに違いありません。
第一楽章の出だしから、余分なものを排除した、シンプルなスタイルでの演奏。ベートーヴェンは古典派からロマン派の移行期の作曲家とされますが、ロマン派的要素を極力排除した演奏に聞こえました。ベートーヴェンの後期はロマン派の作品のように演奏されることが多いので、聴き慣れた演奏に比べると若干物足りなさを感じることがありました。
テンポはあくまで前がかり。感情に浸りそうなところは特に音を短く余韻を残さず次に突っ込んでいました。
これらのホグウッドの手法は、過去にない新鮮さを与えましたが、慣れないオケがばらつくシーンが多かったのも確か。
①対抗配置は音響学的なメリットがあるのに対し、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが隣り同士ではないのでアンサンブルが難しい。第一ヴァイオリンはどうしても隣のチェロの音を聞いてしまうので、上手くやらないと第二ヴァイオリンとずれてしまう。第二ヴァイオリンも場所的な問題で、普段のようにチェロと第一ヴァイオリンの間でバランスをとるという行為がやりにくい。
②あまりにクリアに解釈しているので、逆にミスが誤魔化しにくい
③指揮者の棒が見にくい。音と同時に振ることが多いので、奏者に時間的猶予がない。
④指揮者イルジー・コルトがけがのため急遽ホグウッドに変わったので、準備期間があまりなかった
といった原因を推測しました(間違っていたらすみません)。
一方で、音響的な効果は素晴らしく、第四楽章の合唱では脳天に突き抜けるような響きが得られました。また、第四楽章の途中から、テンポを滅茶苦茶落として、ある種のオペラのクライマックスのように壮大なスケールを演出したあたりは、ホグウッドが腕を見せたと思いました。
総括として、色々な意味でホグウッドが味わえて良かったです。なかなかこれだけの個性を持った指揮者は少ないと思います。曲の解釈も斬新でした。
ストリング誌の連載コラムで、N響ヴァイオリン奏者の永峰氏が今回の演奏について書いてくれないか、今から楽しみにしています(彼は演奏していて感動したとき、良くコラムに書いてくれるので)。
第35回日本神経心理学会総会
9月 15~16日、宇都宮で開かれた日本神経心理学会総会に行ってきました。心理士の方が中心のためか、若い女性の多いなかなか楽しい会でした←何かが間違っている・・・。
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新世界
以前、ズービン・メータ『第九』~ 復興支援演奏会 in ミュンヘンについてお伝えしました。
最近、東日本大震災チャリティー・コンサートの第二弾、チェコフィルによる新世界 (指揮:イオン・マリン) の CDを聴きました。心に沁み入る、とても良い演奏でした。この曲の二楽章の主題は、「遠き山に日は落ちて」などの愛唱歌に編曲されたことでも有名ですね。
実はチェコフィルは、震災の時日本ツアーの真っ只中だったのですが、地震のほとんどないチェコに住む彼らは、余震に耐えられず、大統領判断により政府の用意した飛行機により帰国してしまったそうなのです。しかし、彼らはそのことに心を痛めていたようです。その後の経過がライナーノートに書いてあります。
3月の下旬、親戚の見舞いに行っていた大阪で、僕は一本の電話をとりました。それはチェコ・フィルの総裁からのものでした。「楽団総員の申し出で、愛する日本へのチャリティー・コンサートを行いたい。それにはチェコの政府も前向きで、プラハ城内で行うことが出来そうだ。」というものでした。当初日本への思いからなるコンサートなので、団員の総意として指揮者には是非小林研一郎氏の起用を」という強い希望がありましたが、あいにくスケジュールが合いませんでした。そこで、オーケストラと近い指揮者たちの中でイオン・マリン氏が担当することになり、このコンサートの実現となったのです。実に発案から 1週間ほどのスピーディーさでした。(江崎友淑)
CDの収益金の一部は義援金として日本赤十字社に寄付されます。是非、聴いてみてください。
Amazon: ドヴォルザーク:交響曲第 9番「新世界より」
(追記)
このコンサートを BSフジで聴かれた方のブログがあります。本当は樫本大進の演奏もあったそうなのですが、CDには収録されていません。そこが少し残念でした。
日々雑録 または 魔法の竪琴-東日本大震災チャリティ チェコフィル演奏会 樫本(Vn), マリン(指揮)-
Benefizkonzert
ズビン・メータによる東京での東北関東大震災被災者支援チャリティー・コンサートについて以前お伝えしました。
・Zubin Mehta – Beethoven Symphony No.9 Choral 4th mov – Japan Earthquake Relief Concert
同じ選曲で、ドイツでもチャリティーコンサートが行われ、CD化されました。売り上げは日本赤十字を通じて被災地に寄付されます。是非購入をお勧めします。
ズービン・メータ『第九』~ 復興支援演奏会 in ミュンヘン[SACD-hybrid]
CDのライナーノーツよりメータの挨拶を紹介しておきます。
ズービン・メータ「第九」 ~復興支援演奏会 in ミュンヘン
今日このような特別な場所に、旧友たちと共にお招き頂いたことを光栄に思っています。また、バイエルン国立歌劇場管弦楽団および合唱団、バイエルン放送交響楽団および合唱団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とその合唱団、私とは旧知の仲であるそれぞれの楽団員たちに感謝したいと思います。震災によって苦しい生活を送る多くの人々のため、そして残念ながら命を失った多くの人々への追悼の意をこめて、今日ここにいる皆様と共に、私たちに出来ることを行いたいと思います。
地震が発生したとき、私は日本におりました。ニュースが繰り返し報道され、目を背けたくなるような映像が次々に流れてくる中にあって、冷静に規律正しく生きる日本人の強さに敬服しました。苦しみを耐えて強く生きている日本の皆さんに、今なお平穏な日々が戻っていないことは、本当に残念でなりません。
しかし、日本という国が時と共に復興し、我々の訪日演奏会を喜んで迎えてくれる日が必ず来ると、私は確信しています。今日このステージ上にいる演奏者たちはみな日本のことを本当に良く知っているメンバーです。我々はこれまでにも頻繁に訪日し演奏会を行ってきましたが、そのたびに日本の聴衆は喜びを持って我々を歓迎してくれました。日本のためにできること、それが本日の演奏会です。今日ここにいるみなさんと共にこの想いを共有できることに感謝します。
2011年5月2日 ズービン・メータ