ラボでの実験が早く終わったので、久々に大学に遊びに行きました。たまたま研究会をやっていたのでふらりと参加したら、滅茶苦茶面白い講演でした。講演は「認知症の診断と治療の進歩」で、演者は東京医科大学老年病科の羽生春夫教授でした。教科書に書いていない、最先端が多かったです。以下、備忘録代わりに、内容の抜粋を書いておきます。
・Mini-Mental State Examination (MMSE) は、元々の認知機能が高い人、つまり学歴が高かったり社会的に高い立場の人に対しては感度が低い。Cut offを通常の 23/24に置くと、感度 0.66, 特異度 0.99, 通常より高い 27/28に置くと感度 0.89. 特異度 0.91になる。
・認知症スクリーニング検査での計算課題は注意力の低下を見ているので Diffuse Lewy body disease (DLB) で落ちやすい、遅延再生は Alzheimer病 (AD) で落ちやすい。
・MMSEが 10-12分かかるのが大変なので、1分間スクリーニングというのがある。Category fluencyは 1分間で動物の課題を出来るだけたくさん答えてもらうもので、頭頂葉内側機能を見ている。海外の studyでは得手不得手に考慮して、動物、フルーツ、スポーツなどいくつかの分野を出題することもある。Letter fluencyは「カ」で始まる言葉などを列挙してもらうもので、前頭葉機能を見ている。Category fluencyも Letter fluencyも Mild cognitive impairment (MCI) や ADで低下する。
・Test your memoryという検査法は、自己評価で行うことができる。ADや MCIでは病識がないので、他者からの評価より自己評価の方が高い。うつや神経症では逆になる。
・ADだと全脳の容積は 18%, 海馬は 45%低下する。海馬容積を評価する VSRADは、次期 Versionが開発され、より感度が高くなった。VSRADは Z-scoreの数字だけを見るのだけではなくて、元画像で正しい部位を評価しているか確認することが大事。また、海馬の atrophyは sensitiveだが ADにspecificではない。
・ADはアミロイドアンギオパチーを合併するなど、血管障害を合併することが多い。ADと Vascular dementia (VaD) は同じ spectrumで mixed-dementiaと呼ぶことがある。
・VaDと思われる症例で、MRIでの白質病変が同じくらいでも認知機能が異なることがある。Diffusion tensor image (DTI) で走行線維を見ると、認知症のある患者は脳室周囲の前後方向の線維がかなり落ちている。従って、同じ白質病変でも病理学的に違うのだろう。”cell/synaptic density” を反映する 123 I-iomazenil (IMZ) で見ると、VaDでは前頭葉が、VaD+ADでは前頭葉+頭頂側頭葉で取り込みが低下している。
・MRI T2*も VaDと ADの鑑別に有用で、VaDでは 77%, ADでは 32%に micro-bleedingがある。
・REM sleep behavior disorder (RBD) は Parkinson disease (PD) / DLBに先行する。 MCIから ADを発症するのは 3~5年だが、RBDから PD/DLBになるには 10~20年以上かかるので追跡が難しい。さらに、PD/DLBを発症すると、RBDが軽くなることがある。
・idiopathic RBD (iRBD) では、84例中 82例で MIBGシンチで取り込みが低下している。 また、iRBD患者の MRIで Voxel-based morphometryを行うと、小脳・中脳橋被蓋部で容積低下がある。SPECTでは、DLB, iRBDともに後頭葉で血流低下がある。経過中画像が悪化しても、必ずしも症状は悪化しない。
・Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia (BPSD) には、メマンチン、抗てんかん薬、漢方薬などを使用する。漢方薬について、太っている患者には、抑肝散より柴胡加竜骨牡蛎湯の方が良く効く。
2012年4月1日から、介護福祉士や介護職員が喀痰の吸引をできるようになります。しかし、この資格を取得するのに、実習以外に 50時間の講義を聞かないといけないようです。個人的には、2日間くらいで全て終わるようにしないと、参加に躊躇する介護職の方が多いと思うのですが・・・。一方で、これから介護福祉士を目指す方の場合は、養成課程で資格を取得できるようです。
多くの神経疾患で、喀痰の吸引を必要とするだけに、気になる制度です。
・平成24年4月から、介護職員等による喀痰吸引等(たんの吸引・経管栄養)についての制度がはじまります。(PDF)
・厚労省:喀痰吸引等(たんの吸引等)の制度について
「蝉コロン」というブログが面白いです。最近の記事で面白かったのがコレ。
手塚治虫の学位論文を読んだよ
手塚治虫が本格的な研究をしていたのを知って、ビックリしました。何かに打ち込む姿勢は、漫画家になる前から身に付いていたものだったのですね。
少し前の記事ですが、「ゾンビ遺伝子による疾患 」も読み応えがありました。肩甲上腕型ジストロフィーは神経内科医として診療経験がありますが、ゾンビ遺伝子という言葉は初めて聞きました。興味深かったです。
医学部は大学入試で理系に分類されています。一応私は理系男子ということになるわけですが、このサイトみて、「確かにこれやるなー」と思ったことが列挙されていたのでびっくりしました。本当に女子はイラッとするのか twitterで聞いたら、擁護する意見が多かったので安心しました。話のネタに理系男子は読んでみて下さい。多分、結構当てはまりますw
女子にイラッとされる「理系男子特有の話し方」9パターン
でも、これは文系とか理系とかいう問題ではない気がするなぁ・・・。
神経内科医をやっていると、膠原病は比較的目にします。「何らかの神経障害があって、膠原病を疑って膠原病科医にコンサルト」というパターンが多いです。
しかし、神経障害以外の部分の知識不足は否めません。学生時代に勉強した教科書的な知識は年月と共にどんどん抜けていきますし、学問もどんどん進歩していきます。
そんな中、臨床医にとって非常に役立つ話をわかりやすく解説した連載を見つけたので、紹介します。
もう膠原病は怖くない! 臨床医が知っておくべき膠原病診療のポイント
エルゼビアという会社があります。科学雑誌を発行する最大手の雑誌社です。
ところが、この会社、過去に兵器取引という副業があり、問題視されていました 。
今回、別の問題で反エルゼビア運動が起きているようです。
【編集部記事】英The Economist紙によると、欧米圏の学者たちを中心にオランダの電子ジャーナル出版大手Elsevier社(本社:オランダ・アムステルダム市)のボイコット運動が急拡大している模様。
記事によると、発火点となったのは米国下院の委員会において昨年末から策定作業が始められたResearch Works Act法案。この法案は、アメリカ国立衛生研究所のオープンアクセス論文サイト「PubMed」を実質停止させることを狙った法案で、米国の出版社団体AAPや学術ジャーナル出版界などが後押ししている。これが引き金となり、1月21日にフィールズ受賞数学者であるCambridge大学Timothy Gowers教授がElsevier社からの出版をボイコットすることをブログ上で宣言。あっという間に欧米圏の主要大学に飛び火し、約3,900名(本稿執筆時点)の研究者がボイコット活動に署名する事態となっている。
The Ecomonist紙はこれをArab Spring(アラブの春)になぞらえて、Academic Spring(学術の春)運動と命名。ネット上で今後ますます拡大し続けるだろうと予想している。【hon.jp】
