迷走
「不適切な CM」というタイトルで、抗インフルエンザ薬について以前書きました。医学的な知識の少ない一般人相手に薬の宣伝をして、必要性に乏しい治療を促しかねないことが問題になりました。
同じ会社が、今度はマスコミ向けに、行ったセミナーが話題になっています。
最も強い薬剤を短期投与‐抗菌薬適正使用でセミナー
竹安氏は、日本では少ないカルバペネム耐性菌が米国や世界で問題になっている原因について、「日本は、最も抗菌力の強いカルバペネム抗菌薬を最初に短期間用いてきたが、米国や中国等では他の薬剤を先に使って同剤を最後に取っておく投与法を採用してきたことにある」と分析。抗菌薬療法のグローバルスタンダードは、「各病院ごとに出現する分離菌の状況、抗菌薬の感受性に従い、最も抗菌力の強い薬剤の短期間使用を地道に行うことにある」と提言した。
医学的知識が乏しいマスコミ相手に、「グローバルスタンダード」という言葉を使ってコンセンサスの得られていない知識を吹き込み、医療従事者がそれに従わないといけない風潮を創り出したいとするのは、医学的知識が乏しい一般人相手に抗インフルエンザ薬の使用を促す CMを流したのと同じ戦略だと思います。本当に科学的根拠があるのなら、素人相手じゃなくて、専門家相手に議論をして欲しいものです。
感染症診療のオピニオン・リーダーである青木先生は、今回のマスコミ向けセミナーを受けて同社主催のセミナーを中止しました。
[事務連絡] 「市中病院でみる世界の感染症セミナー」中止のご挨拶
企業というのは利益を出すために存在すると言っても良いですが、薬剤を売るために非専門家を騙すような広告戦略をとるのはやめて、患者さんにとって最大の利益は何かというのを共に議論できる間柄であってほしいと思います。
(参考)