小さな政府、大きな政府という議論があります。
財政赤字が拡大している中、政府をスリム化しようというのが小泉構造改革とされています。ところが、李啓充先生の分析を見ると、国際的にも小さな政府の方が国民負担が大きいことがわかります。そして、必ずしも上手くいっているわけではなさそうです。
「国民負担率」がどれだけ misleadingな言葉であるかを4回にわたって論じてきたが,ここまでの議論を以下にまとめる。
1)国民負担率は個々の国民の実際の負担を反映しない:国民負担率が日本よりも小さい国(たとえばアメリカ)の国民負担は日本よりも極端に重いし,逆に,国民負担率が日本よりもはるかに大きい国(たとえばフランス・スウェーデンなど)の国民負担は,日本とそれほど変わらない。
2)国民負担率が大きい国で国民負担が重くならない最大の理由は,事業主が手厚く社会保障費を負担していることにあり,先進諸国の実情を見る限り,「小さな政府」は,実際的には「国民の負担が重く,事業主負担は軽い国」と同義と言ってよい。
小さな政府と大きな政府のどちらが良いかという議論は別にして、急にどちらか一方に舵を切れば、その反動は大きいように思います。民主党がどんな党で、今後どんな失政を起こす可能性があるかは別として、今回民主党が政権をとり、福祉などの充実に大きな予算を当てているのは、小泉改革の反動であると言えます (民主党が急激に大きな政府を目指せば、またその反動は来るかも知れません)。
小さな政府、大きな政府の議論には、医療費の話が大きく関わってきますが、下記の李啓充先生のコラム (計 8回) を読むと、増大する医療費をどう捉えていけば良いか、とても参考になります。
緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(1)
「ロレンツォのオイル」という映画の DVDを見ました。副腎白質ジストロフィーという難病についての映画です。
物凄く描写が細かくて、リアリティーのある映画でした。本編に関係のない描写での説明は一切ないのですが、「あ、今眼底をみているな」とか、「flash VEPの検査中だな」とか「典型的な痙性歩行だな」とか思いながら観ました。この手の映画では「かわいそう」という同情を訴えようとするものが多いのですが、この映画は事象を客観的に描写し、純粋に映画としての感動がありました。また、多くの医療系ドラマ/映画では、「これは、ないな」というシーンがいくつもあり感情移入できないのですが、この映画ではそう感じることもありませんでした。
この映画は色々物議をかもした映画であり、李啓充先生のコラムを読んでから観ると、倍楽しめると思います。
「ロレンツォのオイル」 その後(1)
「ロレンツォのオイル」 その後(2)
「Johann Sebastian Bach ・ Chamer Music (Avi-music 8553165)」という CDを聴きました (アマゾンにリンクを貼っていますが、私はドイツで購入したので多少タイトルが違います)。
Johann Sebastian Bach ・ Chamer Music
1. Brandenburg Concerto No. 6 in B flat major BWV 1051
2. Sonata for viola da gamba and harpsichord in G minor BWV 1029
3. Sonata for flute, violin and basso continuo in C minor “Trio Sonata” from “Musical offering” BWV 1079
4. Sonata for violin and piano in F minor BWV 1018
有名な曲ばかりですが、演奏したことがある曲がたくさんあって、楽しめました。特にトリオ・ソナタは学生時代に何度か演奏したことがあって、一緒に合わせたメンバーを思い出しました。
このCDは、「バッハらしい」演奏という点に好感が持てました。古楽器の奏法を随所に取り入れていることはわかりますが、それだけでバッハがバッハらしくなるわけではありません。当時の様式感を理解しないといけませんし、和声、和声的リズムを感じて音に軽重をつけないといけません。このCDの演奏家達は、それらを自然にこなしており、巷にロマンチックなバッハが溢れる中で、「これぞバッハ」としてお勧めできる一枚です。
ちなみに、4曲目のソナタは、私の大好きな Christian Tetzlaffがヴァイオリンを演奏しています。
「ビール職人、美味しいビールを語る (山田一巳/古瀬和谷著、光文社文庫)」を先日ドイツで読み終えました。非常に読みやすい本ですし、ビールにも詳しくなれますので、「ビールを嗜む方」にお勧めです。
Continue reading 'ビール職人、美味しいビールを語る'»
10月5日0時54分配信 毎日新聞
長妻昭厚生労働相は4日、山井和則厚労政務官と協議し、格差問題の解決に本格的に取り組むため、国民の「貧困率」を政府として調査する方針を固めた。5日にも担当部局に対し、全国的なデータ収集と貧困率の削減目標設定を指示する。山井政務官が4日夜、NHKのテレビ番組で明らかにした。
貧困率とは、全国民の平均的な年収の半分に満たない人の割合とされるが、政府は正式な指標として算出していない。06年に経済協力開発機構(OECD)の発表したリポートで日本の貧困率が先進国中、米国に次ぐ2位という悪い結果となり、貧困問題に取り組むNPO(非営利組織)などが政府に調査を求めていた。民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)に「貧困の実態調査を行い、対策を講じる」と明記している。【佐藤丈一】
