2月4日から咽頭痛・発熱があり、数日間 40℃前後の発熱が持続していました (max 40.2℃)。どうせインフルエンザだろうし、数日寝ていれば治るだろうと思って、勤務先に連絡し、しばらく外来と当直が出来ない旨を伝えて、自宅療養していました。経過中、麻黄湯を使ったのですが、使い方を間違えて死にそうな思いをしたのは御愛嬌 (あれは炎症をドライブさせて短期決着させるらしいのですが、体力を消耗しきってから使うのは禁忌です・・・)。食事は、コンビニの麺類を total 2食とれたのみで、あとはひたすら飲み物かゼリーでつないでました。途中、筋痛・関節痛、左耳痛があったものの、自制内でした。
2月8日くらいから、少しずつ熱が下がり始めてましたが、2月9日夜に再び 39.6℃の発熱があって、あまりに治りが悪いので 2月10日に所属先の大学病院を受診しました。迅速検査でインフルエンザウイルス、溶連菌は陰性でしたが、CRP 8程度の炎症反応上昇がありました。また、脱水による軽度の腎障害がありました。私がぐったりしていたためか、外来担当医 (先輩) から「こんなので帰ってもしょうがないから、入院しな。ベッドも空いているし」と言われて、入院しました。入院した日が治りはじめの日だったらしく、その日は 38℃くらい、翌日は解熱し、2月12日退院しました。
2月13日から仕事に復帰します。1週間臥床生活が続いたので体力が落ちていると思いますが、徐々に戻していきます。
Fahr病の特徴的な CT画像は、一度見ると忘れません。研修医の頃見たときは結構衝撃的でした。Movement disorders誌をパラパラ眺めていたら (とは言っても online siteですが)、 2014年1月3日付で Fahr病の新規遺伝子 PDGF-Bが HOT TOPICSとして紹介されていました。
Fahr病 (Familial idiopathic basal ganglia calcification; IBGC) は、1850年に Delacourが最初に報告し、1930年が Fahrが病理学的に基底核を中心とした脳石灰化を記載しました。14q11.2 (IBGC1), 2q37 (IBGC2), 8p21.1-q11.13 (IBGC3), 5q32 (IBGC4) に遺伝子座が報告されています。
2013年1月、exome sequencingを用いて、IBGC4に platelet-derived growth factor receptor β (PDGF-Rβ) をコードする PDGFRB遺伝子が報告されました。さらに同年8月、PDGF-Bをコードする Pdgfb遺伝子 (22q13.1) のナンセンス及びミスセンス変異が報告され、 Pdgfbの低機能対立遺伝子を持つマウスで、脳石灰化が確認されました。面白いことに、PDGF-Bは PDGFRβの主要 ligandであるとのことです。
2013年2月に報告されたのが IBGC3の SLC20A2遺伝子です。家族性 IBGCの 41%に SLC20A2変異があるそうです。
気になるメカニズムですが、内皮の PDGF-B欠乏は周皮細胞と血液脳関門の異常を引き起こすとされています。また、SLC20A2はナトリウム依存性リン輸送体ファミリーであり、無機リン酸塩の局所的な凝集がリン酸カルシウム沈着の原因となるようです。両者のメカニズムは違っても、石灰化のパターンに違いはなさそうだということです。
私が研修医時代には原因不明であった疾患も、徐々に分子メカニズムが解明されてきていることを初めて知り、新鮮でした。
2014年1月21日の European Journal of Neurology誌に、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) に対する olesoxime の phaes II-III試験の結果が発表されました。リルゾールに olesoximeもしくはプラセボを上乗せしたものですが、18ヶ月の観察期間で有効性を示せませんでした。olesoximeは神経保護作用が期待される薬剤だったようですが、う~ん残念。これまでのような方法論では難しいのでしょうね。
