やりたくない仕事

By , 2012年7月29日 8:09 AM

やりたくない仕事があったとき・・・

2011年にイグノーベル文学賞を受賞したエッセイ「いかに先延ばしをして、物事をやりとげるか」というエッセイが役に立ちます(・・・いや立たない?)。まずは下記のリンクを読んでみてください。

最重要課題の先延ばしが重要課題の遂行をもたらす

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津浪と人間

By , 2012年7月28日 1:56 PM

寺田寅彦の随筆が好きでよく読みます。最近、あっと思う随筆を見つけたので紹介したいと思います。

津浪と人間

昭和八年三月三日の早朝に、東北日本の太平洋岸に津浪が襲来して、沿岸の小都市村落を片端から薙なぎ倒し洗い流し、そうして多数の人命と多額の財物を奪い去った。明治二十九年六月十五日の同地方に起ったいわゆる「三陸大津浪」とほぼ同様な自然現象が、約満三十七年後の今日再び繰返されたのである。
同じような現象は、歴史に残っているだけでも、過去において何遍となく繰返されている。歴史に記録されていないものがおそらくそれ以上に多数にあったであろうと思われる。現在の地震学上から判断される限り、同じ事は未来においても何度となく繰返されるであろうということである。
こんなに度々繰返される自然現象ならば、当該地方の住民は、とうの昔に何かしら相当な対策を考えてこれに備え、災害を未然に防ぐことが出来ていてもよさそうに思われる。これは、この際誰しもそう思うことであろうが、それが実際はなかなかそうならないというのがこの人間界の人間的自然現象であるように見える。
学者の立場からは通例次のように云われるらしい。「この地方に数年あるいは数十年ごとに津浪の起るのは既定の事実である。それだのにこれに備うる事もせず、また強い地震の後には津浪の来る恐れがあるというくらいの見やすい道理もわきまえずに、うかうかしているというのはそもそも不用意千万なことである。」
しかしまた、罹災者の側に云わせれば、また次のような申し分がある。「それほど分かっている事なら、何故津浪の前に間に合うように警告を与えてくれないのか。正確な時日に予報出来ないまでも、もうそろそろ危ないと思ったら、もう少し前にそう云ってくれてもいいではないか、今まで黙っていて、災害のあった後に急にそんなことを云うのはひどい。」
すると、学者の方では「それはもう十年も二十年も前にとうに警告を与えてあるのに、それに注意しないからいけない」という。するとまた、罹災民は「二十年も前のことなどこのせち辛い世の中でとても覚えてはいられない」という。これはどちらの云い分にも道理がある。つまり、これが人間界の「現象」なのである。
災害直後時を移さず政府各方面の官吏、各新聞記者、各方面の学者が駆付けて詳細な調査をする。そうして周到な津浪災害予防案が考究され、発表され、その実行が奨励されるであろう。
さて、それから更に三十七年経ったとする。その時には、今度の津浪を調べた役人、学者、新聞記者は大抵もう故人となっているか、さもなくとも世間からは隠退している。そうして、今回の津浪の時に働き盛り分別盛りであった当該地方の人々も同様である。そうして災害当時まだ物心のつくか付かぬであった人達が、その今から三十七年後の地方の中堅人士となっているのである。三十七年と云えば大して長くも聞こえないが、日数にすれば一万三千五百五日である。その間に朝日夕日は一万三千五百五回ずつ平和な浜辺の平均水準線に近い波打際を照らすのである。津浪に懲りて、はじめは高い処だけに住居を移していても、五年たち、十年たち、十五年二十年とたつ間には、やはりいつともなく低い処を求めて人口は移って行くであろう。そうして運命の一万数千日の終りの日が忍びやかに近づくのである。(以下略:リンク先で全文読めます)

繰り返す津波被害について、本質を突いていると思いました。

ただ、現代は寺田寅彦の時代と比べ、映像を残せるなど情報技術は格段に進歩していますし、先日の震災を機に予測技術の開発も進んでいるようです。この不幸な繰り返しを何とか防いで、この文章を過去のものにしたいものです。

 

