Category: 将棋

7五飛戦法

By , 2009年3月9日 10:51 PM

時代と共に将棋の戦法は変遷を遂げています。昔は、「矢倉」や「棒銀」「腰掛け銀」といった戦法がオーソドックスで、「石田流」や「四間飛車」「中飛車」「雁木」といった戦法が時々指されました。「穴熊」は消極的な戦法として、少なくとも序盤から指向されることは少ない傾向にありました。

しかし、一時から「居飛車穴熊(イビアナ)」が大流行しました。穴熊に囲うことで終盤の速度計算がしやすく、守りを固めても少ない攻め駒で攻めるテクニックが発達したためです。この戦法の優秀さに振り飛車党は苦戦を強いられました。羽生善治名人は、イビアナを指したときの勝率が9割を超えていました。

そうしたイビアナ全盛期に、対抗手段が編み出されました。藤井猛九段が確立した藤井システムです。藤井猛九段は、この戦法で一世を風靡したのですが、研究の進歩と共に対抗手段が発達し、現在では藤井九段自体居飛車も指すようになってきています。

定跡の進歩が著しくなっていく中、後手が勝ちにくくなっていきました。後手番が考えたのは、常識を覆す戦法でした。「2手目3二飛」「4手目3三角」「ゴキゲン中飛車」「一手損角換わり」などです。「2手目3二飛」「4手目3三角」は昔なら行儀が悪いと破門されかねない突拍子もない戦法ですし、「一手損角換わり」については、駒組みの速度を競う序盤にわざわざ一手損する戦法なので棋士の盲点となっていました。

しかし、こうした後手番対抗策の出現で、2008年度は一時期後手番の勝率が先手番を上回りました。戦法の優秀さに加えて、対策が発達していないことや、従来の定跡が通用しなくなった点が、後手側躍進の理由だと思います。

そんな中、最近また新しい戦法が棋王戦の檜舞台で登場しました。今度は先手側の新戦法で、編み出したのは久保八段です。新しい戦法の名前は「7五飛戦法」と言います。

第34期 棋王戦五番勝負 第2局

石田流含みの作戦から、▲7五飛と浮きます。この手に△7四歩なら、▲4五飛とまわるのだそうです。この発想に感想戦を聞いた人達は驚愕したそうです。

実戦は一手一手深く読み合って均衡を保つ戦いが続きました。19手目先手5五角に対して、後手が3三銀と受けるのは、▲6五桂△6四銀▲同角△同歩▲7三銀△同桂▲同桂成△同金▲同飛成△7二飛▲同龍△同角▲6二飛△5二飛▲同飛成△同金▲7一飛で詰めろ角取りとなるので、後手は3三桂は必然なのです(週間将棋3月11日号より)。短手数の決着だったのですが、見所ある勝負でした。棋譜中継サイトの解説がいけてないのが残念でしたが、新しい戦法の出現にとまどったのでしょうか。

少しでも将棋を知った人は、上記の棋譜を見てみてください。従来の常識が覆されます。

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医師と棋士

By , 2009年2月1日 1:06 PM

医師免許を持った棋士がいることを初めて知りました。といっても、将棋ではなく、囲碁の分野です。

坂井秀至氏は、灘高校から京都大学医学部へとエリートコースを歩んでいました。当初、産婦人科を志望していたらしいのですが、研修医を始めるに当たって、医師をやめて囲碁棋士となることにしました。変わった経緯で囲碁棋士になりましたが、囲碁界でもなかなかの成績を残しているようです。

彼は医師国家試験に合格していますので、医師として仕事はしていなくても、今でも医師免許を持っている筈です。医師として働いていたら私の1学年上に当たることになります。

彼が医師を辞めた話が Wikipedia に載っており、非常にユニークでした。

Wikipedia-坂井秀至-

医師国家試験合格後の、01年6月から京都大学付属病院に研修医として配属が決まっていたが5月からのオリエンテーションで、朝7時から夜の12時まで働き詰めであることを知り、囲碁を学ぶ時間が無くなることが明らかになると、棋士の夢を諦めきれず関西棋院にプロ入り試験を希望する。

