音楽家の悩み

By , 2007年1月14日 7:58 PM

音楽家というのは、特殊な体の使い方をするため、種々の健康上の悩みを抱えていることがあります。それをいくつか紹介したいと思います。

①緊張型頭痛/頸肩腕症候群
ヴァイオリンの演奏姿勢は、本来不自然な格好です。また、他の楽器であっても、常に同じ姿勢を強いられるため、肩こりを中心とした症状が多く見られます。マッサージや湿布が手放せない方も多いようです。筋弛緩薬の内服などを使用します。

②振戦
特に音大生に多いと思いますが、緊張すると手など、体が震えて演奏が上手く出来ないというものです。βブロッカーの内服が有用ですが、喘息、徐脈性不整脈などの方は禁忌です。

ジストニア
最も重篤なのが、職業性ジストニアです。これは、普段の動作は問題ないのに、ある姿勢をすると、その姿勢で固まって全く動かなくなるというものです。例えば、ピアノを弾く動作を空中ですると問題がないのに、鍵盤の上に手を置くと、指が動かなくなったりします。演奏家生命に関わりますが、治療が難しく、神経内科以外では診断をきちんと下されないことも多いので、患者はいくつもの病院を転々とします。
原因ははっきりとはわかっていません。ただ、脳がある姿勢を憶えていて普段はその姿勢で演奏しているのが、何かの拍子にちょっとしたコンディションの違いが生じた結果、あるべき姿勢がわからなくなって脳がパニックになり、その姿勢から動かなくなってしまうのではないかと考えられています。
副交感神経遮断薬の投与を行いますが、緑内障に禁忌で、前立腺肥大症での尿閉を悪化させるので、中年以上には使いにくいところがあります。その他、ベンゾジアゼピン系薬剤も使いますが、決め手に欠きます。最も期待できる治療は、高額になりますがボツリヌス毒素の局所注入です。ただし、行える施設は限られます。

上記のような疾患での音楽家に対する医療に興味を持っている医師は、日本にはほとんどおらず、勉強していこうかなと思っています。

Post to Twitter


Panorama Theme by Themocracy