–関連記事 (寺田寅彦の別の随筆)–

物理学者の心

科学者と芸術家

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第5回上肢の機能回復セミナー

By , 2012年7月26日 7:55 AM

第5回上肢の神経機能回復セミナーに参加してきました。

6月29日は前夜祭で、Evening seminarが行われました。京都大学の福山秀直教授による SPECTを用いた歩行中枢の検討では、立位で小脳虫部が、歩行に運動野と補足運動野が、パーキンソン病での Kinesie paradoxaleに前頭前野が重要な働きを働きをしていることが示されました。Larry B. Goldstein先生は米国脳卒中学会理事で、米国の脳卒中ガイドラインを作った方ですが、アメリカ東海岸の stroke beltと呼ばれる地域の話をしてくださいました。Primary Stroke Center (PSC) を作って専門的な管理をするようにしてみたものの、劇的な改善には至らなかったそうです。質疑応答で、「米国での脳卒中専門施設の数は限られ、そこにアクセスするには時間がかかると思うけれど、t-PAは間に合うのか?」と問われ、Goldstein先生は「Drip and ship」と答えていました。最初の医療機関で t-PAを注射してから搬送する方法がとられるらしいです。

夜のレセプションでは、Everlyの演奏を聴くことが出来ました。Everlyのブログでもこの日の演奏に少し触れられていますね。なかなか素晴らしかったです。

6月30日は 10時30分~20時10分までみっちりと講演がありました。特に印象に残っている話をいくつか抜粋して紹介します。

・岡山大学阿部康二教授「脳梗塞の脳保護療法と再生医療」では、基礎医学の話を色々聞くことができました。脳卒中後の rat脳に iPS細胞を入れると腫瘍化するらしいのですが、ratの骨髄をとっておいて脳梗塞の ratに投与すると効果があることから G-CSFを用いた脳梗塞治療が研究されていて、現在第3相試験が行われているそうです。

・Brain Motor Control Assessment (BMCA) では、multi-channelの表面筋電図を用いて運動制御の障害を評価します。現在行われている臨床試験を検索するサイトで複数登録されることからもわかるように、注目を集めてきているようです。

・国立精神・神経医療研究センター神経内科の坂本崇先生の「ジストニア・痙縮のボツリヌス治療」では、「適切な量を 適切な間隔で 適切な筋に」をモットーに、ボツリヌス注射についての実践的な話を聞くことができました。興味深かったのは、ジストニアでの sensory trickについて。ジストニアのある患者さんが患部を触ると症状が改善する現象ですが、触れる前から効くし、他人の手を使ったり逆の手を使うと効かないらしいのです。このことから、どうやら肩の位置覚が関与しているのではないかと推察されていました。

・前日にも講演された Goldstein先生が、「Current Guideline-Based treatment of Acute  Ischemic Stroke in the United States」 という演題で講演されました。アメリカの脳卒中ガイドラインについての話でした。例えば、AHAのガイドラインでは、発症3時間以内の t-PA療法は class I, LOE A, 発症4.5時間以内の t-PA療法は class I, LOE Bとされています (80歳以上やワルファリン内服は除外基準)。発症4.5時間以内での t-PAの NNH or NNTは Mortality 143, ICH 29, good outcome 11となります。その他、抗凝固療法について、アスピリンについて、開頭減圧術についてガイドラインの根拠となった論文が示されました。また、Goldstein先生が教授を務める Duke大学に脳卒中疑いで搬送されてきた患者のうち 21%が脳卒中ではなく、脳卒中患者のうち出血性脳卒中が 15-20%, 虚血性脳卒中が 80-85%であったデータが示されました。t-PAの meta analysis脳卒中の初期対応についても触れられました。興味深かったのは、篠原先生からのコメントで、「アメリカでは Class I, IIa, IIb, III (Benefit/Risk). Level A~C (Evidence) で分けているけれど、それだと systematic reviewっぽくなってしまうので、日本では C1, C2といったクラスを設定して、提言的な意味を持たせている」ということでした。

・篠原幸人先生は、「私の Serendipity」というタイトルで講演されました。優れた臨床家であり、かつ研究者でもあった篠原先生の Serendipityについての話です。抄録がよくまとまっていますので是非御覧ください。抄録には論文名しか書いていませんが、Routed protein migrationは実験中に病棟に呼ばれ、タイムスケジュールが狂ってしまったので、いっそのことと思って 24時間置いておいてからネズミを解剖してみたら、タンパクが広がって流れていたことで発見されたそうです。また、排便失神の患者さんにValsalva手技をしてみたら血圧が下がったことで閃きを得て、Shy-Drager症候群の 3例に Tilt試験をして脳血流を検査してみたそうです。そうしたら脳血管の自動調節能が失われていることがわかりました。つまり自動調節能には自律神経が関係しているということです。一方、Shy-Drager症候群でも二酸化炭素への反応性 (血中二酸化炭素濃度が上がると血管が開く) は保たれており、自律神経とは別のメカニズムによることがわかりました。こうした発見のエピソードを興味深く聞きました。

