ヴァイオリン製作と喘息

By , 2007年12月19日 7:02 PM

今回取り上げるのは、職業性喘息についてです。実は、フランス語の論文のため、私はabstractしか読んでいません。フランス語が読める方は、是非全文読んでみて下さい。

Rev Mal Respir. 1992;9(4):470-1.Links
[Occupational asthma caused by ebony wood][Article in French]

Kopferschmitt-Kubler MC, Bachez P, Bessot JC, Pauli G.
Service de Pneumologie, Pavillon Laennec, CHRU, Strasbourg.

A case of occupational asthma to ebony wood dust is described in a violin and stringed instrument maker, who was sanding and filing ebony to make the finger boards of violins and cellos. The diagnosis was confirmed using a realistic provocation test; after sanding and smoothing the ebony for 20 minutes the patient developed bronchial spasm with fall of the force expired volume in one second (VMS) of 45% which was reversible following the inhalation of beta 2 agonists. A delayed reaction was seen at 3 hours and 6 hours and at 20 hours after the test. The observations of occupational asthma or rhinitis to ebony wood are very rare. To our knowledge there are two publications at the present time. It has been recognised as an occupational disease (see table 47 of occupational diseases) and an exclusion order has been effected.

PMID: 1509193 [PubMed – indexed for MEDLINE]

ヴァイオリン、楽器製作者は、ヴァイオリンやチェロの指板を研磨したり、削ったりしますが、指板に用いられる黒檀の粉塵に対する喘息の一例が本論文では取り上げられています。

診断には誘発試験が用いられます。実際には、20分間黒檀を研磨するなどの作業をした後、患者が気管支の spasm (攣縮) を起こし、1秒率 (force expired volume in one second; VMS) が 45%低下したことから、気道の過敏性を証明し、β2刺激薬吸入を行って可逆性を証明しています(喘息の確定診断には、気道の過敏性や可逆性の証明が大切です)。遅発性反応が、3時間、6時間、20時間後に見られています。

黒檀に対する職業性喘息、鼻炎の知見はとても珍しいのだそうです。

楽器作りも、こんな辛い発作を乗り越えて行っている職人がいるのですね。

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ハーバードへの道

By , 2007年12月19日 7:31 AM

アメリカで研修しておられる方が書いているブログを見つけました。

 TMDU HMI2007~ハーバードへの道~-Neurology Ward Service by Hiroki-

初の病棟で驚いたのは,その回転の速さ!病棟には常に20人くらいの患者さんがいるが,金曜日の夜にいた人の少なくとも1/4は翌月曜日には新しい患者になっている.
この回転を支えているのはやはりRehabilitation centerやNursing home等だろう.例えば脳梗塞の場合,平均5日で転院!Lab, Echo, Holter, etc.と病棟で必要なことが終わると,麻痺が残っていようがいまいがすぐに”Go Rehab”となる.あとはPT/OTが中心となって機能回復を図っていくのである.

日本とは全然違いますね。システムの違い、コスト意識の違い、社会構造の違いなど、色々背景にあるのでしょう。日本でも、平均在院日数を削減するように、診療報酬を変える流れにありますが、アメリカと違って、リハビリ病院や療養施設を評価しないため、受け皿がなく、入院が長くなります。それに、日本では「入院期間中にしっかり治して、万全の状態で退院」という価値観があり、もし虫垂炎の手術をして、翌日「退院してください」と言ったとしたら、大部分の人がびっくりするでしょう。不信感を持たれたまま家に帰って、トラブルがあれば訴訟沙汰でしょうね。

慢性疾患の多い神経内科の現場では、「帰っても看れないから病院においてくれ」とか、「もし退院後悪くなったらどう責任取るんだ?」などという家族の方も多く、入院期間を引き延ばす要因となっています。家族の方の要望もある程度理解でき、療養施設や慢性期病床が充実していれば、クリアできる問題ではあるのでしょうけれども。

これからは、限られた医療費の中で、急性期と慢性期医療のバランスをどう取っていくのかを考えないといけません。これまでは、慢性期医療を切り捨ててきたため、患者やその家族が路頭に迷ってきたのみならず、急性期医療の回転も遅くなり、共倒れになっているような気がします。

もちろん、アメリカ型医療が理想とは言いませんが。

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