膀胱結石手術図

By , 2010年4月26日 9:30 AM

マラン・マレー (1656-1728) に「膀胱結石手術図」という曲があります。知る人ぞ知る作品です。

マレーの時代は、膀胱結石手術の治療成績は悪かったらしく、手術はかなりの割合で死を意味しました。抗菌薬や無菌法もなかった時代です。麻酔も行われていなかった筈です。

「膀胱結石手術 -バロック期の標題音楽集 (WPCS-5989)」 という CDをアーノンクールが出しており、そこにこの曲は収録されています。ライナー・ノーツに語り手の台詞の日本語訳がありますので紹介しておきます。

Le Tableau de I’Operation de la Taille

[index I]
手術の様子
それを見て震える
手術台に登ろうと決心する
手術台の上まで行き
降りてくる
真剣に反省
腕と足の間に
絹糸が巻きつけられる
いよいよ切開
鉗子を挿入する
石が取り出される
声も出ない
血が流れる
絹糸がはずされる
寝台に移される

[Index 2]
快癒 (陽気に)

[index 3]
その続き

この曲は Youtubeで演奏を聴くことができます。

・Le Tableau de l’Opération de la Taille

・Marais – Le Tableau de l’Opération de la Taille

いかにもおどろおどろしい曲で、手術が成功に終わってもあまり明るさはありません。どちらかというと安堵感の方が表現されていると思います。

ちなみに上記の CDには、他に「常軌を逸したカルパッチョ (ファリーナ)」「フェンシング指南 (シュメルツァー)」「描写的なヴァイオリン・ソナタ (ビーバー)」「協奏曲 <夜> (ヴィヴァルディ)」が収録されています。

特に「常軌を逸したカルパッチョカプリッチョ」は面白い曲なので寄り道して紹介しておきます。この曲は動物の鳴き声を楽器で模倣するなど一見やりたい放題です。しかし音楽史上に残る貢献をいくつもしているんですね。まず、コル・レーニョという奏法で、弦を弓の木の部分で叩くテクニックはこの曲で初めて登場します。曲中の指示は「qui si batte con il legno del archetto」となっているようです。また、ヴァイオリン奏者が楽器の駒の近くを弓で弾く「ポンティチェッロ」もこの曲で初めて用いられました。

ヴィヴァルディの「」もお薦めです。良かったら聴いてみてください。

(2016.8.15)

動画リンクが上手く表示されなかったので貼り替えました

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3秒で心電図を読む本

By , 2010年4月26日 7:53 AM

「3秒で心電図を読む本 (山下武志著、メディカルサイエンス社)」を読み終えました。岩田健太郎先生のブログで紹介されていた本でした。

楽園はこちら側-3秒で心電図を読む本-

心電図というと、学生時代に心電図の教科書を読んで、ミネソタ・コードの一部まで覚えようとして結局身に付かなかった苦い経験がよみがえります。でも医者になってから経験を積むうちに、循環器疾患は「放っておいて危険かどうか?」を判断することがまず大事であることに気付き、それから心電図アレルギーがなくなりました。要するに、心電図をマニアックに読んで診断をつけなくても、大丈夫そうかどうかがわかれば、循環器医以外はまず困らないわけです (経験的な話です)。

本書で勉強になったのは、QRSの解釈の仕方やST-Tの扱いです。無症状例での疑陽性、有症状例での偽陰性リスクを考えた ST-T変化の扱い方は必読ですね。これらを知ると、過剰診断をしたり、放っておくと危険な心疾患を見逃したりしにくくなるのではないかと思います。

書評は、上記の岩田先生のブログが素晴らしいものですので、是非御覧になってください。私がそうであったように、読みたくなるかもしれません。心電図を 3秒で読めるようになるかどうかは別として、本書は 3時間くらいで読むことができる、「優しい」本です。

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