東京レントゲンカンファレンス
第 295回東京レントゲンカンファレンスで発表してきました。個人的には、今回で 2回目の発表となります。
これは、各大学の放射線科医が症例を呈示して、他大学の放射線科医が読影するという試みです。
Discusserは、放射線科医達が大勢見守る前で読影し、プレゼンテーションします。それを踏まえ、Moderatorは解答を示します。読影のプロセス、ポイントが示されるため、とても勉強になります。
東京レントゲンカンファレンスのサイトには、各科にまたがる過去の症例が掲示されており、楽しむことが出来ます。
です。医師のみなさん、腕試しにどうぞ。
in the Fiddler’s House
「in the Fiddler’s House」というDVDを見ました。というか、流しながら学会準備。
このDVDは、Itzhak Perlmanがロマ音楽(ジプシー音楽)を演奏しているという意味で、非常に興味深いものでした。
情緒豊かな演奏をする人にかかると、ジャンルを超えて良い音楽が出来上がると実感させられました。
私の叔父が読売交響楽団に所属していたとき、「凄い演奏家が来るから聴きに来てごらん」と言われ、母親が聴きに行き、感動して私にヴァイオリンを始めさせた際の演奏家が、パールマンです。
初めて生で演奏を聴きに行ったのが、医学生の時。当時、音程に悩まされていた私は、(不調で?)音程を外しまくりながらも、心地よい演奏をするパールマンの姿に、「演奏は、音程だけに気をつけていれば良いのではなく、音程が外れていても感動させる演奏は存在する」と知ったのでした。もちろん音程は大事だけど。
第3回抄読会
昨日は抄読会でした。
K医師は、tumefactive MS (腫瘤形成型多発性硬化症) の画像と病理についてReviewしました。具体的に用いた文献は、
①K. M. Schwartz et al. Pattern of T2 hypointensity associated with ring-enhancing brain lesions can help to differentiate pathology. Neuroradiol 48: 143-149, 2006
②W. Bruck et al. Inflammatory central nervous system demyelination: Correlation of magnetic resonance imaging findings with lesion pathology. Ann Neurol 42: 783-793, 1997
③Lucchinetti C, et al. Heterogeneity of multiple sclerosis lesions: implications for the pathogenesis of demyelination. Ann Neurol 47: 707-717, 2000
tumefactive MSはしばしば脳腫瘍との鑑別が困難で、脳生検を行わないと診断がつかないことも多々あります。従来のMS (Devic type)とは違う疾患なのではないかと考える研究者もいます。
I先生は、Park2 patientにおける末梢神経伝導検査についての論文を紹介しました。
Ohsawa Y, et al. Reduced amplitude of the sural nerve sensory action potential in PARK2 patients. Neurology 65: 459-462, 2005
Parkinson病患者はしばしば下肢の違和感を訴えますが、Park2患者では、末梢神経伝導検査では Sural nerveのamplitudeが低下しているというのです。しかし、論文では感覚系の診察所見は正常だとしており、疑問な点があります (ここまで検査で異常が出ていれば、診察所見が正常であるとは考えにくいと思います)。
逆に Parkinson病の患者で、Sural nerveのamplitudeが低下していた2例で遺伝子検査をすると、Park2の異常を認めたとも紹介されています。
また、Park2の発現している部位の分子生物学的手法を用いた分析も興味を引かれました。
私が紹介したのは、失音楽についての論文でした。
Pearce JMS. Selected observations on amusia. Eur Neurol 53: 145-148, 2005
要旨を箇条書きすると
・失音楽には先天的なものと後天的なものがある
・脳損傷症例から研究が進められた
・少なくとも、音程を認知する経路とリズムを認知する経路がありそうである
・失音楽を起こす部位については、従来右側頭葉が関与するとされていたが、異なる報告も存在する。また前頭葉も関与しているようだ。
・先天性失音楽は音楽教育とは関係なく存在する
時々音程の高低が判断出来ない人がいますが、先天性失音楽の可能性があります。ただ、この分野の研究はあまり進んでいません。
それとは別に、音楽を認識できるのに、感情の応答が起こらない人がいて、高次機能の研究の分野で注目されています。私も、ヴァイオリンの先生から「芸大受験をする学生を教えているんだけど、テクニックはあるのに何の感情もなく弾いているの。本人も感情を感じていないみたい。」と相談を受けたことがあります。
伊福部昭のCD
現代曲が嫌いな方にもお薦めの現代曲があります。
「伊福部昭 室内楽作品集 MTWD 99009」
どの曲も非常に聴きやすいです。伊福部昭の曲は、どの曲も彼オリジナルの音型が繰り返され、「あ、伊福部だ」とすぐに気付きます。
彼は北大出身で、作曲は独学だったそうです。西洋ブームの中、全く評価されませんでしたが、日本古来の音楽と西洋の音楽の融合を測り、チェレプニンに高く評価され地位を確立しました。クラシックが行き着くところまで行き着いてしまい、やることがなくなり民族音楽との融合(例:ロシア=チャイコフスキー、チェコ=ドヴォルザーク、北欧=シベリウス、ハンガリー・ルーマニア=バルトーク、スペイン=ラロなど)が盛んとなりましたが、そういった中で彼の存在は日本が誇るべきものです。「音楽入門」という本もお薦めです。
