仕分け
科学技術に関する予算の削減については各所から批判が出ています。資源のない日本にとっての生命線ですし、方針を改めて欲しいものです。熾烈な戦いの中で世界の最先端を走る日本の科学技術を国をあげて支える必要があります。
病理学からみたヒト脳の宿命
「病理学からみたヒト脳の宿命(桶田理喜著、Springer)」を読み終えました。
ヒトの脳は他の動物と比べてかなり発達していますが、その分犠牲にされたものがあります。たとえば、脳の容積を増やす過程で、直線であった動脈が湾曲を余儀なくされます。その結果、血行力学的に不利になり、脳虚血に陥りやすい部位が出てきます。これはヒト脳が抱えることになった宿命の一例です。
本書は、「大脳にみられる病変局在の選択性」「脳幹の一定領域を選択的に侵す病態」「脊髄の一定領域を選択的に侵す病態」の三章に分けて構成されています。
第一章「大脳にみられる病変局在の選択性」では、灰白質を選択的に侵す病態が考察され、全脳虚血の他に、動脈攣縮などの血管の機能異常について考察します。面白いのは白質を選択的に侵す病態です。一酸化炭素中毒の動物モデルで白質病変が形成されるかを検討し、「高度の低酸素状態と、それにつづく血圧低下(※一酸化炭素には血管拡張作用がある)による軽度の脳虚血が、大脳白質と淡蒼球(ときには黒質)の選択的病変発生に必要にして十分な条件である」との結論を得ます。その中で何故淡蒼球が侵されるかは、「動脈構築、すなわち主管に対して細い口径の穿通枝をもつ動物の宿命である」と説明されます。一酸化炭素そのものの毒性によるものではない証拠に、シアンソーダを用いても、低酸素と血圧低下が起これば、同様の病変が形成されるそうです。この章では、他に 5-FUや MTXの神経毒性、Binswanger脳症、CADASILなどを扱っています。
第二章の脳幹の一定領域を選択的に侵す病態では、まず Central pontine myelinolysis (CPM), pontine and extrapontine myelinolysis (PEM) が検討されますが、両者ともに好発部位は灰白質と白質の線維がサンドイッチ状になっている部位であり、部位特異性の原因になっているものと思われます。一方で、Multiple spongy necrosis of the pontine base (MSN) は、橋底部背側を好発部位としますが、これは穿通動脈進入部から最も遠位であり、動脈血流の減少によるものと解釈されます。本章の最後はビタミン B1欠乏性脳症 (Wernicke脳症) です。幾多の実験を通した後に得られた機序は、ビタミン B1欠乏で一次的に海綿状脳病変が生じ、二次的に病巣内血流の末梢抵抗増大がおこるとするものです。特に「下丘や視床などのようなアストロサイトと神経細胞突起が均一に密集している組織構造を持った領域」で海綿状病巣が形成されると、神経細胞の虚血性変化と出血が起こりやすいと考えられます。
第三章は脊髄の一定領域を選択的に侵す病態で、最初に Foix-Alajouanine病が紹介されます。本疾患は、動静脈短絡により静脈うっ滞が生じ、側索が好んで侵されます。そのほか、遅発性放射線障害、HTLV-1 associated myelopathy / Tropical spastic paraparesis (HAM/TSP) が扱われます。
本書を通じて感心したのは、疑問を持った点に関して、適切な実験をおこない、答えを導いていくプロセスです。「論文や教科書に載っていないのでわからない」というのではなく、自分で新たな知見を積み重ねて教科書を作っていくことが凄いと思いました。本書の中には、解決した問題に加えて、新たに見つかった課題も記されています。これは後世への宿題となるのでしょう。
インフルエンザ脳症調査結果第2報
国立感染症研究所より、インフルエンザ脳症調査結果第2報が出ています。
MRIで所見があるのが 約 30%にしかすぎないんですね。もっと所見が出るものだと思っていました。治療はステロイドパルス療法が基本のようです。60例中 3例が亡くなっており、治っても後遺症を残すことがあるようです。
小児科医、神経内科医は目を通しておかないといけないニュースだと思います。
インフルエンザ脳症
11月 28日の神経学会関東地方会で新型インフルエンザ脳症の症例報告があります。
かつて松本サリン事件の症例報告が神経学会でなされたことがありましたが、その際は学会場に人が入りきれなくなり、マスコミも大勢かけつけていたという話を聞いたことがあります。
今回も人だかりとなる予感。何とか時間を見つけて行ってみたいと思います・・・と思ったら当直だ!しかも連直中。行った人に話を聞くに留めます。
不滅の恋人
ベートーヴェンが不滅の恋人に向けて書いた手紙の日本語訳が載っているサイトを見つけました。
ラブ・レターまで公開された現在を知って、ベートーヴェンはどんな気分がするでしょうか?
当事者ではないのですが、この手紙を読んで、グッときてしまいました (^^;
Instruments and music-ベートーヴェンと「不滅の恋人」-
結核
結核診療における診療報酬のひどさを今回初めて知りました。診れば診るほど赤字になって敬遠される分野っていくつもありますね。医療費を削るばかりではなく、こうした分野を手厚くしないと困るのは患者です。
ブルーマウンテン
昨日、ビーンズアクトへ行き、ブルーマウンテン No.1のコーヒー豆を購入しました。
100g 1800円とかなり高額なのですが、初めて豆から作るコーヒーなので、奮発してみました。とはいっても、お店で飲むよりは安いですかね・・・。
味はなかなかのものです。店員さんからは、「機械じゃなくて自分でドリップするようになると、また味が違いますよ」と勧められたのですが、この手のセンスがてんでない私にとっては、機械の味の方が信頼できます。
今の悩みは、一杯のコーヒーに何 gのコーヒー豆が必要かということ。今日は 30 gで 3杯作ってみたけれど、なんか豆を使いすぎたような気がします (思ったよりたくさんのコーヒー粉が挽けたので)。
それと、ミルで粉にするとき、粉のサイズの大きさは、コーヒーの味の何に影響を与えるのでしょうか?
コーヒー一杯にも課題がたくさんです。
・・・あと、ミルはどのくらいの頻度で洗えば良いのでしょう?