動画による不随意運動検討会 2013
3月7日に、「動画による不随意運動検討会 2013」に行ってきました。特別講演の演者は京都大学医学部名誉教授の柴崎浩先生でした。
動画による症例提示をしながら、4つの核となるポイントをわかりやすく教えてくださり、非常に勉強になりました。以下、簡単にポイントを記しておきます。
①複数の不随意運動の特徴を兼ね備た症例もあるので、必ずしも既成の概念に当てはめて分類する必要はない
・見たまま記載するのが大事。同じ不随意運動を見せてどの用語を当てはめるか、専門家でも意見が分かれることは珍しくなかった。
・ほとんどの不随意運動は 100年以上前に詳細な観察に基いて記載されている。分類は必ずしも電気生理学的機序に基づかなくてもよいのかもしれない。
・不随意運動は触るのが大事。筋の動きが良く分かる。
・不随意運動分類のアルゴリズム
Case.1 BAFME (良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん): 律動性ミオクローヌス
Case.2 CBD (皮質基底核変性症): 律動性ミオクローヌス
Case.3 書痙:ジストニー、ミオクローヌス、振戦・・・複雑に混ざっている
Case.4 CJD (クロイツフェルト・ヤコブ病):捻れた姿勢 (ジストニー) に周期性の運動 (ミオクローヌス) が乗っかる→ジストニー+ミオクローヌス or ジストニー性ミオクローヌス (PSDと筋放電は 1:1ではない)
Case.5 SSPE:周期性ジストニー (PSDと筋放電は 1:1である)
Case.6 軟口蓋振戦:軟口蓋ミオクローヌスは軟口蓋振戦という用語が用いられるようになったが、この症例のように同期して口唇のミオクローヌスが見られる症例も見られる。
Case.7 Diaphragmatic flutter (respiratory myoclonus):レーウェンフックが罹患していた。myorythmiaとも呼ばれる
Case.8 低酸素脳症:ミオクローヌス、刺激過敏性があり反射で誘発される。表面筋電図では、胸鎖乳突筋 (延髄支配) の直後に眼輪筋 (橋支配)、上腕二頭筋 (頚髄支配) が収縮し、延髄由来だとわかった。
Case.9 Painful leg moving toe
Case.10 Myoclonus-dystonia syndrome (DYT11 mutation):ジストニーにミオクローヌスが独立して乗っかる。皮質性ミオクローヌスは遠位筋に出やすいが、Myoclonus-dystonia syndromeでは近位筋に出やすい (皮質由来ではない)
Case.11 本態性振戦:一見、静止時+姿勢時に振戦がみられる。近位筋が姿勢性に収縮しているので、静止時に手が震えているように見える (静止時振戦と間違いやすい)。動作時にはない。
②内科疾患の部分症候としてあらわれることがある
Case.12 Wilson病:仰臥位で上肢を挙上して、下肢を屈曲しないと出現しない不随意運動。そういう姿勢をとらせるのが大事。
Case.13 肝性脳症:アステリクシス。腎不全でも出現する。手に出てもあまり困らないが、下肢や体幹に出ると転倒の原因になる。
Case.14 リウマチ熱に伴う舞踏病:一定の筋肉に繰り返すより migrationがみられる。癖のようにも見える。マネが出来る。
③しばしば薬剤によって誘発される
・L-Dopa→ジスキネジー、抗精神病薬→ジストニー、が有名
Case.15 アマンタジン投与中にみられたアステリクシス
Case.16 ガバペンチン投与中にみられたアステリクシス
Case.17 シスプラチン投与中にみられたアステリクシス
④心因性の不随意運動がまれではない
・心因性不随意運動の特徴
1. 一般的に知られている不随意運動では説明しにくい
2. 正常、パターン、分布が変動しやすい
3. 注意を他の課題に向けることによって軽減するか消失する
4. 振戦の場合、他方の手で一定周波数の随意運動を反復させると振戦の律動がその律動に置き換わる (entrainment)
5. 本人の性格や環境に心因性要素が存在する
Case.18 シャルコーの有名な講義写真:閉眼で後屈→心因性に多い
Case.19 下顎・口唇が右に偏奇
Case.20 Orthostatic myoclonus: 観察していないときの態度が決め手になって診断できた
Case.21 心因性ジスキネジー:対側の手でリズムを取ると改善
Case.22 心因性振戦:中学3年生の受験生。下肢の振戦。臥位になると変動し、膝を左右に動かす。座位で足を浮かせると上下に動かす。足の運動の周波数が手の運動の周波数に置き換わる。
Case.23 spinal myoclonus?: C4-5に限局。s-EMGでは自分で肩を挙上させると周波数が早くなる。肩を叩いて誘発すると、700 msの不応期が観察された。最終的に心因性と診断。
Case.24 propriospinal myoclonus: paraspinalの筋が収縮することで、腹部の筋が動く→心因性ではない
Case.25 reflex propriospinal myoclonus (心因性):腹部の前屈には心因性が多い。propriospinal myoclonusでは diffusion tensor tractographyで神経線維の乱れが見えたとする報告がある。
Case.26 mimicking-propriospinal myoclonus:練習したら propriospinal myoclonusの動きはマネできる→心因性多いのでは?
Case.27 Abdominal tic
Case.28 fixed dystonia
[Q&A]
Q: dystonia, tremorの違いは、拮抗運動の有無ではないのか?持続時間で説明して良いのか?
A: 表面筋電図で、振戦は backgroundがない、ミオクローヌスは backgroundがある。ただし早いと鑑別が難しいことが多い。振戦は必ずしも reciprocalではなく、同時に出ることもある。右手は reciprocal、左は同時ということもある。