・桑山直也先生はサテライトシンポジウムで頸動脈狭窄症への血管内治療の話をされました。動画を使ってのビジュアル的な講演で、とてもインパクトがありました。ステント設置の際に血管を拡張しすぎるとフィルターが機能しないことがあるので注意しなければいけないとか、術者からの生きた話が聞けました。また狭窄部位を解除した後の過還流での出血はしばしば問題になり、CEAだと血圧コントロールである程度防げますが、CASだと血圧コントロールしてもダメなのだそうです。しかし、最近 staged CASという方法が開発され、PTAで (2 mmのバルーンを用いて) 予め少し拡張しておき、2週間~2ヶ月後に CASを行うと予防出来る場合があるのだそうです。

講演が終わってからは、打ち上げがあり、地元の伝統芸能保存会の方が、歌と踊りを披露してくださいました。なぜか、私が指名され、即興で締めの挨拶をさせられましたが、やっぱりこういうのは経験がないと、とっさに良い挨拶は出来ませんね。思い出すと赤面モノです。

最後に、角館にこれだけの名士が集まったのは、ひとえに主催された西野院長の人徳だと思います。この会が素晴らしいのは、分野が全く違った人たちがアットホームな雰囲気の中勉強できることだと思います。神経内科、脳神経外科、リハビリ、基礎医学、様々な分野の専門家が集い、多面的に見ることで、知的な刺激を受けます。医学生や医学部を志望する高校生まで参加していたそうで、若者たちにとっても得がたい経験になったのではないかと思います。このセミナーがこれからも続くことを願います。

(参考)

上肢の機能回復セミナー1

上肢の機能回復セミナー2

上肢の機能回復セミナー3

第3回上肢の機能回復セミナー1

第3回上肢の機能回復セミナー2

第4回上肢の機能回復セミナー

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江戸の病気ランキング

By , 2012年7月19日 7:48 AM

製薬会社のエーザイが作るサイトに、くすりの博物館というのがあります。 

その中に、面白いコラムを見つけました。

江戸の病気ランキング

江戸時代の病気ランキングが、番付表形式で残されています。といっても深刻さは表に出さず、「ひびの判官しミ升」「前頭  眩暈之四郎倉々」「頭痛之助鉢巻」など、思わずクスリと笑ってしまう番付になっています。

神経内科医の目から見て、「頭痛之助鉢巻」で取り上げられている頭痛は片頭痛じゃないかなと思いました。片頭痛はこめかみを抑えると症状が多少和らぐことがあり、一部の患者さんたちは経験的にそうしています。押さえる代わりに鉢巻を巻いて圧迫して症状を和らげるという方法もあり、「頭痛之助鉢巻」はそれを表していたのかもしれません。

「溜飲を下げる」の語源となった「溜飲」もランキングにありました。眺めていると色々と発見のある番付だと思います。

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フランス音楽の夕べ

By , 2012年7月18日 8:25 AM

ジェラール・プーレの演奏を聴いて来ました。ジェラール・プーレは世界的なヴァイオリニストである一方、ヴァイオリンの名教師としても知られています。

日仏会館・日仏音楽協会がおくるフランス音楽の夕べ

2012年7月11日 (水) 午後 7時 日仏会館 1Fホール

櫻木枝里子

ラモー:新クラヴサン組曲より アルマンド、クラント、サラバンド

ラヴェル:夜のガスパール オンディーヌ、絞首台、スカルボ

夜船彩奈

白山智丈: 前奏曲(初演)、幻想曲(再演)

ジェラール・プーレ/金澤希伊子

ラヴェル:フォーレの名による子守唄、ハバネラの形式による小品、ヴァイオリンとピアノのためのソナタ

一曲目の新クラヴサン舞曲は拍感に乏しい演奏で、舞曲としての雰囲気が感じられませんでした。この手の曲では和声に従って音の軽重をつけることがかなり重要になってきますが、軽く演奏すべき箇所に変なアクセントがついていたり、あるいはその逆だったりして、ドタドタした印象を与えました。多分専門外の曲だったのだと思いますが、残念でした。

一方で、二曲目のラヴェルは素晴らしかったです。漂うようなリズムの中、旋律が綺麗に描かれていました。

白山智丈氏が作曲した曲は、普段現代曲を聴かない私でも非常に聴きやすく楽しめました。その一方で、例えば前奏曲では左手バスが鍵盤の 12音すべてを使うようになっていたり、見えない工夫が多く凝らされているようです。白山氏は銀行員だったのに、退社して作曲を志したようで、安定した地位を捨てて音楽に打ち込めるところが凄いなと思いました。夜船さんの演奏も素晴らしかったです。

