論文不正に関わるあれこれ
論文というのは、研究者にとって最大の評価対象です。ポストや生活がかかっているだけに、捏造など不正を試みる研究者も、わずかですが存在します。
最近、海外で斬新な手口での論文不正が立て続けに明らかになりました。
まずは中国から・・・。
「史上最強のねつ造教授」、同姓同名の著名学者の論文を勝手に自分の経歴に―中国
2012年7月28日、中国・北京化工大学の陸駿(ルー・ジュン)教授が同姓同名の学者が書いた複数の論文をすべて自分のものと偽り、経歴をねつ造していたことが発覚した。京華時報が伝えた。
論文盗作や経歴詐称の摘発で有名な方舟子(ファンジョウズ)氏が告発した。発覚のきっかけは陸教授の「助手募集広告」。そこに書かれていた経歴と代表的な7本の論文に矛盾が存在することをネットユーザーが発見した。例えば、そのうちの1本はイェール大学の「ルー・ジュン博士」が書いたものと全く同じだったが、ルー博士はボストン大学卒であるのに対し、陸教授はトロント大学卒。2人の写真を照合しても、似ても似つかない別人だった。
7本の論文はいずれも欧米の一流学術誌に発表されている。方舟子氏によると、「これほどの論文が書けるなら、世界トップクラスの大学で教授になれる」というほど輝かしいもの。だが、実は「ルー・ジュン」という同姓同名の3人の学者の論文を寄せ集め、すべて自分のものと称して経歴に載せていただけだったようだ。
告発後、北京化工大学のウェブサイト上の陸教授に関する経歴がすべて削除されていることから、方舟氏は「学歴も含め、経歴はすべてウソだったのでは」との見方を示している。ネット上では陸教授の新たな詐称手口に「史上最強のねつ造教授」と非難ごうごう。方舟子氏も「同姓同名の学者に目を付けるとは。よく考えたものだ。思わず感心してしまう」と話している。
騒ぎを受け、同大では陸教授の経歴ねつ造疑惑に対する調査を開始した、と声明を発表。ねつ造が事実であれば、厳しい処分を下すとしている。中国ではアモイ大学医学院教授の学歴詐称が発覚し、物議を醸したばかり。(翻訳・編集/NN)
データの使い回しや多重投稿といった手口での論文不正は時々見ますが、想像の斜め上を行く手口ですね。
次は韓国から。
韓国人研究者(Hyung-In Moon)がE-mailアドレスを偽り、自分の研究を自分で査読(レビュー、審査)できるようにしたという前代未聞の研究不正により、3報の論文が撤回される。retractionwatch.wordpress.com/2012/08/24/kor…
— 論文捏造&研究不正さん (@JuuichiJigen) 8月 24, 2012
これも思いもつかない手口です。 “Acknowledgments: I thank Google for free e-mail address to pretend I am someone else.” という一文が論文に記載してあったとかなかったとか・・・ 。冗談です (^^;
一方、日本でもいくつも論文不正が疑われる事例があり、それを扱ったブログが存在します。
同じ管理者の関連ブログ、「東京大学 分子細胞生物学研究所 の論文捏造・改ざん・不正疑惑」でやり玉に上げられた東大分生研の加藤教授について、Twitter経由で近況が伝わって来ました。
南相馬市立総合病院のJAMAの論文作成に大きく貢献したのは加藤茂明先生です。元東大分生研教授。今春、部下の論文捏造の責任をとり辞職。その後、父上の出身地である相馬に移り住み、除染活動・地域の子どもたちへの教育、そして坪倉や石井武彰医師の論文作成を指導しています。感謝しています。
— 上 昌広さん (@KamiMasahiro) 8月 15, 2012
一般に、研究分野でネガティブ・イメージがつくと研究者生命は絶たれますが、これだけの人物をそのまま埋もれさせるのはもったいないと思っていました。加藤先生がこういう形で被災地で尽力されていると知り、ちょっと安心しました。
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