「哀愁のトロイメライ~クララ・シューマン物語~」のDVDを見ました。クララ・シューマンについての映画はいくつか作られていて、「愛の協奏曲」「愛の調べ」を過去に紹介しました。この「哀愁のトロイメライ」は、前記2作品のようなシューマン夫妻とブラームスの三角関係ではなく、クララがロベルト・シューマンと結ばれるまでを描いています。恋愛映画に付きものである愛の障害は、父によってもたらされます。
この映画は、冒頭パガニーニの演奏シーンから始まります。パガニーニ役はギドン・クレーメル。凄まじい迫力でカプリス (パガニーニ作曲) が演奏されます。その他、演奏はディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、ヴィルヘルム・ケンプ、ヴォルフガング・サヴァリッシュ、イーヴォ・ポゴレリチと錚々たるメンバによってなされ、演奏に関して、一切不満はありませんでした。
・Gidon Kremer -Paganini part01
登場するピアノや衣装にも、当時のものを使用するなど、かなり凝った作りなのですが、それを実感したのがロベルト・シューマンの手の障害についてでした。過去に紹介したように、シューマンは手を痛め、「Animal bath」や電気療法を受けました。そのことが映画できちんと触れられていました。
ただ、酷かったのは終わり方。あるシーンの途中でいきなりスパッと終わってしまうのです。途中までの音楽を楽しむのであれば、観る価値のある映画ですが、多分カップルで観るとどうしようもない後味の悪さが残るに違いありません。結婚式で終わると良かったのでしょうね。それ以外が良かっただけに非常に残念!
あらすじ
「さらば脳ブーム (川島隆太著、新潮新書)」を読み終えました。際どい話が一杯で面白かったです。川島氏は脳トレの開発者です。ブームには反動があるのが付きもので、彼は一時週刊誌などでかなり叩かれたことがあります。今回の話にはその反論と反省の内容も織り込まれています。面白かった部分を簡単に紹介します。
Continue reading 'さらば脳ブーム'»
昨日 12月 11日に、発熱をおして、久々にヴァイオリンのレッスンに行ってきました。前回のレッスンは 2008年 10月の Tomoの結婚式で演奏するために行ったときでしたから、本当に久々でしたね。レッスンを受けたのは、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番3楽章。アゴーギクの付け方は間違ってないと言われましたが、色々課題が見えました。
・Bach – Sonata III for solo violin in C Major, BWV 1005 – 3. Largo
(レッスン内容) この曲の楽譜をお持ちでない方は、バッハ自筆譜PDFの 34ページを参照してください。
・第2楽章のハ長調の長大な Fugaの後にこの Largoを置いた意味を考えること。べったりと重く弾かない (単品として弾くときは別)。
・3楽章の一つの鍵は調性。調の概念が確立し、それに基づいて作曲するようになったのはもう少し後の時代だが、曲の雰囲気という意味では参考になる。3楽章はヘ短調であり、調としては「荘厳だが宗教的ではない」などの意味がある。他の楽章は全てハ長調で書かれている。
・フレーズが短くなりすぎないように。低音の声部がフレーズの目印となる。たとえば、低音部に注目すれば、最初から 2小節目の3拍目の終わりまでが一つのフレーズ。次のフレーズは 4小節目の3拍目の終わりまで。
・6小節目の 2拍目からどんどん前へ。低音の声部も上向形。
・7小節目は終止形であることを意識。その前で遅くしない。
・12~13小節目は一つのクライマックス。盛り上がる。
・曲としては17小節目で終わり。あとはコーダ。付け足しの部分と考えて、くどく弾かない。
・20小節目の 3拍目は非常に大事。急に調が変わる。それを強調するために、わざと大事な Asは低く、Hは高くとる (ここで Asが登場することが驚きなのだ!)。2拍目最後の G (3の指) にくっつけて As (4の指) と、それに幅狭く F (2の指) を押さえ、最後に 3の指をずらせて Dを取ると弾きやすい。
・21小節目終わりのC→Fはしっかり響かせる。16分音符の Fを弾いたら、軽く弓を浮かせて引き直して良い。
・最後は Dominant→Tonicなので、「緊張→弛緩」を意識して伝える。
レッスンが終わってから、音楽界のことや、教育について色々話し込みました。私が大学医学部の教員で、師が音大の講師ということもあって、「最近の学生がやたら真面目で、単位や与えられた課題をこなすことばかり気にしている」という風潮に、「遊んで視野を広げることも大事」、「言われた勉強をこなすだけでは幅の狭い人間になっちゃうよ」と盛り上がりました。
「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか? (梅田望夫著、中央公論社)」を読み終えました。羽生名人の最近の将棋の観戦記と、対局者へのインタビューを綴った本です。この本、巷では「どう羽生」と呼ばれているそうです (^^)
Continue reading 'どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?'»