さて、休憩を挟んで後半はプーレ氏の演奏。フォーレの名による子守唄、ハバネラの形式による小品は素晴らしかったのです。ヴァイオリンとピアノのためのソナタはヴァイオリニストとピアニストの対話があまりなくて若干期待はずれでした。プーレ氏はこのことにかなり苛立たった雰囲気で、「俺の音も聞けよ」的なジェスチャーで、ピアニストの耳元で弾いたり、弓で指揮のような真似をしていましたが、ピアニストは黙々と演奏し、自分のスタイルを崩しませんでした。一方で、アンコールは涙が浮かぶほど美しい曲、美しい演奏でした。曲名を失念したのが残念。

初めて生で演奏を聴いたプーレ氏について、ボウイングが非常に軽やかであること (しかし音は軽薄ではない)、音の繋ぎ目が滑らかであること、ヴィブラートの幅が広く美しいこと・・・といった記憶が強く残りました。彼の音を一言で形容すると、「シルクの肌触りのような音」と表現できると思います。CDをいくつか購入しましたので、聴くのが楽しみです。

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BLOWIN’

By , 2012年7月16日 8:37 AM

川崎病の原因について、非常に面白い論文が、2011年11月に出ました。

Association of Kawasaki disease with tropospheric wind patterns

論文の Figure 4が凄いと思うのですが、日本での中央アジアからの北西の風、あるいはサンディエゴやハワイでの東西風 (pacific zonal wind) の強さと川崎病の発生率が綺麗に相関しているのです。風に乗って何らかの病原体が運ばれてきて、それに対する免疫応答で川崎病を発症するのではないかという推測が成り立ちます。

それに関連して、Nature 2012年4月5日号の News Featureに興味深い記事が掲載されました。

Infectious disease: Blowing in the wind

この記事の本題は病原体が何なのかの犯人探しです。

2011年3月上旬、汚染を防ぐための防護服を装着したスペインのエンジニアが、Barcelonaの Rondoのラボで作られたフィルターを乗せて飛行機で飛び立ちました。飛行機はリアルタイムの風データを用いて進路を取りました。飛行機が戻ってきた時にサンプルはドライアイスに梱包され、コロンビアにある Lipkinのラボに送られました。Lipkinはフィルターに引っかかった DNAを網羅的に解析しました (metagenomics)。

タイミング的にはある意味幸運でした。なぜなら、サンプル回収のため飛行機が飛んだルートは福島を横切っており、もし 1週間遅ければ福島の原発事故があり、風に放射能が紛れてしまっただろうからです。

コロンビアでの解析はゆっくりと進んでいます。高高度の大気中で採取された DNAは極めて微量だからです。まだ論文になっていないため Lipkinは詳細を語りませんが、既に Kawasaki病の原因候補がいくつか見つかってきており、今後は免疫学的検定が行われるのではないかと考えられています。候補 DNAへの抗体を作成し、川崎病患者の血清に加えて、もしコントロールより強く免疫応答が起これば、候補 DNAの信憑性が高くなります。次のステップは、患者からの血液サンプル中に、air filterから見つかったのと同じ DNAを探すことです。

このように川崎病の犯人探しはかなり容疑者が絞られてきているようです。もう少し捜査が進めば犯人が捕まるかもしれません。

記事の最後には、インフルエンザウイルスなど、他にもこのように風で運ばれてくる病原体があるのではないかという台湾の研究者のコメントを載せています。

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カンボジアの奇病

By , 2012年7月15日 10:34 AM

カンボジアの子どもを襲う謎の病気、3か月で60人死亡 WHO

2012年07月04日 16:42 発信地:プノンペン/カンボジア

【7月4日 AFP】世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は3日、カンボジアの子供たちの間で広まっている原因不明の病気により、ここ3か月で60人が死亡したと発表した。

WHOの公衆衛生専門家、ニマ・アスガリ(Nima Asgari)医師によれば、最初の死亡例は4月に報告された。犠牲者は全て7歳以下の幼い子どもだという。

WHOは現在、カンボジア保健省と協力して病原と感染経路の特定に取り組んでいる。

アスガリ氏は、まだ調査が初期段階にあるため詳しい症状の特定は難しいとしつつ、「高熱や、重い胸部の症状に加え、一部の子どもは神経系に異常をきたしている兆候がある」と説明している。