一般の方には、ゴジラのテーマ曲の作曲者という方がわかりやすいでしょうか。
Wikipediaで調べると、彼の人柄が記されていました。
「芸術はその民族の特殊性を通過して共通の人間性に到達しなくてはならない」を信条とし、「大楽必易 大礼必簡」(「すぐれた音楽は平易なもので、すぐれた礼節は簡略なものである」という意の司馬遷の言葉)を座右の銘としていた。
一曲目のヴァイオリン・ソナタは木野雅之氏の演奏です。木野さんはミルシテインの弟子で、現在は日本フィルハーモニーのコンサートマスターです。
携帯電話機種交換
携帯電話を買い換えました。P903iTVです。別にワンセグ使える必要はなかったのですが、前に使っていた機種のボタンが若干壊れかけていたもので。
今朝は連直空けに喫茶店で明日の抄読会の文献を読んで、ビックカメラが開店すると同時に購入しました。また使えない機能が増えていそうです。
それから散髪に出かけました。なかなか散髪に行く時間が作れなくて、落ち武者みたいな頭をしていましたが、さっぱりしました。
久しぶりに楽器にも触ることが出来ました。4月に入ってから、帰宅が毎日 22-0時の間で、当直も週 1-2回あるものですから、楽器に触ったのは本当に久しぶりでした。ツィンマーマンの音をイメージして、ベートーヴェンのコンチェルトをさらってみましたが全然ダメです。
来週は研究会での発表1件 (準備まだ)、国際学会の抄録の締め切りも1件 (準備まだ) あって、寝る間もなく忙しくなりそうです。以前お伝えした国際学会は当落線上で、まだ流動的な状況です。どういうコンセプトにするかすらまだはっきりせず、病歴簿から過去の症例をひっくり返しています。何とか行けるように頑張ります。
ツィンマーマン
4月17日(火) 19時開演 東京オペラシティ
1.スラヴ舞曲(ドヴォルザーク)
2.ヴァイオリン協奏曲ニ長調(ベートーヴェン)
3.交響曲第9番「新世界より」(ドヴォルザーク)
指揮:Daniel Harding、ヴァイオリン:F.P.Zimmermann
ロンドン交響楽団
ついに念願のコンサートに行ってきました。チケットをヤフオクなどで追加入手したため、神経内科の先輩2人、中学校時代の同級生と4人となりました。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、ツィンマーマンが過去に録音したCDより少し早めのテンポで始まりました。そのためか、出だしは、想定していたのと違って、すこし違和感がありました。和声的にⅤ→Ⅰと執拗に繰り返すことを自分のレッスンで習いましたが、あまりそこを主張して演奏していなかったように感じます。でも、すっきりとした演奏で、良い意味で期待を裏切られました。ボウイングも、楽譜から離れて、かなり工夫しているようでした。ツィンマーマンの演奏として、オリジナリティが確認出来ました。ただ、(お互いに忙しいので)オーケストラとの合わせが少なかったためか、少し冷や冷やすることもありました。そのスリルがまた演奏を面白くするのかもしれませんが・・・。
カデンツァはクライスラー作曲。ツィンマーマンがクライスラーが使用していた楽器で演奏しているので感慨深く聴きました。
アンコールは、バッハの無伴奏パルティータ第2番3楽章。最後は全員が演奏に引き込まれ、沈黙のうちに終わりました。
ドヴォルザークでは、ロンドンフィル+ハーディングの魅力を味わいました。3楽章では「旅路」の旋律が出てきて、それが第4楽章でも繰り返されるのですが、味わいのある演奏でした。チェコ独特の音型を聴き、以前プラハに行ったときのことを思い出しました。
最後は4人で飲んで帰宅しました。当分、この演奏が頭から離れそうにありません。
(参考) ツィンマーマンのコンサートの感想を書いたブログ
・Adagioなひととき
・Sheva’s Diary
・コンサート日記
・Audio Life
・たるのいつものひとり言
・・・
言葉もありません。
昨年4月、日本大学医学部(東京都板橋区)の付属病院で研修期間中に自殺した埼玉県内の女性(当時26歳)に対し、池袋労働基準監督署が今年2月に労災を認定していたことが16日、わかった。
2004年に国が新しい臨床研修制度を導入してから、研修医の過労自殺が明らかになるのは初めて。新制度は、従来の劣悪な労働条件の改善などを目指してできたものだったが、女性は法定労働時間を大きく超えて勤務しており、依然として研修医の過酷な労働実態があることを浮き彫りにしている。
女性の父親(58)によると、別の大学出身の女性は05年3月に医師免許を取得し、同4月から、都内に3か所ある日大医学部付属病院で順次、研修を始めた。
しかし、女性は、同9月ごろから疲労感を訴えてうつ状態となり、06年4月下旬、自宅で筋弛緩(しかん)薬や鎮静薬を自ら注射し、死亡した。
父親が給与明細などで調べたところ、1週間の平均労働時間は、法定労働時間(週40時間)を大幅に超える72・8時間で、夜間や休日の当直は多い時で月に10回、1年間で計77回に上っていた。このため、父親は「娘の自殺は研修中の過重な労働が原因」として、06年8月に池袋労基署に労災を申請。同労基署は労災と認定し、今年2月、遺族に通知した。厚生労働省によると、「新制度スタート後の過労自殺は聞いたことがない」という。
(中略)
ただ、日大側からは明確な回答がないといい、遺族側代理人の朝倉正幸弁護士は「大学が反省しなければ再発防止につながらず、大変問題だ」と指摘している。
日大医学部庶務課は「個人情報なのでコメントできない」としている。(読売新聞)
(参考)
・基発第 0319007号-医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について
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