アンダンテ

By , 2013年4月5日 7:49 AM

医療ニュースを色々見ていたら、Parkinson病治療薬である MAO-B阻害薬 rasagilineの臨床試験の結果がニュースになっていました。日本国内で使用出来る MAO-B阻害薬としては selegirineがありますが、rasagilineは海外でしか販売されていません。面白かったのが臨床試験の名前。なんと、ANDANTE (Add oN to Dopamine AgoNists in the TrEatment of Parkinson’s disease) というらしいのです。音楽好きとして、食いついたのはその一点。アンダンテは「歩く速さで」という意味の音楽記号です。

これまで、L-Dopaに上乗せして rasagilineの有効性を評価した臨床試験はあったようなのですが、ドパミンアゴニストへの上乗せは初めての試験だったようです。試験内容をごく簡単に説明すると、ドパミンアゴニスト単剤での治療で効果不十分の早期パーキンソン病患者に、rasagiline ないしはプラセボを上乗せしました。18週間後、rasagiline投与群では、プラセボ群に対して有意に UPDRS (Unified Parkinson’s Disease Rating Scale) Parts I~IIIの改善を認めました。プラセボと比べて有害事象の有意な差はありませんでした。

New Data Show Azilect® (rasagiline tablets) Provided Clinical Benefit in Patients with Early Parkinson’s When Added to Sub-Optimally Controlled Patients on Dopamine Agonist Therapy

Results Add to Evidence for Azilect as an Effective and Well-Tolerated Treatment Option at Different Stages of the Progression of Parkinson’s Disease (PD)

JERUSALEM–(BUSINESS WIRE)–Teva Pharmaceutical Industries Ltd. (NYSE: TEVA) and H. Lundbeck A/S announced today that a double-blind, placebo controlled, randomized, multicenter study of Azilect® (rasagiline tablets) met its primary endpoint. The study, known as ANDANTE (Add oN to Dopamine AgoNists in the TrEatment of Parkinson’s disease), assessed the efficacy and tolerability of Azilect as add-on treatment to dopamine agonists compared to placebo. While the efficacy of Azilect as adjunct to levodopa has been established in previous studies (leading to its indication as adjunct therapy to levodopa), its efficacy in combination with dopamine agonist monotherapy has not previously been studied.

Results from the study demonstrated that the addition of Azilect 1mg/day provided a statistically significant improvement (Primary endpoint: treatment effect ± SE -2.4 ± 0.95 [95% CI -4.3,-0.5, p=0.012]) in total Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (UPDRS) score (Parts I, II and III, version three) from baseline to week 18 in patients sub-optimally controlled with dopamine agonist monotherapy compared to placebo. Azilect was well-tolerated with no significant difference in adverse events compared to placebo.

(略)

STUDY DETAILS

ANDANTE was an 18-week, double-blind, placebo controlled, randomized, multi-center study assessing the safety and clinical benefit of rasagiline compared to placebo as add-on therapy to stable dose of dopamine agonists (DAs) in the treatment of early PD.

In addition to the above stated primary endpoint results, data from the secondary endpoint analysis showed the addition of Azilect® resulted in a statistically significant improvement in the UPDRS motor examination subscale (Part III) (p=0.007). There were no significant differences between groups for the UPDRS activities of daily living (ADL) (p=0.301) or CGI-I scores. Azilect was well-tolerated in the study.

ANDANTE was conducted at 50 research sites in the United States. A total of 328 patients on sub-optimal DA monotherapy randomized into the study to add-on treatment with Azilect (N=163) or placebo (N=165). Volunteers returned to the clinic at nine weeks for an interim visit and again at 18 weeks, for an end of study visit.

To be enrolled patients needed to be on a stable DA monotherapy for ≥ 30 days. Patients included could not receive an optimal therapeutic dose of DAs due to intolerable side effects or were no longer experiencing sufficient control of their PD symptoms and required an additional therapeutic agent. Rescue treatment with levodopa was allowed once the patient had started treatment with study drug and had completed four weeks of treatment. DA therapy could not be adjusted during the study.

The side effect profile of Azilect as add-on to DA therapy was evaluated for changes in nature and frequency of dopaminergic adverse events.

ABOUT AZILECT® (UNITED STATES)

AZILECT® (rasagiline tablets) is indicated for the treatment of the signs and symptoms of Parkinson’s disease (PD) both as initial therapy alone and to be added to levodopa later in the disease.

