裁判官が日本を滅ぼす
ここ1ヶ月くらい、毎朝5時半に起きて読書をしています。今日読み終えたのは、「裁判官が日本を滅ぼす((門田隆将著)」という本です。医師は白衣を着ていますが、裁判官は黒い服を着ています。一冊を通じて、「何物にも染まらない意志表示」で黒い服を着ているのではなくて、「既に染まりきってしまったから」黒いのかという皮肉を思いつきました。
何故、このような本を読もうかと思ったのは、最近の医療裁判において見当はずれの判決が多発しているからです。医療行為というのは、人間である医療スタッフが、刻々と変化する状況の中で限られた情報を元に行うものです。従って、後から結果を検証した場合、常に最善だったということはありません。次善であったり、その後出てきた検査結果を照らし合わせれば最初の決断が間違っていることもあります。でも、決断をしないと治療は進みません。それが現実だと思います。
医学的な専門知識を他の医師並に持ち、その時点において妥当と思われる選択をした医師に、後付の理由で結果責任を問うたり、およそ現場からは常識はずれの判決が多発しているのを良く耳にします。私は法律は素人なので多くの判決が妥当かは論じられませんが、医療に関する訴訟を常識的に判断すると、違和感を覚えることが多いように感じます。医師に対して厳しすぎる判決のみならず、甘い判決の場合にもです。
本の内容としては、およそタイトル通りでした。裁判官を糾弾する内容に終始していて、さまざまな誤判が具体的に書かれていました。しかし、だんだんとジャーナリズムと表現の自由についての記述が増えていき、最終的に裁判官が表現の自由を侵害しているという結論が伝えたかったようです。途中述べられていたのが、「新潮45」が名誉毀損で訴えられたことがおかしいということ。そしてこの本の出版元も新潮社。少し本の裏に隠れた意図も見えました。誤判を集めて、被害者の辛い感情を並べて、読者に義憤がこみ上げてくるように書いていますが、もう少し裁判官の立場についてとか、多面的に書いて欲しかったと思います。価値観が分かれる部分も断定的な表現が多用されたのが目立ちました。
裁判というのは、及ぼす結果が甚大なだけに、完全を求められることは理解できます。ただ、人間のすること。全てパーフェクトとはいきません。そこが難しいところと思います。