2014年1月29日のこと・・・。ふと「神経疾患についての iPS細胞の研究の現状を調べてみようかな」と思い、「まずは山中先生の研究からだろう」と考えて、2006年の Cell論文を読み始めました (実はまだ読んでなかった (^_^;))。
門外漢にとっては難解過ぎたので、”iPS細胞って何?” というブログ記事と照らし合わせながら読みました。如何にして 24因子から 4因子に絞り込んでいったかという話が、面白かったです。読んでいてワクワクする論文でした。
そして、翌1月30日。STAP (stimulus-triggered acquisition of pluripotency) の Nature論文が大きなニュースになっていて驚きました。
こちらも難解だったので、”体細胞の多能性への刺激惹起性運命変換” というブログ記事を参考にしました。弱酸性, 37℃, 30分だけが話題になっていますが、生後 1ヶ月のマウス細胞、DMEM/F12培地による数日間の浮遊培養という前処理という点には注意ですね。我々が弱酸性の石鹸で体を洗おうが、弱酸性の温泉に入ろうが、細胞の多能性が誘導されるわけではありません。
ハーバード大でサルで実験中との報告もありますので、論文の内容の信憑性は高いでしょう (※再現性のとれない科学研究も多々あるので注意が必要)。
【ワシントン=中島達雄】細胞に強い刺激を与えただけで作製できる新たな万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の開発に理化学研究所と共にかかわった米ハーバード大の研究チームが、脊髄損傷で下半身が不自由になったサルを治療する実験を進めていることを30日明らかにした。
研究チームの同大医学部・小島宏司医師によると、脊髄損傷で足や尾が動かなくなったサルの細胞を採取し、STAP細胞を作製、これをサルの背中に移植したところ、サルが足や尾を動かせるようになったという。
現在、データを整理して学術論文にまとめている段階だという。研究チームは、人間の赤ちゃんの皮膚からSTAP細胞を作る実験にも着手。得られた細胞の能力はまだ確認中だが、形や色はマウスから得たSTAP細胞によく似ているという。
(2014年1月30日14時37分 読売新聞)
すでに特許も出願中のようです。この点は抜かりありません。
「STAP細胞」の作製に成功した理化学研究所などが国際特許をすでに出願していることが30日、わかった。
今後、再生医療への応用などを目指した国際的な知財競争が激化することが予想され、今回の特許がどのような形で認定されるかが注目される。
国際特許は、理研と東京女子医科大、米ハーバード大の関連病院であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院の3施設が合同で米当局に出願。2012年4月から手続きを始め、昨年4月に出願した。発明者には、小保方晴子・理研ユニットリーダー(30)ら7人が名前を連ねている。
出願内容は「ストレスを与えることで、多能性細胞を作製する手法」。iPS細胞(人工多能性幹細胞)のように、外部から遺伝子を導入したり、たんぱく質などを加えたりしなくても、皮膚のような体細胞が、多能性細胞に変化することを示した。ただ、最終的に特許当局にどこまで権利範囲が認められるかは分からない。
(2014年1月30日16時02分 読売新聞)
しかし困ったことに、報道が過熱し、小保方氏は細胞リプログラミングユニットのサイトで、”報道関係者の皆様へのお願い” を出すことになりました。論文が出た瞬間、世界中の研究者が追試をして、競争が激化します。小保方氏を追い回して足を引っ張るのではなく、研究に専念させてあげるのが重要だと思います。研究者にとって最も大事なのは、”研究資金” と “研究のための時間” です。
最後に、みぐのすけと知人医師達のゲスなやりとり (完全にネタです)。
みぐのすけ:膣の中って、37℃、酸性でしょ?STAP細胞できるんじゃね?
A医師:何言ってるんですか、STAPどころか一切の培養操作なしで人体丸ごと発生しますよ。
みぐのすけ:すげー、natureに報告しようかな!
A医師:何言ってるんですか、報告も何もnatureの摂理ですよ。
B医師:ねーちゃんと報告してください。親に。
お後がよろしいようで・・・。
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(参考)