古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ③
今日紹介する演奏家は、Andrew Manzeです。古楽器好きの方々の間では有名な存在です。私が衝撃を受けたのは、彼が「悪魔のトリル (Tartini作曲)」を無伴奏ヴァイオリンのために編曲して演奏したのを聴いた時です。ヴァイオリン一本で紡ぎ上げるおどろおどろしい世界?は、悪魔の演奏を思わせました。
・1-Manze-Devil’s Trill
Andrew Manze (violin) と Richard Egarr (fortepiano) によるMozartの録音は、技術的に非常に安定した聴きやすい録音です。Manzeのことだから、何かとんでもないことをしたのではないかと先入観を持って聴きましたが、実は非常にオーソドックスなスタイルでした。上記のTartiniの時代の演奏と違って、演奏家に許される自由度が多少異なるのかもしれません。それ以上に、Mozartのソナタが編曲の余地が無いほど完璧に作曲されていたからでしょうか。演奏については、ヴァイオリンとピアノの音のバランスが良く、二人の息もぴったりで、音楽的にも非常に自然でした。また、収録されたソナタは全て、モーツァルトがウィーンを訪れた 1781年に作曲されたもので、選曲に Manzeらのセンスを見た気がしました。
楽器はヴァイオリンが「Joseph Gagaliano (1782年)」、弓が「Jutta Welcher」、フォルテピアノが「Johann Zahler (1800年)」が使用されたそうです。