クーベリック
クーベリック・・・と聴くと、多くのクラシック愛好家は指揮者の「ラファエル・クーベリック」を思い浮かべるのではないでしょうか?しかし、ヴァイオリン弾きにとってのクーベリックは「ヤン・クーベリック」なのです。
ヤン・クーベリック(以下、クーベリック)は、セヴシックと共にプラハ派の中心人物でした。セヴシックはクーベリックの師ですが、ヴァイオリン弾きはあのメカニックな練習教本で嫌と言うほど名前を胸に刻み込んでいる筈です (^^;
さて、録音で聴くクーベリックの演奏は、コントロールされたボウイングと、甘いポルタメントが散りばめられた演奏の滑らかさが特徴であるように私には思えますが、ハルトナックは「(1905年~1920年の録音について)これは、かつての好調時の彼がもっていた芸の艶を失っており、同時に、いわゆるプラハ派をみずから絶対的に率いていたこのヴァイオリニストの名声の輝きもまた薄れたしろものなのである」と酷評しています(「二十世紀の名ヴァイオリニスト」ヨーアヒム・ハルトナック著、松本道介訳、白水社)。
全盛期のクーベリックを聴くことは叶いませんが、せめていくつかの録音から彼の残り香を感じることにしたいと思います。
Argument to Beethoven’s 5th
この動画は凄い。ベートーヴェンの運命に合わせて、ジェスチャーのみで、ある情景を表現します。二人の男女が、猛烈に口論しているのです。話が進んでいく内に男性の浮気がテーマになっていることに気付きます。
女性は男性の服に、自分のとは違う長い毛を見つけます。そして男性に切れると、男性は逆切れして出て行きます。女性は憤慨してソファーに座り、寄ってきた飼い犬を撫でて気分を落ち着けます。そこでふと気付いたのは、男性についていた長い毛が犬の毛だったということ。男性が戻ってきて大円団です。
・Argument to Beethoven’s 5th
こんな演技が成り立つのも、音楽が音楽以外何も表現しないからです。Bernsteinは NYフィルを率いて行った伝説の公演 Young people’s concertの初回「What is the music?」で、「音楽は音符の集まりであって、音楽しか表現しない」というようなことを述べています。つまり、曲について何も知らない人が「美しき青きドナウ」を聴いてもドナウ川を思い浮かべないことからわかるように、音楽はある特定のシチュエーションを表現しないからこそ、様々なシチュエーションにマッチするのです。従って、「運命」を浮気の現場に当てはめることもで出来るし、受験の失敗に当てはめることもできるし、病気の告知に当てはめることも可能です。やっぱり音楽はただ音楽なのだと感じさせられた動画でした。
医学への道
科学随筆文庫というのがあり、その第26巻は「医学への道」という表題がつけられています。この本には「安騎東野」「木下杢太郎」「宮木高明」諸氏の随筆が収録されています。
The Cyber Conductor
これまで、Igudesman & Jooについて何度か紹介してきました。
でも、何といっても、この動画が一番インパクトありました。見ながら爆笑!
・The Cyber Conductor
ちなみに、Igudesmanには公式(?)サイトがあるようなので紹介しておきます。
最後に、ギドンクレーメルと行った舞台のダイジェストも紹介。
・BEING GIDON KREMER Trailer
iPhoneアプリ2
半年前によく使うアプリについて書きましたが、続編。
・Neuro Toolkit
NIHSSが簡単につけられます。各項目をクリックするだけで最後に表にしてくれるのです。また、各項目の詳しい内容を忘れてしまったとき(例えば麻痺があるときに失調をどうつけるか?とか)、「info」という蘭をクリックすると詳しい説明が載っています。その他、ABCD2 scoreや CHADS2 scoreも項目をクリックするだけでつけられます。
・Kifu
将棋の棋譜を再生できます。自分で入力した棋譜も再生可能ですが、何と言っても「Web」ボタンをクリックして、掲載されているプロの棋譜を見られること。ものによっては中継をリアルタイムでみることができます。
・SkyBook or i文庫
インターネット上で小説が無料で掲載されている青空文庫にある小説を読むことが出来ます。寺田寅彦の随筆がたくさん読めるのでお気に入りです。
その他、意外と便利なことに気付いたのは、最初からインストールされている「ボイスメモ」。単なるボイスレコーダーなのですが、譜面台に置いて録音モードにして楽器の練習をします。演奏が終わったら、スピーカーモードにして聴きなおして、演奏の修正点を考えて再度練習です。色々なことに気付けて重宝します。ボタンを一つクリックするだけなので、お手軽に使えて便利です。