同じ医学を志した人間として、もし囲碁が多少なりとも理解できるようになったら、彼の棋譜を見てみたいです。囲碁はわからないから、梅沢由香里の碁で勉強してみようかなぁ・・・。でも、もう少し将棋を勉強してからです。せめて初段。


(参考) e-碁サロン 会見ルーム

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細胞

By , 2009年1月10日 9:25 AM

雑誌「Newton」の 2009年 2月号の特集は、「細胞」でした。大学時代に習ったことをわかりやすく書いており、懐かしく読みました。

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24将棋倶楽部

By , 2008年11月16日 10:08 PM

9月くらいから、将棋連盟のサイトからリンクが貼られている「24倶楽部」でネット将棋を楽しんでいます。

24将棋倶楽部

初心者以外は10級から開始し、相手の強さと勝敗により級が上がったり下がったりします。Yahoo! 将棋よりは圧倒的に強い相手が多いです(そしてマナーがいいです)。

私は現在22勝13敗1持将棋で、勝率.629です。級だと9級になります。一時期8級の上の方で、もう少しで7級というところだったのですが、連敗しているうちにあっという間に降級してしまいました。

私は序盤が弱いので、大概中盤までは敗勢に陥っています。勝つときは、どうしようもないところから終盤で逆転勝ちすることが多く、逆転勝ちした将棋は自分で棋譜を見直しても不思議なくらいの粘りを見せています。終局後、将棋ソフトの棋譜解析を使って一人で感想戦をしているのですが、大概敗勢になるか、自玉に詰みが近づいてから逆転してますね。不利になるまでに悪手を指しまくっているので、棋譜がぐちゃぐちゃであまり会心譜は出来ないので、もやもやが溜まります。

序盤から納得がいく将棋が1局だけあったので、自分の感想を含めてアップしておきます。

棋譜:後手みぐのすけ

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将棋界の真相

By , 2008年10月13日 2:29 PM

「将棋界の真相(田中寅彦著、河出書房)」という本に、日本将棋連盟の歴史や過去の名物棋士達、将棋界の課題などがわかりやすく書いてあり、一気に読破しました。

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将棋の戦法

By , 2008年8月5日 7:04 PM

昔は将棋の戦法といえば矢倉に組んで居飛車が主流で、横歩取りなんて行儀が悪いし、最初から穴熊に組むのは不利だとかいわれていました。

ところが、序盤の研究が進むにつれて、過去に見向きもされなかった戦法が注目されるようになり、今では穴熊も有力な作戦です。新しい作戦についていけないせいで、序盤に勝負が決まってしまうことも珍しくありません。

最高峰といわれる名人戦で、今年は全て先手が優勢を築いたことにも象徴されるように、作戦を決定する権利を手に入れやすい先手の有利が常識となりつつあります。最初から先手が主導権をとって仕掛けると、後手が一方的に受ける展開になりやすいのです。そして、その展開がなかなか逃れられないように研究が進んでいます。そうなれば一本道です。

後手としては、出来るだけ研究を逃れる展開に持って行きたく、様々に研究されました。そして有力な作戦がいくつか生み出されました。ゴキゲン中飛車、一手損角換わりなどです。一手損角換わりなんていうのは、もともと一手遅く始まる後手が、更に一手損する手を指すという戦法で、ダブルで損じゃないかとも思うのですが、なかなかこれも有用なのです。

さらに、2手目3二飛車、4手目3三角といったユニークな戦法も羽生名人が公式戦で指し、注目を集めています。

ただ、戦法が複雑になりすぎて、アマチュアにはわかりづらいのも事実で、「序盤がつまらない」と思う人が多いのも無理はありません。最近、将棋のとても多くの戦法を網羅したサイトを見つけました。私も勉強中なのですが、実際にサイトにある将棋盤で駒を動かしながら棋譜を見られるので、非常に使いやすいです。作戦を知ってプロの棋譜を見ると、面白み百倍です。

