頭痛フォーラム

By , 2006年2月26日 9:38 PM

昨日に品川プリンスホテルに宿泊し、友人達と飲み会をして、今日は新高輪プリンスホテル。頭痛フォーラムに参加してきました。集まった医師の数は1000人くらいと、なかなか規模の大きなものでした。

会場には国際頭痛分類の翻訳委員や、慢性頭痛診療ガイドライン作成委員の先生がたくさんいらしゃいました。日本の頭痛診療の権威である座長の先生から、「頭痛を治療する能力は医師の力量を測るのに最も良い」という医聖ウィリアム・オスラーの言葉が引用され、活発な議論が繰り広げられました。

また、University Duisburg-Essen HufelandstrのHans-Christoph Diener教授も参加し、特別講演を聞くことができました。ドイツと日本の医療の違いなども垣間見え、興味深かったです。

会場では、医師達にリモコンが渡され、選択式の問題を解かされました。そして、何%の医師がどの答えを選んだか、前のパネルに表示されました。わざわざ紛らわしい症例を出題した割には、全体的にほぼ8割くらいの正答率がありましたが、中には正答率が思わしくない問題もあり、頭痛を専門としている医師達と、専門にしていない医師との力量の差が見られました。私は、昨年頭痛に関する論文を2本ばかり書き、その際かなり勉強したこともあり、だいたい正答することが出来ました。どの医師を受診しても、高いレベルの頭痛診療を受けられるようになるために、一般の医師への啓蒙も必要です(本日参加した医師は、それでも積極的に学ぶ姿勢を持った人が多かったと思います)。

(参考)http://homepage2.nifty.com/uoh/ (座長の先生による、頭痛に関するサイト)

話は変わりますが、先日福島市である研究会に参加して、面白い話が聞けました。福島県立医科大学の教授の体験ですが、以前オーストラリアの学会に参加した際、各国の神経内科医代表が、神経内科のあらゆる分野について討論し、勝ち負けをつけるゲームを行ったそうです。その時、優勝したのは、伝統あるフランスでもアメリカでもなく、イギリス。また上位は軒並みイギリス式医学教育を受けた国だったそうです。日本は惨敗だったとのことでした。このままではいけないと感じさせられた話です。

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伊福部昭

By , 2006年2月26日 8:21 PM

日本を代表する現代作曲家である伊福部昭氏が先日亡くなられました。私のヴァイオリンの先生がアルメニア音楽祭で伊福部作曲の協奏曲を演奏したことがあったため、私も親しみを持っていた作曲家でした。一般には、映画「ゴジラ」のテーマ曲の作曲家として有名です。

彼の「音楽入門」は、彼独自の史観の上になりたった名著です。先入観に支配されず、まず音楽を感じて欲しいという姿勢は、バーンスタインが「Young people’s concert」で語っていたことと一致しています。北海道大学(確か農学部)卒業で、音楽を専攻したことのない人が、ここまでの音楽観を持ち、作曲を行えたというのは、同じく音楽を専攻したことのない私としては、あやかりたいものです。

彼が活動を始めた時期は、西洋への憧れが音楽界を席巻しており、彼の作曲する日本古来の音楽からの楽想に基づく音楽は全く評価されなかったといいます。しかし、日本と西洋の音楽両方の要素を持った音楽は非常に新鮮なものです。ロシア人作曲家によって発掘されて、初めて評価を受けるようになり、以後の活動は周知の通りです。ヴァイリン協奏曲を聴き直してみて、改めて惜しい人を亡くしたものだと思います。

昨日は、バッハの無伴奏ヴァイリンのためのパルティータのレッスンを受けましたが、演奏の中に必然性を作ることの重要さを痛感しました。

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プリオン病

By , 2006年2月20日 9:41 PM

最近、4点セットだか5点セットだかが世間を賑わせています。しかし、我々神経内科医にとっては、断然狂牛病問題に興味があります。狂牛病で問題となるのはプリオンと呼ばれる異常蛋白です。プリオン病はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と呼ばれます。

私もプリオン病に関しては、ここ1年で2例の臨床経験がありますが、治療法がなく、本当にミゼラブルな疾患です。私が経験したのは、硬膜移植に伴うCJDと、古典的CJDですが、狂牛病はまだ治療経験がありません。古典的CJDについては、来院後1~2時間で診断がつきましたが、治療法無く、対症療法のみとなっています。

