Fahr病の遺伝子
Fahr病の特徴的な CT画像は、一度見ると忘れません。研修医の頃見たときは結構衝撃的でした。Movement disorders誌をパラパラ眺めていたら (とは言っても online siteですが)、 2014年1月3日付で Fahr病の新規遺伝子 PDGF-Bが HOT TOPICSとして紹介されていました。
A New Gene for Fahr’s Syndrome – PDGF-B
Fahr病 (Familial idiopathic basal ganglia calcification; IBGC) は、1850年に Delacourが最初に報告し、1930年が Fahrが病理学的に基底核を中心とした脳石灰化を記載しました。14q11.2 (IBGC1), 2q37 (IBGC2), 8p21.1-q11.13 (IBGC3), 5q32 (IBGC4) に遺伝子座が報告されています。
2013年1月、exome sequencingを用いて、IBGC4に platelet-derived growth factor receptor β (PDGF-Rβ) をコードする PDGFRB遺伝子が報告されました。さらに同年8月、PDGF-Bをコードする Pdgfb遺伝子 (22q13.1) のナンセンス及びミスセンス変異が報告され、 Pdgfbの低機能対立遺伝子を持つマウスで、脳石灰化が確認されました。面白いことに、PDGF-Bは PDGFRβの主要 ligandであるとのことです。
2013年2月に報告されたのが IBGC3の SLC20A2遺伝子です。家族性 IBGCの 41%に SLC20A2変異があるそうです。
気になるメカニズムですが、内皮の PDGF-B欠乏は周皮細胞と血液脳関門の異常を引き起こすとされています。また、SLC20A2はナトリウム依存性リン輸送体ファミリーであり、無機リン酸塩の局所的な凝集がリン酸カルシウム沈着の原因となるようです。両者のメカニズムは違っても、石灰化のパターンに違いはなさそうだということです。
私が研修医時代には原因不明であった疾患も、徐々に分子メカニズムが解明されてきていることを初めて知り、新鮮でした。