格差社会というのが問題となって久しくなりますが、李啓充先生が 6話連続で書いているコラムが面白かったので、紹介しておきます。
続 アメリカ医療の光と影 第128回 格差社会の不健康(1)
亀田総合病院感染症科のブログに、同院での抗インフルエンザウイルス薬の使用法が載っています(記事の最後に、改訂された使用法へのリンクがあります)。
今にも落ちて来そうな空の下で-当院の抗インフルエンザウィルス薬の使用方法 ポジションステートメントを改訂しました-
その他、亀田メディカルセンターのサイトには、各1ページで読める、同院の感染症診療ガイドラインも掲載されているようです。さすがに量が足りない印象がありますが、研修医が簡単に各論を把握するには丁度良いように思います。
臨床ガイドライン
9月9日 (水)
いよいよ帰国する日だ。
朝食は日本食も用意してあり、みそ汁、生卵、鮭など。外国人にも人気があるようで、洋食を選ばず和食に並んでいる外国人も見かけた。米はタイ米ではあったが、それほど気にならなかった。鮭はヨーロッパで食べるときはいつも生臭さを感じるのだが、香ばしく焼き上げ、塩味をつけてあったからか、日本で食べる鮭とほとんど変わらなかった。嬉しいことにシャンパンも置いてあり、遠慮無く頂いた。今回の旅行で最も美味しい朝食だった。
チェックアウトする際、英語でのやり取りだったが、私が「Envelope.」という単語を聞き取れなかったとき、「封筒はいかがですか?」と日本語で答えられた。日本人の旅行客が多いからかも知れないが、こんな難しい日本語を話されるとなんだか嬉しくなる。ポーターさんも、日本語で「どうもありがとうございます」なんて挨拶してくれた。
フランクフルト空港に着いてからは、かなり時間が余ったので、バーでグラーシュスープとアップルワインを飲みながら、「ビール職人、美味しいビールを語る (山田一巳、古瀬和谷著、光文社新書)」を読んだ。非常に読みやすい本で、内容も面白く、あっという間に読み終えた所で、飛行機に乗り込んだ。学会の準備は全然出来なかったけど、まぁ、こういうのは追いつめられないとダメなものだ。
先日、抄読会で ALSにおける針筋電図の論文を紹介しました。この研究は、帝京大学の園生先生や千葉大学の桑原先生らが行った多施設前向き研究で、かなりインパクトのあるものでした。Muscle & Nerveという雑誌に掲載されたのですが、オンラインで読めるのでリンク先を示します (リンク先の Full text PDFを選んでください)。
Continue reading 'ALSにおける筋電図'»
10月 2日付けの東京スポーツに、「難病 パーキンソン病 専門医が解説」という記事がありました。直井伸夫という記者の署名記事です。
香川県立中央病院神経内科主任部長の山本光利先生の話を聞いて記事にしています。山本先生は、業界でも名前の知られた先生です。ただ、記事の内容が・・・orz
パーキンソン病の4大症状
①手足のしびれ
②手足のこわばり
③動作が緩慢に
④転びやすい
思いっきり間違えているではないですか!
医学生がこんな解答したら落第します (^^;
山本先生が間違ったことを話したことは、絶対にないと思います。おそらく記者の勘違いなのでしょうね。
ちなみに、パーキンソン病の 4大症状は、Wikipediaに正しく載っているので、転載します。
Wikipedia -パーキンソン病-
・安静時振戦 (ふるえ resting tremor)
指にみられることが多いが、上肢全体や下肢、顎などにもみられる。安静にしているときにふるえが起こることが本症の特徴である。精神的な緊張で増強する。動かそうとすると、少なくとも一瞬は止まる。書字困難もみられる。指先のふるえは親指が他の指に対してリズミカルに動くのが特徴的であり、薬を包んだ紙を丸める動作に似ていることからpill rolling signとも呼ばれる。
・筋強剛(筋固縮) (rigidity)
力を抜いた状態で関節を他動させた際に抵抗がみられる現象。強剛(固縮)には一定の抵抗が持続する鉛管様強剛(鉛管様固縮、lead pipe rigidity)と抵抗が断続する歯車様強剛(歯車様固縮、cogwheel rigidity)があるが、本疾患では歯車様強剛が特徴的に現れ、とくに手関節(手首)で認めやすい。純粋なパーキンソン病では錐体路障害がないことが特徴である。すなわち四肢の麻痺やバビンスキー反射などは認められないのが普通である。
・無動、寡動 (akinesia, bradykinesia)
動作の開始が困難となる。また動作が全体にゆっくりとして、小さくなる。仮面様顔貌(瞬目(まばたき)が少なく大きく見開いた眼や、表情に乏しい顔貌)、すくみ足(歩行開始時に第一歩を踏み出せない)、小刻み歩行、前傾姿勢、小字症、小声症などが特徴的である。ただし床に目印となる線などを引き、それを目標にして歩かせたり、障害物をまたがせたりすると、普通に大またで歩くことが可能である (kinésie paradoxale、逆説性歩行、矛盾性運動)。
・姿勢保持反射障害 (postural instability)
バランスを崩しそうになったときに倒れないようにするための反射が弱くなる。加速歩行など。進行すると起き上がることもできなくなる。
さらに、記事中は、「黒質」が「黒室」と記載されていました。
新聞社自身が「東スポの記事を信用する人間はいない」と主張する東スポだから・・・という話もありますが、他の新聞でも似たような誤りを時々見かけます。この手の記事を書くときは、医師のチェックを受けて誤りを正すべきだと、こうした記事を見るたびに思います。