記事中にある、基礎研究者や臨床医が文献検索をするのに最も多く使用する Pubmed実質停止は、もし現実になれば影響力が大き過ぎますね。Research Works Act法案が通るかどうか、非常に気になります。Elsevierボイコットの背景には、出版業者が後押しするこの法案のみならず、雑誌の値段が高いこと などもあるようです。
この問題、研究者にとっては目が離せませんが、末端の研究者の本音を言うと、「Elsevierだろうがなんだろうが、とにかく論文を acceptしてください 」。ボイコット出来るくらい、実力があれば良いのだけれど・・・ orz
これまで、何度か小鷹昌明先生の医療ガバナンス学会への投稿をお伝えしてきました。
最新の文章によると、獨協大学医学部準教授の地位を捨て、被災地の病院に勤務することを選択されたらしいです。
一人の優秀な神経内科医がどのように考えてそのような道を選んだか、是非下記の文章をご覧下さい。
福島の医療現場へ
1月 29日に愛馬のレッドキングダムがデビューしました。素質馬が集まるレースということで yahoo newsにも取り上げられました。
netkeiba.com 1月26日(木)16時32分配信
28日(土)と29日(日)の各競馬場における出走馬が26日に確定した。
今週は東京、京都、小倉で計6鞍の3歳新馬戦が組まれており、日曜京都5Rには、ディープインパクト産駒で、ゴスホークケン(朝日杯フューチュリティS-GI)の半弟という良血馬ダノンドリームが、C.ルメール騎手騎乗でデビューする。今週の新馬戦に出走する主な3歳馬は以下の通り。
※左から、馬名(性齢、騎手・調教師、父馬)
◆1/29(日)
・京都5R(芝2000m)
ダノンドリーム(牡3、C.ルメール・池江泰寿、ディープインパクト)…半兄にゴスホークケン(朝日杯フューチュリティS-GI)
エアルプロン(牡3、池添謙一・池江泰寿、ディープインパクト)…母はエアデジャヴー(クイーンS-GIII)、半姉にエアメサイア(秋華賞-GI)
サクラヴィクトリー(牡3、藤岡佑介・羽月友彦、タニノギムレット)…母はサクラヴィクトリア(関東オークス-交流GIII)
レッドキングダム(牡3、四位洋文・松永幹夫、ディープインパクト)…近親にファインモーション(エリザベス女王杯などGI・2勝)
ロードアクレイム(牡3、川田将雅・藤原英昭、ディープインパクト)…母はレディパステル(オークス-GI)
・東京5R(芝2000m)
トウショウバラード(牡3、吉田豊・大久保洋吉、ダンスインザダーク)…半兄にトウショウシロッコ(セントライト記念-GII・2着)
ディープアンドソン(牡3、田中勝春・宗像義忠、ディープインパクト)…半兄にピイラニハイウェイ(アルデバランS-OP)
せっかくのデビュー戦なので、馬券オヤジ氏と京都に観戦に行きました。有力馬ばかりなのでどこまで走れるか不安はありましたが、無事レースを終えることができました。
2012/01/29 京都5R メイクデビュー京都
課題であったスタートはまずまず。途中遊んでしまうところがあり、第四コーナー付近で鞭を入れられていました。更に、鞭と反対側によれたり、距離ロスの多い大外を回るなど、いくつかのマイナス要因を抱えながら、見事 4位でフィニッシュ。1着と 0.1秒差なので及第点なのではないでしょうか。
レース後の四位ジョッキーのコメントがこちらです。
12.01.29 レッドキングダム レースコメント
京都 3歳新馬 芝2000 四位洋文 6番人気 4着
四位騎手「稽古でも感じたけど、心身のバランスがまだまだで子供っぽい。稽古の印象があったし、今日は血統馬も揃っていたから苦戦するかなぁ、と思っていたんだけどね。よく頑張ってくれたよ。最後は右ムチを入れたら、どんどん左に行っちゃったしフラフラする場面もあったけど、能力は高い。うん、楽しみだよね、走るよこの馬。距離はもう少しあってもいいかもね」
レッドキングダムの次走は 2月19日京都第 5レースです。前走 2, 3着馬のエアルプロン、ゼログラヴィティーと再戦になるので、是非今度は勝って欲しいです。しかし、ナイーブな一面があり、飼い葉食いが落ちているとのことで、少し心配があります。