オーケストラ
映画「オーケストラ」を観てきました。
ボリショイ・オーケストラの名指揮者であったアンドレイはユダヤ人の演奏家達をかばって失職し、ボリショイ劇場の清掃員として働いていました。ある日、パリの劇場からボリショイ・オーケストラへの演奏依頼の FAXが届いたのを偶然見つけ、こっそりそれをポケットにしまいました。そして、30年前に自分と同じように解雇されたオーケストラの団員を集めて廻りました。メンバーを集めると、全員でボリショイ・オーケストラになりすましパリに向かいます。
アンドレイが指揮者としての職を失う時に演奏していたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を再びパリの地で蘇らせるのです。ソリストにはアンヌ=マリー・ジャケを呼びました。何故ジャケなのか?というのが映画の最後に明らかになります。高名な演奏家に成長しながら、ジャケが知らなかった出生の秘密。ジャケが探し求める両親は、アンドレイが失職したことに密接な関係がありました。それが明らかになっていく過程に引き込まれました。ジェケとアンドレイの揺れ動く心の描写が見物ですし、チェロのグロスマンの演技も良い味を出していました。
随所に笑いがちりばめられているのですが、押しつけがましい笑いではなく、思わずニヤッとしたり、「あはっ」と声が出たりしました。話の展開もスムーズで、だれることなく最後のクライマックスへ。
このクライマックスは凄いです。物語を貫く秘密が最後に明らかになり、チャイコフスキーの名演とシンクロします。
エンドロールが流れる中、席を立つ人は一人もいなくて、所々からすすり泣く声が聞こえてきました。私も鳥肌が立って、少し涙ぐみました。
といった感じで、この映画は必見です。個人的にはジャケが綺麗で恋しちゃいましたし・・・。
それに比べて、予告編で流れた他の映画のつまらなそうなことつまらなそうなこと・・・。金払ってまで長々と広告見せないでくれぇ。本編が始まる前の広告見なくて済むのなら、多少値上げされても全然我慢します、と極個人的な御願い。
パッサカリア
ヘンデルのパッサカリア。ハルヴォオルセンが編曲し、ヴァイオリンとビオラ、ないしヴァイオリンとチェロで良く演奏されます。
・HANDEL – Passacaglia -Perlman e Zukerman
Twitterで tinouye氏から素晴らしい動画を教えて頂きました。これは凄いとしか言いようがない。
・The Impossible Duet: Handel-Halvorsen Passacaglia for Cello and Violin
収録
某月某日に某テレビ局の某番組の収録に某所に行ってきました。某日に放送されます。
methyl先生の高校の同級生が某局のディレクターで、急遽収録が必要になったのですが、火曜日に暇している医者なぞそうそう居るものではなく、切羽詰まって methyl先生経由で私に相談されたら私が空いていたという・・・。私は今、救命センター勤務なので勤務が不定期なのですね。それが幸いしました。こんなにすぐに医者が見つかるなんて、そのディレクターは何か持っていますね。
当初は顔出しなしという話だったのですが、知らないうちに色々撮られていて、気が付いたら映像の使用に関する同意書にサインさせられていたという・・・。当日の放送では顔は仕方がないとして、大学名とか名前は出さないように御願いしました。バラエティー色が強いし、番組の内容に私は結構批判的な意見を持っていたものなので。
しかし、テレビの取材に行ってみて、いくつか気付いたことがあったので、箇条書きにしてみます。
・実は番組制作の時間はかなり限られている。今回の収録が決まって医者を捜し始めたのも 2日前だった(医者が見付からなかったら収録自体出来なかったらしい)。
・テレビは絵が命。つまり映像を撮っていないと編集のしようがない。だからとにかく必要と思ったらカメラを回す (50分の映像で 60分の番組を作るのはきつい)。
・現場に来るスタッフのほとんどはかなり若い。雰囲気は学園祭の実行委員的なノリ
・スタッフは非常に臨機応変。若干行き当たりばったりの感があるが、その状況でベストの選択肢を考え、すぐ実行する。「まずやってみる」という姿勢に学ばされるものが多かった。
・若い女性スタッフから御約束の健康相談。でも、凄まじい闘病生活の話を聞いて、何かしてあげられないかという気持ちになって、困ったことがあったら電話相談に応じる約束をした。おいらがギネの医者だったらもっと力になれたのだろうけど。
・収録で彼らは思い通りの結果が得られなかったけれど、一切捏造とかいう雰囲気はなかった。