第66期名人戦
将棋の第66期名人戦で、挑戦者の羽生善治氏が森内名人を破り、通算4勝2敗で名人位を奪取しました。これで羽生氏は過去の名人位通算4期と合わせ、第19世永世名人を名乗る資格を得ました。
今回のシリーズはなかなか見応えがありました。特に、1手で均衡が崩れる中盤戦を熟慮し、慎重にバランスを取りながら戦うシーンが多かったのが印象的でした。駒組みに専念する時間が多く、なかなかアマチュアには理解が難しい局面が多かったように思います。このシリーズの各局を素人目に感じたように書いてみます(「第○局」というところをクリックすると棋譜が見られます)。
第1局は、後手の羽生挑戦者が優勢を築きながら、無理仕掛けを強引に行い、逆転負け。後手58手目の8六同飛が敗着だったようです。
第2局は、先手の羽生挑戦者が堅実な差し回しで、勝利しました。31手目先手3五歩、71手目6三銀が、気づきにくい好手と評されました。103手目の6八玉も落ち着いていましたね。
第3局は、後手の羽生挑戦者が、必敗と思われた将棋を、執念でひっくり返し、勝利しました。勝利後の羽生挑戦者の表情が、如何に厳しい勝利であったかを物語っていました。
第4局は、森内名人が24手目後手5四金と積極的な差し回し。38手目の後手8二角が、徐々に好位に進出してくる手順には驚かされました。結果的に、後手は千日手を選ぶのがベストと思われた局面で、56手目3五歩の仕掛けが無理筋で、的確に咎めた羽生挑戦者の勝利。81手目に羽生挑戦者が2七飛として、2七で飛車を取らせたのが好判断でした。千日手を選ばなかった名人について、渡辺竜王は、名人としては千日手狙いの消極的な手順で先手に先に攻められると後悔が残るし、指しにくかったのだろうと解説していました。
第5局は、森内名人が第3局のリベンジ。第3局と同じ戦型を選択しました。羽生挑戦者も、第3局で標的となった7三桂を跳ねずに戦いましたが、2二銀の壁銀が痛く、先手森内名人の59手目7三歩成、87手目4一角が好手で、名人勝ちになりました。
第6局は、46手目の9二角が最後まで働かず、名人苦戦となりました。47手目、羽生挑戦者が2三歩から3四の銀を引きつけたのが好判断で、3九の「と金」に仕事をさせませんでした。後手は2三歩を払った金の形が悪く、先手の銀が再度進出し、飛車がさばけました。89手目先手5三桂成は、踏み込んだ手。95手目7五金でわかりやすくなり、99手目6五同金では8五銀の方が素人目には安全だったかもしれませんが、勝ちを読み切った挑戦者が格好良く決めました。最後はかなり大差となりました。
羽生二冠が名人位を奪取し、永世名人の資格を手に――。山形県天童市の天童ホテルで16日から指されていた第66期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の第6局は17日午後8時10分、挑戦者の羽生善治二冠(37)が105手で森内俊之名人(37)を破り、対戦成績を4勝2敗とし、名人位を奪取した。
羽生二冠が名人戦を制したのは、第52期(94年)、第53期(95年)、第54期(96年)、第61期(03年)に続き、通算5期目。これで名人5期の条件を満たし、引退後に永世名人の称号を名乗る権利を獲得した。名人戦が実力制になって6人目の永世名人(十九世)の資格を得た。
羽生二冠が永世名人になるチャンスは過去2回あったが、名人として臨んだ第62期(04年)では森内挑戦者に2勝4敗で敗退。第63期(05年)では森内名人に挑戦したが、3勝4敗で敗退。三度目の挑戦で、永世名人になった。
羽生新名人は、王座、王将と併せ、三冠となった。現在、棋聖戦五番勝負で佐藤康光二冠(棋聖、棋王)に挑戦中で、将棋界の統一に乗り出した形だ。(http://www.asahi.com/culture/update/0617/TKY200806170036.html)
羽生善治氏のファンの私としては、今日は棋譜を並べながら美味しい酒が飲めそうです。