報道で見ていて気になるのは、政治的な駆け引きだけが問題となっていて、疾患の本質が全く報道されていないことです。

(参考)http://www.nanbyou.or.jp/pdf/cjd_manual.pdf

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遭難事故

By , 2006年2月19日 11:07 PM

先日、ニュースを賑わした遭難事故に私も巻き込まれたことがありました。それは、私がかなりハードな当直をしていた日のことでした。

救急隊から要請が入り、遭難者が4名いるとのこと。16時くらいに要請が入りましたが、まず駆けつけたのはマスコミ。その後、19時半くらいに救急隊が到着しました。男性3名と女性1名だったので、2部屋続いた救急室を仕切って、男性と女性に分けました。後は、より症状の重そうな人から順に診察していきました。マスコミ対策は警察が手際よくやってくれ、マスコミも度を越した取材は無かったように思います。最後に警察から、病状を教えて欲しいと聞かれたので、「プライバシーのことがあるので、患者様が話して良いという範囲でのみ話します」と伝えました。「患者が疲労している」「プライバシーの問題がある」と強調したため、結局代表者1名のみによる短いインタビューで取材は終了したみたいです。

ニュースでも報道され、翌日の新聞でも取り上げられていましたが、渦中にいる人間には、そういった情報は入らないものだなと思いました。内科当直は私一人だったため、責任者として対応しましたが、無事問題なく解決し、ほっとしています。

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神経内科

By , 2006年2月11日 5:30 PM

私が勤務するのは神経内科なる科ですが、世間的にはまだまだ認知度が低く、長嶋茂雄さんが脳梗塞で東京女子医大の神経内科に入院され、やっと知った人もいるのではないでしょうか。

神経内科が他の科と混同されやすいのは、精神科が敷居を低くするために「神経科」と名乗っていることや、精神状態が身体症状に強く関与する「心療内科」なる、名前の良く似た科があるためと思われます。

神経内科という科は、中枢及び末梢神経、またはそれらの支配する筋肉に関わる疾患を扱います。外来をやっていて多いのは、頭痛、認知症、パーキンソン病、頸椎症、糖尿病性末梢神経障害、眩暈などで、入院患者としては脳梗塞、脳出血(手術適応のないもの)、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などを扱います。稀な疾患ですが、重症筋無力症、プリオン病なども時々来院します。神経内科疾患に対して知識を持っている医師が少なく、歳のせいにされている悲惨な症例があるのが現状です。

あくまで内科的なアプローチに主眼がおかれ、また患者の大多数が老人なので、神経内科疾患以外の合併も多く、内科疾患への幅広い知識も要求されます。老人を相手にするということは、介護や社会医療制度の問題も避けて通れません。一方で特殊な知識を要求される疾患が多いため、他の内科系医師からも良く相談を受けます。

時に「神経内科疾患は神経内科に診断はつけて貰えるけど、治らない」という誹りを受けることがありますが、多くを占める頭痛や脳梗塞はかなり治療成績が良いものと思います。ただ、比較的新しい学問で、脳という未知の領域を相手にするので、今後の研究の余地が多い領域です。

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国家なる幻影

By , 2006年2月10日 8:11 PM

今日は、病院前の磐越西線の線路を、SLが走っていました。雪の中を走るSLは幻想的な雰囲気を感じさせました。時々あるイベントの一つですが、職場から見えるというのは何か得した気分になります。

先月友人から贈られた「国家なる幻影(石原慎太郎著)」という本を昨日読み終えました。司馬遼太郎にしても然りですが、自分独自の史観を持っているのは大事なことで、読み手はその史観を体の中に一度通すことで、現代起こっていることをまた違った角度から眺めることが出来るようになります。彼も彼しか知り得ない情報を分析し、彼しか出来ない体験の中から、無二の史観を確立したのではないかと思います。ありふれた良識や、大衆迎合的な意見にとらわれることなく、その裏にあるものを絶えず意識し、行動出来る人はそうはいないのではないでしょうか。また、損を承知で自分を貫く潔さは見習わなければいけません。

ただ、医学論文のように誤読をさせない文章を嗜む私としては、文学者の以て回ったような文章は時に煩わしく、伝える情報が簡単なことであっても敢えて難しい表現を使うことに奇異さを感じました。複雑な内面を語る時には、そのような表現方法は避けられないでしょうが、文章のほとんどがそうなっているのは、文体という作家のアイデンティティに関わる問題なのかもしれません。

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