千鳥銀の戦法図鑑

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第66期名人戦

By , 2008年6月17日 8:48 PM

将棋の第66期名人戦で、挑戦者の羽生善治氏が森内名人を破り、通算4勝2敗で名人位を奪取しました。これで羽生氏は過去の名人位通算4期と合わせ、第19世永世名人を名乗る資格を得ました。

今回のシリーズはなかなか見応えがありました。特に、1手で均衡が崩れる中盤戦を熟慮し、慎重にバランスを取りながら戦うシーンが多かったのが印象的でした。駒組みに専念する時間が多く、なかなかアマチュアには理解が難しい局面が多かったように思います。このシリーズの各局を素人目に感じたように書いてみます(「第○局」というところをクリックすると棋譜が見られます)。

第1局は、後手の羽生挑戦者が優勢を築きながら、無理仕掛けを強引に行い、逆転負け。後手58手目の8六同飛が敗着だったようです。

第2局は、先手の羽生挑戦者が堅実な差し回しで、勝利しました。31手目先手3五歩、71手目6三銀が、気づきにくい好手と評されました。103手目の6八玉も落ち着いていましたね。

第3局は、後手の羽生挑戦者が、必敗と思われた将棋を、執念でひっくり返し、勝利しました。勝利後の羽生挑戦者の表情が、如何に厳しい勝利であったかを物語っていました。

第4局は、森内名人が24手目後手5四金と積極的な差し回し。38手目の後手8二角が、徐々に好位に進出してくる手順には驚かされました。結果的に、後手は千日手を選ぶのがベストと思われた局面で、56手目3五歩の仕掛けが無理筋で、的確に咎めた羽生挑戦者の勝利。81手目に羽生挑戦者が2七飛として、2七で飛車を取らせたのが好判断でした。千日手を選ばなかった名人について、渡辺竜王は、名人としては千日手狙いの消極的な手順で先手に先に攻められると後悔が残るし、指しにくかったのだろうと解説していました。

第5局は、森内名人が第3局のリベンジ。第3局と同じ戦型を選択しました。羽生挑戦者も、第3局で標的となった7三桂を跳ねずに戦いましたが、2二銀の壁銀が痛く、先手森内名人の59手目7三歩成、87手目4一角が好手で、名人勝ちになりました。

第6局は、46手目の9二角が最後まで働かず、名人苦戦となりました。47手目、羽生挑戦者が2三歩から3四の銀を引きつけたのが好判断で、3九の「と金」に仕事をさせませんでした。後手は2三歩を払った金の形が悪く、先手の銀が再度進出し、飛車がさばけました。89手目先手5三桂成は、踏み込んだ手。95手目7五金でわかりやすくなり、99手目6五同金では8五銀の方が素人目には安全だったかもしれませんが、勝ちを読み切った挑戦者が格好良く決めました。最後はかなり大差となりました。

羽生二冠が名人位を奪取し、永世名人の資格を手に――。山形県天童市の天童ホテルで16日から指されていた第66期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の第6局は17日午後8時10分、挑戦者の羽生善治二冠(37)が105手で森内俊之名人(37)を破り、対戦成績を4勝2敗とし、名人位を奪取した。

羽生二冠が名人戦を制したのは、第52期(94年)、第53期(95年)、第54期(96年)、第61期(03年)に続き、通算5期目。これで名人5期の条件を満たし、引退後に永世名人の称号を名乗る権利を獲得した。名人戦が実力制になって6人目の永世名人(十九世)の資格を得た。

羽生二冠が永世名人になるチャンスは過去2回あったが、名人として臨んだ第62期(04年)では森内挑戦者に2勝4敗で敗退。第63期(05年)では森内名人に挑戦したが、3勝4敗で敗退。三度目の挑戦で、永世名人になった。