Patients should not take AZILECT® if they are taking meperidine, tramadol, methadone, propoxyphene, dextromethorphan, St. John’s wort, cyclobenzaprine, or other monoamine oxidase inhibitors (MAOIs), as it could result in a serious reaction. Patients should inform their physician if they are taking, or planning to take, any prescription or over-the-counter drugs, especially antidepressants and ciprofloxacin. Patients with moderate to severe liver disease should not take AZILECT®. Patients should not exceed a dose of 1 mg per day of AZILECT® in order to prevent a possibly dangerous increase in blood pressure.

Side effects seen with AZILECT® alone are flu syndrome, joint pain, depression, and indigestion; and when taken with levodopa are uncontrolled movements (dyskinesia), accidental injury, weight loss, low blood pressure when standing, vomiting, anorexia, joint pain, abdominal pain, nausea, constipation, dry mouth, rash, abnormal dreams, and fall.

See additional important information at http://www.azilect.com/Resources/PDFs/PrescribingInformation-pdf.aspx. For hardcopy releases, please see enclosed full prescribing information.

(略)

rasagilineは使ったことのない薬剤 (日本では保険適応外) なので特にコメントはありませんが、自分が臨床試験を組むことがあるとしたら、このように略語が音楽用語になるようにしてみたいものだと思いました。

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床上手

By , 2013年4月4日 7:50 AM

2013年4月から半年間、医局のベッド係になりました。病棟を持たず、外来と、ベッドコントロール専従です。大きな組織ならではの仕事です。

週一回、医局員全員に患者氏名の入ったベッド表を配布しているのですが、個人情報保護の観点から、持ち主がわかるように医局員の名前が入った判子をそれぞれ押していました。なんと数十人分の判子を押すのがベッド係の仕事の一つ。前任者が「医師の仕事に非ず」として、医局秘書の仕事にしました。しかし、その話を聞いた時、仕事を押し付けた感があって、何とかしたいと思っていました。

そこで、ベッド表をプリントするときに、自動で各医局員の名前が印刷されるようにプログラムを書くことにしました。医局員の名前を変数にして、セルに埋め込めれば良いわけです。知り合いに相談したら、エクセルでマクロ+ Visual Basicが良いのではないかとのことでした。さっそく Visual Basicをダウンロードし、インストール。

まず、エクセルでベッド表を立ち上げ、「マクロの記録」をクリックし、そのままプリント動作を行い、マクロの記録を終了します。そして “Macro1” という名前でマクロを登録します。マクロの編集を行うようにすると、Visual Basicのプログラミング画面が立ち上がります。

プログラムは下記 (先ほどの “マクロの記録” で出来たプログラムに上書きすれば大丈夫)。

Sub Macro1()

Dim LastRow As Long
Dim i As Long
Dim myNo As String

With Worksheets(“printmember”)

LastRow = .Cells(Application.Rows.Count, “A”).End(xlUp).Row

For i = 2 To LastRow

myNo = .Range(“A” & i).Value


With Worksheets(“print”)

.Range(“O3”).Value = myNo
.PrintOut Copies:=1, Collate:=True

End With

Next i

End With

End Sub

 

エクセル側でやることは次のとおりです。

①「名前をつけて保存」を選択、必要なデータを「マクロ有効ブック (*.xlsm)」形式で保存。

②基本設定で「開発タブ」をリボンに追加。「挿入」→「ボタン」で、必要な位置にボタンを設置。ボタンを押すと「Macro1」が実行されるように設定。ボタンには「医局員配布用プリント」と記しておく。

③医局員の名前を「printmember」というシートのセルA列に列挙 (A1にはタイトルを入れて、データは A2以下)。もし B列にしたいときは、上記プログラムの “A” を “B” に変更。

④配布用資料を「print」というシートに保存。医局員名簿がセル “O3” に印刷されるようにレイアウトを調整する。プログラムの “O3” を書き換えれば、別のセルに表示させることも可能。

⑤実行のため、必要に応じてセキュリティレベルを変更。

勉強したサイトでは、変数が数字になっていたのでプログラム 4行目「As String」が「As Long」になっていました。それを真似したためプログラムが動かず 1時間近く試行錯誤しました。しかし、デバックしたときに ”実行時エラー13” と表示されて,セルからデータがきちんと読み込めていないことがわかり,「セルの内容が文字列だから As Longでは読み込めないのだ」と判明してからは一瞬で解決でした.今回は医局員の名前が変数なので “As String” ですが、数字にしたいときはそれを “As Long” に書き換えればよいということです。