映画「愛の調べ」のDVDを見ました。 ロベルト・シューマン、クララ・シューマン、ブラームスの三角関係を描いた映画です。同じ題材を扱った映画には、「クララ・シューマン 愛の協奏曲」がありますが、「愛の協奏曲」が情熱的でやや官能的な面を持つ映画であったのに比べ、「愛の調べ」は素朴な純愛を描いていました。
無意味にフランツ・リストが登場したり、やや史実を曲げた演出はあるものの、ロベルトとクララの固い絆や、ブラームスのクララへの美しい片思いは、この恋愛映画を非常に魅力的なものにしていました。安くて簡単に買えるDVDですので、是非お勧めです (^^)
さて、実際にロベルト・シューマン、クララ・シューマン、ブラームスの間に三角関係はあったのか?その根拠は何なのか?というテーマは、後日またブログに書きたいと思います。
「医学の小景 (小川鼎三、勝木保次、本川弘一著、学生出版)」を読み終えました。科学随筆文庫の一冊です。
Continue reading '医学の小景'»
「宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎 (村山斉著、幻冬舎)」を読み終えました。
Continue reading '宇宙は何でできているのか'»
Newton誌の 2010年 12月号に今年のノーベル化学賞が扱われており、根岸英一氏と鈴木章氏が何故受賞したかわかりやすく解説されていたので紹介します。
20世紀後半に入り、金属の触媒を用いて 有機化合物を合成する研究が盛んになりました。しかしほかの炭素と 2重結合を作っている炭素同士を繋ぐことは出来ないなどの制約がありました。そこで 1972年に、今回のノーベル化学賞受賞者の一人リチャード・ヘックがパラジウムという金属を触媒に用いて、下記の性質を持つ物質を反応させることに成功しました。
1.炭素が鎖状につながった骨格の中に1カ所だけ二重結合を持つ分子である「オレフィン系炭化水素」
2.ハロゲン(フッ素、塩素、臭素など第17族元素)が端についている有機化合物
これをヘック反応と呼びます。余談ですが、パラジウム触媒を世界で初めて応用したのは辻二郎東京工業大学名誉教授で、ヘック博士がヘック反応を完成させる 1年前に同じ内容の反応法を東京工業大学の溝呂木勉博士(故人)が発見しています。溝呂木博士は生きていればノーベル化学賞を受賞していたかもしれません (残念ながら、ノーベル賞は故人には与えられないことになっています)。
しかし、ヘック反応では反応する化合物の一方がオレフィン系炭化水素でなければいけないという制約がありました。そこで様々な炭素ー炭素結合を作る方法として開発されたのが「クロスカップリング」という反応でした。ヘック反応は二重結合とハロゲンを目印として繋ぎ換えをしましたが、クロスカップリングはこの目印を代わりに金属にしています。
初期は金属としてマグネシウムが使われていましたが、正確性に難がありました。そこで根岸英一博士は、触媒にパラジウム、つなぎ換えの目印に亜鉛を用いて正確にクロスカップリング出来るようにしました。これは「根岸反応」とか「根岸カップリング」と呼ばれました。
ところが、つなぎ換えの目印に金属を結合させると、空気や水と反応しやすく、長期保存ができなかったので、鈴木章博士は亜鉛などの金属の代わりに非金属であるホウ素を用いました。これが「鈴木カップリング」です。1979年の発見でしたから、私が 3歳のときですね。今後は、パラジウムより安価で入手しやすい触媒を探す方法、カップリングの副生成物(根岸カップリングでは亜鉛、鈴木カップリングではホウ素)を水にする試みなどが研究されているようです。
2011年 1月号ではノーベル化学賞を受賞した根岸英一先生と鈴木章先生のインタビューが掲載されています。ホウ素を用いる意義、メカニズムなどもう少し詳しい話も載っていますので、興味のある方は是非御覧ください。
ちなみに、ちょっとしたネタですが、報道ステーションでお馴染みの古舘さんの理論は、ノーベル賞を取れるくらい凄いらしいです。なんか、炭素の手の数も合っていないし、ベンゼン環の途中から手が伸びるし、あまりに凄い理論に笑ってしまいました。
さて、おいらがカップリングするためには何の触媒と目印を用いるのが良いのでしょうか?
2010年 12月 7~10日に BMB2010が開かれます。今年は、日本分子生物学会と日本生物学会の合同大会となります。2011年度は両学会別々らしいですが、2012年度も開催地が同じ (博多?) なので、合同にした方が楽という意見が強いそうです。しかし、これには反対意見があるそうで、今学会期間中に投票が行われると聞きました。
Biochemistry and Molecular Biology (BMB) 2010
私は 12月 9日が外来なので、12月 7~8日で参加してきます。といっても、この分野は勉強を始めたばかりですし、発表するネタもありませんので、雰囲気を味わうだけとなりそうです。
ただ、無給研究員で学会も自腹と、何の制約もうけない身分ですので、多少学会を抜け出してもお咎めはないだろうということで、学会以外にも多少羽を伸ばすこととしました。というか、勉強して、神戸の夜景を一人で見て帰ってくるというだけだと切なすぎます。
旅程
12月 6日
・ANA 415便 羽田空港~神戸空港 20:15~21:30
・神戸クアハウス宿泊 (カプセルハウス: 三宮)
12月 7日
・9:00~学会
・11:30~兵庫県立美術館 (ザ・コレクション・ヴィンタトゥール)
・14:30~学会
・三宮ターミナルホテル宿泊
12月 8日
・9時~学会
・16時~神戸乗馬クラブ 乗馬 2鞍
・ANA 416便 神戸空港~羽田空港 20:55~22:10
学会場のすぐ近くにも、「JAIRA」という乗馬クラブがあったのですが、残念ながら一杯でした。とはいえ、神戸乗馬クラブも電話で親身に相談に乗ってくれましたし雰囲気が良さそうなので、楽しみです。