羽生新名人は、王座、王将と併せ、三冠となった。現在、棋聖戦五番勝負で佐藤康光二冠(棋聖、棋王)に挑戦中で、将棋界の統一に乗り出した形だ。(http://www.asahi.com/culture/update/0617/TKY200806170036.html)

羽生善治氏のファンの私としては、今日は棋譜を並べながら美味しい酒が飲めそうです。

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マウスの操作

By , 2008年6月14日 12:13 PM

先月の話なのですが、プロ棋士の対局で珍事がありました。

プロにネット将棋を打って頂こうという試みの、大和証券杯。最強棋士の呼び声高い羽生善治氏が、マウスの操作を誤り、時間切れで負けになりました。機械操作でない対局なら、自分の手で急いで駒を置けば良いですし、駒を落としてしまっても、指したいところを指さして、指し手を叫べば大丈夫です。敗れた羽生氏は、「中途半端な形で終わってしまい、大変申し訳ありません。次回はマウスの練習をもう少しします。」とコメントを残しています。

羽生二冠が初の反則負け ネット棋戦、操作で時間切れ2008年5月12日10時31分

11日夜に行われた第2回大和証券杯ネット将棋・最強戦で、羽生善治二冠(37)がプロ入りから23年目にして公式戦初の反則負けを喫した。

最強戦は、パソコン画面の将棋盤の駒を対局者がマウスなどを使って動かし、インターネットを介して対戦するプロ公式戦。羽生二冠は東京・千駄ケ谷の将棋会館、相手の渡辺明竜王(24)は都内の自宅で対局した。相矢倉の中盤戦で、羽生二冠が68手目に持ち駒を打とうとしたところ、盤面が隠れるように対局と無関係の画面が開き、それを消して指したが、制限時間の30秒を超えていた。羽生二冠は「消さなきゃと焦っているうちに時間がなくなってしまった」と話す。「二歩」などルール上の反則はいくつかあるが、時間切れも反則の一種。羽生二冠は反則を犯したことはなかった。

ネット対局では、盤と駒を使う通常の対局ではないような珍プレーが起きる。ネット女流公式戦では、今年2月に中井広恵女流六段が時間切れ負け。昨年12月には、反則ではないものの、石橋幸緒女流王位がマウス操作を誤って、駒を意図しない所に落とすミスも起きている。

対戦相手の渡辺明氏が、対局についての解説をブログに掲載されています。

渡辺明ブログ-大和証券杯最強戦・1回戦羽生二冠戦。-

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Bonanza

By , 2007年3月30日 8:05 AM

将棋世界最強ソフトBonanzaと渡辺竜王の対局が、先日行われ、渡辺竜王が辛勝しました。Bonanzaのプログラムの開発者は将棋に対しては素人だったといいます。しかし、自分が将棋が出来ないので、徹底的に過去のプロ棋士の棋譜を読み込ませたそうです。

素人目には、終盤までは互角だったと思いますし、コンピューターの終盤の1手のミスがなければどちらが勝っていたかわかりません。竜王ですら1手違いですから、びっくりです。

私が小学生の頃、ファミリーコンピューター (ファミコン) というハードで「内藤九段の将棋秘伝」というソフトがあり、まず負けることはなかったのですが、段々コンピューターが強くなり、最近では全く勝てません。激指というソフトは、都道府県代表を集めたアマチュア竜王大会で、ベスト16まで進みました。気付かないうちに随分技術が進歩していたものと思います。コンピューターと対局していると悔しい思いをすることも多いのですが、私がコンピューターを超える日はもう来なさそうです。

(参考)
渡辺明ブログ-大和証券杯特別対局ボナンザ戦。その1(対局準備)-
渡辺明ブログ-大和証券杯特別対局ボナンザ戦。その2(当日編)-
-渡辺明ブログ-ボナンザ戦補足など。-

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