プログラムは、大学 2年生のときに HTMLを覚えて以来でしたが、数行の簡単なプログラムでも、動いた時の感動はたまらないですね。やみつきになりそうです。

それとともに、普段から、こんな難解な言語を書いているプログラマの皆様を尊敬します。

(参考)

定型の用紙に名簿から番号などを読み込み印刷するマクロ

 

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津山洋学

By , 2013年4月2日 8:16 AM

2013年3月24日、岡山県津山市にある津山洋学資料館に行ってきました。これまで実家に帰省した際に何度か訪れたのですが、正月だったり、リニューアル中だったりして、中を見ることができなかったので、やっと念願がかないました。

津山洋学資料館

展示品が結構充実していて、それを解説する動画も上映されていました。さらに、館内の図書館には洋学の資料が豊富にあるので、時間があれば読書も楽しめます。入館料は 300円でした。受付に津山洋学についての本がたくさん売っており、「素晴らしき津山洋学の足跡 2004」「きらめく洋学の星々」「津山洋学資料館常設展示図録 資料が語る津山の洋学」の 3冊を買って帰りました。津山洋学は日本の洋学に多大な貢献をしていますが、その中で特に有名なのはこれらの方々です。

宇田川玄随

津山藩江戸屋敷の漢方医の息子。元々は洋学嫌いだったが、桂川甫周らと交わるうちに蘭学に転じた。日本で最初の西洋内科学書である「(西説) 内科撰要」を翻訳、自費出版。ちなみに半分まで出版した所で死去し、残りは宇田川家を継いだ安岡玄真、すなわち宇田川玄真が完成した。

宇田川玄真 (安岡玄真)

宇田川玄随および桂川甫周門下。杉田玄白とも交わる。杉田玄白の娘と結婚する流れであったが、女遊びを始め、杉田家を追い出された。稲村三伯が日本で最初となる蘭日辞書「ハルマ和解」を編纂するのを手伝う。また「医範提綱」を著し、「腺」や「膵」という字を作る。その他、解体新書に「厚腸」「薄腸」とされていたのを「大腸」「小腸」に改めた。教育者として宇田川榕菴や、坪井信道、箕作阮甫、緒方洪庵らを育てた。江沢養樹の長男榕を養子に貰い受ける (のちの宇田川榕菴)。

宇田川榕菴 (江沢榕)

植物学を修め、「植物啓原」や「菩多尼訶経」を刊行。「葯」「柱頭」「花柱」といった語を作った。またラヴォアジェの学説を紹介したイギリス人の著書の蘭語版を「舎密開宗」として出版。「酸素」「窒素」「炭素」「水素」「酸化」「還元」などの語を作った。「細胞」という日本語も宇田川榕菴による。コーヒーについての書を残したり、音楽理論の研究をしたりもしている。

箕作阮甫

24歳で藩主の侍医となり、翌年藩主の供をして江戸に出て、宇田川玄真に学び、江戸で開業するも大火ですべてを失った。余談だが、彼には更に喘息の持病があったとのこと。58歳で蕃書調所の教授となった。蕃書調所はその後洋書調所・開成所、開成学校・大学南校と名を変えて、最終的に東京大学となる。そのため、彼は日本人初の大学教授とされる。著書ないしは訳書として「外科必読」「医療正始 (伊東玄朴の名で出版)」といった医学書、「泰西名医彙講」という医学専門雑誌、科学技術書である「水蒸気船説略」、「海上砲術書」、世界地理書である「海国図志」など多数。蕃薯和解御用として、宇田川興斎と共に、ペリーが持ってきたアメリカの国書を翻訳する他、外交問題に尽くす。天然痘が流行していたため、請願して神田お玉ヶ池の種痘所が出来るきっかけを作った (請願者の筆頭が箕作阮甫)。娘の「せき」は呉黄石の元に嫁ぎ、その末子である呉秀三は我が国の精神医学の創始者となった。

これ以外にも多くの優秀な学者達を輩出しています。「素晴らしき津山洋学の足跡」に系譜が載っていますので、下に示します。興味を持った方は是非津山に博物館を訪ねてみてください。ちなみに、2 kmくらい離れたところに B’z稲葉さんの実家があり、B’zグッズがたくさんあるそうです。

美作洋学者系譜・学統図

美作洋学者系譜・学統図

箕作家系譜

箕作家系譜

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未分化

By , 2013年4月1日 9:48 PM

ハカセといふ生物という漫画について、以前お伝えしました

同じ作者が素晴らしい漫画を描いています。

神経科学に興味を持つ者として、これはツボです。

未分化

 

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