現在までに報告された61例のうち、一命を取り留めた患者は1人しかいないという。発症した子どもたちは首都プノンペン(Phnom Penh)と北西部の観光都市シエムレアプ(Siem Reap)の病院に運び込まれている。

WHOが後にAFPに送ったコメントによれば、この病気が伝染病であると示す兆候はまだ確認されていない。(c)AFP

世界を震撼させたこのニュース、どうやらエンテロウイルス 71による手足口病であると結論付けられたようです。さらにステロイドの安易な使用が事態を悪化させていたとのこと。ステロイドは使い方によっては極めて効果的な薬剤です。副作用も必要以上に怖がる必要はありません。ただ、根拠のない使用は、慎むべきですね。以下は、某先生に教えていただいたニュースです。詳細が明らかになってきて、事態は収束に向かいそうです。

2012年07月13日更新 カンボジアで発生している原因不明の病気の調査結果について(更新3)

 2012年7月12日に公表されたWHOの情報によりますと、カンボジア保健省は、カンボジア国内の小児で発生した原因不明の病気について、調査の結果、大部分は重症の手足口病であったと結論づけました。

WHOと関係機関(カンボジアのパスツール研究所、米国の疾病予防管理センター等)は、2012年4月以降、カンタ・ボパ小児病院(Kantha Bopha Children’s hospital)から、入院した小児の疾患と死亡が異常に増えているとの報告を受け、調査を行っていました。

その調査では、カンタ・ボパ小児病院や他の病院の記録、検査、地域の初動対応チームによる家族調査、国のサーベイランスシステムのデータ評価が行われました。

調査結果

 調査によって、合計78人の患者が特定されました。そのうち、カンタ・ボパ小児病院から報告があった患者は62人で、残りは他の病院から報告があった患者でした。症例定義を満たした61人の患者を中心に調査が行われ、そのうち54人が死亡しました。

適切な検体採取をする前に死亡した患者もおり、すべての患者の検体を検査することはできませんでした。合計31人の患者の検体が採取され、カンボジアのパスツール研究所で、いくつかの病原体の検査が行われました。その結果、大部分の検体で、手足口病を起こすエンテロウイルス71(EV71)が陽性となりました。また、インフルエンザ菌b型や豚連鎖球菌など、他の病原体が陽性になった検体も少数ありました。

調査の結果、患者のほとんどは3歳未満で、慢性疾患や栄養失調の患者が数人いました。患者は14州で発生しており、多くはステロイドを投与されていました。ステロイドの使用によって、EV71の患者の状態が悪化したことがわかりました。

対応

 この事例に対応して、政府はWHOの支援を受けながら、EV71による重症の手足口病患者の主な症状であった神経症状と呼吸器症状のサーベイランスを強化しました。保健センターは、軽症の手足口病患者を報告するよう指示されました。サーベイランスが強化されたので、今後、数か月間は、この病気の重症例が新たに発見されることが予想されます。

また、保健省は関係機関の支援を受けて、軽症及び重症の手足口病患者を管理するためのガイドラインや研修コースの作成に取り組んでいます。さらに、保健省は、手足口病の予防、患者の発見、治療についての注意喚起を行っています。

手足口病とは

 手足口病は、小児でよくみられる感染症です。カンボジアでの発生は新しいことではなく、世界中でみられます。ほぼすべての患者は、治療しなくても、7日から10日で回復し、合併症が起こることはまれです。

手足口病は、家畜に発生する口蹄疫とは別の病気です。手足口病はペットや他の動物から感染することはなく、また、動物に感染することもありません。

手足口病はエンテロウイルスによって起こる病気です。主に、コクサッキーウイルスによって起こり、軽症で自然に治ります。また、EV71によって起こることもあり、この場合には重症な合併症がみられることもあり、死亡することもあります。

手足口病の初期症状

 手足口病は、通常、発熱、食欲低下、だるさ、のどの痛みで発症します。赤い斑点の発疹が1日から2日で広がり、手のひらや手、足のうらに水ぶくれができます。発疹は、お尻や陰部にできることもあります。

重症の手足口病の症状

 少ないですが、手足口病が小児で重症になることがあります。重症の場合には、息切れ、眠気、手足に力が入らない、けいれんなどの症状がみられます。小児でこのような症状がみられた場合には、すぐに医療機関を受診することがすすめられます。

手足口病の治療

 手足口病には、特別な治療法はありません。患者には、十分な水分補給が必要です。発熱や皮膚のただれによる痛みを抑えるための治療が行われます。

手足口病の予防

 一般的な衛生習慣を守ることで予防できます。特に、水ぶくれやただれた部分に触った後、調理の前、食事の前、小児に食事や母乳を与える前、トイレの後、小児のからだを洗った後に、石けんと水でよく手を洗うことが重要です。

★感染症情報手足口病

渡航する方は十分注意してください。

 海外滞在中や帰国後に、気がかりな症状が出た場合には、すぐに医療機関を受診し、渡航した地域や滞在中の行動などについて医師に詳しく伝えてください。また、帰国の際に熱や心配な症状がある方は検疫所の担当者にご相談ください。

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歌を忘れてカナリヤが

By , 2012年7月10日 6:59 AM

歌を忘れてカナリヤが (原口隆一・麗子著、文芸社)」を読み終えました。

著者の原口隆一氏は武蔵野音大の教員であり、声楽家としても活動を続けていました。ところが、 1993年 9月 24日に脳梗塞を発症しました。後遺症として失語症が強く残り、著者は地道にリハビリを続けました。実際の彼のノートの一部が印刷されているのですが、「お父さん=男→父→パパ」と書いてあります。さらにルビまで振ってあるのです。このレベルの単語が失われてからのリハビリだったので、大変な努力が必要だったのではないかと思います。

しかし、彼は歌手としての復帰を目指し、2000年にその夢を叶えました。その努力の奇跡が本に描かれています。

私は神経内科医として脳梗塞の患者さんを多く見ていますが、患者さんの思いというものが伝わってきて、非常に感動しました。

同じように脳梗塞の後遺症で苦しんでいる方、リハビリ関係の方、脳卒中診療に関わる方などに読んで欲しいと思いました。また、音楽家が内面を綴った文章ですので、音楽関係の方にも興味を持っていただけるのではないかと思います。

 

「唄を忘れたカナリヤ」(西條八十「砂金」より)

唄を忘れた金糸雀(かなりや)は
後の山に棄てましよか
いえいえ それはなりませぬ

唄を忘れた金糸雀は
背戸の小藪に埋(い)けましょか
いえいえ それはなりませぬ

唄を忘れた金糸雀は
柳の鞭でぶちましよか
いえいえ それはかわいそう

唄を忘れた金糸雀は
象牙(ぞうげ)の船に銀の櫂(かい)
月夜の海に浮べれば
忘れた唄をおもいだす

(参考)

第35回日本神経心理学会総会

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スロヴァキア・フィルハーモニー

By , 2012年7月8日 4:30 PM

妹から招待券をもらい、コンサートを聴きに行って来ました。

スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団 2012年日本公演

2012年 6月 28日 「Cプログラム」

スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op. 104

ドヴォルザーク:交響曲第 8番 ト長調「自然交響曲」 Op. 88

指揮:レオシュ・スワロフスキー

チェロ:ガブリエル・リプキン

6月19日~7月2日にかけてスロヴァキア・フィルのツアーが行われ、6月27, 28日がサントリーホールでの公演でした。頂いたチケットは 6月28日のもの。6月27日は指揮が三ツ橋敬子だったらしいのですが、行った方から「言いたいことを全部詰め込みすぎるから、逆に聴きにくかった」との感想を聞きました。

さて当日、一曲目、パート間に少し隙間があるように感じました。ただ、我々が座っていた席が、前から 2列目の右側ということで、聴いた場所が悪かったせいかもしれません。

二曲目は初めて聴くリプキンの演奏。テクニックが素晴らしかったです。ただ、オーケストラの迫力と比べて、響き、音量に少し乏しい気がしました。ガット弦を使用しているためか、我々の席の位置の問題だったのかはよくわかりませんでしたが。

三曲目の「ドヴォ8」は、思い出の曲です。今から 20年以上前の話ですが、ゴールドブレンド・コンサートで、石丸寛氏が津山市民オーケストラを指揮した時、私と妹がヴァイオリン、父がクラリネットで参加したからです。

スロヴァキア・フィルの「ドヴォ8」は、いわゆる「東欧の音」そのものした。そして、コンサートマスター (Jarolim RUZICKA) のソロパートも素敵でした。第 3, 4楽章で弦楽器と管楽器のテンポが噛み合わない瞬間が少しあったけれど、一曲を通して大満足でした。スワロフスキー、素晴らしい指揮者ですね。

アンコールはスラブ舞曲第 15番と第 1番。

 

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